著者
小沢 浩
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は, ライン生産からセル生産への移行過程に関する概念モデルを精緻化するために, 製造作業に要する動作時間を測定すること, および, 既にライン生産からセル生産へ移行した工場における以降のプロセスに関する事例を整理することを目的として行われた。まず, 動作時間の測定については, これを行ったものの, 実験できる範囲の製造工程では, 簡単な作業の再現しかできないこと被験者となる作業者が限られていることなどから, 常にセル生産が有利であるという結果しか得られていない。しかしながら, 作業時間の平均ではなく, 作業者ごとの作業時間のバラツキをコントロールする方法がセル生産とライン生産では全く異なることに気がついた。そしてこれにもとづいて, 生産形態と業績評価法・行動規範が適合していなければならないという事実に気がついた。具体的には, 「産出/投入」として計算される能率概念は, セル生産では適用可能であるが, ライン生産でこの概念を適用すると工程が混乱することが論証できた。つまり, 一般的な感覚における「能率向上」が適合するのは, セル生産においてであり, ライン生産においてこれを目指すことは悪い効果をもたらしかねないということである。この知見は, 私がこれまで行ってきたJust-In-Time生産の解釈にも新たな光を投じるものである。この成果は, 標準原価計算と関連づけて, 第67回日本会計研究学会において報告した。セル生産と関連づけた研究は, 2009年6月に, 組織学会でも報告し, 論文にまとめる予定である。また, もう一つの課題である事例の収集・整理については, 十分な成果を得られていない。
著者
波多野 学
出版者
名古屋大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

C2対称性をもつシンプルで安価なキラルビナフチル化合物は、配位子や有機分子触媒として多くの不斉触媒反応で用いられてきた汎用性のある不斉源である。特に、有機分子触媒におけるブレンステッド酸性の強さは触媒活性を特徴づける大きな要因であることから、研究代表者はキラルビナフチルジスルホン酸(BINSA)に着目している。これまでに、初めてのキラルBINSAの不斉合成とそれらを用いる不斉触媒反応の開発を重ねてきた。本研究では、これまでの研究開発を基盤として、合成が困難であったキラル3,3’-ジアリールビナフチルジスルホン酸を創製し、それらを高活性不斉触媒とする新たな触媒反応開発が研究目的である。特に、3,3’位へのアリール基導入により、立体及び電子的効果で従来よりも多様性のある精密触媒設計が可能となる。具体的には(1)3,3’-Ar2-BINSAによるシンプルな精密触媒設計、(2)キラル3,3’-Ar2-BINSAアンモニウム塩触媒の精密設計、(3)自己組織型キラル3,3’-Ar2-BINSAの精密触媒設計を行い、独創的な不斉有機触媒反応へと展開した。
著者
古橋 忠晃 津田 均 小川 豊昭 鈴木 國文 北中 淳子 堀口 佐知子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本において、ひきこもりと呼ばれる状態にある青少年の数は1970年代から徐々に増加し、現在その数は日本中で80 万~140万人とも言われている。フランスでは青年のひきこもりが近年出現してきたと言われている。さらにフランスでは日本由来のオタク文化やインターネット文化の隆盛も顕著である。これらの日仏の「ひきこもり」について両国の研究者チームで学際的に研究をおこなった。日本の青年のひきこもりが15例、フランスの青年のひきこもりが7例集められた。それらの症例について、家族背景、経済状況、社会文化的背景、個々の精神病理、精神症状の有無について精神医学的、社会学的、人類学的、哲学的、心理学的な観点で検討した。また、事例を離れて、「ひきこもり」そのものの現象について、両国のそれぞれの観点で、社会学的、人類学的、精神医学的、哲学的観点で考察を行った。
著者
川島 富士雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、世界貿易機関(WTO)に加盟した東アジア諸国、特に中国、カンボジア及びベトナムにおけるWTO上の義務・約束の履行状況(市場開放)と市場経済化・競争促進に向けた国内法整備状況(市場経済化)の双方を同時並行的に検討し、両者の相克・連動といった相互作用を明らかにすることで、グローバル経済時代における「市場」をめぐる国内法及び国際法的諸問題の相互関係を解明することを目的とするものである。3ヵ国のうちカンボジアとベトナムにおける競争法は未制定又は運用が活発でないため研究の主な対象となり得なかったが、2008年8月より施行された中国独占禁止法の運用状況(民事訴訟を含む。)及びその課題をつぶさに把握し、かつ、表面的に現れてくる法執行現象の背景を明らかにすることに成功したほか、これらを国際経済法上の法現象を合わせて研究することで、「国家資本主義」又は「国家積極主義」とも批判的に描写される中国の政府と市場の関係、とりわけ国有企業等に対する優遇策に対する法的規律という今後の研究において重要となる視点を抽出することに成功した。本研究の具体的な成果として、8本の論文、6回の学会発表及び2冊の共著がある。
著者
中島 務 曾根 三千彦 三澤 逸人 服部 琢 鈴木 亨
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

内耳への60mWソフトレーザー照射が耳鳴の抑制に効果があるかどうか二重盲検にて検討した。耳鳴の大きさ、持続時間、音色、苦痛度の変化にレーザー照射群とプラセボ照射群の間に有意差は認られなかった。メニエール病におけるゲンタマイシン鼓室内注入療法は、広く世界的に行われるようになってきている。我々は、、モルモットにおいてゲンタマイシンを蝸牛窓または鼓室内に投与し、基底回転の外リンパにおけるゲンタマイシン濃度を経時的に測定した。外リンパゲンタマイシン濃度は投与後1〜2時間後にピークとなり半減期が2〜数時間と非常に早いものであった。ゲンタマイシン鼓室内注入療法後、麻痺性眼振が出ても、その後前庭代償がおこって日常生活で問題となることは極めで少ない。高齢者では前庭代償がおこりにくいが、若い人でも直線加速刺激を行うと正常者とは異なる垂直方向の眼球の動きを前庭代償が完成されたと思われた時期においても観察された。モルモットにおいてシスプラチン内耳毒性に対するαトコフェロールの抑制効果を確認した。また、プロスタグランディンE1を蝸牛窓に置くと蝸牛血流が上昇した。内耳機能の評価に内耳血流状態の把握は重要である。レーザードップラープローブの先端を蝸牛骨壁にあてると、ラットではレーザードップラー出力の30〜40%が骨の血流成分で蝸牛血流とは別に考えなければならないことがわかった。人工内耳手術では、蝸牛骨壁に穴をあけるので、この穴にプローブをさしこんで血流測定をおこなえば可能な限り純粋に蝸牛血流の測定ができる。現在までのところ人工内耳手術を受けた20人にこのような方法にて蝸牛血流の測定を行ったが6人(特発性感音難聴2人、原因不明の先天聾2人、内耳道狭窄1人、髄膜炎後難聴1人)において顕著な蝸牛血流信号の低下を認めた。
著者
金田 英宏
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

一般に宇宙望遠鏡の光学試験では、レーザー干渉計を用いて、平面鏡で光を折り返したオートコリメーション法による波面誤差測定を行う。しかし、1mを超える大きな望遠鏡では、同等サイズの平面鏡の製作が非常に困難である。そこで、小さな平面鏡を動かして多数回の部分開口データを測定し、それらを縫い合わせることで、開口全面の波面誤差を得る。本研究では、この原理に基づいて、望遠鏡を試験するためのソフトウェアアルゴリズムを開発し、実験で測定方法の検証を行った。また、面精度の悪い平面鏡を用いた時の、結果への誤差伝搬を評価し、その誤差を改善する新アルゴリズムの提案を行った。実際に試験を行い、新手法の有効性を実証した。
著者
MON NaingNaing (2008) 浜口 道成 (2007) MON Naing Naing
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

非受容体型チロシンキナーゼであるFocal adhesion kinase(FAK)はMMP-9の産生亢進を含む様々な細胞活動に関与しており、癌の浸潤、転移を促進する。前炎症性サイトカインであるIL-1βはMMPの分泌亢進を促進することが知られている。そこで線維芽細胞と乳癌細胞株MCF-7におけるIL-1β依存性のMMP-9分泌に必須のシグナル経路について研究を行った。線維芽細胞と乳癌細胞株MCF-7ではIL-1βによりFAKの活性化とMMP-9の産生か起こることが明らかになった。今までの研究によりMMPは細胞外基質を分解し腫瘍の浸潤を促進することが知られている。またIL-1βはMCF-7細胞においてin vitroの浸潤能を亢進させた。IL-1βがどのようにFARを活性化するのか解明するためにIL-1受容体アクセサリー蛋白(IL-1RAcP)とFAKの複合体形成を調べた。IL-1β刺激後IL-1RAcPがFAKと結合することが分かった。またIL-1β依存性のMMP産生に必要な候補分子であるSrcのリン酸化がIL-1βによって起ることが分かった。IL-1β依存性のMMP-9産生と腫瘍の浸潤にFAKのシグナルが必要であるということをさらに確認するためにMCF-7細胞においてFAKをsiRNAで抑制した場合の効果について検討した。FAK siRNAによってMCF-7細胞ではほぼ完全にIL-1β依存性のMMP-9産生と腫瘍の浸潤が抑制された。以上の結果から乳癌細胞におけるIL-1β依存性のMMP-9産生とそれによって引き起こされる腫瘍細胞の浸潤にはFAKが決定的な役割を果たしていることが明らかになった。多くのサイトカインによって形成されている腫瘍の微小環境は腫瘍の進展に欠かせないものである故、今回の結果からFAKは腫瘍の進行を阻害する重要な標的分子になりえると考えられた。
著者
高木 弘 小林 章二 岡田 秀親 中島 泉 磯部 健一 林 衆治 KOBAYASHI S
出版者
名古屋大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1994

異種臓器移植において生ずる超急性拒絶反応を抑制するためには、異種抗原、自然抗体、補体系の制御が重要である。本研究では、補体制御因子遺伝子は、同時に複数遺伝子導入した方が、異種免疫反応抑制効果が強いというin vitroでの実験結果を基に、DAFおよびHRF20遺伝子を同時に導入したダブルトランスジェニックマウスを作成し、機能解析を行った。そして、この結果を基にDAF,HRF20,およびmembrane cofactor protein(MCP)を導入したトランスジェニックブタを作成した。異種抗原Gal α Galに対する対策として、マウスembryonic stem(ES)細胞でα(1,3)GT遺伝子のダブルノックアウトを行い、機能解析を行った。また、α(1,2)FT遺伝子を異種培養細胞へ遺伝子導入した場合、Gal α Gal抗原の発現が抑制され、異種免疫反応が抑制されるというin vitroの実験結果を基に、a(1,2)FT遺伝子導入トランスジェニックブタを作成した。したがって、補体制御因子遺伝子を発現し、かつ異種抗原GalaGalを発現しないトランスジェニックブタの作成は、異種臓器移植の臨床応用にとって重要であると考えられた。
著者
加納 修
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

王の滞在地の特徴は、ゲルマン国家によってかなりの相違が見られる。メロヴィング王国ではしだいに農村の宮廷が好まれるようになっていったのに対して、西ゴート王国とランゴバルド王国では王は都市に住み続けた。これに対して、宮廷組織については、相違も見られるが、興味深い共通点も確認される。とりわけ、王国建設直後のゲルマン人の王たちが、王に従属する非自由人に重要な任務を委ねていたことである。こうした統治の手法は、既存の勢力、ローマ人貴族やゲルマン人有力者層の勢力拡大を抑制する目的を持っていたと想定される。
著者
管 宇
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

In year 2014, the application of identification over obstacles by applying terahertz technique was explored. None of the existing identification techniques have quite met the needs of acquiring coded information behind the package material or obstacles as well as keeping low cost and good countability. Terahertz (THz) radiation can penetrate many commonly used packaging materials, making it suitable for nondestructive and noninvasive inspection and imaging. Such identification tag operating at THz-wave region is expected to be a solution to practical industrial need.I started this research work by the development of a novel design of surface metal antenna worked in THz-wave region, continued from my last year’s study. Followed by that, I came to an idea of developing a printable THz-barcode system with a dielectric coating layer on the back-side to the common barcode system to construct an etalon cavity, which should operate behind a layer of packaging. This allows us to read the image of a barcode using THz radiation even when the dimensions of the low-frequency beam are larger than the width of the bar. Due to the cheap price of the ink applied for printing barcode patterns, low-cost of such system is also achieved. By demonstrating the superior performance of my design, I have published a paper on international journal and presented it in an international conference held in USA.
著者
川口 潤
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

人は,日常場面において, 過去の音楽や流行ったものと出会うと,単に過去の記憶を想起するだけでなく,「なつかしさ」という複雑な感情を伴った心的状態におちいることがある.本研究はこの点について,以下の側面から検討しようとするものである・ 「なつかしさ」はどのような心的過程を経て生まれてくるのであろうか・ 記憶の機能が深く関わっていることは確かであるが,記憶の進化から考えて「なつかしさ」どのような働きをしているのであろうか本年度は,以下の点について検討を進めた1) なつかしさ(nostalgia)喚起の時間的特性の検討過去約15年にわたるヒット曲を用いてなつかしさ感情が迅速に生起するかどうかを検討した.その結果,音楽提示から3秒弱でなつかしさ感情が生起すること,また自伝的記憶の詳細さ想起との相関は有意であったものの,その成分ですべてが説明されるわけではないことが明らかとなった2) なつかしさ感情生起の神経基盤に関する実験的検討なつかしさ感情生起の際にどのような脳活動が生じているかを明らかにするために,昨年度に引き続き実験参加者を増やしてfMRI実験を実施した.その結果,音楽提示によって自伝的記憶の想起と関わる部位の活動が高まること,またなかでもなつかしさを強く感じた場合と感じていない場合とで異なった領域の活動が見られることが明らかとなったこれらの成果について,Psychonomic Society大会において「Brain activity during feeling nostalgia and retrieving autobiographical memories : An fMRI study using music excerpts」と題して発表を行った.また,なっかしさがどのような心理的機能を持っているかという側面について,「ノスタルジアとは何か:記憶の心理学的研究から」という論文にまとめた
著者
古橋 武 吉川 大弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

文字を想起するだけでコンピュータに入力できる日本語入力システムを開発した.信頼度に基づく自動再送要求法, 誤り関連電位に基づく誤り訂正法, 信頼度に基づいて候補刺激を絞る選択的自動再送要求法を提案した. 途中までの入力から次の文字を予測して変換候補を提示する手法, 次の文字への遷移確率を判別に利用する手法を提案した. 実験により文章入力時間の削減効果を確認した.追加学習法を提案し,一週間後の再開時に事前学習が要らないことを確認した
著者
垣谷 俊昭 倭 剛久
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2000

昨年度までに、タンパク質中のすべての原子対間の電子トンネルカレントを分子軌道法で求め、大きなトンネルカレントを持つ原子対をつなぐことによって、電子移動経路を表現した。今年度は微視的な原子間トンネルカレントに中間的な統計平均操作を施すと、電子移動経路の新たな性質が得られることを見出した。具体的には、Ru-modified azurinを用いる。ドナーは本来のazurinが持っているCu+で、アクセプターは部位特異的に置換したHisに配位したRu3+である。このazurinを300Kの熱揺らぎに晒せて、さまざまな構造を集める。各構造毎にトンネルカレントを書き、電子トンネル因子|T|を計算する。そうすると、|T|は2桁の揺らぎを示した。電子移動速度は|T|の2乗に比例するので、4桁の揺らぎを示すことになる。異常に大きな揺らぎである。これは6箇所の部位特異的に置換したHisに配位するRu3+アクセプターにすべて当てはまった。したがって、ユニバーサルな性質である。その原因をしらべると、大きな|T|を持つときにはトンネルカレントの向きが揃って、スムースな流れにまっている。逆に、|T|が小さいときには、トンネルカレントがスムースに流れているとはいえない。定量化するために、平均的にカレントが行きつ戻りつする回数を指標Qで表し、destructive interferenceの程度を表現した。さまざまな蛋白構造で求めた|T|とQの相関を求めると、|T|はQに逆比例の関係があることがわかった。これから、Qを調節することによって、電子移動速度を最大4桁程度制御する道が開けた。
著者
林 亜希子
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、反社会的な嘘(登場人物の嘘によって、他者が被害を受けるシナリオ)と向社会的な嘘(登場人物の嘘によって、他者が利益を得るシナリオ)という目的の異なる2種類の嘘に対して被験者がどのように道徳判断をするのかについて明らかにすること、さらに、それらの嘘の道徳判断に関与する神経基盤についてfMRI(functional magnetic resollance imaging)を使用して検討することであった。本研究では、同じ嘘という行為でも、目的に応じて道徳判断が異なり、さらには、それぞれの嘘に対する神経基盤も特異的なものであったという結果を得ることができた。今年度は前年度に引き続き、実験データの考察や解釈のため数多くの論文の精読をこなし、国際雑誌への投稿を目標に英語論文の作成を行った。投稿結果は、差し戻しであったが、reviewerから本研究に対する問題点やアドバイスを頂いた。特に、論文中に記載されている言葉の使い方や解析方法の改善及び追加解析に対する指摘が多かったため、その点の改良を行った。現在、再投稿を行い結果待ちである。道徳判断や道徳的行動に関わる脳活動を詳細に調べることは、人の意思決定などの社会行動における脳のメカニズムの一端を明らかにすることが可能になると考えられる。また、社会的行動の異常、特に道徳的な判断・行動の異常を呈する脳損傷患者の病態の理解に貢献するものと考えられる。本研究の成果が、一部の認知症患者にみとめられる反社会的行動の神経機構の解明や、将来的には症状の早期診断等の一助となることに期待する。
著者
榊原 千鶴
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は、明治期の女性教育の内実を明らかにすることである。2010年度~2013年度研究期間中の成果は、1.「〈知〉の継承からから考える明治期の女性教育 ―先駆者の気概に学ぶ―」と題した『文部科学教育通信』(ジ アース教育新社)誌上での連載(全14回中、本研究期間分は10回)、2.近代における中世文学の再生に関する論文の執筆、3.1に大幅な加筆を行い『烈女伝 ―勇気をくれる明治の8人―』として三弥井書店より刊行した。
著者
浅川 晋 齋藤 雅典
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

有機栽培・冬期湛水が土壌微生物群集に及ぼす影響を明らかにするため、冬期湛水を含む有機栽培試験水田圃場を対象に、土壌微生物群集を分子生態学的手法により解析した。水田作土中の土壌微生物(細菌、糸状菌、メタン生成古細菌)の群集構成と存在量は有機栽培と冬期湛水により大きな影響を受けなかった。これらは水田生態系の持続性や恒常性を土壌生物性の面から示唆する知見であり、環境保全や生物多様性の保全といった水田の機能を維持するという視点からは望ましいと考えられた。
著者
関谷 龍一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

PLAGL2(Pleimorphic adenoma gene like-2)は卵巣癌で発現が見られる転写因子である。今回卵巣癌におけるPLAGL2の機能解析を行った。卵巣癌細胞においてPLAGL2を抑制させると細胞骨格および細胞遊走能に変化を認めることが分かった。この変化はアクチン骨格の構成に必要なRhoA、Rac1などのRho GTPaseの活性が関与していることが示唆され、特に細胞骨格にはRhoA、細胞遊走にはRac1が強く関与していた。また、Rac1の変化にはRacに特異的なGTPae結合タンパクであるCHN1(chimerin1)も関与していることが示唆された。
著者
市原 学 那須 民江 上島 通浩 前多 敬一郎 束村 博子
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

18匹の雄F344ラットを6匹ずつの3群にわけ、それぞれに1-ブロモプロパン1000ppm、2-ブロモプロパン1000ppm、新鮮空気を8時間曝露した。16時間後に断頭し、精巣を取り出し、液体窒素で急速凍結した。液体窒素にて冷却しながら凍結精巣をハンマーにて粉砕し、凍結粉末からRNA抽出キットを用いてRNAを抽出した。電気泳動にてRNAの分解がないことを確認し、ラット精巣用DNAマイクロアレイ(DNAチップ研究所)を用いて遺伝子発現の変化を調べた。5082遺伝子中、263の遺伝子が1-ブロモプロパンと2-ブロモプロパンの曝露で共通して抑制されており、それには、S100,Creatinine kinase、glutathione S transferaseが含まれていた。37の遺伝子は1-ブロモプロパン曝露のみによって抑制され、119の遺伝子は2-ブロモプロパン曝露によってのみ抑制されていた。選択した遺伝子の遺伝子発現変化をリアルタイムPCRにより確認した。また、アロマターゼ遺伝子は1-ブロモプロパン,2-ブロモプロパンの曝露により発現が抑制されていた。1-ブロモプロパン曝露によって、ナトリウムチャンネル関連遺伝子の誘導、ATP結合、イオンチャンネル系の抑制、2-ブロモプロパン曝露により、DNA損傷関連遺伝子が誘導されており、1-ブロモプロパンが神経毒性が強く、2-ブロモプロパンが精租細胞アポトーシスを誘導するという過去の実験結果を説明するものであった。
著者
森 博嗣 黒川 善幸 谷川 恭雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究では、複合材料であるコンクリートの変形・破壊性状をミクロな立場から解析的に取り扱い、従来、実験的な情報の整理によってしか得られていないコンクリートの構成則を、理論的な立場から検討し、より汎用的な力学モデルを構築することを目的として、粘塑性サスペンション要素法を、粘弾塑性解析に拡張し、この新しい解析手法を用いた硬化コンクリートの変形・破壊性状のシミュレーションを行うとともに、実験的な検証によってその妥当性を確認した。本研究の成果は以下のようにまとめられる。1.粘弾塑性サスペンション要素解析手法の開発および拡張現有の2次元プログラムを3次元に拡張するとともに、細部に至る多数の境界条件を整備した。また、この結果を基づいて、多軸載荷・除荷、高速繰返し載荷、粗骨材の破壊、鉄筋による拘束などの条件にも適用可能な汎用的な機能をプログラムに付加した。2.入力データの整備1.で開発したプログラムに用いる入力データを得るために、既往の実験結果を整理した。3.コンクリートの応力-ひずみ曲線の解析および検証実験コンクリート円柱供試体の各種応力下における破壊挙動のシミュレーションを行た。また、小型の供試体を用いて同条件で実験を行い、解析結果と比較した。4.アコースティック・エミッション(AE)現象の解析および検証(谷川)1.および2の成果より、コンクリートの破壊過程で生じるAE弾性波の発生シミュレーションを行い、引張破壊とせん断破壊の差異、カイザー効果の機構などについて解析的な検討を行った。5.コンクリートの構成モデルの提案以上の研究結果を総括し、コンクリートの変形・破壊性状に与える影響要因を整理した上で、汎用的な力学モデルを構築するための基礎的な検討を行った。
著者
松浦 好治 鈴木 賢 宇田川 幸則 樋口 範雄 BENNETT F. G. Jr. 姜 東局 岡 克彦 外山 勝彦 小川 泰弘 角田 篤泰 増田 知子 中村 誠 佐野 智也 SHEE Huey-Ling HWANG Ren-Hung DING Xiang-shun LEE Heejeoung
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、日中韓台・漢字文化圏の法情報について、深い相互理解と比較法研究の推進を目的とし、次の成果を得た。法情報共有の環 境整備として、各国研究者と共同で、中韓台法令とその英訳の対訳約14万文、英文官報の画像と日英対訳約16万文を集積するとともに、4法域法令用語標準対訳辞書の項目候補約13,000語の検討を推進した。また、日本法令の機械翻訳や文書構造化の手法を開発した。一方、分かりやすい法情報の提供事例として韓国とEUを調査するとともに、特定分野の理解を促進する法情報パッケージLawPackの例を構築した。また、地方自治体例規約98万本を蓄積・横断検索するシステムeLenを開発した。