著者
丸山 伸 小塚 真啓 中村 素典 岡部 寿男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IA, インターネットアーキテクチャ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.173, pp.31-36, 2006-07-13
被引用文献数
1

複数のアドレスを同時に利用して通信を行うSCTPによる接続に対して、動的にIPアドレスの増減を行うための拡張であるmSCTPは、トランスポート層におけるモビリティ実現技術として知られている。しかしmSCTPは仕様上の制約によりアドレス増減の通知を連続して行うことが出来ないため、ハンドオーバにおいて本来は不必要なはずの長い時間が必要となったり、相互に通信可能なアドレスを取得したにもかかわらず接続を維持できない場合が発生したりする。本研究においては、アドレス増減の通知の再送を複数個まとめて送信できるようにmSCTPを拡張する手法を示し、この変更により複数のアドレスが連続して増減した際においても、通信できるアドレス対が存在する限り実用的な時間内で確実にハンドオーバできるようになることを示す。
著者
鵜野 将年 田中 孝治 平木 英治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EE, 電子通信エネルギー技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.411, pp.7-12, 2011-02-03

DC-DCコンバータやインバータ等の電力変換装置は動作周波数ならびに商用周波数に応じたリップル電流を発生する.燃料電池を電力変換装置と接続して使用する場合,燃料電池には平均直流電流にリップル成分が重畳した電流が流れるため,燃料電池の電位は高周波で変動することになる.固体高分子形燃料電池(PEMFC)の主な劣化要因の一つとしてPt/C触媒の電気化学的表面積(ESA)の低下が挙げられるが,この劣化モードは電位変動時に顕著に進行することが知られている.本稿では電力変換装置との相互作用により発生する高周波の電位変動がPEMFCのPt/C触媒劣化に及ぼす影響の定性的評価を目的とし,発電ならびに非発電状態のPEMFCを高周波の電位変動環境に晒し,ESAの劣化傾向を観察した.電位変動周波数が低周波の場合は顕著なESA劣化傾向を示す一方,100Hz以上の高周波域では直流条件時と同等の低い劣化率を示した.本稿で得られた知見は電力変換装置の動作周波数の決定ならびにリップル周波数を規制する際に有用になるものと期待できる.
著者
水間 幸大 加藤 富士夫 古田 真治 佐々木 一正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OCS, 光通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.265, pp.13-17, 2002-08-15
被引用文献数
5

光ファイバは,太い棒状のプリフォームと呼ばれる母材を作成し,その先端を加熱,軟化させ線引きすることにより作成される.母材の段階で形成される構造は線引き後も光ファイバに受け継がれることから母材の段階でどのような構造が形成されているかを測定することが光ファイバの製造工程における品質管理の上で不可欠となっている.著者等は,これまで,画像歪み解析処理を利用する新しい屈折率分布測定技術を開発してきたが,それらは母材の構造,すなわち製造方式に依存して選択するが必要であった.しかし,最近製造されている母材はさまざまな方式を組み合わせて作成されており,作成部分により構造も異なる.したがって,その構造がどんなんものか判断し,それに最適な測定法を選択して適用する必要がある.そこで,今回はそのような判断をインテリジェント方式と呼ぶこととし,その技術について検討を加え実用性を確認する.
著者
吉村 浩典 岩井 儀雄 谷内田 正彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.8, pp.1987-1997, 2007-08-01
被引用文献数
11

本論文では,屋外環境において照明変動に対してロバストかつ物体の影を除去した移動物体検出手法を提案する.この手法は明るさ可変背景モデルを用いて背景成分をカルマンフィルタにより連続して推定,更新を行うことで実現する.また移動物体の検出には,明るさ可変背景モデルを用いて色情報により識別を行う.更にMSC(Margined Sign Correlation:マージン付き符号相関)を利用して空間情報による識別も同時に行う.これにより更なる移動物体の検出精度の向上を図る.このシステムを実際に屋外において撮影された動画像に適用することで,カルマンフィルタによる背景成分の推定の様子を示し,移動物体の検出精度の評価とその考察を行う.
著者
長塚 豪己 鎌倉 稔成
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. R, 信頼性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.95, pp.9-14, 2008-06-13

本稿では,3母数ワイブル分布における2つの推定法を提案する.提案法は,最尤法が使えないケースにも適用可能であり,その推定の手続きは簡便である.また,数値実験により,提案推定量は,biasとRMSEの面において,修正モーメント法及び修正最尤法より概ね良い性質を持つことを示す.
著者
菊島 浩二 中川 慧
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CS, 通信方式 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.391, pp.1-3, 2011-01-20

著者らは,昨年,2009年9月電子情報通信学会ソサイエティ大会(新潟市)にて,気持ちを伝えることのできる「気持ち通信」を提案した.本研究会では,その後の著者らの研究成果を報告する.
著者
菅原 清子 堀口 寛子 沖田 善光 竹田 千佐子 鮫島 道和 高橋 勲 平田 寿 杉浦 敏文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.456, pp.57-60, 2005-12-02

経穴刺激と自律神経活動, 即ち身体の状態の間には密接な関係が存在することが指摘されている. 中でも足底の指圧は比較的手軽な手法であるため一般に広く行なわれており, その効果も看過できないものがある. 本研究では被験者22名に対して足底のツボを指圧することにより, 自律神経活動と脳波がどのように変化するのかを検討した. 自律神経活動を解析した結果により, 指圧中に交感神経の活動レベルが増加する被験者群(Sym-G)と副交感神経活動の活動レベルが増加する被験者群(Para-G)に分けて検討した. 指圧時には両群ともに脈波伝播時間は遅くなり, 心拍数は減少した. 脳波のα1帯域(8〜10Hz)パワーに関しては, Sym-Gで右足指圧時に増加したが, Para-Gではあまり変化が見られなかった. また脳波のα2帯域(10〜13Hz)パワーに関しては両群ともに同じような傾向が見られた.
著者
別所 克人 内山 俊郎 片岡 良治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MI, 医用画像 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.58, pp.79-84, 2007-05-17

従来のテキスト分類方式は、文書をベクトルとして表現し、コサイン類似度やユークリッド距離のような双方向性のある尺度を、ベクトル間の近さのベースと考えるものが多い。これに対し本稿では、カルバック・ライブラー距離という双方向性のない尺度をテキスト分類に導入する。単語ベクトル間の距離尺度としてカルバック・ライブラー距離を用いると、コサイン類似度を用いた場合と比べ、単語間の連想の様相が変わる。本稿では、この性質を利用し、従来のコサイン類似度やユークリッド距離をベースとする分類方式と、カルバック・ライブラー距離をベースとする分類方式を組み合わせる方式を提案する。評価実験の結果、組み合わせることにより、従来方式よりも精度が向上することを確認した。
著者
和田 和千 田所 嘉昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.1478-1486, 2005-12-01
被引用文献数
9

RCポリフェーズフィルタの性質を一つ明らかにし, その性質に基づいた設計手法を提案している.任意の帯域において, イメージの抑圧特性を任意のチェビシェフ誤差で0へ近似するのみならず, 通過域での振幅特性を平たんに近似することが可能となる.具体的な設計例を通して, 一つの多項式方程式を解くだけで容易に設計でき, かつ平たん性を改善できることを示すとともに, 自由度を生かして多様な設計に応用できることを述べている.
著者
長谷川 孝明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ITS (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.340, pp.19-24, 2008-12-04
被引用文献数
8

WYSIWAS(What You See Is What You Are Suggested) Navigationとは,神々に包まれて,困ったときに「こっちだよ」って教えてくれるような直感的な案内のことであり,サクッと行動可能な環境を実現する.本講演では,著者らのグループがシステム創成論に則り研究開発してきたWYSIWYAS Navigation(WyN)システムの実例を,その上位概念を示しながら紹介し,リアルワールドのIT(Information Technology)の意味を明らかにする.
著者
生岩 量久 中 尚 鳥羽 良和 戸叶 祐一 佐藤 由郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-I, エレクトロニクス, I-光・波動 (ISSN:09151893)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.249-255, 1996-07-25
被引用文献数
39

微弱なRF信号に応じて内部を通過する光の強度が変化する電源不要な光強度変調器を用いたTV中継局用信号伝送システムを開発・試作した. 本システムを使用すれば伝送線として光ファイバを使用でき, しかも受信所側には電源が不用であり, 送受信所間を電気的に完全に分離できるため, 雷害防止に大きな効果をもつ. また, 受信所側は受動回路のみで構成できるため, 信頼性・保守性の向上と低廉化を図ることができる. 本システムにおいては, 反射型を採用するなど光変調器自体の高感度化を図ると共に, 共振による電圧増幅を実現させ, 60dBμV/m程度の低電界においても, 50dB以上のCN比を得た. また, DG (微分利得) 1.8%, DP (微分位相)は,1.2゜と良好な性能を得た.
著者
辻 貴介 清水 明宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OIS, オフィスインフォメーションシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.225, pp.11-16, 2003-07-18
被引用文献数
3

インターネットやモバイル端末を利用した通信技術が普及し,お金や個人情報を扱うサービスも増加している.そのようなサービスでは,第3者による秘匿情報の傍受や悪用を防ぐために認証の技術が必要不可欠である.ネットワークを介した個人認証における脅威を防ぐ方法として,認証情報が毎回変わるワンタイムパスワード認証方式がある.しかしこのような方式ではサーバに認証情報等を蓄積しているため,stolen-verifie problemのような問題がある.我々は,安全なパスワード認証方式として提案されているROSI (RObust and SImple password authentication procotol)に対する攻撃法を考案し,さらに,処理コストを増やすことなくそれらの攻撃を解決する方法を提案する.この方式は,認証情報更新の必要がなく,S/Keyのように高いセキュリティを有する.
著者
小塚 洋司 重松 靖 細井 雅敬
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.1, 1996-03-11
被引用文献数
3

近年、我が国における癌患者の中で肺癌、乳癌患者数は増加する傾向にある。これらの癌に対し、これまでは主に外科的治療が行なわれてきた。しかし、特に乳癌の場合、癌の進行度によっては乳房温存療法が行なえない場合がある。このため放射線治療との併用としてのハイパーサーミア(温熱療法)の役割は大きく、その中でも無侵襲型で深部加温が可能な治療法が望まれている。また、筆者らはこれまで体内脂肪層を発熱させることなく深部加温を可能にする無侵襲型誘導加熱アプリケータを構成し、検討してきた。その結果、このアプリケータの無侵襲性と加熱特性が胸部癌に対し有効であると判断されるに至った.本報告では、このアプリケータを胸部癌に適用した場合の、アプリケータの配置や磁気遮蔽板の使用による加熱領域の制御法について理論、実験の両面から検討した結果について述べる。
著者
坂本 雄児 田村 顕成 畑 善之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.110-116, 1996-02-25
被引用文献数
9

近年,無線LANやコンビニエンスフォン, PHS (Personal Handy-Phone System)等の屋内での利用が想定される通信システムが実用化されている. これらのシステムにおいて,屋内の電波伝搬は,基地局の配置やプロトコルの選択等の設計において重要な問題となる.しかし,屋内の伝搬特性は不明な点も多く,今後の研究が期待されている.伝搬特性には空間的な特性と時間的な特性があり,屋内伝搬においでは送受信アンテナともに固定されていても変動(フェージング)が存在し, この原因は人間の移動によるものであることが知られている.本論文では人間の移動が時間変動に与える影響を測定し, この結果を報告する.また,その統計的な性質について議論し,屋外移動通信で用いられているフェージングモデルとの相違を明らかにする.
著者
河口 信夫 松原 茂樹 若松 佳広 梶田 将司 武田 一哉 板倉 文忠 稲垣 康善
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.523, pp.61-66, 2000-12-15
被引用文献数
2

本稿では、名古屋大学音響情報研究拠点(CIAIR)で構築中の実走行車内音声対話コーパスの設計と特徴について述べる。道案内や店情報検索をタスクとする162対話を対象とした特徴分析の結果、(1)ドライバーの発話速度は通常の対話音声に比べて遅く、5〜7(mora/sec)である、(2)ドライバーの発話におけるフィラーの出現頻度は、1発話単位あたしり0.33個、1秒あたり0.174個であり、通常の人間対人間の自由対話に比べて少ない、(3)車両の走行中と停止中とでは、発話速度や話し言葉に特有な現象の出現に関して差がない、(4)停止中に比べ走行中の発話には、感動詞、及び、文発声途中でのポーズの出現頻度が高い、ことなどが明らかになった。
著者
佐藤 吉秀 川島 晴美 佐々木 努 奥 雅博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.203, pp.1-6, 2005-07-15
被引用文献数
2

逐次増加するニュース記事中に含まれる話題情報を効率的に把握するため, 新鮮で可能な限り多くの幅広い話題情報を最新話題語と呼ぶキーワードの形態で抽出する手法について報告する.ニュース記事中の話題を扱うにあたり, 世間の注目度が高い出来事を伝える記事数が増加する「話題の広がり」と, 広がり状態が続報記事発行によって時間的に持続する「話題の伸び」の2つの側面に注目する.提案手法では, 話題の整理のために記事をジャンル分類・クラスタリングした後, 記事のタイムスタンプから算出する記事新鮮度, および記事間類似度を用いて各クラスタを代表する最新話題語を抽出する.ニュース記事(2164記事)を対象にした評価実験の結果, 提案手法はクラスタ中の新鮮かつ代表的な話題を表し, さらに受容性も高い語句を抽出可能であることを確認した.
著者
大島 哲 望月 理香 趙 晋輝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.68-76, 2011-01-01

本論文は,色空間のリーマン空間としての幾何学的特性に着目し,局所計量からリーマン正規座標系を構築することで,異なる色空間の間で主観色差を保存する写像を導出した.色弱補正への応用として,色弱者と一般色覚者の色弁別しきい値データから局所計量を算出した.色空間上のリーマン正規座標系を構築することで,任意2色間において,色弱者に一般色覚者と同様な主観色差感覚を与える色弱補正と色弱シミュレーション方式を示した.更に,リーマン正規座標系を,2次元の色度平面上だけでなく,3次元の色空間全体においても構築することで,色度と明度を同時に考慮した色差感覚の補正を試みた.最後に,補正効果の主観評価として,SD法による印象評価を行い,補正効果を確認した.
著者
笠尾 敦司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, no.2, 1995-03-27
被引用文献数
4 2

筆者は写真画像に写真の利用目的に合わせた表現を効果的に与える研究をおこなっている。適切な表現を加えるには、まず、ビットマップである写真画像を扱い易いように適切な大きさの部分画像に分割する必要がある。画像を分割する技術として5次元空間でのK-平均アルゴリズムを採用した。この手法は同じ領域に含まれる画素はお互い近い位置に集まるのでハンドリングし易い。画像に表現を加えるという目的からすると、表現上重要な特徴を領域が表現できなくていけない。たとえば顔の表情が表れていること、また、川の流れや、髪の毛が織りなす流れの部分を分割したときには、その流れの方向に合わせた細長い領域に分割されることなどである。本稿ではあらかじめ抽出しておいたテクスチャーの方向成分を考慮し領域変形可能なK-アルゴリズムについて考察する。
著者
田中 美栄子 元山 智弘 池原 雅章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.601, pp.13-18, 2004-01-19
被引用文献数
2

本稿では,進化的アルゴリズムによるエージェント・シミュレーションによって投資戦略を自動生成するプログラムを作成し,実際の金融データに適用して得た結果について報告する.ここでは投資戦略を,金融市場という刻々と変化する環境に適応しながら進化するエージェントとみなし,他のエージェントの活動結果によって生じる市場価格の動きを相手として様々な戦略を実行し,結果の可否に応じてその時点での環境(価格変動)に対して最適な戦略に進化してゆくものとした.まず,1ティック前の価格変化の符号の情報をもとに1ティック後の変動の符号を予測することから始め,合計7ティック程度まで参照する履歴を増やして行くと,3〜4ティック位までは予測率が次第に向上して約70%の予測率に達するが,5ティック位で飽和してしまいそれ以上は向上しないことがわかった.そこで直前の価格変動の符号のみの情報(「差分符号」とする)に加えて,現在の価格水準が過去の価格の平均に比べて高めなのか低めなのかという情報(「相対価格」とする)を加味して学習を行ったところ,予測率は特に向上せず「差分符号」のみの場合と同水準であった.一方「相対価格」のみの情報で学習を行った結果の予測率はやはり70%前後にとどまった.このように複数の情報を必要に応じて取り込むことのできるプログラムに知識ベースを与えてゆくことによって,より的中率の高い戦略の自動生成への土台ができたことになる.