著者
浜岡 政好 岡崎 祐司 鈴木 勉 関谷 龍子 高橋 憲二 佐藤 嘉夫
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

超高齢化が進むなかで地域コミュニティの維持と高齢者等への生活支援がいっそう困難化してきている。そのために地域コミュニティの再編成と行政による地域コミュニティへの支援が強化されている。2つの自治体ではともに小地域単位にコミュニティセンターを設け、住民の自治活動をきめ細かく支援する仕組みを作りつつあった。またNPOなどの非地縁型の組織は高齢化した地域コミュニティの生活課題の一部をカバーしつつあるが、まだ十分に補完機能を果たしているとはいえない。
著者
奈倉 文二 千田 武志
出版者
獨協大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

日露戦争を契機とする海軍兵器国産化過程で、その中軸的担い手であった海軍工廠による艦船兵器類の製造・修理の実態を明らかにし、また、民間軍事関連企業の有機的連携がどのようにはかられたかを解明した。本研究では、英国からの「武器移転」と関連する日本の「軍器独立」過程として捉えた。また、兵器の供給に関わる商社の活動をも明らかにした。そうした試みはジーメンス事件を捉え直す上でも重要な意味を持った。第一次大戦は、日英関係にとって「分水嶺」となり、英国系兵器火薬会社においても「技術移転」は基本的に完了するに至った。
著者
今井 芳昭
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

対面する二者が、説得テーマに関する長所と短所を相互に挙げた後、送り手が受け手に一定の意見をもつよう働きかけるという説得場面を実験的に設定した。その結果、長所に同期させる形で、送り手が受け手の動作をミラーリングすることが受け手に影響を与え得ること、個人的な利益よりも社会全体の利益を強調することが効果的である傾向、そして、受け手が自分に説得能力があると認知しているほど影響されにくいことが見出された。
著者
池辺 寧
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ハイデガーは存在の思索を通じて、人間は他者との共同存在であることを一貫して堅持している。このことを示すために本研究では、ハイデガーが論じている住むことには他者と共に住むことも含まれていること、存在の真理を問うことは倫理学が生まれてくる存在論的根源を問うことでもあることを明らかにした。さらに、人間にとっての痛みの意味についての研究を行い、痛みの完全な根絶は、他者との共同存在である人間の生そのものを否定することにつながることを論じた。
著者
山口 富士夫 吉田 典正
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

現在の、CADを支えている形状処理の技術には,(1)不正確さ,(2)不安定さ,(3)複雑さ,の点で避けることの出来ない限界が存在し、これらの問題はシステムの信頼性に影響を及ぼす。著者は,"諸悪の根元は除算にある"とし,除算を用いない処理方式として「完全4次元同次処理」を提案している。ここに"完全4次元"とは、"一貫して4次元による"の意である。本研究は、現行の「ユークリッド処理」と本方式との理論および実験による比較である。(1')厳密な正確さ:除算を伴う「ユークリッド処理」では、厳密な正確さは実現困難である。一方、本方式では、有理数を扱う限り、厳密に正確な演算が可能である。これは様々な実験結果により確認されている。(2')頑健性:本方式では、除算を実行しないので、除算に伴うオーバーフローなどの不安定さは存在しない。また幾何的ニュートン法において、有理式曲線・曲面を対象とするときに現れる不安定さも、本方式では原理的に存在せず、更に解の局所一意性の点でも格段に優れている。(3')簡潔性:「ユークリッド処理」は射影による切断後の図形を対象とし、また「4次元同次処理」は射影前の図形を対象とする。前者は、切断の仕方により様々な形となるので組み合わせの場合が増え、複雑さが増大する。上に見たように、上記の3点に関しては圧倒的に「完全4次元同次処理」が優れていると結論できる。更に、処理の"一般性"と"統一性"および"双対性"に関しても、本方式の優越性が分かっている。
著者
玉置 了 若林 靖永 堀川 宣和
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は,消費者のソーシャルメディア上の消費者のコミュニケーション行動をアイデンティティと倫理的消費の視点からの解明を目的としたものである。本研究は,(1)ソーシャルメディアにおける消費者のコミュニケーション行動をアイデンティティの視点から分析する手法を検討し,テキストマイニングにより感情と消費スタイルに基づくアイデンティティとの関係を解明した。(2)倫理的消費の動機及び意識のそれ自体の検討として,倫理的消費がアイデンティティと共感によって促進されることを明らかにした。(3)SNS上の倫理的消費に関する消費者発信の情報を抽出し自己表現と関係構築の視点から分析を行った。
著者
服部 美奈 西野 節男
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究成果を以下の4点に要約する。第一に、インドネシア・マレーシアのイスラーム高等教育機関では近年、イスラーム法学やイスラーム教育などのイスラーム諸学に、非宗教的な学問諸学である法学や教育学を統合する試みが進められている。さらに、イスラーム高等教育機関は様々な価値が混在する多元化社会に対応し、同時に非宗教系高等教育機関とは異なる人材の輩出、つまり宗教と非宗教といった二元的な学問類型を越えたイスラーム指導者を養成しようとしている。一方、マレーシアのイスラーム高等教育機関は1980年代からアラビア語と英語を教授用語とするマレーシア国際イスラーム大学の設立など、グローバル化に対応した教育改革を行い、国内外のイスラーム指導者を養成している。また各州における独自の取り組みも注目される。第二に、イスラーム高等教育機関における研究の進展は顕著である。多くのイスラーム高等教育機関には女性研究センターPusat Studi Wanita、イスラーム研究センターが設けられ、イスラーム諸学の研究が進められていると同時に、現代の諸問題に照らした教義の再解釈や社会科学の手法にもとづく実証研究が推進されている。この意味で、各国のイスラーム高等教育機関における研究の蓄積と発信が今後のイスラーム研究の重要なリソースとなりつつある。第三に、しかしながら異宗教間対話という観点からインドネシア・マレーシアのイスラーム高等教育機関をみると、イスラーム諸学と非イスラーム諸学との学問的統合あるいはより広い分野での就職・活動の機会を学生に提供しているという点において、価値多元化社会への対応は確実に進んでいるといえるものの、諸宗教間の対話を現在のイスラーム高等教育機関が積極的に提供していると結論づけることはできない。第四に、2011年に開催した国際シンポジウムにおいて、各国(インドネシア、マレーシア、ブルネイ、オランダ、ヨルダン)のイスラーム高等教育機関に所属する研究者を招聘し、東南アジア、ヨーロッパ、中東地域におけるイスラーム高等教育機関の価値多元化社会への対応を直接議論することにより、国際的な研究交流を促進した。また、この国際シンポジウムの開催により、東南アジア地域のみならず、ムスリムがマイノリティとして居住するヨーロッパにおけるイスラーム高等教育機関の現状と課題を共有し、より普遍的な課題の検討と問題提起が可能となった。
著者
中逵 弘能 金山 博臣 高橋 正幸 福森 知治
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

浸潤性膀胱がん細胞株、組織において、mRNAレベル、タンパクレベルでactinin-4の高発現が認められた。siRNA actinin-4を用いたノックダウンにより、浸潤能が抑制されたが、増殖能は抑制されなかったことより、actinin-4は浸潤能への関与が示唆された。Actinin-4が細胞膜ヘリクルートされず、細胞質に集積することが、腫瘍の浸潤、転移に関与していることが示唆される。
著者
三宅 康之
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、江沖民時代の中国のガバナンス構造を理解するため、その核心である中央地方関係を分析することを目的とするものである。1993年と2001年におこなわれた財政制度改革の政治過程を事例に「、中央が人事を絡めて地方指導部を牽制したため財政制度改革に成功した」という仮説、「人事・財政リンケージ説」に立って分析を進めた結果、人事データの整理、制度改革の過程の解明についてもっとも詳細な水準に到達できた。
著者
溝井 裕一 細川 裕史 齊藤 公輔 浜本 隆志 森 貴史 北川 千香子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

我々は、ナチスによる集合的記憶の乱用の問題について調査を実施した。その結果、ナチスが過去の「アーリア人の遺産」に由来する要素を、建築、祝祭、演説などに織り込み、これによってドイツ人のアイデンティティを変化させ、彼らに人種主義的かつ優生学的な思想を植え付けようとしたことが明らかとなった。ナチスが実施した絶滅動物の復元も、「過去の想起」に関連するものであった。我々はまた、戦後の大衆文化における「集合的記憶におけるナチスのイメージ」も研究対象とした。そして、ナチスのイメージは現実というよりも我々の期待を反映したものにすぎず、世代交代や社会環境の変化に合わせて変質していくものであることを解明した。
著者
黒田 泰介
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究はイタリアの歴史的都市内に現存し、今なお住まわれ続けている歴史的な居住空間について、その再生・利活用:レスタウロの理念および建築的介入の内容を、実測調査による史的痕跡の明確化および建築類型学的分析を通じて、実証的かつ総合的に明らかにしようとするものである。フィレンツェを中心としたイタリア中部の歴史的中心地区を対象として、歴史的な居住空間の修復・再生事例を現地調査すると共に、建築史、都市史に関する資料収集を行い、有益な成果を上げた。
著者
四方 賢一
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

我々は過去の一連の研究によって、糖尿病性腎症の成因に炎症(microinflammation)が関与していることを明らかにした。本研究の目的は、糖尿病性腎症の成因に関与する炎症関連分子を探索するとともに、microinflammationをターゲットとした腎症の新しい治療薬を開発することである。Oeteopontinノックアウトマウスに糖尿病を惹起して、腎障害の進展を野生型マウスと比較解析することにより、osteopontinが腎症の進展に深く関与しており、腎症の治療標的となる可能性が示された。また、GLP-1受容体が糸球体内皮細胞や単球/マクロファージに発現しており、糖尿病ラットにGLP-1受容体作動薬を投与することによって抗炎症作用を介して腎障害が抑制されたことから、GLP-1受容体作動薬が腎症の治療薬として有望であることが確認された。
著者
大畑 雅典
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

2008年にヒトポリオーマウイルスとしては初の腫瘍ウイルスであるメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)が報告された。欧米ではMCPyVと慢性リンパ性白血病(CLL)との病因的関与について報告がなされているが、我が国でのMCPyVとCLLの関係については明らかにされていなかった。本研究において一部の本邦発症CLLでMCPyVが検出されたが、CLL発症に直接的な役割を果たしているかは不明である。MCPyVは単球にも持続感染することが報告されている。この持続感染が細胞の腫瘍化へと発展させるのかどうかは不明であった。そこで、単球性白血病におけるMCPyVの感染有無について解析した。
著者
根建 洋子 根建 心具 瀬戸口 賀子
出版者
鹿児島純心女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

九州及び山陰地域から採取した花崗岩の風化プロファイルを鉱物学的・化学的に分析した結果、25億年の花崗岩の風化と多くの類似性が見られることがわかった。具体的には風化の初期段階におけるアパタイトの分解とP(リン)の溶脱、希土類元素を含む多くの元素の挙動の類似性である。現世の風化プロセスには微生物活動が密接に関わっているとされており、特にリンや希土類元素の挙動の類似性は25 億年前の地表における生物活動との関連から興味深い。風化プロファイルから微生物を単離・同定したが、今後は直接バイオタイトまたはアパタイトから単離・同定しその分解と微生物との関わりを探る予定である。
著者
長澤 成次 浅野 かおる
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、再編がすすむ日本の公民館と韓国の住民自治センターの動向と学習を通しての住民の自治能力形成に向けた今日的課題を明らかにすることである。3年間の調査研究を通して明らかになったことは、(1)邑・面・洞という住民に身近な地域を対象にしている住民自治センターの各種事業における学習・教育機能が地域の住民自治を作り出していること、(2)韓国における地方行政体制改編を背景に、名称変更や洞の統廃合による住民自治センターの再編が進行しること、(3)事例研究を行った釜山市海雲台区では、パンソン2洞住民自治会と地域NGO組織・ヒマンセサンのパートナーシップと重層的な学習活動が住民自治によるまちづくりを生み出していること、である。
著者
藤井 勝 平井 晶子 SIRIRATH Adsakul YENJIT Thinkham 奥井 亜紗子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

東アジアにおける国際結婚は、「東アジア共同体」の構築を社会的に支える重要な要素となる。しかし現状では、この国際結婚は人権侵害、離婚、暴力など、さまざまな問題点を内包している。本研究は、日本人-タイ人の国際結婚を事例としながら調査研究を行うことによって、この国際結婚の多様な展開の姿を類型論にもとづいて明らかにすると共に、それぞれの類型(あるいは形態)における結婚、家族、地域社会などめぐる特質や問題点を解明した。これによって、今後の国際結婚の発展に資する研究成果を得ることができた。
著者
佐藤 美由紀 芳賀 博 齊藤 恭平
出版者
人間総合科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、札幌市に近接する地区においてアクションリサーチにより実施した高齢者の地域社会における役割の見直しに基づくヘルスプロモーションプログラムのプロセス評価及び長期的効果を量的と質的方法により検証することである。当初、住民は義務的参加であったが、危機感の高まり、課題の共有、相互作用の高まり、住民間の確執を乗り越えるなどの経過を経て、主体的に地域活動を創出し参加するに至った。介入地区は対照地区よりもボランティア活動(p=0.047)と近隣のコミュニケーション(p=0.057)が活発になった。住民や行政等のインタビューにおいても地域のつながりの深まり、社会参加の促進が効果として挙げられた。
著者
麻生 武
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究成果は大きく分けて2つある。1つは、対象乳児Uの生後2年目の手書きの縦断的日誌観察データを、デジタル化して、約20のテーマに分けてファイル化したことである。これによって、「自己の発達」に関する、周辺テーマを含めた総合的な研究を行うことが可能になった。もう1つは、そのようにテーマごとに整理されたデータを利用して、「自己の発達」に関する、具体的な研究を行ったことである。その成果は、細分化すると3つに分けることができる。1つ目は「イタイ」ということばの獲得をめぐる理論的な問題をまとめ、学会発表や論文にまとめたことである。2つ目は、生後2年目に子どもが「他者」に出会っていくプロセスを、今回整理したデータを利用して論文化したことである。3つ目は、子どもが他称詞や自称詞を獲得していくプロセスについて、学会発表し論文化したことである。「呼び名」としての他称詞と「対象の名前」としての他称詞との間にあるギャップや、「自分の名前」を子どもが口にすることの意味など、生後2年目の"自己"をめぐる新たな謎を浮かびあがらせることができた。
著者
渡部 雅之
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

他者の視点からの眺めを予想する能力を意味する空間的視点取得の生涯発達的特徴について明らかにすることが目的であった。隠れん坊を模したビデオゲームを新たに作成し、これを用いて幼児から高齢者まで合計840名ほどからデータを収集した。反応時間と正答率の分析を行ったところ、仮想的身体移動に関わる能力は成人期まで発達し続けて、通常の加齢でにおいては低下しにくいこと、そしてそれ以外の認知的情報処理に関わる能力は6歳から13歳の間に大きく伸張することが示された。さらにこの成果を、脳卒中後遺症のリハビリテーションに応用する試みも行った。
著者
飯塚 恵理人 三木 邦弘
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

藤田六郎兵衛師より提供いただいた明治30年代の藤田家と東京の役者の出演交渉に関する書簡を翻刻した。これについては鶴舞図書館の郷土文化に投稿するため現在原稿作成中である。佐藤友彦氏より提供された尾張藩御役者山脇和泉家に伝わる間狂言本を撮影し、現在翻刻中である。研究機関内に第三冊「修羅冊」まで翻刻を発表することが出来た。