著者
松井 利之 岩瀬 彰宏
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

FeRh金属間化合物は,室温附近で反強磁性状態から強磁性状態へと変化する物質である.我々は,この物質にイオンビームを照射し,反強磁性が安定となる温度域で,強磁性状態を安定化させることに成功している.本研究ではこの成果を利用し,物質の磁気構造を3次元的に制御することにより,従来にない磁気構造を構築し,新規なデバイス応用を検討した.その結果,マイクロイオンビーム装置を用い2次元の磁気構造描画を可能にしたこと,多様なエネルギー域のイオン照射と熱処理を併用することで層状の磁気構造を構築したこと.クラスターイオンビーム照射により,際表面層の磁気構造を選択的に変化させ得ることなどを明らかにした.
著者
坂上 昇史 新井 隆景 西岡 通男
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,定量化シュリーレン法による変動計測法やPIV計測の校正法,新しい熱線流速計など超音速乱流変動計測法の開発を行い,これらを用いて超音速境界層乱流遷移や超音速乱流混合場を調べた.超音速境界層の乱流遷移については非圧縮流変換した遷移レイノルズ数が主流マッハ数によらずほぼ一定となること,超音速混合については主流マッハ数が大きくなると縦渦によって生じる小スケール変動は逆に小さくなること等を明らかにした.また,壁乱流の平均速度分布が対数分布かベキ乗分布かを診断する新しい方法を提案し,平板乱流境界層の速度分布に適用してその有用性を示すとともに対数分布とベキ乗分布の共存する現象を明らかにした.
著者
石井 実 平井 規央
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

気候温暖化が里山の昆虫類に及ぼす影響を明らかにするために、ギフチョウなどを対象に研究を行った。本種の蛹を標高の異なる地点に置いたところ、初冬の気温が高い場所では羽化率が低かった。飼育実験の結果を加味すると、蛹期における「長い秋」が高い死亡率の要因と考えられた。衰退の顕著な大阪府北部の産地の個体群を調査したところ、卵の孵化率の低下が確認された。また既に本種が消えた産地では林床植生の植物種数が少なく、野生ジカの生息密度が高いことがわかった。これらの成果は、本種の衰退に暖冬の影響と野生ジカによる下層植生の過剰採食が関係し、個体群縮小による近交弱勢が拍車をかけている可能性が示された。
著者
細見 和之
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

イツハク・カツェネルソンがワルシャワ・ゲットーで書いたイディッシュ語作品を読み込むとともに、ワルシャワのユダヤ史研究所、エルサレムのヤド・ヴァシェム、ニューヨークのユダヤ文化研究センター(YIVO)を訪れて関係資料を調査することによって、ゲットー蜂起に象徴される武装による抵抗ではなく、カツェネルソンらの周辺で行われた文化活動を背景としたユダヤ人の精神的な抵抗の意義を確認することができた。
著者
前川 寛和
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

マリアナ海溝西側に位置する前弧域には、海溝軸に沿って海山群が存在する。この海山群の岩石試料を用いて、沈み込み帯境界における地学現象を岩石学的側面から追求した。プレート境界では、沈み込むプレートがもたらした水を含む形質堆積物とすぐ上にあるマントルかんらん岩とが反応し、元素移動を引き起こす交代作用が生じていること、高温型の蛇紋石であるアンティゴライトを伴う蛇紋岩科作用が鉄に富む流体を生み出し、初生かんらん石の組成を改変するという特異な現象が起きていることを明らかにした。
著者
梅本 信也/山口 裕文
出版者
大阪府立大学
雑誌
大阪府立大学農学部学術報告 (ISSN:1344848X)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.25-31, 1999-06-15

京都大学理学部(KYO), 東京都立大学牧野標本館(MAK)と国立科学博物館(TNS)および中華人民共和国の中国植物科学院(PE)と南京大学(N)の標本室に保存されているタカサブロウ属(キク科)の〓葉標本301点と各国植物誌におけるタカサブロウ属の分類学的記述, および笠原(1974)と笠原・武田(1978)の雑草の種子と果実に関する考古学的研究におけるタカサブロウ属にかかわる成果を検討し, タカサブロウEclipta thermalis BungeとアメリカタカサブロウE.alba(L.)Hasskarlの日本への帰化時期と帰化様式を推定した。タカサブロウは, 植物地理学的には東アジアの湿潤温帯部に本来の分布域を持ち(Tables 2,4), 稲作とともに日本にもたらされ, 少なくとも弥生時代には日本の低湿地に分布した史前帰化植物であり(Table 3), 一部は近代の物流拡大に伴って再導入されたと考えられた(Fig.1)。一方, アメリカタカサブロウは, 新世界の北・中米に本来の分布域を持つコスモポリタン種であり(Table 4), 日本へは第2次世界大戦とその終了にともなって1948年以降に軍事散布された(Fig.1;Table 1)と考えられた。
著者
高橋 雅英 徳留 康明
出版者
大阪府立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、本手法の高い汎用性を最大限に活用したメソポーラスシリカ膜への外部刺激応答性の付与に着目し、外部刺激により駆動するナノ-マイクロデバイスの創製を目指した。これにより、高い比表面積を有するメソポーラスシリカ材料にμmサイズの外部刺激応答構造を付与し、物理的特性の変調を用いた外部刺激応答性がnm領域においても発現するような、nm~μmに渡る広範なサイズ領域での機能性界面構造創製へとつながる成果を得た。具体的には、メソ孔の開口部径を機械的刺激により制御し、選択的な吸脱着特性を有する多孔性薄膜を実現した。
著者
東 泰孝
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

インターロイキン(IL)-19遺伝子欠損マウス(KO)を用いてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎モデルを作製した。生存率は、IL-19KOは野生型(WT)と比べて低下した。また、体重減少、血便の有無、下痢、いずれもIL-19KOの方がWTよりも酷かった。次に、遠位結腸のHE染色像でも、IL-19KOはWTよりも上皮細胞の欠損が多く、炎症性細胞の浸潤も顕著に増加し、炎症の明らかに悪化した。
著者
安部 大就 山本 聡 下村 泰彦 増田 昇
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、GIS(地理情報システム)を研究ツールとして、流域管理の視点から都市近郊エリアにおける土地利用の適正化を図るための計画技術の開発を試みた。研究方法としては、関西際空港の建設に伴い都市基盤施設の整備が進む中で土地利用変化や人口動態が著しい大阪府南部地域をスタディエリアとして、1973年と1990年の大阪府作成の土地利用現況図と人口のデータ、国土地理院発行の標高データを用いて解析し、土地利用変化に影響を及ぽす地形条件や交通条件などの要因をまず明らかにした。次いで、本地域の2級河川流域にほぼ対応した市町域を解析単位として、その土地利用形態や人口分布形態などの地域環境データを用いて地域環境容量を試算し、土地利用変化が地域環境容量に与える影響の定量化を試みるとともに地域環境容量の変化を予測し、土地利用の適正化を図るための課題を探究した。土地利用変化に影響を及ぽす要因を採った結果、地形条件では本地域での標高50mは都市的土地利用から農村的土地利用に変化する境界領域であり、標高100mは農村的土地利用から山林的土地利用に転換する境界領域であることや交通条件では鉄道駅の土地利用変化への影響範囲は住居系用途に対しては約800m、商業系では約300m、工業系では約700m、幹線道路の影響範囲は住居系用途に対しては約500m、商業系では約100m、工業系では明確な影響範頗がないことを明らかにした。次いで、地域環境容量としては、CO_2固定容量、水資源容量を取り上げ、既往の研究成果を応用したモデル式により試算した。その結果、各容量の変化は都市的土地利用の拡大に伴う人口の増大と森林資源の減少に大きく依存することを明らかにし、土地利用の適正化を図るための課題を明らかにした。
著者
オーバーヒューマ パメラ 泉 千勢 林 悠子
出版者
大阪府立大学
雑誌
社會問題研究 (ISSN:09124640)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.119-134, 2005-12

世界の多くの国で、乳幼児保育は公共政策の注目を集めている。質の良い保育サービスの提供と、生涯にわたる学習のための良い基盤を保障することについての議論では、カリキュラムに関する問題が新しく生じている。子どもについて我々は何を理解しているのだろうか。子どもたちは、周りの世界にどのようにアクセスし知識を構築しているのだろうか。大人は、子どもが学びの機会を効果的に高めるために何ができるのだろうか。一般的な価値観、伝統、優先事項等によって、このようなカリキュラム課題に対して答え、規定するためのアプローチの仕方は各国で異なる。The State Institute of Early Childhood Education and Research in Bavaria/Germany(バイエルン州立乳幼児教育研究所)を基盤にした最近の調査研究では、世界12カ国の30人の研究者による、革新的で論理的で実証的なカリキュラム研究が行われた。カリキュラムモデルとして、ヨーロッパ5カ国(デンマーク、フランス、ポーランド、スコットランド、スウェーデン)とヨーロッパ以外の5カ国(オーストラリア、チリ、中国、ニュージーランド、ナイジェリア)のカリキュラムが、その目的と理論的位置づけ、主要な学びの領域、評価方法、小学校との連携、といった点において分析された。本論文では、この国際比較研究での結果の概要を抜粋して紹介し、国家間の共通点と相違点を特定し、研究と政策のアプローチに関して課題を提起する。
著者
串田 久治
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は彗星と流星の観測記録ととともに生まれる「予言」記録を整理することによって、これまでの一連の研究で明らかにした古代中国の天文学と「予言」の政治学を更に補強し、古代中国の「予言」が当時の政治や社会を動かす原動力となっていたことを解明して、董仲舒の災異説の現実的役割を中国古代社会思想史上に位置付けることにある。古代中国人が五惑星の異常運行に劣らず恐れたのは彗星と流星の出現・消滅であった。その出現と消滅に、古来為政者が無関心ではいられなかったのは、自然界と人間世界との相関関係を受け入れ、天体の神秘は地上の政治に対する天の意思表示であると考える古代中国では当然のことである。このことは、中国で天文学が科学としてよりも国家占星術として発展していった事実とも符合する。ところで、董仲舒が儒教国教化のアンチテーゼとして提唱した災異説がそれ以後の社会に多大な影響を与えたことは周知の事実であるが、災異説が広く受け入れられて社会に定着するには、言説だけでは不充分である。言説を理解することと納得することとは同じではない。誰もが目にすることのできる神秘的現象によって現実にあった政治的・社会的事件・出来事が説明され、その合理性が納得されて始めて災異説の言う「天の譴責」は為政者に対して意味を持つ。しかし、前漢末、讖緯説の隆盛とともに災異説が本来の批判精神を喪失すると、彗星・流星の出現は「予言」を創出し、五惑星の異常運行にまつわる「予言」が果たしたと同じように、災異説の批判精神を見事に継承して人間社会への警鐘として機能し続けたのである。
著者
小元 敬男 文字 信貴 平田 尚美 梶川 正弘 竹内 利雄 吉野 正敏
出版者
大阪府立大学
雑誌
自然災害特別研究
巻号頁・発行日
1985

本年度は、降ひょうと突風の実態の把握及び基礎研究に必要なデータを得る目的で、分担者のほゞ全員が群馬県で観測を行った。6月前半には、レーダー観測、突風観測、ひょう粒の分析の実験を実施、7月15日〜8月15日の期間には上記の他に高層気象観測、気圧分布観測、短期間ではあるがドプラーソーダによる観測を行った。更ル、5月15日〜8月15日の期間、記録計による100地点での降ひょう観測を行うなど、北関東夏季の積乱雲対象としてかつてない充実した研究観測を実施したのであるが、昨夏は群馬県における雷雨は異常に少なく予期したほどのデータは得られなかった。しかし、この観測期間中に観測本部のある群馬県農業総合試験場にひょうが降り、また地元の協力者から分析用の大きなひょう粒が提供されるなど、ひょうの基礎研究に役立つ資料が得られた。更に同地域における下層大気の昇温が積乱雲発達に及ぼす影響の研究に必要なデータも得られた。例年より少なかったが、上記期間中に発生したひょう害及び突風(災)害の現地調査も行った。その他の分担研究課題の成果として、ひょう害の変遷に関する研究では、関東甲信地域のひょう害は1950年頃までは5月下旬を中心とするピークが一つあっただけであるが、その後7月下旬を中心とするピークが現れ顕著になりつつあることなど幾つかの新らたな気候学的事実が明らかにされた。また、防ひょうネットの研究では、千葉県の実験地に激しい降ひょうがあり、実際の場合について、種々の網目のネットの被害防止効果を測定できた。無被害地の実験データと併せて、防ひょうネットの最適網目は10mmであることが確められた。激しい雷雨の常習地域で長期にわたって連続観測を行ったにも拘ず、異常年に当ってしまい、充分データを得ることができなかった。この種の研究は根気よく続ける必要がある。
著者
有薗 育生 竹本 康彦
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

生産技術の向上から精密な製造が可能となった近年では,規格値を満たさない不適合品が製造される割合,不適合品率は極めて小さい環境が現実のものとなってきた.ただし,これに対応してより高度な解析技術を組込んだ品質管理システムの設計・開発が急務であった.本研究では,適合・不適合とする従来の品質評価と比べ緻密な評価を与える品質基準を採用して従来の解析技術の高度化を図り,ハイクオリティ環境下での次世代品質管理システムの土台となる方法の確立を実現した.
著者
奥田 邦晴 林 義孝 高畑 進一 淵岡 聡 樋口 由美
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

障害者の陸上競技、中でもフィールド競技に関する先行研究は散見する程度であり、特に、重度障害者を対象とした投てき競技に関する研究は皆無である。本研究は主として脳性麻痺や頚髄損傷者の重度障害者の投てき運動を可能にするための補装具である調節式スローイングチェアを作成し、スローイングチェアの適合度合いの差異がどのように投てき運動に影響を及ぼすかについて調査することを目的とした。具体的には、各々の選手の投てき運動を6台のデジタルビデオカメラを用いたビデオ式3次元解析装置(ToMoCo Vm4)により運動学的に解析し、障害度やその特徴の違いやスローイングチェアの適合性が投てき運動に及ぼす影響について明らかにした。これらの結果は、重度障害者にとって、投てき競技の魅力が拡大し、その普及に寄与できるとともに、障害者の投てき競技におけるスポーツ指導方法の基礎データとしたり、競技能力向上に寄与することができる。1.調節式スローイングチェア(通称、座投一)を作製した。2.脳性麻痺選手を対象に、調節式スローイングチェアを約2ヶ月間貸与し、調整後、障害者陸上ジャパンパラリンピック大会に本機を使用して出場した。3.アテネパラリンピックに出場した頚髄損傷選手(銀メダリスト)を対象に、調節式スローイングチェアを使用し、より競技能力向上に目的に、検討した。(現在も継続中)4.脳性麻痺、頚髄損傷選手の投てき動作について、三次元解析装置にて運動学的に分析、検討した。5.3および4の結果から、改良型調節式スローイングチェアを作製した。6.脳卒中の投てき選手に座投一を試行し、より障害像に適したシッティングポジションを確立できた。7.調節式スローイングチェアについて特許申請を行い、受領された。(特願2005-265193)8.第26回医療体育研究会/第9回アジア障害者体育スポーツ学会目本部会第7回合同大会にて、「陸上投てき競技用調節式スローイングチェアの開発について」を報告した。9.第18回大阪府理学療法学術大会にて、「頚髄損傷投てき選手に対する競技用調節式補装具(モジュラー型スローイングチェア)を用いた競技能力向上への取り組み」について報告予定。10.第22回日本義肢装具学会学術大会にて、「重度障害者の陸上投てき競技用スローイングチェアの開発と適応について」報告予定。
著者
大形 徹
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

神仙思想の仙人の起源は、秦・漢時代の死生観の変化に由来すると思われる.仙人は、たんに長生きした人ではなく、むしろ、本来は死者であり、死者の魂の永世という観念が屈折して、肉体も不死であるという仙人が生み出されてきたのであろう。この内容に即して、以下のような考察をおこなった。一、僊の文字と魂・死についての文字学的考察-魂と骨の観点から-・厚葬と薄葬-神仙思想の観点から-・「仙」と「僊」-神仙思想の形成と文字の変化-二、列仙図と列仙傳:・祀られる仙人-列仙図をめぐって-・『列仙傳』の仙人-黄帝・関尹子・涓子-三、蓬莱山と博山炉・博山炉と香-蓬莱山との関わりから-四、崑崙山と渾沌・『荘子』にみえる北と南と中央五 房中術の精気・房中術の精気と鍼灸の精気これらは、いずれも、神仙思想の生み出される基盤を形成していたと考えられる。
著者
池田 浩
出版者
大阪府立大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

平成21年度は有機ラジカルELの関連実験として,2-(1-ナフチル)-2-フェニル-1-メチレンシクロプロパン(1)を含むメチルシクロヘキサンマトリクスへのγ線照射-昇温(77-130K)実験を行い,トリメチレンメタン型ビラジカル(^32^<・・*>)の三重項-三重項蛍光に基づく青緑色の熱ルミネッセンス(TL)の観測に成功した.しかし,この実験には制約が数多くあり,蛍光量子収率(Φ_F),蛍光寿命(τ_F)などの光物理データの測定は不可能であった.そこで平成22年度および繰越による23年度は,ダブルレーザーフラッシュフォトリシス(DLFP)法を採用して,基質1の光誘起電子移動反応による基底状態の^32^<・・>の発生と,その光励起による^32^<・・*>の発生を達成し,室温・溶液中における^32^<・・*>の発光解析を検討した.ジクロロメタン中,N-メチルキノリニウムテトラフルオロボレート-トルエン共増感系で,第一レーザー(Nd:YAG,λ_<EX>=355nm)を照射し,過渡吸収スペクトルを観測したところ,λ_<AB>=385nmに^32^<・・*>の過渡吸収が観測された.そこで,第一レーザー照射の500ns後に第二レーザー(355nm)を照射すると,λ_<PL>=470nm付近に発光ピークが観測された.この発光波長は,^32^<・・*>のTL発光波長(λ_<TL>=479nm)に近く,DLFP法によっても^32^<・・*>の発光が観測されていると考えられる.TLとDLFPでは発光スペクトル波形に若干の違いが認められた.本研究ではこれを^32^<・・*>の配座異性体の数とその相対的割合が温度によって異なるためであると考え,参考として^32^<・・>の配座異性体の密度汎関数理論計算を行った.DLFP法によるΦ_F,τ_Fの決定実験も行ったが,最終データ得るにはまだ至っていない.なお,当該年度内に基質合成の新しいルートも開拓した.
著者
秋庭 裕 川端 亮 稲場 圭信
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

3力年の調査研究によって知り得たところと、今後の研究継続のための作業仮設は以下のとおりである。日本型新宗教の教団として、グローバリゼーションの先進地、アメリカ合衆国でもっとも広く受容されたSGI(創価学会インターナショナル)は、当初、「戦争花嫁」たちの国際結婚によって海を渡った。同時に、結婚によって、その教えは国籍・民族の壁を越えて広まる契機をつかんだ。次の段階は、ロサンゼルスを中心とする西海岸で、カウンター・カルチャーとの出会いをとおし、アイデンティティを模索する若者層に広まった。1970年代のSGIは、日系人とヒッピーの若者を主要な担い手として、「アメリカ化」をとげていった。「アメリカ化」は、経典類の英語への翻訳とそのいっそうの洗練、教団組織の役職への現地の人びとの積極的な登用、組織運営などへのアメリカ的な習慣の採用などからなるが、アメリカ化のプロセスは、直線的に進んだのではない。それは、試行錯誤的で、ときには混乱をともないながら、80〜90年代を通じて徐々に達成された。その結果、人びとが極度の緊張状況を強いるグローバリゼーション化の著しいアメリカ合衆国において、民族や階層を越えて、SGIに入会する人びとに増加につながった。救済論的には、キリスト教的世界観、罪の意識とは正反対の、現世肯定的な救済を強調する、日蓮仏法に立脚するSGIの思想と世界観が、アメリカ合衆国という上昇志向の強い競争社会において、適合性が高いことが重要であろう。