著者
中松 和己 渡辺 尚 峰野 博史
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ミニトマト、ホウレン草などの水耕栽培ビニルハウスに、温度、湿度、照度、電気伝導率(肥料濃度の目安)などを測定したデータを収集可能なワイアレスセンサーネットワークを導入した。また、得られたデータをインターネット経由でパソコンに送り、農作物への水分補給の量を自動制御するシステムを提案した。これらの成果は国際会議などで論文発表した。更に、農作業者の実際に行われた水分補給の記録と提案した水分補給自動制御システムによる水分補給の違いを分析し人の経験知識を融合した水分補給システムを構築しようとしたが、記録量が少なく有意な違いが見つけられず今後の課題として残った。
著者
高橋 敏之
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

平成10〜13年度を通しての研究成果は、以下の通りである。1.学術論文「幼児の頭足人的表現形式の連続描画に見られる対象の重要度による描き分け」の複数審査制全国的学会誌への掲載…幼児は、それぞれ自分の人物描画における描画課題を独自にもっている。そして描画対象の重要度に応じて新旧の型を併用すると推察できる。2.学術論文「幼児の頭足人的表現形式に関する先行研究の問題点-W.L.Brittain(1979),鬼丸吉弘(1981),林健造(1987),長坂光彦(1977)の研究を中心にして-」の複数審査制全国的学会誌への掲載…幼児の頭足人的表現形式に関する先行研究を俯瞰し、批判的に考察した。3.学術論文「幼児の頭足人的表現形式の理論的説明における主知的見解とG.H.Luquetの描画発達説」の複数審査制全国的学会誌への掲載…有力な描画発達理論であるG.H.Luquet(1927)の学説は、幼児の描く頭足人的表現形式にも及んでいる。その理論を批判的に考察した。4.学術論文「幼児の頭足人的表現形式に関するH.Engの主知説批判」の複数審査制全国的学会誌への掲載…幼児の描画活動の縦断的事例研究者であり描画心理学の創設者でもあるH.Eng(1927)は、幼児の描く頭足人的表現形式について考察している。その理論を批判的に考察した。5.学術論文「幼児の初期人物描画の理論的説明における主知的見解への批判」の複数審査制全国的学会誌への掲載…本論では、L..S.Vygotsky(1930)、V.Lowenfeld(1947)、W.Grozinger(1952)、W.L.Brittain(1979)などの研究を取り上げ、主知説による頭足人的表現形式の説明を再吟味した。6.学術論文「幼児の人物画研究における用語問題」の複数審査制全国的学会誌への掲載…幼児の初期人物描画と頭足人的表現形式に関する学術用語は、各研究者によって使い方が違い、不統一である。本論では、先行研究を概観・整理し、新しい学術用語を提起した
著者
坂元 一光
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

福岡県柳川地域のひな祭り行事の際、雛人形の両側にさげられる吊るし飾り「さげもん」(毬とちりめん細工)は、自作の贈答品としてだけでなく趣味の手芸品、土産品として一年を通して制作されている。近年、さげもんが観光資源に活用され、またその需要と供給の地域的流通システムが形成されることで、中高年女性を中心に様々な目的や技術をともなう制作活動がさらに活発化し、民俗技術の持続にもつながっていた。柳川のさげもんの民俗技術はその観光資源化と多様な制作グループの自主的活動を通じて、地域社会の活性と伝統の再創造および中高年期の女性の生活の質の向上に積極的な役割を果たしていることが明らかになった。
著者
鵜澤 成一 水島 洋 大山 厳雄 柚木 泰広
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

「ゲノム不安定性」は、ほとんどのヒト悪性腫瘍において、認められている異常であるが、その状況の評価方法や基準が明確ではなく、同一患者に発生した腫瘍内の部位による「ゲノム不安定性」の相違や、個別の腫瘍間における比較が困難な状況である。そこで、本研究では、口腔癌を対象に、ゲノム不安定性の評価方法および評価基準の設定を試みた。その結果、FISHにより、いくつかの染色体のコピー数を評価することにより、症例ごとのゲノム不安定性の程度を評価することが可能であることを示せた。
著者
白石 成二 森田 克也
出版者
独立行政法人国立がん研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、がん患者のオピオイドに対する感受性の低下とmiRNAの変化の関係を明らかにすることである。乳がん骨転移痛モデルラットを作製し、miRNAの変化を解析した。対照と比較して2倍以上増加したmiRNAは56個で、1/2以下に減少したのは9個であった。この異常miRNAのうちlet-7についてμオピオイド受容体をDAMGOで刺激した時の活性と細胞膜での発現に対する影響を検討したが、ばらつきが多く一定の結果に至っていない。他の異常miRNAにはmiR-20a、miR-21、 miR-23b、 miR-133a、 miR-133bなどが含まれていた。
著者
小川 栄一
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、日本語コミュニケーションの史的変遷を究極の課題として、夏目漱石の小説作品を主たる対象にして、コミュニケーション類型の分類と、ストラテジーを中心にした談話分析を行った。その成果を小川栄一『漱石作品を資料とする談話分析 漱石の文学理論に裏付けられたコミュニケーション類型の考察』(平成29年4月 A4版163ページ)に著した。その結論を述べると、漱石作品における談話の特徴は「不完全なコミュニケーション」であり、これは漱石が『文学論』(1907)で述べる「F+f」理論を具体化したものであり、これによって、ユーモアのみならず、人間の心理的な葛藤など、多彩なf(情緒)を生み出している。
著者
小川 宏 森 知高 菅家 礼子
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、福島県内小学校で実施している10分間の運動プログラムが、小学生の体力や運動能力、学力に与える影響について調査した。また研究中の22年3月に東日本大震災があったため、震災前後の小学生体力の変化についても調査した。その結果、震災後は屋外活動が制限されたため、震災前よりも持久力やボール投げなどの能力は低下していたが、握力や柔軟性など、屋内で鍛えられる運動能力は向上していたことが明らかになった。
著者
堀 照夫 久田 研次
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

軽量で、高強度の導電性繊維およびプラスチックの製造を目的に、超臨界二酸化炭素流体の特徴を生かし、無電解めっきの核となる触媒の付与を検討した。超臨界二酸化炭素に比較的良く溶解する有機金属錯体の中から適切なものを数種選び、最初にこれらの錯体の単独での溶解性、2種類を混合した時の溶解性と相互作用について調べた。繊維・高分子としては高強度・高弾性で耐熱性の高いものを対象とした。アラミド繊維およびこのフィルムはジヘキサフロロアセチルアセテネートパラジウムなどを用い、錯体を注入した後、高温で乾熱処理することで高いめっき密着性が達成できた。液晶高分子であるLCPやエポキシについては密着性の向上に工夫を要した。解決法の一つは構造の類似な2種の錯体を混合使用する方法で、これにより超臨界流体に対する溶解性が向上し、めっき触媒であるパラジウムを強固に高分子表面に固定できた。その他に高分子表面を電子線加工する方法、プラズマ処理する方法、レーザー照射する方法等も効果があることを明らかにした。
著者
杉浦 芳夫 原山 道子 石崎 研二
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.ナチ・ドイツの国土計画に中心地理論が応用されていく最大の契機は、国土調査全国共同体研究所長のMeyer(ベルリン大学)の中心地理論への注目であったが、学位論文提出後のChristallerは、フライブルク大学のMetzらの急進的民族主義(volkisch)地理学者たちとつながりを持つようになり、それも媒介として、ナチ・ドイツの国土計画に参画していった。2.人口の不均等分布の解消のみならず、原料・食糧の効率的な調達・供給も目ざしていたナチ・ドイツの国土計画論では、国土全域の階層的編成が求められていたので、中心地に加え、開拓集落、工業集落をも構成要素とするChristallerの集落システム論(1938年のアムステルダムIGCで発表)は、その要請に答えうるものであった。3.1939年9月のポーランド占領後、東方占領地の集落再編計画に中心地理論は応用されようとしたが、ポーランド語文献によれば、それに先立ち、1937年にはポーランドと国境を接するシュレージェン地方において、防衛上の観点から、中心地網の整備案が、国土調査全国共同体研究所の命を受けたブレスラウ大学の地理学者たちによって作成されていた事実が判明した。4.関連文献の引用分析だけからは、中心地理論の他の学問分野の集落配置プランへの影響を厳密に捉えることができないので、他の学問分野の関連文献を詳細に読み込む必要がある。5.ナチ・ドイツに受容された中心地理論が、1939年以降、占領地ポーランドで実際に応用されていく過程については、Christallerの1940年代の論文等を検討することで解明されるであろう。
著者
飯塚 博 兼岩 敏彦 高橋 武志
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

籾殻・大豆皮等の植物非食部を炭化焼成して得られる炭素粉体を用いたプラスチック複合材料の電磁波遮蔽・吸収材料としての可能性について検討した.複合材料の製造は,作製した炭素粉体と複合材料の母相となるプラスチック繊維を水中で分散混合する抄紙法を用いて行った.その結果,電磁波遮蔽性については,複合材料の導電性と良い相関があり,有意に材料設計が可能になった.電磁波吸収性には炭素粉体の粒径,粉体配合率,試料厚さ,導電性等が複雑に影響した.したがって,それらの最適な組み合わせを合理的に決定する手法の確立が求められた.本研究では電磁波の無反射曲線を求め,そこから製造条件を決定する手法を確立した.
著者
斎藤 早苗 河原 俊昭 高垣 俊之 ライト キャロリン 木村 麻衣子
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

次の3点に注目する。(1)現地調査のためのアンケート及びインタビューの調査票の作成と検討、(2)10の地方都市地域における外国人住民のための言語支援の実態の把握のため地方自治体の取り組みと外国人住民が直面している日常生活での諸問題問題の把握、(3)国際学会における研究の中間と成果発表である。調査の結果、様々な問題や不便さの中でも特に「表現の平易化」と情報が行き届いていないことが明らかになった。従って、地方自治体をはじめ、教育関係者や個々の日本人が外国人住民が健全にそして十分に参加できる共生社会づくりに向けて簡略化した言語の提供と生活に必要な情報の普及に関して対応策を打ち出すことを提言する。
著者
小野 克彦
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々は、有機π電子系にホウ素キレートを導入すると分極構造が誘起され電子受容性が発現することを見出した。本研究では、このコンセプトを用いて高性能なn型有機半導体の開発を目指した。分極構造によって発生する正電荷は電子受容性の発現には必要であるが、正電荷間で生じる静電反発によりπ電子系が不安定になる。これを本研究の解決すべき課題と考え、ビチオフェン誘導体の改良を行った。πスペーサとして二重結合や三重結合を導入し、正電荷間で生じる静電反発の減少を調査した。加水分解反応の速度論解析と電気化学測定から、二重結合をもつ分子で静電反発の大幅な減少が確認された。
著者
大前 慶和
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

体験型環境教育の重要性が主張されている。しかし、体験型環境教育がすぐさま環境配慮行動に結びつくわけではない。むしろ、体験型環境教育は環境価値に対する自己判断のプロセスを経ることによってはじめて環境配慮行動に結実すると見るべきである。そこで、大学生を対象とした環境教育プログラムを構築した。アクティブ・ラーニングを促すプログラムであり、生ごみのアップサイクルによってスイーツをプロデュースするプログラムである。課題解決型学習プログラムと言える。エコスイーツ活動と呼ばれる活動内容となっており、大学生は様々な活動を通じて実行可能性を自ら評価する能力を習得できるようになっている。
著者
市川 尚紀 崔 軍
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、わが国の一般的な木造住宅に採用可能な太陽熱、雨水、地中熱による自然冷暖房システムの開発を行うものである。特に、雨水を地下に貯めて地中熱を蓄える装置として、既製品のドラム缶を連結した独自のシステムの有効性を確認することが本研究の特徴である。研究では、実物大の木造実験住宅を用いて、太陽熱で温めた雨水による暖房と、地中熱で冷やした雨水による冷房の実験を行い、夏と冬の冷暖房実験を実施した。この時、タンク切り替え自動制御盤の修理とバルブの調整などを行った。その結果、真夏日であっても、このシステムで継続冷房することができることがわかった。冬は暖房可能な時期について把握することができた。
著者
安田 次郎 末柄 豊 前川 祐一郎 上島 享
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

室町時代から戦国時代の奈良興福寺の大乗院門跡を中心にして、さまざまな「人のつながり」について基礎的なデータを蓄積し、寺院社会の構造や機能をあらためて考えるための手掛かりを得た。京都や奈良の門跡や院家は、貴族、武士、それに在地の諸勢力などの出身者が僧として、あるいは寺社の職員として出会って相互に結びつく場であったこと、僧たちはイエから切り離された存在ではなくイエや家族の利害を代表して行動したこと、寺院社会は異集団の出身者が出会い、結びつき、補完し合う場として機能したことなどの見通しを得た。
著者
皆本 景子 上田 厚 原田 幸一 魏 長年 皆本 景子 上田 厚
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

わが国では、業務上疾病として職業性皮膚障害として分類されている症例は限られていて行政による統計は存在しない。郵送による調査での症例収集は有効でなかった。職業関連アレルギーの発生の実態は、疫学的にも正確には把握されていないが、今のところ、医学雑誌で報告された症例報告の蓄積が、いまのところ確実で正確に利用できる情報源である。ドイツでは、皮膚科医と産業医が、行政の報告システムに組み込まれていて、職業性皮膚障害としての統計を基礎にした医学的根拠に基づいて、アレルギー性接触皮膚炎と刺激性接触皮膚炎ともに包括的な予防対策がとられている。ハウスミョウガ栽培者のアレルギー性接触皮膚炎の原因物質は、脂肪酸であることが示唆されたが、確定はできなかった。揮発性成分のなかでは、β-phellandereneの抗原性が高かった。接触蕁麻疹は、非免疫学的機序によるものである可能性が高い。
著者
羽生 義郎
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究により、免疫系を効率的に活性化するペプチド及び手法を見出した。免疫時に抗原と共にペプチド等の免疫活性化物質を投与する事により、抗原特異的に抗体産生細胞を活性化することに成功した。これにより、抗原特異性及び親和性が高い抗体、すなわち抗原の検出において有用性の高い抗体の生産が可能となった。この免疫活性化法を用いたインビトロ免疫法においては、抗原親和性の高いIgG1抗体が作製可能となり、モノクローナル抗体作製法として期待される。
著者
菅原 真弓
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は「日本19世紀版画史の再構築」(基盤研究(C)、平成19~22年度)の継続研究として実施したものである。研究蓄積が乏しいこの分野において、対象を当該時期の木版画(浮世絵版画)にしぼり、幕末明治期における日本の浮世絵版画および木版技術をもって制作された新聞、雑誌の挿絵の全貌を作品調査および関連資料調査を通じて明らかにすることを目的とした。本研究における最も大きな研究成果は、明治の浮世絵師・月岡芳年(1839~92)の画業全般に関する論文や関連書籍などを刊行したことである。しかしその一方で、これ以外の絵師や同時代動向への目配りが充分であったとは言えない。これが本研究の反省点となった。
著者
塩塚 秀一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

最近二十年ほどのフランス文学を特徴づける潮流のひとつとして、都市生活の中でふだん着目されることのない「日常」に着目し記録しようとする、一群のルポルタージュ的作品がある。フランソワ・マスペロの『ロワシー・エクスプレスの乗客』(一九九〇)、フランソワ・ボンの『鉄路の風景』(二〇〇〇)、フィリップ・ヴァセによる『白い本』(二〇〇七)などである。これらはいずれも誰の注意も引かない日常の風景を書きとめようとする実験的試みである。本研究では、これらの著者たちが風景をいかに記録しているかを具体的な記述に即して論じ、それを通じた現代社会批判の射程について考察した。
著者
上田 健治
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

我々が、アルツハイマー病脳のSDS不溶性成分の分析から未知分子として見出したαシヌクレインは、その遺伝子の変異体が優性遺伝型パーキンソン病の疾患責任遺伝子として同定された。しかし、αシヌクレインの生理的機能の詳細は不明のままである。我々は、αシヌクレインが脳神経細胞のミトコンドリア内膜に存在する事を見出した。さらに、αシヌクレインがadenylate translocatorに結合し、ATP産生の制御に関与する可能性を示した。培養細胞系を用いて、αシヌクレインが細胞増殖促進、神経細胞突起伸長を促進する事を見出し、その作用が微小管形成を介する事を示した。