著者
渡辺 智恵美
出版者
別府大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

古墳時代の金属製品(刀やよろい、馬具、耳飾りなどの装身具)に残された製作時の痕跡から、それらを製作する技術や道具を調査した。調査方法として顕微鏡観察のほか、X線CTスキャンや三次元計測、材料の成分分析といった自然科学的方法も応用した。その結果、耳飾りの製作工程の復元を通して、使用された道具や方法を解明することができた。また、よろいなどの鉄製品に残された、板を切断した痕跡から、使用された道具の刃先の大きさも推定できた。
著者
藤野 陽子 荻野 洋一郎 鮎川 保則 古谷野 潔
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は埋入されたインプラント周囲に発現する骨タンパク質をチタンにコーティングすることで、オッセオインテグレーションを促進できるかを検討するものである。本研究期間では、チタンに非コラーゲン性タンパク質であるオステオポンチン(OPN)、オステオカルシン(OCN)をコーティングした場合のコーティング効果と骨芽細胞(マウスセルライン、MC3T3-E1)を培養し、その接着、増殖、分化を検討した。さらに、ラットの脛骨を用いたin vivoモデルでの骨接触率の検討を行ったインプラントに各タンパクのコーティングを行い、免疫組織化学的な手法によってタンパクの吸着を確認した。接着に関しては、OPNでは初期に抑制傾向が認められたものの、その後の接着は促進される傾向にあった。OCNでは初期から促進傾向が認められたが、その後の接着はOPNほどの促進傾向は認められなかった。接着後の増殖では24、72時間後の細胞数をMTT Assayにて計測を行った。また、分化に関しては、ALP染色と細胞から分泌されるOCNの量を測定したが、その差は顕著なものではなかった。ラット脛骨へコーティングインプラントを埋入した動物実験モデルではインプラントを埋入し、2週間後に屠殺し、組織学的検討を行っている。(現在標本作製中)つまり、今回の実験系からは、以下の事項が確認、示唆された。1)OPNとOCNは細胞の初期接着を促進する傾向が認められた。2)接着後の細胞の増殖、分化に関しては、初期接着ほどの効果は認められなかった。これは、OPN、OCNのコーティング効果が弱くなることや、初期接着後のメディウム交換で、コーティングの効果を減弱させること、さらには、接着への影響を極力少なくするために2%FBSを添加したメディウムがその後の増殖や分化(分化の培養系では、10〜15%のFBSを添加したものを通常用いている)を通常のレベルで起こすことが出来なかったことがその一因として考えられた。3)in vivoの実験は現在、標本作製中なため、改めて報告を行う予定である。
著者
相良 英輔 山崎 亮 濱田 敏彦 諸岡 了介
出版者
広島経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

(1)近世前期(1600年代)、田部家の居住する吉田町での田部家の経済活動を明らかにすることができた。(2)近世中期、たたら製鉄を幕府が専売制にすることにより、生産者である田部家等の鉄師が苦境に陥ったが、その具体的な実態を明らかにすることができた。(3)19世紀後半(1850年代から1860年代)鉄の需要が拡大し、田部家も大きな利潤を得、資産を拡大していったことを明らかにし、さらに1865年吉田町は大火により町全体が焼失するが、その詳細な史料を見出し、全貌を明らかにすることができた。
著者
根本 清光
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

中枢神経系で重要な役割を果たすNMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)の2Cサブユニットの遺伝子(Grin2c)が、肝細胞肥大誘発作用、肝細胞傷害性あるいは肝細胞増殖性肝肥大誘発作用を示す化学物質の投与ラット肝臓で顕著に発現亢進することを見いだし、これら化学物質の作用にNMDARが何らかの役割を果たすものと推定された。しかし、肝細胞株でこのような化学物質によるGrin2c遺伝子の発現亢進を見いだすことができず、他の細胞種から産生される因子など間接的な要因で発現亢進が引き起こる可能性が考えられた。
著者
乾 博
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

肥満モデルマウス(KK-Ayマウス)に高スクロース食もしくは高フルクトース食を摂取させると、盲腸内の細菌叢に変化が起こり、特にビフィズス菌の減少が見られた。このような変化は高脂肪食でも見られるものであり、フルクトース過剰摂取に起因した脂肪性肝炎の発症に関係していると考えられる。ユーカリ抽出物を摂取させると腸管におけるフルクトース吸収が抑制され、高フルクトース食に起因した脂肪肝が抑制されるが、その活性成分としてテリマグランジンIを見いだした。また、ユーカリ抽出物以外に、バナバ、グァバ、オリーブ抽出物にもフルクトース吸収阻害活性があり、高フルクトース食に起因した脂肪肝の抑制に有効であった。
著者
三方 裕司
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

細胞親和性に優れた,特定金属イオンに対する高感度蛍光プローブ分子の開発研究を行った。金属配位部位と蛍光団を兼ね備えた分子をデザイン・合成し,その重金属イオンに対する蛍光プローブとしての機能を細胞外,細胞内で詳細に検討した。また,糖部位の導入による水溶性の向上と化合物の毒性軽減効果も検討した。配位子の精密設計により,亜鉛,カドミウム,水銀イオンに対する選択的蛍光プローブの開発に成功した。本研究成果は,次世代の蛍光センサー分子創製のための重要な指針を提供することにつながると期待される。
著者
伊福 伸介
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

キチンナノファイバーの簡便な調整方法を見出した。カニ殻からタンパク質と炭酸カルシウムを除去した後、酸性条件下においてグラインダーで解繊することにより調製できる。得られるナノファイバーは均一で幅が10~20ナノと極めて細く、高アスペクト比である。この方法はエビ殻にも適用可能である。また、本法はカニ殻に内包されるキチンナノファイバーをありのままの状態で単離できるため、本来の結晶構造や形状が維持されている。また、キチンナノファイバーでアクリル樹脂を補強した複合材料の作成に成功した。この複合フィルムはキチンナノファイバーのサイズ効果により透明である。また、物性に優れるキチンナノファイバーの補強効果により、アクリル樹脂の強度、弾性率を大幅に向上させ、線熱膨張係数を大幅に低下させることができた。
著者
本多 一郎 今西 俊介 松永 啓
出版者
前橋工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ピーマンの生産に関わる様々な問題の克服のため、ピーマンの着果、肥大性に関する生理、育種学的研究を実施した。様々な果実形質を持つ素材を用いた研究により、ピーマンの着果、肥大には、トマトなどとは異なり、植物ホルモン「サイトカイニン」が最も関わっていることを明らかにした。また、単為結果性ピーマン素材「CNPH2622」は果実の肥大性はすぐれるが、着果性は低く、単為結果ピーマン開発にはさらなる研究が必要なことが明らかとなった。
著者
内堀 真弓 浅野 美知恵 山崎 智子 本田 彰子
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、糖尿病足病変ハイリスク患者が自分らしく健康的な生活を維持することを目指した合併症重症化予防のためのセルフモニタリング機能を促進する看護支援プログラム考案を目的としたものである。まず、セルフモニタリングを促進する要素を抽出するため、糖尿病足病変ハイリスク患者を対象に、セルフモニタリングの実際を調査した。さらにフットケア外来に専従する看護師を対象に、フットケア外来での実施状況や支援内容についての全国調査を実施した。これらの結果からセルフモニタリング機能促進の主要要素を抽出し、看護支援プログラムを考案し、フットケア外来に通院中の糖尿病患者に本プログラムに基づく支援を実施した。
著者
中山 竜一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

リスク理論を軸に法思想史的アプローチと「法と経済学」的アプローチを結びつけ、そこから、過失責任・無過失責任・予防原則を総体的に捉えるような、民事責任にかんする新たな類型論を提示した。さらに、これを足がかりに、リスク社会における公共的決定のあり方として(1)熟議民主主義、(2)個人化・市場化、(3)リバタリアン・パターナリズムの三つの対案を示し、そこでは「法の支配」が新たな意味を担うことを明らかにした。
著者
松尾 知之 松尾 知之
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

新しいタイプの指導者支援システムを構築するための基礎資料を得ることを目的とし, 経験豊富な運動指導者の培った経験知を体系的に調査・抽出した. 特に, 本研究では野球の投球動作指導に焦点をあてた. 熟練指導者等への面接調査によって, 投球動作の指導内容について, 飽和状態に達したと考えられる段階まで知識を抽出できた. また, 心理実験やアンケート調査により, 指導者間で共通性のある項目と共通性に乏しい項目を明らかにするとともに選好度の高い投球動作をCGで表すことが可能となった.
著者
長瀬 勝彦
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

われわれは,トロッコ問題として知られる「多数の人の命を救うために手を下して,その結果として少数の人の命を犠牲にすることは妥当かどうか」を問う問題における選択と回答者のパーソナリティーとの関係を調べた.測ったパーソナリティーは「自己受容」「自己実現的態度」「充実感」「自己閉鎖性・人間不信」「自己表明・対人的積極性」「被評価意識・対人緊張」,「ローカス・オブ・コントロール」,「認知的熟慮性/衝動性」,「楽観主義・悲観主義」である.結果についてスピアマンの順位相関係数を求めたところ,いずれの尺度とも5%水準で有意な相関は得られなかった.ただし,比較的強い相関を示したのは,「自己閉鎖性・人間不信(rs=0.43)」「ローカス・オブ・コントロール(rs=0.37)」「認知的熟慮性(rs=0.31)」の3つであった.自己閉鎖性・人間不信が高いほど,ローカス・オブ・コントロールが強いほど,また知的熟慮性が高いほど,功利主義的な傾向があるということになる.
著者
鈴木 正崇 浅川 泰宏 市田 雅崇 織田 達也 中山 和久 宮坂 清 宮下 克也 谷部 真吾
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、「道の宗教性」という観点から、「文化的景観」との関連を探ることによって民俗宗教の再構築や現代民俗の生成を検討する試みであった。研究を通じて、「道の宗教性」がもつ創造性や、「文化的景観」をめぐる新たな民俗の生成、遺産化をめぐる諸問題が浮き彫りにされ、動態的な宗教民俗学の構築へと展開することが可能になった。
著者
大池 真知子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

HIV/エイズに関する社会運動の一環として、アフリカで草の根の女たちが書いている文章を分析し、HIVの経験を女たちがいかにとらえ、書くことでいかに自己と社会を変革しているのかを考察した。ライフストーリーの聞き書き集では、語り手と書き手にギャップがあるため忠実な再現は困難であり、むしろ創作的な要素を含む「クリエイティブ・ノンフィクション」の手法が有効だと分かった。女たち自身が書くライフストーリーでは、母親が子どもに宛てて書く家族の記録「メモリーブック」が、家族が生き抜くのに有効であることが分かった。
著者
上田 茂太
出版者
苫小牧工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

一般的に耐電圧の低い電気二重層コンデンサ(EDLC)を直列接続し電圧を高くして利用する場合、EDLCを直列接続したまま充電すると高い電圧の充電器が必要になるとともに複数のEDLCの電圧アンバランスが生じる。そこで、充電時には並列接続、放電時には直列接続に変更できるダイオード16個とリレー7個を用いた簡単な回路を提案し実験にて効果を確認した。定格233F、15VのEDLC8個用い、直流モータを負荷として、負荷条件を変えて実験した結果、80W負荷で1900秒間放電可能で、充放電における電圧アンバランスは概ね±1%以内に抑制でき、充放電のエネルギー効率としては70~80%という良好な結果が得られた。
著者
井川 ちとせ
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

郷里のイングランド中部地方を舞台に市井の人びとの日常と心理を克明に写し取った「リアリズム作家」として長らく文学史の周縁に置かれてきたアーノルド・ベネット(1867-1931)と、その晦渋さゆえにつねに精緻な読解の対象とされるヴァージニア・ウルフ(1882-1941)、ジェイムズ・ジョイス(1882-1941)、T. S. エリオット(1888-1965)ら「モダニズム作家」との同時代性に注目し、ジャーナリズムと学術研究というふたつの領域間の交渉を跡づけることで、リアリズムからモダニズムへという単線的な発展史の見直しをおこないました。
著者
西田 眞 景山 陽一
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,口唇の動き特徴を利用した汎用性の高いヒューマンマシンインタフェースの構築を目的とし,口唇情報の解析およびシステム構築のための要素技術の開発を行った。その結果,(1)口唇の局所形状情報を用いて口唇形状のグルーピング,ならびに対象者の絞り込みが可能であること,(2)口唇の動き特徴のばらつきに着目することで喜びの情動の有無を検出可能であること,(3)発声が口唇の動き特徴に影響を及ぼし,発声状態を考慮することでコマンドの認識率を向上可能であることなどを明らかにした。
著者
田端 俊英 上窪 裕二
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

マウス小脳へのB型ガンマ・アミノ酪酸受容体アゴニスト注入は小脳長期抑圧(LTD)依存的な視機性動眼反射(OKR)順応を促進した。一方、in-vitro実験により、1型アデノシン受容体がLTDのトリガー分子である1型代謝型グルタミン酸受容体と複合体化し、プルキンエ細胞におけるLTDの素過程を阻害することが分かった。Gタンパク質共役性受容体の相互作用がシナプス可塑性と学習に影響することが示唆された。
著者
三木 明徳 安藤 啓司 荒川 高光
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

筋損傷に対する予防や治療は、スポーツやリハビリテーションの臨床の現場において、理学療法士の重要な任務である。筋損傷急性期には寒冷療法が行われているが、筋再生の面から見ると好ましくない結果が出ている。科学的根拠に基づいた筋損傷に対する治療を確立するため、筋損傷に対する温度刺激の影響を形態学的、組織化学的、生化学的に観察した。温熱刺激を試みたところ、筋の再生は促進し、MyoDやmyogeninといった筋再生の重要因子の発現も早期化、促進できた。筋損傷後急性期の温熱刺激は禁忌とされているが、筋再生の面から見て検討を要すると考えられた。
著者
松本 剛 中村 衛 新城 竜一
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

台湾はフィリピン海プレートの運動に伴い、ルソン弧が東方より衝突することによって、現在の造山運動が引き起こされている。このような、台湾の造山運動・衝突テクトニクスを考察する上で、南西琉球弧がこれに果たす役割を検証することは重要である。そのため、台湾の衝突テクトニクスを解明するための米・台共同研究TAIGER Project(2004-2009)に参加し、2009年に実施されたR/V Marcus G. Langsethで実施された地下構造探査に加えて、EM-122測深機による精密測深データを取得した。また、これまでJAMSTEC船等で1990年以降に実施されて来た精密海底地形調査の結果を集大成し、沖縄トラフから琉球島弧・前弧域・海溝域・西フィリピン海盆北部に至る最新の海底地形図を作成し、それをもとに、当該域のテクトニクスを考察した。南西琉球弧から琉球海溝に至る海域は、次に示す東西方向の4領域に分類することが可能である。最北端の領域は、南岸沖の南落ち斜面に沿って南北方向に発達した海底谷の分布によって特徴付けられる。その南側では、スランプ性地辷り痕が発達し、平坦な前弧海盆へと続いている。更にその南側では、複雑な起伏、急斜面、東西向きのhalf grabenなどの、不規則な地形によって特徴付けられる。海溝域は、幅約40kmにも達する6500-6600mの深さの平坦面である。海溝軸の位置を特定することは難しい。海溝域の平坦面上には4個の海山が見られる。しかし、このような海溝の地形的特徴は、Gagua海嶺の衝突の起こっている123°Eの西側では不明瞭となっている。宮古~八重山域に掛けては、「島弧胴切り」型の正断層が多く発達しており、これらは活断層と認定されている。そのうち、石垣島東方沖の断層については、沖縄トラフの伸張に伴って北方に伝播している(すなわち、活断層の長さが長くなっている)ことが明らかとなった。これらの地形的特徴は、沖縄トラフ西部の伸張と呼応して、123°Eの東側で、海溝が南方のフィリピン海プレート側へ後退していることを示唆している。Gagua海嶺のある123°Eの西側の花東海盆は、その東側の西フィリピン海盆の特徴とは大きく異なる。後者が、拡大痕に相当する地塁・地溝地形とそれを直角に横切る断裂帯が多く発達するのに対して、前者は地形の起伏に乏しい。また、花東海盆の沈み込みが起こっているか否かは明瞭ではない。花東海盆の西端に当たるルソン弧と併せて、同海盆が前弧・背弧域と一体化し、これらの3海域全体が台湾ブロックに衝突している可能性が示唆される。花東海盆の北側前弧域では、明瞭な深発地震面が観察される。しかし、これはユーラシアプレートに対して北西方向に西フィリピン海盆が斜め沈み込みを起こしていることによる深発地震面であると見られる。