著者
野口 孝俊 浦本 康二 鈴木 武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1-10, 2015 (Released:2015-03-20)
参考文献数
22

第二海堡は,明治期後半に建設された東京湾中央部に位置する軍事要塞跡である.要塞はコンクリート,煉瓦,石材,土により建設された土木構造物(地盤構造物)である.築造100年を経過している近代遺産であるが,軍事施設であるため設計・施工や完成断面などの建設記録が残されておらず,耐久性の検討を行うことが難しい状況にある.本稿は,第二海堡における煉瓦の特徴をとりまとめ,周辺類似施設と比較することで,明治期の東京湾砲台群建設における煉瓦の調達の関係を考察し,材料の特定に必要な煉瓦構造物の建設年次および材料調達を推測した.
著者
星野 さや香 柴山 知也 Miguel ESTEBAN 高木 泰士 三上 貴仁 高畠 知行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_994-I_999, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
8
被引用文献数
1

気候変動が現在のペースで100年にわたり継続したと仮定して,将来の気象条件下で強大化した台風が日本に来襲した場合に発生する高潮の危険性を予測し,沿岸域防護手法を提案した.東京湾を例として検討し,算出した高潮より標高の低い地域について,失われる資産額の算出を行った.また,算定した最高高潮水位を水準とした防潮堤の嵩上や新設,堤外地の地盤高の嵩上にかかる費用の算出を行った.約100年後の気象条件下で,190cmの海面上昇を考慮した場合,東京港・川崎港・横浜港には標高にしてそれぞれ4.5m・4.0m・3.9mの高潮高を推算した.これらの標高以下の地域が全て浸水したと想定すると,東京では75兆円,神奈川では4兆円を越える被害が出る.強大化した台風が防潮堤や水門の機能を停止する場合を想定して,将来的に荒川流域の高潮防護計画を確立する必要がある.算出した高潮高への対策として胸壁防潮堤の新設・堤外地の嵩上を行うと,直接的費用は東京港において約2,600億円,川崎港・横浜港において約1,200億円となる.
著者
由比 政年 大谷 直也 間瀬 肇 金 洙列 楳田 真也 Corrado ALTOMARE
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_739-I_744, 2019 (Released:2019-10-17)
参考文献数
14
被引用文献数
2

不規則波を対象とした打上げ・越波統合算定モデルIFORMは,複雑断面形状に対応可能で適用条件の制約が小さく,多様な設計条件を網羅できる特長を有している.本研究では,IFORMの越波量算定式を拡張することにより,従来過小評価傾向が見られた条件における推定精度を向上させることを試みた.拡張にあたっては,従来,適用域全域に渡って単一式で表現されていた最大打上げ高と越波量の関係について詳細な再検討を行い,相対天端高に応じて分割された3つの適用域それぞれに対して最適な表現式を誘導・接続することで越波量算定式を再構築した.拡張モデルによる推定越波量を国内外で行われた水理実験結果と比較して適用性検証を行い,拡張型IFORMによる推定値は,広い条件に渡って実験結果を良好に再現可能であることを確認した.
著者
赤倉 康寛 瀬間 基広
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.369-382, 2010 (Released:2010-08-20)
参考文献数
28

中国・インド等の旺盛な資源需要を背景に,石炭,鉄鉱石,穀物等のドライバルク貨物を輸送するバルクキャリアの大型化が,急激に進展している.我が国産業の国際競争力の維持・強化や,より安定した食糧原料の供給のためには,この大型化動向に対する我が国港湾の対応方策を,十分に検討しておく必要がある.一方,ドライバルク貨物輸送は,特定荷主のための不定期輸送であり,その情報は非常に限られている.以上の状況を踏まえ,本研究は,バルクキャリアの大型化動向の分析,我が国港湾施設の輸送船大型化に対する制約状況の把握,大型化による輸送コスト削減効果の算定により,我が国への三大バルク貨物輸送船の大型化に向けた方策について考察したものである.
著者
高木 泰士 呉 文潔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1-6, 2015 (Released:2015-06-20)
参考文献数
26
被引用文献数
3

最大風速半径は高潮解析における重要なパラメータの一つである.本研究では,最大風速半径の推定手法をレビューするとともに,新たな手法を提案した.中心気圧や最大風速を使用する従来の手法は,最大風速半径の平均的な傾向を表すが,ばらつきが大きく,高潮を過大・過小推定する可能性が高い.沖縄や鹿児島の島々には10ヶ所もの気象観測所が存在し,陸地の影響をあまり受けていない台風時の気象データを入手できる.本研究では,観測所データとベストトラックデータを分析することで,暴風域半径が最大風速半径の推定に有効であることを示した.暴風域半径を用いる方法は,推定誤差が小さく,より信頼性の高い高潮解析が期待できる.本手法は,日本の他,中国や台湾,フィリピンなど日本南方海域で発生する規模の大きな高潮の予測に特に有効である.
著者
関 克己 小林 潔司 湧川 勝己
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F5(土木技術者実践) (ISSN:21856613)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-19, 2016 (Released:2016-02-20)
参考文献数
17

災害応急対策にあたっての意思決定とこれを支援した災害対策現地本部の記録が残されている2000年有珠山噴火を対象に,災害危機管理ともいえる住民等の生命に直結する住民避難等を対象とした災害応急対策の意思決定の構造を明らかにする.その際,意思決定にあたって重要な役割を担う災害のリスク評価及び災害応急対策検討とそれぞれを担う専門家の役割を明らかにする.その上で,災害時の住民避難等に関する公的な意思決定に必要な条件,判断基準や意思決定の正統性について検討する.さらに,これまで議論されることの少なかった災害応急対策の意思決定に関する研究を通じ,防災・減災の強化に向けた災害応急体制のあり方に関して提案する.
著者
阿部 郁男
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_301-I_306, 2017 (Released:2017-10-17)
参考文献数
10

現在,南海トラフ地震による巨大津波の波源モデルが公表され,このモデルに基づく被害想定により,防災対策が進められている.しかし,駿河湾内には1498年の明応東海地震によって,現在の被害想定を超える津波痕跡が指摘されており,今後の津波対策の見直しのためには,それらの津波の発生および伝播状況を明らかにすることが重要である.そこで,本研究では,これまでに提案されている波源モデルの検証を行い,既存のモデルが駿河湾内の津波痕跡記録を再現できないことを示した.さらに,駿河湾内に局所的な津波の発生条件を検討し,駿河湾内で局所的に20~43mの津波を発生させることにより,これらの津波痕跡を概ね再現できることを示した.
著者
福井 次郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木史研究論文集 (ISSN:13495712)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.165-175, 2004

Jiun Masuda (1883-1947) was a bridge designer representing Japan who played an active part in the Showa period of prewar days from the end of Taisho period (1920th-1930th). However, few documents remain from that time, but Masuda has been known only to a small group of specialists. In Fall 2002, it became clear that many reports and drawings for bridges that Masuda designed are saved in the Public Works Research Institute. In this paper, the achievements of Masuda were reviewed through these new documents and the actual bridges he designed. The research clarified that besides the well known bridges, Masuda had designed about 20 more bridges, subway stations, docks, quay walls etc. Moreover, it was revealed that he worked with very capable staff, designed the bridge of a variety of structure types, etc. Finally, the future application of these documents was discussed.
著者
南波 宏介 白井 孝治 坂本 裕子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.63A, pp.1163-1176, 2017 (Released:2018-06-08)

In the case of impact analysis to verify structural integrity of existing steel structures of nuclear power plants (NPPs) against tornado missiles, one of the strain-base criteria regarding aircraft impact on NPPs described by US Nuclear Energy Institute is currently used. However, the technical bases for this methodology are not disclosed. In this report, to clarify a way to decide the response values and the penetration conditions for a steel plate when a tornado missile crashes steel plate and verify an accuracy of design methodologies, impact tests with the pipe shaped missile of 50mm diameter and 4mm wall thickness were executed at impact velocity 49m/s.
著者
高木 泰士 Luc HENRY 水落 拓海
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.1-9, 2019 (Released:2019-02-20)
参考文献数
21

倉敷市真備町では西日本豪雨で堤防が決壊し,約2100世帯が全壊した.被害拡大の一因として本支川合流部の背水による水位上昇が指摘されている.一方,高梁川河口は河川改修や臨海開発で川幅が著しく広がっており,瀬戸内海でも日潮差が特に大きい場所に位置するため,潮汐が河川水位に影響した可能性も無視できない.本研究では,洪水時に感潮域が潮止堰の上流側に延伸する可能性や,2018年豪雨で河川水位上昇と上げ潮の時間帯が一致していたことなど,潮汐の影響を各種解析で示した.また,高梁川沿いに現地調査を行い,上流では10m以上も水位上昇したにも関わらず,河口では満潮位程度の水位であったことを明らかにした.以上より,潮汐と河川水位の関係性を考察し,洪水に及ぼす海からの影響について指摘した.
著者
鈴木 高二朗 竹田 晃 下司 弘之 亀山 豊 清水 勝義
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.331-335, 2005-10-07 (Released:2010-06-04)
参考文献数
3

東京湾フェリー “かなや丸” に設置されたADCPによって, 東京湾口の流向流速を高密度でかつ連続的に得られている. しかし, フェリーが東京湾を出入りする船舶を避けて航行するため観測位置が固定しないため, 通常の調和解析を用いて潮汐成分と残差流成分を分離するのが困難だった. そこで, 3次の空間的な多項式関数として取り扱う解析手法 (3次元調和解析) と標準航路に流速ベクトルを射影することでフェリーの蛇行を無視した解析手法 (射影断面での調和解析) を用いて調和定数を算出した. 観測データからこれらの手法で得られた潮汐成分を取り除くことで, 黒潮系暖水の流入等の残差流成分の推定が可能となった.
著者
足立 正夫 野口 竜也 小村 紘平 西田 良平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.97-103, 2009 (Released:2011-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究の対象とする島根県東部の平野部では,過去の被害地震において震源から離れているにもかかわらず,被害が生じた地域であることが報告されている.その原因として地盤震動特性,地盤速度構造が少なからず影響したものと考えられる.そこで出雲平野および松江平野において微動アレイ観測および重力異常データに基づき推定された地盤構造について検討を行った.微動データによるS波速度構造と重力データによる2次元解析結果と比較すると,S波速度2000~2500m/s層までの深度と近い値を示すことが分かった.この結果を踏まえて3次元解析を行い,面的に基盤構造を把握することができた.
著者
萩田 賢司 森 健二 横関 俊也 矢野 伸裕
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1023-I_1030, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
11
被引用文献数
2

交差点における自転車事故の実態を把握するために,事故当事者の進行方向別の事故発生頻度を明らかにした.千葉県東葛地域の交差点自転車事故を分析対象として,緯度経度情報,当事者の進行方向矢印と事故類型などをもとに,自動車と自転車の相対的な進行方向を求めた.その結果,信号の有無により自転車事故の発生形態が大きく異なっており,信号交差点では,自転車と平行して道路を走行している自動車の右左折に伴う事故が大半を占めていた.無信号交差点では,自動車が交差点を通過する際の手前側の交錯点を走行している自転車との事故が多発していることが示された.また,夜間においては,自動車は交錯する自動車と逆方向から進入してくる自転車と衝突しやすいことが示された.
著者
藤井 達哉 岡野 圭吾 谷口 守
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.29-37, 2019 (Released:2019-01-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

我が国では,地方部から東京都への人口一極集中が続いており,地方部の衰退や我が国の人口減少を加速させる要因の1つであると指摘されている.この人口一極集中は,主に大学への進学と就職時に発生しており,その両方に関わる大学の存在は人口移動の施策で重要視されてきた.本調査報告では,大学への進学時と大学生の就職時の地元定着の現状を個々の大学に着目して分析している.分析の結果,1) 大学への進学から就職の間における人口流出入は,その閉鎖性や規模感も含めて地方毎に違いがあることが明らかとなった.2) また,東京都に立地する大学は多くの大学が人口流入に寄与しており,現在行われている施策のみでは,東京都への人口一極集中を抑制することが困難である可能性が示された.
著者
中前 茂之 高野 伸栄 大川戸 貴浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F4(建設マネジメント) (ISSN:21856605)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_39-I_52, 2014 (Released:2015-02-28)
参考文献数
19
被引用文献数
1

平成に入ってから長く続いた少雪傾向が一変し,近年は豪雪が頻出する傾向がみられ,財政の厳しい市町村にとっては豪雪への対応は財政上軽い負担ではない.除雪事業の特徴として,あらかじめ降雪の量を決定して予算を立てることが不可能である上,一旦豪雪が発生した場合は市町村は除雪費を否応なく確保しなければならず,限られた市町村財政では賄いきれない恐れがある.しかしながら,国によるいくつかの支援措置はあるものの,国と地方の負担・分担のルールも明確に定まっていない.そこで,本稿では,これまでは直轄国道や道府県管理道路について除雪費推計手法として提案してきた除雪単価逓減則を市町村道にも適用することを検討するとともに,市町村の豪雪時における財源確保の状況や想定する負担限度を明らかにし,その際の課題を整理検討する.
著者
高橋 浩一 松本 伸 大河内 保彦 龍岡 文夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
no.777, pp.53-58, 2004-12-20
被引用文献数
4

りんかい線大井町駅部は, 用地上の制約から, シールドトンネルのセグメントの一部を撤去し, 隣接する立坑間を地中開削し, 接合して構築した. この際下部シールドトンネルが, 水圧300kN/m<sup>2</sup>を超える東京礫層に位置するため, 止水対策が最重要視された. 工期上の制限から, 薬液注入工法を採用し, 注入を1次, 2次, 補足注入の三段階とし万全を図るとともに, 注入効果を比抵抗トモグラフィ等で確認した. 確認試験結果は注入の良好性を示し, 補足注入も1次注入の1/10以下であった. さらに, 漏水のリスク低減のためのディープウェルを計画し, 三次元浸透流解析で事前検討を行なった. その結果, 大きな漏水もなく, ウェルの水位低下量, 地表面沈下等も予測と矛盾のない範囲で安全な施工が達成された.
著者
山口 正隆 畑田 佳男 野中 浩一 大福 学 日野 幹雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_131-I_135, 2011 (Released:2011-11-09)
参考文献数
5

Shallow water wave hindcastings are conducted in the Seto Inland Sea, Ise Bay and Tokyo Bay for each of the so-called 3 giant typhoons in the Showa Era (Muroto Typhoon in 1934, Makurazaki Typhoon in 1945 and Isewan Typhoon in 1959). The computations follow the spatial distribution of time-dependent wave height and maximum value. The sea wind distributions given as the driving forces are estimated using a method which transforms the land-based measurement wind data into the wind data at sea or coastal stations and applies a spatial interpolation technique to the data. The main conclusion is that any of the typhoons may have generated the largest wave height over the past 90 years in the sea area of the typhoon path.
著者
内山 雄介 多田 拓晃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_211-I_216, 2015

海面気圧による吸い上げ効果およびバルク法熱収支スキームを組み込んだJCOPE2-ROMSダウンスケーリング領域海洋モデルを構築し,我が国に上陸し甚大な土砂災害等をもたらした2014年台風18号,19号を対象とした広域高解像度再解析を行った.海上風,海面気圧,海面フラックスには,台風を含む詳細な気象場を高精度で表現可能な気象庁GPV-MSM再解析値を与えた.観測水位との比較を通じて本モデルが高潮偏差をより正確に再現できることを確認したのち,周防灘および沖縄本島における高潮偏差発生機構の差異について検討した.さらに,台風接近・通過に伴う広域海洋応答について調査し,瀬戸内海の海水流動構造が短期的に大きく変化することを示すとともに,外洋における鉛直混合の強化とそれに伴う水温低下の発生,台風経路との相対的な位置と慣性共鳴との関係などについて評価した.