著者
安倍 邦子 小路 武彦 林 徳眞吉
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ACTH受容体蛋白質から15アミノ酸配列を選び,合成ペプチドを作製し,KLHをキャリアー蛋白として,家兎に免疫した.抗血清はELISA法で,各々のペプチド抗原に対し25600倍希釈で陽性で,人副腎で,希釈倍率の検討および抗原賦活化の方法を検討し,1血清は副腎皮質の細胞膜に陽性で,ウェスタンブロット法で副腎のホモジネートと60kDのバンドを形成し,いずれもペプチドにより吸収された.副腎皮質癌,腺腫,過形成の手術例のパラフィン切片を用いて免疫染色した.PCNA,Ki-67陽性率は,癌で3.43-20.08,0-20.9と陽性率が高値で,腺腫で0.14-1.33,0-1.03と低く,過形成で0.19-0.7,0-0.05で腺腫よりもさらに低い傾向を示し,生物学的悪性度と増殖能の相関が明らかだった.ACTHR抗体では,腺腫や過形成に比較し,癌は陽性率が低下している.p53は腺腫や過形成では陰性,癌で3例のみ陽性,p53と副腎癌の発癌との関連が考えられるが,発癌には他の多数の因子の関与が考えられる.Rasは全体に陰性であった.Mycは,抗体9E10では,正常副腎皮質は核のみ陽性で,過形成や腺腫も核が陽性で,一部胞体も陽性だが,癌では胞体が優位である.3ヶ所の塩基配列を選択し,ATTを5個付加した60merのオリゴDNAを合成し,dot blot hybridizationで10pgまで検出できた.さらにピロニン染色や28srRNAでRNAの保存が確認された人副腎パラフィン切片を用い,種々の条件,T-T dimer法にて染色して検討した.球状帯と束状帯のcompact cellに陽性像を認めるが,弱く,定量的に検討するためには強い染色を得る必要があり,別の2ヶ所の塩基配列を選択し,ジゴキシゲニン標識で検討したが,同様の結果だった.腫瘍については特異的な染色はまだ得られていない.
著者
清水 和巳 上條 良夫 大薗 博記
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々は、1)構成員の匿名性の維持、2)利害関係を大幅に変化させるような外部装置を用いない、という二つの基準を満足させ、かつ、協力関係を形成・維持すると考えられる三つの仕組み(①協力・協調の難易度の段階的変化、②変化の内生性、③目標値の調整)について考察を行なった。その結果、上記三つの仕組みが鹿狩りゲームの調整問題を解決するのに有効であり、かつ、多値選択型の囚人のジレンマにおける協力の失敗の解決にも有効であることがわかった。囚人のジレンマは環境問題などと構造的に同型であり、鹿狩りゲームは年金未納問題と構造的に同型と考えられるので、この研究成果は現実の様々な問題解決の糸口となることが期待できる。
著者
金田 直子 春木 敏 子安 愛 大畑 千弦 鍛冶 晃子 太田 愛美 髙塚 安紀穂 西岡 愛梨 永樂 芳 平田 庸子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

早期食健康教育に向け,4・5歳児と保護者を対象とする食育プログラムを幼稚園教諭らと協同開発し,2度のプログラム実践を踏まえ有用性・汎用性を確認し,食育支援キット(食育案・教材・参考資料)を作成した.食育支援キット普及に向け,幼稚園教諭・保育士らを対象に食育研修を実施しO市内幼稚園・保育所園420施設(70%)に配布した.園・家庭・地域を結ぶ幼児食育に向け,養育者を対象とするメタボリックシンドローム予防を視野に入れた家族ぐるみの食育講座を併せて実施・評価をしたところ,日々の食生活改善につながることが確認された.家族ぐるみの幼児食育推進は,少子高齢化の進むわが国における食・健康づくりの一法となる.
著者
鈴木 敏和
出版者
和洋女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

肥満は不妊の一要因である。本研究では、高脂肪食マウス肥満モデルにおける雄性不妊の機構を解析した。また、雄性不妊の改善に効果が期待されている栄養素L-カルニチンの効果についても調べた。肥満に伴って、精子運動能の低下と交配させた雌マウスの妊娠率の低下が見られた。L-カルニチンによる肥満雄マウスの妊孕能改善はみられなかった。精巣上体尾部の遺伝子発現解析の結果、肥満マウスでは精子成熟の過程でDNA損傷が引き起こされていること、その一部にpiRNAが関与していることが示唆さされた。
著者
前島 洋平 佐藤 靖史
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

慢性腎臓病(CKD)は末期腎不全・心血管疾患の危険因子である。本研究では、内在性血管新生制御因子Vasohibin-1のCKDの病態における機能的解析を行った。Vasohibin-1欠損マウスにおいて野生型マウスに比して、糖尿病性腎症、尿細管間質病変、急性腎障害が増悪した。CKD患者にて、腎組織でのVasohibin-1発現は半月体形成、間質炎症細胞浸潤と相関し、血・尿中Vasohibin-1濃度高値群では、将来的な腎機能低下進展のリスクが増加した。内因性Vasohibin-1のCKD病態における腎保護的効果並びに新規バイオマーカーとしての可能性が示唆された。
著者
佐々木 健
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

シクロデキストリンの非共有結合性相互作用を利用する大規模自己組織化体の人工的な構築法を開発し,この手法を光合成系光集光過程の人工的モデルであるポルフィリン多量体形成に応用した。今回,ポルフィリン平面の上下に4個,計8個のシクロデキストリンを有するホスト分子の合成に成功し,水溶性ポルフィリンと錯形成することでポルフィリン多量体が構築できることを示した。また,光機能分子の数と配置によりエネルギー移動効率が大きく変化し,多量体内での光機能を自由に制御できる可能性を示した。
著者
桑名 義晴
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

グローバル知識経済の時代を迎え、日系多国籍企業は新しい事業・技術・製品の源泉になる知識を世界中からいち早く感知・獲得し、それを組織内で共有・活用する経営を必要としている。そのような経営の展開には、日系多国籍企業はまた、世界の多くの企業、大学・研究機関、政府組織などと提携し、それらと相互学習する能力を身に付ける必要もある。この新しい研究課題について、先駆的な理論の研究と国内外での実態調査によって、日系多国籍企業の新たな成長や国際競争力の強化には、アジア新興市場での新規事業開発、新しい組織の構築、新しいタイプの人材育成が喫緊の課題になっていることを明らかにした。
著者
大久保 隆志
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

これまでの捜査の行き詰まりを打破し,新たな展望を見出すためには,従来の捜査手法を超えた新たな捜査を検討すべきであると言われている。しかし,これを我が国の刑訴法と整合的に接合するためには,新たな捜査と従来の捜査の適法性の共通基盤を見出す必要があるところ,その基盤は,結局のところ,従来から議論のあった「自己決定」と「利益衡量」の在り方に収斂されるように思われる。そうすると,新たな捜査は,自由な「自己決定」を害することなく,適正な「利益衡量」に支えられた捜査であることが前提となる。その意味において,「自己決定」と「利益衡量」とが,捜査を支える「指導理念」の中核的概念であると考えられる。
著者
森 光昭
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

統一後、ドイツ人の外国人に対する寛容さが減ったと言われる。本研究では様々な極右事件に関する資料を収集し、極右暴力事件の実態を解明しながら、この最終的な目標に関する分析を行った。1998年のフランクフルト書籍見本市におけるマルティン・ヴァルザーの演説は、統一後のドイツの変化を象徴する事例であると言える。極右暴力事件そのものに関しては、統一後、劇的に増えた。統一前の1980年代と比較すると何倍にも増加している。しかし、1993年をピークにして1994年には、劇的に減少した。その結果、ボンのドイツ連邦政府を始め関係当局は一過性の減少であると胸をなでおろした。連邦憲法擁護庁の「憲法擁護報告」は、その後も、全体として減少傾向が続いているとしている。しかし、子細に憲法擁護報告書を検討すると、違った結果に到達する。憲法擁護報告書は器物損壊事件を1996年まで暴力事件に分類してきた。ところが、1997年の報告書からは別の方式を採用している。つまり、もはや器物損壊を暴力事件として取り扱っていない。従来方式で、つまり一貫性のある統計処理にもどると、暴力事件は減少傾向にあるとはいえない。特に、1998年は大副に増えていることが分かる。極右暴力を含め、ドイツの状況は関係者が安堵できる状況からは程遠いのである。
著者
吉田 正志
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

近世国家の犯罪処理は、決して国家のみによって担われれているのでなく、領民の経済的・労力的諸負担がその不可欠の一環として構成されている。従来の刑事法研究では、このような観点が希薄であった。本研究は、その具体的あり方を仙台藩を素材にして考究し、それらが領民の「役」としての性格をもっていたことを指摘した。1.捜査及び被疑者の逮捕段階城下及び村方それぞれの捜査機関につき新たな知見を得るとともに、同心や目明しが村方に於いて捜査することにより、彼らの宿泊や被疑者の暫定的拘禁が領民に対し負担を強いるものであることを明らかにした。2.評定所への護送段階村方で逮捕した被疑者を審理のため城下の評定所へ護送する際、その宿泊や見張り人、さらには護送人をその道中の宿駅が負担する場合があり、この点も無視できない。3.審理段階藩・領民双方にとって最も関心のある問題は、被疑者を牢に拘禁している間の諸費用を誰が負担するかである。仙台藩で「牢米」と呼ばれるこの制度をはじめて本格的に追究し、さらに五人組の負担の大きさを実証的に示した。また、関係者召喚費用についても検討し、とくに村役人の場合は村の負担として現れることを指摘した。4.刑の執行段階死刑及び晒刑の検討はかつて行ったので、ここでは流刑について考察し、とくに流刑地までの陸路輸送において、その道中宿駅の負担が深刻であったため、天保期に海上輸送に変更されたことを確認した。
著者
佐塚 隆志 北野 英己
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

イネの胚発生突然変異体club-shaped embryo1(cle1)、tryptphan deficient dwarf1(tdd1)、club-shaped embryo3(cle3)の3系統を用いて、イネ胚の器官形成におけるマイクロRNAやオーキシンによる制御機構について解析を行った。cle1、cle3は、胚が棍棒状になる変異体であり、tdd1は胚が球状になる変異体で、共に器官形成を行うことができない。ポジショナルクローニングの結果、cle1の原因遺伝子はOsDCL1、tdd1はアントラニル酸シンターゼベータサブユニット遺伝子であることが明らかとなった。これらの変異体を用いた詳細な解析の結果、イネの胚発生におけるマイクロRNA及びオーキシンによる制御機構が解明された。また、別の棍棒状胚変異体cle3の原因遺伝子は第6染色体に、また、重力屈性が異常な変異体crown root less2(crl2)は第1染色体に原因遺伝子が座乗することが明らかとなり、イネの胚発生とオーキシンの関係についての研究基盤が構築された。
著者
畝田谷 桂子 和田 礼子
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、留学生の工学実験系日本語論文作成や読解に資することを目的とし、同分野論文の「結果と考察」章の表現意図による細かいレベルの構造と重層的論理構造を明らかにした。また、「考察」の表現意図に含まれる種々の下位の表現意図別に文型を整理した。さらに、英語論文作成手法「スタンダードプロセス」(潮田(1999)『科学英語論文のすべて』日本物理学会編、丸善)を留学生の日本語論文作成に一部改変して試行した結果、添削可能な文章の自立的産出に有効であった。この手法と上述の論文分析結果を合わせて教育方法を考案し、提言を行った。
著者
泉 唯史 田中 みどり 菅原 基晃 菅原 基晃 住ノ江 功夫
出版者
姫路獨協大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

運動中の心機能応答の評価のために,運動負荷頸動脈エコーを用いた評価を試みた.体幹と頭部を固定する特殊な運動装置を用いることにより,運動時においても安定した頸動脈エコーを取得することができた.心エコーを用いて従来の心機能の評価によって得られた左室収縮能および拡張能と比較すると,頸動脈エコーから得られた指標は,収縮能においては良好な相関が得られたが,拡張能においては今後の課題を残した.
著者
片山 寛則 菅原 悦子 植松 千代美 池谷 祐幸
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

東北地方より収集したイワテヤマナシを含む野生ナシ、在来品種の有用形質評価(香気、加工特性、早晩性)と新規利用法の開発、個体識別を行った。収集個体は香気成分、有機酸、糖類ともに多様性が高かった。在来品種'サネナシ''ナツナシ'は香りの強いエステルが存在しニホンナシやセイヨウナシとは異なるさわやかな香りだった。'ナツナシ'などニホンナシの約7倍の有機酸量をもつ個体も存在し優れた加工特性を示した。
著者
青木 香苗 春山 富義 槙田 康博
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

高エネルギー加速器研究機構においては、多くの超伝導電磁石冷却用ヘリウム冷凍システムの開発、運転の経験がある。そこでまず機構内で超伝導電磁石とヘリウム冷凍システムの調査とトラブル例の収集を行った。その過程でどのような種類のデータを対象にするか決定された。データの種類は二つに大別される。1.一般的な超伝導電磁石とそれ専用のヘリウム冷凍システムのパラメータ2.故障、トラブルに関する事例次に、国内外の過去、現在稼動中、そして将来計画予定のシステムの調査を行った。故障、トラブルも調査するため、各研究所の担当者と連絡を取った上で、データベース公開の原則が決定された。・「1.一般的な超伝導電磁石とそれ専用のヘリウム冷凍システムのパラメータ」「2.故障、トラブルに関する事例」のどちらにおいても一切製造メーカー、担当メーカーの名前を出さない。・「2.故障、トラブルに関する事例」においては、研究所等の名前を出さない。・「2.故障、トラブルに関する事例」においては、データの公開は2段階とし、ユーザーが自由にアクセスできるのは、故障原因が生じた場所によって分類された簡易的な記述のみとした。さらに詳細な情報を得るためには、フォームに使用目的を書き込み申し込みを受け付けてし、目的が開発、研究、実際の運転等に限られた場合に詳細情報へのアクセスを許可するという形式を取った。この原則に基づき、日本国内、海外の研究所における対象装置を調べた。故障、トラブルという情報を提供してもらうためには、極力担当者と連絡を取り、実際に装置を見学して具体的に説明を受けるという方法を取った。また、実際に我々が直面した故障、トラブルの内、環境要因として放射線による低温システム制御系への影響の実験的な調査を行った。この結果は、開発されたデータベースのtop pageから「Useful Notes」として参照できるようにした。これらの原則と情報を元に実際のデータベースの開発を行った。データベースはKEK内で閉じられたネットワーク環境の上でテストされ、最終的にWWW上で公開された。
著者
村田 京子
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

まず、バルザック、ジョルジュ・サンド、マルスリーヌ・デボルド=ヴァルモール、テオフィル・ゴーチエ、スタール夫人の小説を取り上げ、文学と絵画の相関性を分析し、絵画が小説構造に果たす象徴的な意味を明らかにした。次に、上記の作家の作品の登場人物のポルトレを抽出し、それぞれラファエロ、ジロデ、ルーベンス、ホルバイン、ドメニキーノなどの絵画的表象と関連づけ、19世紀当時の「女らしさ」「男らしさ」の概念と比較対照しながら、ジェンダーの視点から検証した。最後に、女性作家と男性作家の小説における女性の芸術家像を比較することで、女性作家独自の芸術家像を浮き彫りにした。
著者
四宮 一総
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

衛星運動型高速向流クロマトグラフ装置を新規に考案・製作した。本装置は、カラムが太陽軸(角速度ω1)、惑星軸(ω2)及び衛星軸(カラムの中心軸、ω3)の周りを同時に回転するもので、ω1 = ω2 + ω3の関係が成り立つように設計した。本装置の分離効率を4-メチルウンベリフェリル糖誘導体を試料に用いて検討した結果、ω1=300rpm、ω2=150rpm、ω3=150rpm付近で良好な結果が得られた。
著者
中岡 まり
出版者
常磐大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、中国共産党が指導する選挙過程と選挙民の投票行動を分析し、選挙制度を通じた共産党統治の変容の可能性を明らかにすることを目的としてきた。研究の結果明らかになったのは、主に以下の3点である。第一に、党の選挙過程に対するコントロールが強化される一方で、選挙により得られる支配の正当性は限定的なものとなる傾向にあること。第二にロジスティック回帰分析の結果、投票者が有権者としての意識を持ち始めていること、第三に党のコントロールが暴力的な形を取り始めたことが示すように、多元化する市民の利益言表出要求に対する共産党の柔軟な適応能力が低下していることである。
著者
蒲生 忍 柳澤 厚生
出版者
杏林大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

終末期における医療の選択は患者と医療者の両者にとり非常に重要な問題である。米国においては、選択は患者の「自律尊重」が重視されるが、本研究では患者と医療者の共同のツールである「事前計画Advanced Care Planning」としての「医師による延命治療指示書POLST」について調査した。また、自律を強く求める人々の終末期の医療選択の一つとして、オレゴン州に続いて2008年11月にワシントン州で尊厳死法が制定され、発効した。ワシントン大学の医療提供者を中心に直接面談して、その制定の背景について調査した。
著者
田中 孝明 水川 一広 妻鹿 純一
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

銀系無機抗菌剤のイオンピュア^<TM>およびノバロンAG300^<TM>を用いて各種口腔細菌に対する抗菌作用と抗菌効果について検討した結果,以下の結論を得た。1. イオンピュアおよびノバロンのS.mutansに対する最小発育阻止濃度(MIC)はそれぞれ7.5mg/mlおよび1.3mg/mlであり,抗菌作用は静菌的であった。抗菌剤練り込み試料に対するMICはイオンピュアでは5wt%,ノバロンにおいては10wt%において認られた。抗菌剤練り込み試料面での生存率はイオンピュアおよびノバロンでは3wt%より顕著に減少した。2. C.albicansに対するノバロンのMICは500μg/mlであり,抗菌作用は殺菌的であった。ノバロンの義歯床への添加をインプリントカルチャー法により検索した結果,Candida属菌の顕著な発育阻止が認められた。3. 1)ユニファーストIIに対する各種コーティング材の接触角は,429R 37.8度,740 28.9度,プライトナー27.9度であり,比重は,429Rは1.00,740は1.04,プライトナーは1.07であった。コーティング試料表面のヌープ硬さ(HK)は,429Rで3.88,740は2.31,プライトナー13.00であった。試料表面の元素分析により,練り込みよりもプライトナーでコーティング処理した試料において,より強いAgの元素強度が認められた。2)イオンピュアおよびノバロンのカップ法によるA.viscosusへのMICは,それぞれ2.5mg/mlおよび1.3mg/mlであり,ラップ密着法による検討において,プライトナーでは429Rや740よりも,低い混入率において抗菌効果が認められた。