著者
高野 敏雄
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.101-117, 1971-06-01
被引用文献数
1

冬期スポーツの1種であるリュージュ及びボブスレーは、わが国では歴史が浅く、また非常な危険を伴う競技であるに拘らず、スポーツ医学的検討が行なわれていない。特に氷壁で囲まれた急カーブのコースを高速で滑降する際に生ずる遠心力が競技者に及ぼす影響は極めて重大な問題である。著者は今回両競技の選手あわせて48名(うち女子4名)につき、遠心力負荷実験、体格・体力などの測定を実施して、安全確保のための検討を加えた。おもな研究成果は次のとおりである。1)人体用遠心力発生装置を用いてgrayoutを指標とした+Gz耐性閾値を決定した。リュージュ選手は+5.67Gz(Range=4.0〜6.1、SD=0.56)、ボブスレー選手は+5.80Gz(Range=4.7〜6.1、SD=0.43)であって、+Gz負荷に伴なう血圧、心拍数上昇も適正な生理的反応を示した。2)自転車エルゴメータによる最大仕事量および最大心拍数は、運動鍛錬者として適正な値を示した。3)軽い+Gz負荷中のCoriolis刺激によって、約30%の被検者に操縦桿操作performanceの低下を示すものが認められた。4)両競技の安全を確保するためには、各選手は適正なG耐性とG負荷に対する生理的な適応反応を示すことが必要であり、また競技中のCoriols刺激による異常空間
著者
金 昌龍 渡部 和彦
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.369-379, 2003-08-01
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

本研究は,太極拳を実施している中・高齢者34名を対象に太極拳の実践が立位姿勢保持に関するバランス機能にいかなる効果をもたらすかについて,イクイテストシステムの分析によりその関連性について調べた。その結果,以下の知見が得られた。1.太極拳の実践は短期間ではその効果は現れにくいが,継続的な実践によって,中。高齢者のバランス機能の能力を向上させ,あるいは機能低下を遅延させる可能性が示唆された。2.水平移動を伴う外乱刺激に対する身体応答の速さは,太極拳の実践によってその機能の向上が期待できるという可能性が示された。3.脚の伸展筋力は太極拳を長期間実践することにより,ある程度の衰えを防ぐ可能性が示されたが,脚筋力とバランス機能との間には相関関係が認められなかった。4.太極拳を長時間継続することはヒトのバランス機能の向上に貢献できる可能性を示した。静的バランス機能より動的なバランス機能への貢献の可能性が示された。
著者
大中 政治
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.159-164, 1977-12-01
被引用文献数
2

三種類の比較的全身的な静的筋作業時の持久力測定 (支持カ, 静懸垂カ, 静的筋持久力) を年令11才から79才までの男女638名に実施し, その性差, 年令差について検討し次のような結果を得た。1) 静的筋持久力において負荷を最大筋力の90%より20%へと順次変化させると荷重が最大腕力の50%以上の大きい間は男子の保持時間がながく, それ貝下の軽い負荷においては女子が有意に長い保持時間を示した。2) 保持時間の性差を示すのは20才代より50才代の者であり小学生とか60才以上の高命者には性差が見られなかった。3) 年令30才以上になると瞬発的な筋力は低下したが静的な筋の持久性は種類の測定総べてにおいて漸増の傾向を示した。4) 体勢各要素と静的な持久力との関係を見ると体重が負荷となる静懸垂力を除けば比体重とか上腕囲, ベルベック指数等との関係が強く幅厚育の発達した栄養状態の良い者が持久性に優れていた。以上の如く20才代から50才代の者に性差が見られることは性ホルモンやこれに基因する体組織の差異に関係があるものと考えられる。
著者
平田 敏彦 高橋 香代 鈴木 久雄 太田 善介 金重 哲三
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, 1991-12-01

陸上競技長距離選手が良い成績をあげるためには高い全身持久力が必要である。一方、過度の体脂肪は走運動の効率を低下させることから効果的なトレーニングの指導のためには、選手の持久性体力と身体組成の経時的な情報が必要であると考える。今回、我々は陸上協議長距離選手の持久性体力ならびに、DPXE法による身体組成を径時的に測定したので報告する。
著者
長野 真弓 白山 正人 平野 裕一 宮下 充正
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.436-446, 1992-08-01
被引用文献数
3

トレーニングを行っていない健康な成人男性9名を被検者として, 運動処方の有効な指標となっている換気性閾値(ventilatory threshold : VT)強度の運動がその後の過剰酸素消費量(excess postexercise O_2 consumption : EPOC)に及ぼす影響を調べた. 被検者は, 早朝空腹時に快適なソファーで30分間座位安静を保った後, VT強度で自転車エルゴメーター駆動を1時間行った. 運動終了後はソファーで12時間座位安静を保ち続けた. また, 運動終了後24時間目にも前日と同じ要領で座位安静をとった. その間, 採気・心拍数の測定を行い、運動が終了して2, 7, 12時間後には高糖食を摂取させた. この測定の他に, コントロールとして, 運動を行う代わりにソファーで1時間座位安静を保ち, その後も12時間にわたって座位安静を保つ非運動実験を行った. 運動(座位安静)前の安静値と運動(座位安静)後の値を比較したところ, EPOCは食事あるいは運動の影響を受けて, 有意に変動することがわかった. また, VT強度の運動を1時間行うと, EPOCは少なくとも12時間にわたって運動を行わない場合より増加し, 脂質代謝も少なくとも24時間にわたって高まることが示唆された. さらに, 運動後12時間で, 運動中の消費エネルギー(約550kcal)の22%(約120kcal)のエネルギーが過剰に消費されることがわかった. 以上のことから, この結果は運動に対する動機づけやウエイトコントロールなど, 運動処方の場で有効に活用できると考えられた.
著者
小川 新吉 古田 善伯 山本 恵三 永井 信雄
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.45-55, 1973-06-01
被引用文献数
1

巨大な体格、豪力の持ち主であると考えられている現役上位力士)(関取)の形態、機能の測定および調査を行ない、種々なる検討を試みた。形態的な測定、1.関取の平均身長は180.2cmと、日本人としてはずばぬけて大柄な集団であるが、スポーツ選手の大型化を考えるとき、特筆すべき特徴とは考えられない。2.体重は平均122.2kgと超重量級で、ローレル指数も平均210.5と異常に近い充実度を示し、この超肥満体に力士の特徴がみられる。身体の軟組織に富む周囲径、特に腰囲は、114.9cm、臀囲は115.7cmと著しく大きく、皮脂厚(3部位の合計)も109.9mmと驚くべき肥厚を示し、力士の体型の特徴は皮脂厚の異常なまでの発達にあることがわかる。機能の測定、3.背筋力の平均は181kg、握力左右平均47.9kgと予想したほど大きくなく、オリンピックの重量挙や投擲選手以下である。筋力の測定方法等に問題があるにしても、筋力は形態に比べ予想外に発達していないと考えられる。5.垂直とび47.9cm、サイド・ステップ35.1回、腕立屈伸21.4回と、体重が負荷となるテストでは体重の影響が問題となり、スポーツ選手としては著しく小さい。6.しかし、身体の柔軟性や全身反応時間等は肥満体にもかかわらず、さして劣っていな
著者
図子 浩二
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.237-245, 2006-04-01
被引用文献数
1 3

本研究では,体育大学の男子バスケットボール選手10名を対象にして,リバウンドドロップジャンプとメディシンボールを用いたプライオメトリックスを,1週間に3日,7週間にわたってバスケットボールの練習後に計画的に取り入れ,トレーニング導入前後における効果について検討した.下肢および上肢のプライオメトリックスを導入した結果,トレーニング後に以下のような結果が認められた.(1)リバウンドロップジャンプとジャンプシュートの跳躍高に有意な増加はなかったが,接地時間には有意な短縮が認められた.(2)直線走の平均速度に有意な短縮はなかったが,方向変換走には有意な短縮が認められた.この方向変換走速度の短縮は,方向変換に要する接地時間の有意な短縮に起因していることが認められた.(3)チェストパスにおける速投速度は,助走のない場合とある場合のいずれも有意に速くなり,チェストパス動作に要する接手時間も有意に短縮することが認められた.これらの結果から,リバウンドドロップジャンプを用いた下肢のプライオメトリックスは,短時間に踏切を遂行することができるジャンプ能力や,素早く切り返して方向変換するフットワーク能力を向上させることが明らかになった.また,メディシンボールのチェストパスを用いた上肢のプライオメトリックスは,短時間で素早く高速のボールを投げることのできるチェストパス能力を向上させることが明らかになった.