著者
西岡 昭博 池田 進 小山 清人 高橋 辰宏 藤井 恵子
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

(1)米粉の品種や粉砕時の熱履歴の違う米粉のレオロジー特性アミロース含量の異なる品種が異なる米粉を用意し、糊化特性の違いやパン生地にした際のレオロジー特性の違いを明らかにした。これにより品種間の違いとパン生地のレオロジー特性との相関を系統的に明らかに出来た。次に、米粉の粉砕時に熱履歴が澱粉結晶やレオロジー特性に与える影響を明らかに出来た。この米粉は常温でも糊化することで知られるアルファ粉にはない特徴もあることを明らかにした。これを米生地にブレンドすることで、生地粘度をコントロールすることで、製パンに最適な粘度を探ることが可能であることを突き止めた。(2)種々の米粉のレオロジー特性と製パン性(1)で得られた種々の米粉のレオロジー特性の実験結果を受け、これから得られる米粉生地の製パン性を検討した。一般の米粉に12%のα化米粉をブレンドすることで、パン生地のレオロジー特性をコントロールした。これにより均一な発泡セルを有する米粉100%による製パンに成功した。(3)米粉100%による製パンメカニズムの一般化グルテン成分を含有しない米粉などで製パンを行うには、発酵時と焼成時の粘度をそれぞれ制御する必要がある。具体的には、発酵時の生地粘度はイーストによる一次発酵時のセルの均一性に大きく影響する。さらに、オーブン中で一次発酵後のパン生地を焼成する際は、糊化に伴う生地全体の粘度上昇が重要になる。生地の粘度上昇が鈍い場合、二次発酵によりセルが破泡してしまう。一方、オーブン中で加熱されたパン生地が糊化により急激に粘度上昇することで、一次発酵時の形成された均一な気泡が保持され良質な製パンが可能となる。これを一般化し、図示し、まとめとした。
著者
大村 一史
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では生理指標(事象関連電位)と行動指標(心理行動実験)の組合せによって測定される実行機能を ADHDの中間表現型に据えて、ADHDに関連するパーソナリティ特性や遺伝子多型により実行機能(課題成績および脳活動)がどのように影響を受けるのかを検討し、心理-脳神経プロファイルに基づいたADHDアセスメントの基礎確立を試みた。中間表現型としての課題遂行中の脳活動は、特に自己制御に関連する衝動性傾向に強く影響を受けるものの、その影響の程度は一定ではなく、実行機能の個人差には、定型発達と非定型発達を分ける分水嶺が存在する可能性が示唆された。
著者
元木 幸一
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ゼーバルト・ベーハム作《ケルミス大版画》を中心に、居酒屋、歯医者、雄鶏合戦、ダンス、九柱戯、刃渡り、鶏ダンス、徒競走、競馬など諸モティーフの意味、起源を詳細に分析した。また宗教画と世俗画における画中版画と文献資料の分析から、農民祝祭版画の受容と販売形式を明らかにした。最後に、ニュルンベルク宗教改革がいかに祝祭行事に介入したかを歴史的に解明し、それがケルミスにどのように影響したか、そして《ケルミス大版画》がどのような機能を目指して制作されたかをまとめた。
著者
新海 宏成
出版者
山形大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究の主たる目的は,サッカーのロングスローインについて,その動作の特徴を明らかにすることであった.大学サッカー選手のスローイン動作を対象として3次元動作分析を行った結果,飛距離の大きな選手には「体幹の大きくかつ効果的なタイミングでの動き」,「前方よりのリリースポイント」といった特徴が認められた.これらの動きは,ボールに対する投球方向への作用力を増大させ飛距離を大きくする効果があり,また視覚的にも判断しやすいポイントであることから指導の現場で有効な評価指標となり得ると考えられた.
著者
高橋 達也 藤盛 啓成
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、マーシャル諸島で1993年から調査して独自に設定した5821人のコホートの10年間における甲状腺がん、乳がん、肺がん及び白血病の罹患と放射線被曝との関連(放射線被曝線量-がん罹患反応関係)を明らかにすることである。現在まで、現地保健関係者らの協力でNuclear Claim Tribunal(NCT:がん登録)と病院記録でコホート構成員の甲状腺がん、乳がん、肺がん、及び白血病罹患状況の調査を継続している。NCTはマーシャル諸島の被曝者が放射線被曝の影響によると推定される病気になったときの医療費や補償金を支払うための機関で、米国とマーシャル政府の条約に基づいて設置されている。主ながん34種類が登録・補償対象になるのでほぼすべてのがん症例を把握している。また、登録・補償の権利はマーシャル住民が国外に移住しても失わないので多くの住民が国外から登録している。また、がんで死亡した場合は遺族が代理で登録し補償を受ける。マーシャル諸島には2つの国立病院、すなわち、マジュロ及びイーバイ国立病院がある。この病院は同国で唯一のがんなどを診断治療する施設である。これらのファイルから、がん症例をコホートの構成員かどうか確認している。現在までにコホートに甲状腺がん76例、乳がん17例、肺がん29例、白血病12例が発生したことが確認された。さらに、がん罹患の情報を継続的に収集する。コホート構成員のうち93年に6人、94年に32人、95年に72人が死亡している。さらに、死亡等によるコホートからの脱落数を現在調査中である。
著者
津村 建四朗
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

地震活動の研究には、信頼できる地震カタログが不可欠である。我が国の全国的な地震調査事業は、明治17年に、内務省地理局(後の中央気象台)によって開始された。初期段階の約25年間は、主として測候所、郡役所等からの震度報告に基づいて震央が推定されていた。しかしそれら原報告及び解析結果のかなりの部分は既に散逸しているため、明治時代の地震活動の研究は進んでいない。本研究は残存する地震資料を収集・整理し、新たな地震カタログをつくり、データベース化することを目的としている。平成7年度には、1885-92の7年間についてミルンが作成したカタログをファイル化するとともに、気象庁に残存する原報告、中央気象台による調査結果を整理し、震度観測データファイルを作成した。平成8年度には、1904-10の7年間について「中央気象台年報(地震の部)」所載の地震観測表から震度観測データファイルを作成した。また、当時の震度観測地点約1500点の位置を特定し、観測地点データファイルを作成した。さらに、これらのデータファイルを用いて震度分布図をパソコンに表示させるとともに、第一近似の震央を自動推定し、これをマニュアルで修正するプログラムを開発した。これによって震度データに基づく震央再決定が効率的におこなえるようになった。中部地方以西については、震度分布からの震央決定が可能であるが、東日本については、異常震域の現象のため困難な場合が多い。このため目的とした地震カタログの完成には、さらに地震計記録の活用が必要である。平成9年度には、国立天文台水沢観測センターに保存されている地震計記録の調査を行った。
著者
西澤 隆 元村 佳恵 村山 秀樹 平 智
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

メロンの「うるみ果(水浸状果)」発生要因とその防止技術について,以下の諸点について明らかにした.1.メロンの「水浸状果」は,果実肥大期の後期に株が一時的に遮光条件下に置かれることによって誘発される生理障害であることを明らかにした.2.「水浸状果」の発生には品種固有性が存在し,供試した品種中では‘アンデス'には「水浸状果」が認められたものの,‘ラスター'では認められなかった.3.遮光処理は果実内におけるスクロースの蓄積を阻害したものの,ヘキソースの蓄積はほとんど阻害されなかったことから,遮光処理は果実内における糖代謝関連酵素の活性を変化させる可能性が示唆された.4.遮光処理は果実内におけるアセトアルデヒド,エタノール生成量を増加させたことから,「水浸状果」は‘プリンスメロン'等で発生が報告されている「発酵果」の一種であり,遮光処理によって果実はより嫌気的な状態に置かれるものと推察された.5.遮光処理はエチレン生成量を増加させ,同時に果肉硬度を低下させたことから,遮光区における急激な果肉硬度の低下には,エチレン生成が関与しているものと推察された.6.摘葉処理および着果過多処理により株のソース・シンクバランスを変えても,果実に水浸症状は認められなかったことから,「水浸状果」は遮光処理によって果実内への光合成産物の供給が制限されることが主要因で起こる生理障害ではないと推察された.7.ABA処理は葉の光合成速度を低下させると同時に果実からのエチレン生成量を増加させ,果実の軟化を促進させた.8.メロンの「水浸状果」の防止には,フィルムの張り替え等による受光態勢の改善,品種の選択,窒素肥料の適正化等が重要であると考えられた.
著者
欠畑 誠治 寺田 小百合 伊藤 吏 天野 彰子 杉山 元康 窪田 俊憲 小泉 優
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ROCK阻害薬の蝸牛神経障害に対する再生効果をin vivoの実験系で検討することが目的である。蝸牛神経障害モデルの評価には正常群と障害群の比較評価、治療効果判定には障害群(生食投与コントロール)と治療群(ROCK阻害薬局所投与、ROCK阻害薬全身投与) の比較検討を行う。蝸牛神経障害モデルの作製、ROCK阻害薬の投与方法の検討、蝸牛神経障害およびROCK阻害薬作用の機能的・形態学的解析を行う。
著者
大村 一史
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 教育科学 = Bulletin of Yamagata University. Educational Science
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.55(113)-64(122), 2007-02-15

近年、神経心理学の立場から、注意欠陥・多動性障害(attention-deficit/hyper activity disorder: ADHD )の本質は、衝動性(行動抑制の弱さ)にあり、注意散漫や多動は二次的に現れたものとする考え方が提唱されている。ADHD における衝動性は、将来の目標遂行のために目前の反応を抑制できない自己のコントロールの障害として観察される。その原因として、前頭葉における行動抑制機能の障害と、それに関連する実行機能(注意の統制、行為の持続、および適切な計画性など)の問題が指摘されているが、衝動性行動の原因は未だ完全には明らかにされていない。現在、ADHD の生物学的基盤を探るために、双生児研究や分子遺伝学研究などの遺伝的アプローチから障害に関連する遺伝子を探る研究が精力的に行われ、特に脳内ネットワークの情報伝達に欠かせない神経伝達修飾物質の異常が指摘されている。本論文では、ADHD の関連遺伝子を概観し、実験室で測定される実行機能を指標とした行動-遺伝的アプローチによる ADHD の衝動性メカニズムの解明への可能性についてまとめる。 Several researchers have proposed that symptoms of attention-deficit/hyper activity disorder (ADHD) arise from a primary deficit in behavioral inhibition (impulsivity) followed by inattention and hyperactivity. Impulsivity of ADHD represents a disorder of self-regulation, that is, a deficit in maintaining an appropriate short-term behavior in order to attain a later goal. It has been suggested that dysfunctions of behavioral inhibition in the prefrontal cortex and its marginal executive function (e.g., attention control, maintaining action, and planning) are causes for ADHD. However, the underlying neural substrates are still unclear. Several studies based on genetic approaches such as twin and molecular genetic studies have sought to identify candidate genes and variants that increase susceptibility to ADHD. Dysfunction in some neurotransmitters has been postulated to cause ADHD. In this paper, we reviewed candidate genes associated with the vulnerability to developing ADHD and discuss the behavioral-genetic approach used to investigate the mechanisms of impulsivity in ADHD.
著者
竹田 隆一 長尾 直茂 タケダ リュウイチ ナガオ ナオシゲ Takeda Ryuichi Nagao Naoshige
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 教育科學 (ISSN:05134668)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.51-68(145-162), 2003-02-17

剣道の技術に関する名辞は, 非常に難解であり, 円滑な技術指導の障害となることも考えられる。しかし, それは, 剣道のもつ身体観や技術観などの文化的特性のあらわれととらえることができる。そこで, 剣道技術指導書の先行形態である近世の武芸伝書を取り上げ, 技術に関する名辞を考察することによって, 剣道の文化的特性を明らかにすることを目的とした。 本稿では, 一刀流の伝書である『一刀斎先生剣法書』取り上げたが, それは, 一刀流が現代剣道の源流の一つに数えられるためである。ただ, 流祖伊藤一刀斎みずからが書いた伝書というものは現在伝わらず, 一刀流を理解するためには, その門人達の伝書によるしかないのである。そこで, 一刀斎の門人古藤田俊直を祖とする唯心一刀流の伝書『一刀斎先生剣法書』を現代語訳し, 技術に関する名辞をスポーツ教育の視点から考察することにした。その結果, 従来から使用されている「事理」, 「水月」,「残心」,「威勢」の意味内容が明らかになった。なお, 今回の考察は, 全16章のうち5章までである。In this report, we gave the modern Japanese translation to "Ittousa sensei kenpousyo (「一刀斎先生剣法書」)" from chapter 1 to 5, which was written by KOTOUDA Toshisada (「古藤田俊定」), and also regarded as the precedene form of the modern kendo instruction, And we tried to examine the meaning and content of the term of the technology in "Ittouryu (「一刀流」)". 1."Waza (「事」)" does not mean some technic, but shows the movement or motion to achive the maximum result. 2. "Kotowari (「理」)" is the theory which constitutes the movement showing the maximum mastering. Then, it can be shown by the metaphor "Suigetu (「水月」)", which means the relation of the surface of the tranquil water and the Moon. Here "Kotowari (「理」)" is not limited like "Waza (「事」)" to the world of the kendo. 3. "Zirihuhen (「事理不偏」)", which means the situation combined "Waza (「事」)"and "Kotowari (「理」)", seemed to be the automatic movement or motion. 4. "Zansin (「残心」)" means the situation reflected the figure of the enemy to himself. It is different from the meaning of the term of the present kendo. 5. "Isei (「威勢」)" is composed of "I (「威」)" and "Sei (「勢」)". "I (「威」)" incluides "Sei (「勢」)", similarly "Sei (「勢」)" incluides "I (「威」)". "Isei (「威勢」)" also potentially receives the theory of the Chinese Taoism (「道家」).
著者
高橋 永治
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 農學 (ISSN:05134676)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.401-419, 1961-03-28

【摘要】 1959年7月29日,大鳥池の北岸で午前7時と午後6時の2回5メートルの綱のついたプランクトンネットを用いて,50センチメートルと3メートルの深さの層から採集したプランクトンと7月30日午前7時間じ北岸の地点で広口瓶で採水した1.5リットルの水の中のプランクトンを観察した結果及び,マロモナス2種とその他3種を電子顕微鏡で観察した結果を報告する.大鳥池沿岸部のプランクトン種数は,35種と珪藻類で,動物性プランクトン15種,植物性プランクトン20種と珪藻類,その他に昆虫幼虫,ミズダニ1種,線虫類1種が採集された.沿岸部のプランクトン群集の構成は,動物性プランクトンでは,Conochilus unicoruisが優占的に多数であり,Polyarthra trigla, Bosmina longirostris, Holopidium yibberumがそれに次いで多数であった.植物性プランクトンではDinobryon cylindricumが優占種で,次いで珪藻類が多数であった.動物性プランクトンについては,湖心部の表層部のプランクトン組成と類似している.しかし,植物性プランクトンは,総個体数の99%以上もあり,Dinobryon cylindricumは60%以上を占めている.沿岸部プランクトンを10リットルの水に生息する個体数に計算すると,約247,000となる.湖心部の結果より可成り多く,沿岸部の方が湖心部より栄養に富んで生産力が高いと思われる.叉その数は当地方の荒沢ダムの夏期のそれの1/4,鶴岡公園堀の1/10であって,大鳥池は貧栄養的であると云えよう.
著者
阿部 宏慈
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 人文科學 (ISSN:05134641)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.63-86(258-235), 2003-02-17

Les films documentaires qubn considere souvent comme un rassemblement des images directes de la > actuelle, sont aussi caracterises par une particularite diegetique et narrative. Du point de vue semiologique, on peut constater que la stmcture narrative des films documentaires est surtout fondee sur la coincidence apparente (idealement supposee) de la diergese avec le > comme une thematisation (Levinas) du monde dit > . D' ou la position centrale qu'y occupe le cineaste comme > autour duquel s'organise la diegese filmique. Quand cet observateur-temoin devient l'oblet central du film, avec son exploration du passe a travers ses experiences persomelles, le monde intime du cineaste se transforme en un champ d'investigation particuliere. Il devient pour lui une occasion pour se demander sur le statut du reel represente en son rapport avec l'essence qui reste irrepresentable. Ce present article a pour but d'eclaircir le rapport entre le regime narratif et la representation du monde > dans les films documentaires, a partir d'un film experimental du cineaste americain Jonas Mekas. Ce film qui semble recomposer des souvenirs d'un refugie politique a l'occasion de son retour a son pays natal apres 25 ans d'absence, passant par l'histoire de sa vie intime du debut de sa carriere cinematographique, nous offre pourtant un excellent exemple de la reflexion sur le rapport entre la memoire et la representaion dans un film documentaire. Dans ce film, les informations langagieres (narration, titres) qui viennent definir les objets filmes se heurtent a la qualite indefinissable des images, coupees et decoupees pour ne pas laisser determiner et nommer leurs objets. Les efforts pour retrouver l'identite perdue de l'auteur s'avereront aussi inutiles en face de l'irrepresentabilite du passe. Avec ces images dechirees et fragmentees, le cineaste pourtant reussit a nous presenter une vision du monde sans la soumettre a la violence de thematisation. Cette vision reste cependant loin d'eetre une restitution narrative de l'experience. Elle nous fait entrevoir l'existence de ce qui est impossible a representer et de ce fait nous invite a nous interroger sur le droit de regard et de langage cinematographique devant la singularite de l'experience vecue. Car, dans les films documentaires, > est avant tout une necessite ethique.
著者
多田隈 理一郎
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

生活空間の様々な物体に動力伝達機能を持たせ、荷物の搬送や要介護者の移動などにおいて人を補助することを目標として、直交する2方向に歯車構造を持つ全方向駆動歯車を中核とする様々な機械要素技術を創成し、その機構の小型化・高効率化を進め、従来技術では動力を付加できなかった小さい物体や狭い空間にも駆動機能を持たせた。具体的には、自動車のドアミラーに収納可能な、正およびゼロの曲率を有する「J型」の全方向駆動歯車を製作し、サイドミラーを収納形態から開いた通常の形態まで、滑らかに駆動した。また、全方向に物体を搬送できるロボット型のテーブルを、ゼロの曲率を有する平面型の全方向駆動歯車を用いて2種類製作した。
著者
大神 訓章 児玉 善廣 野寺 和彦
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 教育科學 (ISSN:05134668)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.203-212, 2011-02-15

要旨:本研究は、2008年に開催されたY大女子バスケットボールチームの公式15ゲームを対象として、ゲームスコアを数学的に処理することにより、チーム及び個人のオフェンス力を分析したものであり、就中、オフェンス力を最大評価するシュート力及びキープ力の詳細分析を試みた。その手法は、キープ力及びシュート力の実際値に、巧さを加味し、それらを「大きさ(理想値)」という観点で捉えた。その結果、キープ力について、Y大は、高数値を示し、理想値と比較しても上回り、キープ力があるチームと評価できる。しかし、シュート力は、低値を示し、全15ゲームにおいて、理想値を下回った。キープ力、シュート力が同等の場合、大きさの大なるチームが勝利していることから、本稿で捉えた大きさは、勝敗を決する要素のひとつであることが認められた。
著者
山田 浩久
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 社会科学 = Bulletin of Yamagata University. Social Science
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.63-82, 2009-02-15

はじめに:近年の観光開発は、開発業者による大規模な土地改変を伴うリゾート開発に代わり、自然環境の保全を前提とする体験型、対話型の観光を提案する開発が主流になっている。体験型、対話型の観光は、環境論的な観点から肯定されるとともに、開発費用を大幅に縮小することから、 主に地方の地域振興策の一つに採用される場合が多い。また、原則的に「人の手を加えない」 開発であることから、地域内の歴史的遺物や文化資産と絡めることが容易であり、街並保有や 文化伝承に関わる議論にまで展開させることが可能である。体験型、対話型の観光は、ローリスク、ローコストであるがゆえに、提案しやすく、受け入れられやすい開発であるといえる。しかしながら、観光を産業としてみた場合、産業の育成には資本投下が不可欠であり、投下 資本量に応じた生産性の向上が利潤を増加させ、地域経済を活性化させる。体験型、対話型観光の提案者は、ローリターンであることに触れず、環境保全や地域アイデンティティ創出の重要性を強調する。もちろん、それらが重要な案件ではあることは明らかであるが、地域政策を 立案する大前提は地域住民の生活向上にある。地域住民はローリターンの開発であることを認識し、開発の努力が実を結ぶまで耐え続けなければならないというのは閣発者側の論理であり、住民は分かりやすい短期的な成果を期待する。観光政策の実施に伴い、観光客のマナーの悪さや地域住民の負担過多といった問題も指摘さ れている。目標到達までの時聞が長期化するほど地域住民の意識は希薄化するであろう。地域振興策あるいは地域活性化策のーつとして観光開発を挙げる以上、経済的な効果を明確にし、短期の目標を積み上げることによって、地域住民の観光開発に対するモチベーションを維持する工夫が必要であると考える。
著者
洪 慈乙
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 社会科学 (ISSN:05134684)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.107-123, 2009-02-15

2008年8月28日、日本経済新聞( 夕刊) の1面を飾っている見出し「国際会計基準 米が受け入れ--14年から採用」。中身を読んでみると、アメリカのSEC(Securities and Exchange Commission 証券取引委員会) は8月27日 、外国企業のみならず、アメリカの上場企業にも国際会計基準の採用を認める方針を明らかにした、ということである。今まで、世界資本市場の番人として君臨してきたSECとそれを支えてきたアメリカの会計基準設定機関としてのFASB(Financial Accounting Standard Board ; 財務会計広準審議会)による会計基準が、敗北宣言をしたようだ。このようなアメリカの対応を受けて、国際会計基準とのコンバージェンス(統合convergence) を計ってきた日本の会計界も、孤立を避けるために国際基準をそのまま受け入れる方針に変更した、と報道された(2008年9月4日『日本経済新聞』、1面)。このように世界の会計ルールが、国際会計基準に統一される見通しになってきた。したがって、会計閲係者は、適用される国際基準を熟知しなければならないことはもちろんのこと、そのルールの背景にある目的および趣旨のような会計基準の基礎となる概念を明らかにしなければならない。現在、IASB (International Accounting Standard Board ;国際会計基準審議会)はFASBとのジョイント・プロジェクトの一つとして、概念フレームワーク(conceptualframework)を開発する共同プロジェク卜に取り組んでいる。同プロジェクトについては第2節で詳しく述べるが、2008年9月現在の状況は、同プロジェクトの8つのphases (フェーズ)のうち、フェーズA「目的および質的特性(Objectivesand Qualitative Characteristics)」の公開草案(ExposureDraft ; ED) 『財務報告のための概念フレームワーク---財務報告の目的および意思決定に合用な財務報告情報の質的特性と制約 (Conceptual Framework for Financial Reporting :The Objective of Financial Reporting and Qualitative Characteristics and Constraints of Decision-Useful Financial Reporting Information)』 (以下、ED[2008]、という。)、および暫定的意見書(Preliminary Views)『財務報告のための概念フレームワーク---報告主体---(Conceptual Framework for Financial Reporting :The Reporting Entity)』 (PV & DP[ 2008])が2008年5月29日付けで公表され、9月29円までそのコメント・レターが求められている。この公開草案(ED [2008]) に目を通してみた結果、一つの疑問がわいてくる---企業会計は資本市場だけのためのものなのか?また企業会計は資本市場の番人になり得るか?この問題意識にもとづいて、本稿ではED[2008]を吟味することによって、IASBの基準作りの考え方(姿勢)を探り、それを手掛かりとして、企業会計とは何か、企業会計の在り方を模索してみることとする。本稿の構成は、第2節(II)でED[2008]の経緯と背景を述べることにする。3節(III)ではHendriksen [1992]を中心に会計理論研究の方法を概観したうえで、第4節(IV) ではED[2008]の公表に先立って2006年に公表されたFASB「暫定意見書(Preliminary Views)」兼IASB「討議資料(DiscussionPaper)」 (PV &DP[2006])およびこれに寄せられたコメント・レター(CLs [2006])を参考に、ED[2008]を吟味し、問題点を指摘することで、企業会計の在り方およびこれからの概念的枠組みの方向性を探ってみることとする。