著者
長田 悠 檀辻 雅広
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Bf0856, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに】 重度な意識障害を呈した両側片麻痺患者に対し意識レベルの向上を目的とした言語刺激入力,関節可動域(以下ROM)運動,端座位練習を行ったが意識レベルに変化は得られなかった。そこで,意識の調節を司る脳幹網様体への入力をさらに増加させるため,長下肢装具(以下LLB)を装着した立位で積極的な抗重力刺激や体性感覚入力を行った。その結果,意識レベルが向上し,表情や手の動きによる非言語的な意思表出が可能となった。また頚部・体幹や股関節周囲筋が賦活されたことで車椅子座位保持が可能となり,家族ニーズが達成されたので報告する。【症例紹介】 症例は80歳代,男性。右視床出血発症後,保存療法を経て49病日目に当院回復期病棟へ入院となった。出血巣はCT上直径2.5cm大で視床から内外側に伸展し,内包後脚,中脳に及んでいた。また,両側脳室,第3脳室に穿破していた。既往は4年前に左被殻梗塞があるが,後遺症なくADLは自立であった。前院理学療法(以下PT)ではROM運動,端座位練習を実施され,わずかに頷きや手の動きを認めていたが,反応には日内・日差変動が見られていた。家族ニーズは意志疎通を図りたい,車椅子で移動可能となりたいであった。【説明と同意】 家族に口頭で説明し同意を得ている。【経過】 初期評価(49病日目)時は意識レベルJCS II-20,GCS E3V1M6であり,コミュニケーションは理解表出共に困難であった。Brunnstrom Stageは左上・下肢,手指共にI,右上・下肢,手指共にIV,ADLは全介助,食事は経鼻経管栄養,排泄は膀胱留置カテーテルであった。 PT開始当初は言語刺激入力,ROM運動,端座位練習を行い,意識レベルの改善を試みたが,血圧や血中酸素飽和度などの全身状態に変動を認めた。PT開始30日頃より徐々に全身状態が安定したため,起立テーブルを用いた立位訓練による抗重力刺激入力を開始したが,意識レベルに変化はみられなかった。また,標準型車椅子座位姿勢は頚部・体幹が大きく崩れるため保持不可であった。 そこでPT開始75日目から,より豊富な体性感覚を入力するために左下肢にLLB,右下肢に膝装具を装着した腰掛立位を行なったところ,開眼持続可能となるなど覚醒レベルの改善が見られ始めた。立位練習開始当初は介助量が多く,立位保持だけに留まっていたが,徐々に体幹・下肢の抗重力筋の活動がみられ,右下肢の支持性が向上した。開始100日目より,自動介助にて右下肢ステップ練習,右上肢のリーチ練習,左下肢を軸にして方向転換をする移動練習などを取り入れ,より積極的に体性感覚入力を継続して行った。その結果,PT開始143日頃に標準型車椅子座位姿勢の崩れが軽減し自力での保持が可能となった。意識レベルは日内変動がなくなり,JCS I-3,GCS E4V1M6となった。また,問い掛けに対して表情変化や頷き,手の動きで応答することが可能となり,さらに鼻を掻く,ピースサインを出すなどの目的を持った右上肢の動作がみられるようになった。【考察】 Magounらの提唱した上行性網様体賦活系は,中脳から延髄にわたる網様構造をした神経組織である脳幹網様体の興奮を視床の非特殊核を中継し,大脳皮質に広く投射することで意識の保持に関与すると考えられている。また,意識障害は大脳皮質の広範な障害による活動低下か脳幹網様体の障害によって生じるといわれており,本症例は広範な出血により中脳も損傷されたため脳幹網様体の機能低下を生じ,重度意識障害を呈したと考えられる。 意識障害に対するPTは端座位や立位などの抗重力位をとることが有効であるとされている。当初は本症例にも同様に実施したが,意識レベルに著明な変化は得られなかった。そこで,抗重力位でより積極的な体性感覚による感覚刺激入力を行なった結果,意識レベルが向上し日内変動が見られなくなった。これは脳幹を上行する感覚の求心性路は脳幹網様体に側枝を出すと言われていることから,本症例に対し積極的に体性感覚入力を行ったことが上行性網様体賦活系の活性化に繋がり,意識レベルが向上したと考えられる。また,意識は注意・行為・言語などの高位機能の基盤であるといわれていることから,本症例が意思表出可能となったのは意識レベルが向上した結果であると考えられる。【理学療法研究としての意義】 重度意識障害の症例に対して,積極的に体性感覚入力を行うことで意識レベルの向上が得られた。理学療法士として運動機能の回復のみならず,意識レベルを向上させることでコミュニケーション能力の回復にも寄与することが出来ることを学んだ。
著者
横畠 和宏 森国 麻里 小林 誠治 西森 大地 安井 正顕
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1212, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに】劇症型心筋炎は急性心筋炎の中でも重篤な臨床経過をたどるが,回復すれば遠隔期予後は比較的良好とされている。基本的治療は炎症極期における循環動態の破綻を的確に補助し,自然治癒を待つとされており,長期間不動状態となるが,その後の心臓リハビリテーション(以下,心リハ)経過の報告は少ない。今回,劇症型心筋炎症例に対して炎症極期離脱後より介入し,退院後も継続して心リハを行った症例を経験したので報告する。【方法】症例は51歳男性,感冒症状持続にて当院紹介入院。入院後急激に心機能低下,Vfを認めICU入室し,IABP,PCPS導入,大量γグロブリン療法,カテコラミン治療開始となる。2病日にLVEF10%,CCI0.7L/min/m2となった。7病日より左室壁運動は徐々に改善を認め,8病日PCPS離脱,10病日IABP抜去,14病日人工呼吸器離脱,15病日より心リハ開始となった。バイタル,自覚症状をモニタリングしつつ離床を開始した。介入当初より四肢骨格筋の筋力低下を認め,離床に併行して筋力トレーニングを実施した。18病日より歩行開始,23病日に500m連続歩行可能となり病棟ADLは自立,24病日よりエルゴメーターによる有酸素運動を開始した。28病日にCPXを施行し32病日に自宅退院となった。運動耐容能低下や労作時の易疲労は持続しており,退院後2ヶ月間週1回ペースで心リハを行い,運動,生活指導を継続,CPXにて運動耐容能の再評価を行った。【結果】心リハ介入前LVEF20%,CRP1.36mg/dlと左室収縮能,炎症反応は炎症極期に比べ改善傾向であり,退院前LVEF55%,退院2ヶ月後LVEF62%と左室収縮能は正常化した。心リハ介入前後でBNP1102.7→19.6pg/dlと改善を認めた。CPXは退院前AT8.6ml/min/kg,VE/VCO2 slope38.7,退院1ヶ月半後AT11.6ml/min/kg,VE/VCO2 slope28.7と改善傾向を認めたが,end pointは下肢疲労感であった。【考察】本症例は劇症型心筋炎による左室収縮能の低下における末梢循環不全に加えて,炎症極期における鎮静・筋弛緩剤の使用,長期不動によるdisuse atrophyを認めており,筋力や運動耐容能の低下を来たしていた。ICU生存退室者において筋力が著明に低下していることが報告されており,本症例においても同様の筋力低下が問題点に上げられた。本症例の心リハを進める上で,左室収縮能や炎症反応などの疾患特有のリスク管理のもとの離床プログラムに加えて,早期から継続的な筋力トレーニングの実施が,機能障害やQOLの低下予防に有用であったと考えられる。炎症極期離脱し,左室収縮能は退院時には改善を認めたが,筋力低下や運動耐容能の改善には時間を要し,退院後の心リハ継続の重要性を示唆する症例であった。
著者
宮下 広大 金井 秀作 長谷川 正哉 積山 和加子 高宮 尚美
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0655, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】患者の動作・運動指導において言語教示の重要性が唱えられている一方で,運動を促す際の指導者と学習者の言語認識の一貫性については,今日のリハビリテーション分野での研究は十分であるとは言えない状況にある。そこで,本研究では異なる言語表現が筋収縮に与える影響と言語を用いた筋収縮感覚を他者と共有可能であるか調査する。【方法】健常男性12名を対象とした。2人1組とし両者をフィットネスチューブの両端を把持した状態で向き合わせ,言語教示を提示し,肘関節屈曲運動を5秒間行う牽引側,閉眼にて開始肢位を保つ受け手側とした。教示内容は形容詞表現「速く・強く」,「遅く・強く」,擬態語表現「びゅんっと」,「ぎゅーっと」,比喩的表現「綱引きでピストルの合図と同時に綱を引くように(以下,綱引き)」,「何とか持ち上がるくらいの重いダンベルを手前に引くように(以下,ダンベル)」の6種類とした。各施行終了後,速度・強度を(Visual analogue scale:VAS)を用いて主観的感覚を調査した。また受け手側には9種類の教示を提示し,筋運動感覚から牽引側の教示内容を予測させた。なお,表面筋電図の測定は右上腕二頭筋,右上腕三頭筋長頭,右上腕三頭筋外側頭とした。統計解析は,各教示間における筋出力の比較にKruskal-Wallis testを用いた。有意差を認めた場合にSteel-Dwass testによる多重比較を行った。比較する際の教示は受け手側の予測に合わせて牽引側,受け手側それぞれ行った。【結果】受け手が回答した予測教示について,一致した正答率は「綱引き」の67%が最も高く,対照的に「びゅんっと」の25%が最も低かった。各教示間のVAS速度,VAS強度,上腕二頭筋平均振幅の牽引側においては,VAS速度で各教示間に多くの有意差が認められたが,VAS強度において,有意差は認められなかった。また,客観的指標である上腕二頭筋平均振幅においては,「遅く強く」「綱引き」間,「ぎゅーっと」「綱引き」間でのみ有意差が認められた(p<0.01,p<0.05)。受け手側においては,VAS速度に,「びゅんっと」「綱引き」間,「びゅんっと」「ダンベル」間を除き,牽引側と同様の有意差が認められた。VAS強度においては,形容詞・擬態語間,擬態語・比喩間に有意差が認められたが,形容詞・比喩間で有意差は認められなかった。上腕二頭筋平均振幅においては,「綱引き」「ダンベル」間で有意差が認められた(p<0.05)。【結論】治療意図による言語の使い分けの必要性が示唆された。また適切な比喩的表現は牽引側,受け手側,両者にとって最も統一した筋収縮活動を起こした。このことから,運動指導を担う理学療法士には他者と共有しうる多彩な比喩表現の必要性が示唆された。
著者
吉川 桃子 平谷 尚大 佐々木 克尚 小松 勝人 掛水 真紀 福岡 知之 津野 雅人 沖田 学
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2023, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 リハビリテーションや運動指導における言語は,患者に運動学習を促すための方法の1つである.宮本ら(2005)は,臨床において主観的で抽象的な言葉の重要性を唱えている.また,日岡ら(2010)は,知能が低下した患者に行為を共感覚を用いた抽象概念で説明することが有効であると報告している.さらに,言語と運動について平松ら(2009)は,擬態語の提示は意図する行為をシミュレートさせる可能性があり,擬態語は言語教示において運動をシミュレートさせる有効な手段の一つであると述べている.しかし,使用する副詞や比喩表現の違いが実際の動作へ及ぼす影響について検討されたものは少ない.そこで,本研究の目的は情態副詞,擬態語,メタファー言語が実際の動作にどのような影響を及ぼすかについて明らかにすることである.【方法】 対象は健常成人6名 (男性2名,女性4名:平均年齢20.8±1.47歳)とした.実験の内容を理解できない者や条件の理解を誤った者は除外した.実験課題は,紙面上に描かれた外周800mmの正方形を右回りに2分間のトレースを行う課題(平林ら,1998)である.その際,以下の4つの条件を設定して行った.条件1は何も教示なしで課題を行わせた.条件2は「ゆっくりなぞって下さい」の文章を提示して行わせた(情態副詞条件).条件3は「じわじわなぞって下さい」の文章を提示して行わせた(擬態語条件).条件4は「1番遅く動くものは何ですか?」と問い,「そのようなイメージでなぞって下さい」の文章を提示して行わせた(メタファー言語条件).これら4つの条件をランダムに提示した.また,知的機能検査としてMini-Mental State Examination(以下,MMSE),Frontal Assessment Battery(以下,FAB),Trail making test A(以下,TMT-A),ブーバ/キキ実験を実施した.統計処理は,各条件のトレースした長さをKruskal-Wallis testを用いて比較検討した.また,各条件の特性を分析するために,個人別に長くトレースした順に順位付けを行い,それらにMann-Whitney’s U testを用いて比較検討した.なおBonferroniの不等式修正法を用いた有意差調整により統計学的有意水準を0.0083未満とした.【説明と同意】 全ての対象者から事前に本研究の目的,方法を十分に説明し,書面で同意を得た.【結果】 知的機能検査の平均値と標準偏差は,MMSEは29.7±0.8点,FABは17.3±0.8点,TMT-Aは82.1±24.6秒であり,対象者は知的能力や注意能力が低下していなかった.ブーバ/キキ実験では全ての対象者がでこぼこした図形が「ブーバ」,ぎざぎざの図形が「キキ」と判断した.統計処理の結果は,各条件でのトレースした長さの平均値と標準偏差は,条件1は16979.2±12739.86mm,条件2は4031.33±3272.83mm,条件3は2166±1372.41mm,条件4は1531±1350.74mmであり,各条件間で有意差は認められなかった.しかし,個人別にトレースの長い順に順位付けを行ったものは, 全ての対象者が条件1を最も長くトレースした.そのため,条件1は他の4つの条件と比較し,有意にトレースした長さが長かった.また,条件2は条件3より長くトレースした人数が有意に多かった.【考察】 今回の研究では,具体的な運動速度を提示せずに自由に動作を行わす場合と比較し,速度の遅い意味をもった言語を提示することで動作がより遅くなった.その中でも,動きやその状態の質および様子を表す副詞を修飾した場合と比較し,音や速度をイメージさせるような副詞を修飾した場合により動作への影響が大きくなった.つまり,単純な動作指示に情態副詞,擬態語,メタファー言語を修飾することで,より意味に対応した形に運動制御が変化し,さらに擬態語は情態副詞より運動制御に影響を及ぼすことが明確となった.これは,擬態語が情態副詞と比較し,状態や感情,身振りなどの音を発しないものをいかにもそれらしく音声に例えて表した語句であるため,より動作のイメージが想起されやすかったためであると考える.【理学療法学研究としての意義】 本研究では,情態副詞,擬態語,メタファー言語の提示が運動制御に影響を与えることを明らかにした.このことから,単純な運動指示を提示するのではなく,状態副詞,擬態語,メタファー言語を修飾することが運動指導においてより有効な方法であることが示唆された.今後は,認知症高齢者や脳卒中患者を対象として本研究の応用性を検討する必要がある.
著者
笠井 健治 水田 宗達 清宮 清美 板垣 卓美
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E-134_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに・目的】パーキンソン病(Parkinson's Disease:以下PD)患者の死因の第1位は肺炎であり誤嚥性肺炎の予防は重要である。PD患者の嚥下障害は疾患の進行と必ずとも相関せず、嚥下スクリーニング検査による嚥下障害の検出も難しいとされる。近年、誤嚥のリスクを検出するための咳嗽機能評価が注目されている。本研究の目的はPD患者について嚥下障害に関連するスクリーニング検査結果と咳嗽機能について後方的に検討し、嚥下障害等の関係を明らかにすることである。【方法】対象は当センターにH27年8月からH30年5月までの間に入院したPD患者のうち摂食・嚥下障害看護認定看護師に嚥下機能評価の依頼があり、検査可能であった18名(72.7±4.0歳、男性10名)。評価項目は疾患重症度としてHoehn&Yahr分類とPD統一評価尺度第3部の総合得点(unified Parkinson’s disease rating scale‐Ⅲ:以下UPDRS-Ⅲ)、嚥下スクリーニング検査として反復唾液嚥下テスト、咳嗽機能評価として咳嗽時最大呼気流量(cough peak flow:以下CPF)と咳テスト、呼気機能評価として最長発声持続時間を評価した。誤嚥の発生有無は聖隷式嚥下質問紙のA項目に1項目以上該当する場合もしくは嚥下造影検査において嚥下障害が確認された場合に嚥下障害ありと判断した。嚥下障害あり群となし群に大別し各評価項目における群間の差の検定を行った。連続変数に対しては対応のないt検定もしくはMann-Whitney検定を用い、他の変数はχ2検定を用い、有意水準は5%とした。【結果】嚥下障害あり群は7名、なし群は11名で群間比較ではCPFのみ有意な差を認めた(あり群218.6±115.0m/s、なし群368.2±127.0m/s、p=0.023)。またCPFはUPDRS-Ⅲ(r=-0.67、p=0.04)、最長発声持続時間(r=0.57、p=0.02)と有意な相関を認めた。【考察】嚥下障害を有する群では有意にCPFが低下し、CPFは疾患重症度および呼気機能と有意に相関していた。このことから、PDでは重度化とともに咳嗽機能が低下しやすく、咳嗽機能には呼気機能が影響すると考えられた。したがってPD患者の嚥下障害に対する理学療法においては咳嗽機能を改善することが重要であり、呼気機能を改善するアプローチの重要性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】研究参加者には入院時に臨床において得られた情報が後方視的に学術目的に用いられることについて口頭および書面にて説明し、同意を得られた場合にのみ同意書への署名を依頼した。また、本研究は埼玉県総合リハビリテーションセンター倫理員会の承認(H30-002)を得ている。
著者
寺田 僚介 大町 かおり
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H4P2361, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】軸足の定義は文献によって異なり、未だ明確化されていない。本研究の目的は、軸足の定義を再考し、通常歩行時の歩幅をもとに運動学的に分析し、軸足と非軸足の機能の違いを検討することである。【方法】対象は下肢および腰部に整形外科的既往のない健常男性11名であり、平均年齢21.3±1.1歳、平均身長173.9±5.1 cm、平均体重64.2±7.4 kg、平均ASIS間距離24.0±2.2cm、平均SMD86.9±4.3cmであった。軸足の設定は以下の3条件とし、その対側を非軸足とした。条件1:通常の立位時に荷重量の多い側(直立位条件)。条件2:「安めの姿勢」での荷重量の多い側(安楽立位条件)。条件3:ボールを蹴る側の脚の対側(ボール条件)。測定課題は、室内にて裸足での自由歩行とした。歩行は2回行い、2回目の測定範囲中央のデータを用いた。動作計測には三次元動作解析装置(VICON460、OxfordMetrics)を使用し、反射マーカーを左右の上前腸骨棘、上後腸骨棘、大腿外側、大腿骨外側上顆、下腿外側、外果、踵骨後面、第2中足骨頭に両面テープで貼付した。Initial Contact (以下IC)時における両側の関節角度(Pelvis、Hip、Knee、Ankle)と歩幅を計測した。歩幅は振り出し側のHC時の踵骨後面のマーカーの座標と対側の踵骨後面のマーカーを基に算出した。統計処理は、3条件の軸足と非軸足に対し、歩幅、関節角度の比較を対応のあるt検定にて、軸足あるいは非軸足の歩幅に関するそれぞれのすべての測定値に対し関係性をピアソンの相関にて検討した。有意水準を5%未満とし、10%未満を傾向ありとした。【説明と同意】対象者に事前に研究の目的と方法の説明を行い、書面にて同意を得た上で上記の計測を行った。【結果】軸足に関する3条件の歩幅は、直立位条件(非軸足:66.8±11.6cm、軸足:64.5±7.0 cm)、安楽立位条件(非軸足:67.4 ±9.9cm、軸足:63.9 ±9.1cm)、ボール条件 (非軸足:65.8 ±11.5 cm、軸足:65.6 ±7.5 cm)であった。安楽立位条件で軸足を決定した際の歩行時の関節角度は、振り出した側の骨盤前方回旋角度(非軸足が振り出した際の非軸足の骨盤前方回旋角度:6.4±3.1度、軸足(同様):5.8±3.3度)、同股関節屈曲角度(非軸足:30.5±3.8度、軸足:29.2±4.2度)、同膝関節屈曲角度(非軸足:10.1±3.8度、軸足:8.9±5.8度)、 同足関節背屈角度(非軸足:5.8±3.6度、軸足:4.9±3.0度)、残された側の骨盤前方回旋角度(非軸足に対する対側の骨盤前方回旋角度:4.6±2.9度、軸足(同様):7.5±2.9度)、同股関節伸展角度(非軸足:10.5±5.9度、軸足:8.9±6.0度)、同膝関節屈曲角度(非軸足:13.9±3.8度、軸足:15.4±5.3度)、同足関節背屈角度(非軸足:17.4±3.9度、軸足:19.5±2.5度)であった。 安楽立位時における非軸足側の歩幅は軸足側の歩幅と比較して長い傾向があり、歩行時の残された側の股関節伸展角度においても非軸足側が、伸展角度が大きい傾向が見られた(いずれもp<0.1)。その他2条件の軸足と歩幅、関節角度の間には有意差は認めらなかった。また、安楽立位時における歩幅と残された側の股関節伸展角度において、非軸足、軸足共に正の相関が認められ(非軸足r=0.62、軸足r=0.672、いずれもp<0.05)、非軸足における歩幅と残された側の足関節背屈角度に負の相関が認められた(r=-0.615、p<0.05)。【考察】今回、軸足の定義を3条件設定し、振り出し側のIC時における歩幅と骨盤および下肢の関節角度に着目した。軸足を安楽立位での荷重量の多い側と定義した際に、非軸足の歩幅が長くなる傾向があり、振り出し側が非軸足の場合の歩幅が大きいほど、対側の股関節伸展角度は有意に大きく、同じく対側の足関節背屈角度は有意に小さいという結果となった。本来、健常者の歩幅は左右差がないとされているが、軸足の定義を安静立位時の荷重側とした際に、非軸足の歩幅の方が長くなる傾向があり、それは、残された軸足の股関節が十分に伸展し、足関節を底屈させ足底の支持面が小さくなっても十分に支持できる姿勢制御の機能によるのではないかと考えられた。【理学療法学研究としての意義】軸足と非軸足の役割の違いを明確にすることは、スポーツ分野での多用による傷害、あるいは時間経過による変性などの高齢者に生じる障害について、現象を明らかにし、治療に生かすことのできる基礎資料となると考えられる。
著者
長島 正明 蓮井 誠 山内 克哉 美津島 隆
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1626, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】ネフローゼ症候群は高度の尿蛋白により低蛋白血症を来す腎臓疾患群の総称である。腎臓病患者に対する運動療法は少なくとも嫌気性作業閾値(以下AT)であれば尿蛋白や腎機能へ影響を与えないことが報告されつつあり,ネフローゼ症候群診療ガイドライン2014においても安静や運動制限の有効性は明らかではなく推奨されていない。一方,ネフローゼ症候群の急性期治療として高用量(0.5>mg/kg/日)ステロイド治療が一般的であるが,ステロイド筋症による筋力低下によってADL制限が顕在化することがある。低用量ステロイド治療患者に対し運動療法が有効であることが報告されているが,高用量ステロイド治療における運動療法の有用性は不明である。本研究の目的は,高用量ステロイド治療中のネフローゼ症候群患者における運動療法の有効性を体組成・筋力・運動耐容能から検証することである。【方法】対象は高用量ステロイド治療目的で当院腎臓内科に入院したネフローゼ症候群患者で,運動療法の依頼でリハビリテーション科に紹介となったADL自立の60歳代一症例とした。運動療法は週5回実施した。有酸素運動としてATでの自転車駆動30分,筋力運動としてスクワット動作や上肢ダンベル体操をBorg Scale13の強度で実施した。測定は運動療法開始前と退院時に実施した。体組成は体組成計インボディを用い,筋量,脂肪量を測定した。筋力は筋機能評価運動装置BIODEXを用い,等尺性膝伸展最大筋力を膝屈曲90°位で測定した。運動耐容能は心肺運動負荷試験で評価した。心肺運動負荷試験は呼気ガス分析装置および自転車エルゴメータを用い,10wattランプ負荷とし,ATおよび最高酸素摂取量を測定した。ATはV-slope法にて決定した。最高酸素摂取量は症候限界時の酸素摂取量とした。また,体重,食事摂取カロリー,尿蛋白一日量,ステロイド服用量を診療録より記録した。【結果】入院3週目よりステロイド0.8 mg/kg/日で治療開始され,同時に運動療法開始となった。運動療法は8週間実施され,ステロイドは0.4mg/kg/日まで減量し退院となった。運動療法8週間前後で,体重(kg)は60.4→53.5に減少した。筋量(kg)は26.5→21.8に減少,体脂肪量(kg)は11.0→12.1に増加した。体重比筋力(Nm/kg)は右2.15→1.50,左1.85→1.51に低下した。AT(ml/kg/min)は12.7→15.6,最高酸素摂取量(ml/kg/min)は19.8→20.0に増加した。心肺運動負荷試験の終了理由はペダル50回転維持困難であった。また,入院中の食事は1800kcal全量摂取であり,間食はなかった。尿蛋白一日量(mg/日)の一週間平均値は4095→2159へ改善した。【結論】本症例において,運動療法によって筋力を維持することは困難であったが,運動耐容能を維持することができた。高用量ステロイド治療中のネフローゼ症候群患者における運動療法の強度の検証が必要である。
著者
河江 敏広 加藤 哲也 高木 隆司 松岡 立也 中山 誠子 服部 順和
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D0627, 2004 (Released:2004-04-23)

【はじめに】近年、肥満症に対する有効な治療法としてVery Low Caloric Diet(VLCD)がある。これは総摂取エネルギーを420kcal/dayに制限し短期の減量を可能とするものである。先行研究によればVLCD中に運動を実施した報告は散見するが運動効果に関する報告は少ない。今回、糖尿病を合併した単純性肥満一症例に対しVLCD中にAmerican College of Sports Medicine(ACSM)の推奨する減量プログラムを実施しAerobic Exercise(AE)とResistance Training(RT)が体重(BW)、脂肪量(FM)、除脂肪量(LBM)に与える効果を文献的考察を交えて検討した。【症例】43歳、男性、身長162cm、体重104.5kg、BMI39.8、糖尿病、高度肥満指摘されるも放置。1ヶ月後、空腹時血糖268mg/dlとなり、controlおよびdiet目的にて入院となる。入院中の食事量は当初1200kcal/dayから開始し、3日後にoptifast70によるVLCDを15日間実施した。その後は漸次1200kcal/dayとした。運動指導日数は19日であった。【方法】 TANITA社製BC‐118によるインピーダンス法を用い午前、午後に身体組成を測定。数値に誤差の無いよう衣服は同一の物とした。運動プログラムはACSMに準じた内容でAE、RTを行った。【結果および考察】BWは治療前104.5kgから99.5kg(5kg減)、FMは45.3kgから41.5kg(3.8kg減)、LBMは59.3kgから57.4kg(1.9kg減)となった。先行研究によれば減量時のAEは体脂肪減少の相乗効果、RTはLBM維持効果があることを明確にしている。今回得られた結果もAEによる総消費量増加によりBW、FMの減少効果を相乗させたと考えられた。また本研究において、RTの実施にも関わらずLBMの減少が認められた。先行研究においてVLCD後のLBMの変化をみると増加または維持を認めた報告は少ない。長澤によれば絶食時の筋量減少は摂取エネルギー制限によるタンパク質不足によりアミノ酸合成が制限されることや、それによる恒常性維持の為、骨格筋タンパクが利用分解されることを原因として挙げており、VLCD中はRTによるLBM維持は困難であることが示唆された。しかしながら本症例のように肥満症は元来インスリン抵抗性を来しやすいことや糖尿病、高脂血症を合併することが多く、これらに対するRTの効果はインスリン感受性の亢進、VLDLの異化亢進による血中TGの低下など動脈硬化病変の進展防止に有効であるとの報告が多く見受けられる。VLCDにおけるRTのLBM維持効果は明確ではないがAEのみではなくRTを取り入れることはインスリン抵抗性改善の面では有用であると考えられた。
著者
石田 恵子 天野 徹哉 阿部野 悦子 中嶋 正明
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.F1016, 2007 (Released:2007-05-09)

【はじめに】 我々は,これまで末梢循環障害,褥瘡などの症例に人工炭酸泉浴を適応し,高い効果を確認してきた。人工炭酸泉浴を負荷すると一時的に皮膚血管拡張作用が得られ,皮膚血流が促進することがわかっている。しかし,人工炭酸泉浴負荷によるこのような末梢循環障害,褥瘡改善効果が一時的な血管拡張作用によるとは考えられない。これには,他の持続する作用が関与していると考えられる。今回,我々は人工炭酸泉浴負荷後の深部組織酸素飽和度(StO2)を経時的に評価した。【方法】 対象は健常成人3名(平均年齢28.3±1.3)とした。被験者は半仰臥位のリラックスした肢位をとり,不感温度34°Cのさら湯浴と同温度の人工炭酸泉浴に両下腿(腓骨頭まで)を浸水した。測定プローブは非浸水部の左前腕内側と浸水部の左下腿後面部に添付した。浸水前の安静時10分間,浸水時20分間,浸水後2時間の皮膚血流,深部組織血液動態(oxy-Hb,doxy-Hb)を測定した。室温は24±1°Cに調整した。人工炭酸泉は高濃度人工炭酸泉製造装置(MITSUBISHI RAYON ENGINEERING CO.,LTD)を用いて作製し,その濃度は1000ppmとした。皮膚血流および深部血流,StO2(Oxy-Hb,doxy-Hb)の測定には,それぞれレーザードップラー血流計(ADVANCE RASER FLOWMETER),近赤外線分光器(OMEGA MONITOR BOM-L1TR)を用いた。【結果】‹皮膚血流›浸水部;さら湯浴においては経時的変化はみられなかったが,人工炭酸泉浴では入浴負荷時にのみ上昇が認められた。非浸水部;さら湯浴,人工炭酸泉浴ともに経時的変化はみられなかった。StO2浸水部;さら湯浴においては経時的変化はみられなかったが,人工炭酸泉浴では入浴負荷時に上昇を認め,出浴後もほぼ同値を2時間継続して示した。非浸水部;人工炭酸泉浴では浸水部と同様に入浴負荷時から出浴2時間後まで高値を示した。【考察】 人工炭酸泉浴の入浴負荷により皮膚血流は増加したが持続性は認められなかった。それに対し,StO2は2時間後も高値を維持した。人工炭酸泉浴では,炭酸ガスの経皮進入によりpHが酸性に傾きBohr効果による酸素供給促進作用が得られる。この効果により組織中に通常の状態に比べて深部組織のStO2が上昇する。今回の実験からこの効果が持続することが明らかとなった。閉塞性動脈硬化症や褥瘡などの循環障害に対する人工炭酸泉浴による改善効果においては,持続するStO2上昇作用がその一役を担っているのではないかと考えられる。また,非浸水部においても同様にStO2の上昇が起こったことから患部を直接,入浴負荷しなくても改善効果を得られると予想される。
著者
平塚 健太 吉田 整 大家 佑貴 倉本 祐里 田宮 高道
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1079, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】脳卒中片麻痺患者の歩行パターンの一つにExtension Thrust Pattern(以下,ETP)がある。ETPの改善策として装具の調整が多くなされるが,それのみでは改善できないことも少なくない。そこで今回,装具療法と機能的電気刺激(以下,FES)を併用してETPに対して介入を行った。【方法】症例は50歳代。男性。脳梗塞(右延髄内側)。左片麻痺。介入時評価は,Stroke Impairment Assessment Set(以下,SIAS):35点。SIAS-下肢Motor(以下,SIAS-m):1-1-0. Functional Ambulation Categories(以下,FAC):1と歩行に介助を要する状態であった。発症当日より段階的に理学療法介入を行った。発症4週後にはSIAS:48点,SIAS-m:4-3-1.7-item Berg Balance Scale(以下,7-item BBS):20点。10m歩行:15.8秒。Timed Up and Go Test(以下,TUG):21.8秒,T-caneと油圧制動継手付Ankle Foot Orthosis(以下,AFO)を使用下でFAC:3と運動機能の向上が認められた。しかし,下腿三頭筋のModified Ashworth Scale(以下,MAS):2と筋緊張の亢進が認められた。加えて,川村義肢社製Gait Judge System(以下,GJS)を測定した。底屈モーメントはLoading response(以下,LR)時の底屈モーメント平均値(以下,FP):5.9Nm.Pre swing(以下,Psw)時の底屈モーメント平均値(以下,SP):5.1Nmであった。なお,LR~Mid Stance(以下,Mst)に底屈モーメントが出現し,ETPを認めた。この時期より,ETPに対して装具療法とFESの併用療法を開始した。FESには帝人ファーマ社製歩行神経筋電気刺激装置ウォークエイド(以下,WA)を用いた。介入内容はKnee Ankle Foot Orthosis(KAFO)およびAFO装着下にて歩行練習や部分練習を行い,セラピストがWAをPsw~Mstにかけて足関節背屈筋群に対して電気刺激を与えた。介入時間は40~60分/日とし,4週間介入を行った。評価項目は,SIAS,SIAS-m,MAS,7-item BBS,10m歩行,TUG,FAC,GJSによる底屈モーメント平均値とした。【結果】介入後の結果は,SIAS:49点,SIAS-m:4-4-2,下腿三頭筋MAS:2,7-item BBS:22点,10m歩行:11.7秒,TUG:15.9秒,FAC:4,GJSによる底屈制動モーメント平均値:FP;10.3Nm,SP;7.1Nmと向上が認められた。下腿三頭筋のMASは数値に変化のない範囲で筋緊張軽減が認められた。さらにLR~Mstに出現していた底屈モーメントが減少し,ETPの軽減を認めた。【結論】ETPの原因として前脛骨筋の筋活動の関与(田中ら,2014)や足関節底屈筋の痙縮の有無(Perry,2010)が報告されている。それに伴う歩行中のロッカー機能の破綻がETPの出現に関与していることが考えられる。油圧制動継手付装具はロッカー機能の改善に寄与し,ETPの改善が期待されるが,本症例においては装具のみでは改善が困難であった。WAを併用することによって前脛骨筋の電気刺激による下腿三頭筋の相反抑制効果や立脚期までの電気刺激によりロッカー機能における下腿の前傾を促せることができ,ETPの改善に寄与したものと捉える。FESとの併用により装具療法で得られるロッカー機能の再構築が効率的に行える可能性がある。
著者
鵜川 浩一 古田 亮介 愛甲 雄太 銭田 良博
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-227_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】仙腸関節痛について村上らは、主病変は靭帯領域に存在すると報告している。また仙腸関節痛に対する運動療法においても後仙腸靭帯、骨間仙腸靭帯に対しアプローチすることで疼痛緩和を認めるという報告も散見できる。しかし、その靭帯の状態の違いついての報告は、我々が渉猟しえた限りで無かった。よって仙腸関節痛患者の靭帯が占める面積比から特徴を調査することを目的とした。【方法】対象は、仙腸関節ブロックの効果が7割以上の者で仙腸関節症と診断され、仙腸関節痛鑑別テストが陽性の者を仙腸関節痛群(以下、SIJ群)とした。その他の除外基準は、手術既往のある者とした。また、腰痛が無く仙腸関節痛鑑別テストが陰性の者を正常群(以下、N群)とした。SIJ群10名20関節(男性2名、女性8名、平均年齢41.2±8.8歳)、N群11名22関節(男性6名、女性5名、平均年齢27.2±4.2歳)が比較対象となった。測定肢位は、被験者を側臥位とし股関節膝関節は90°屈曲位とした。後仙腸靭帯と骨間仙腸靭帯(以下、靭帯領域)を超音波画像診断装置にて描出した。描出方法は、第1仙椎棘突起のレベルで、腰部多裂筋の短軸像を正中仙骨稜へ垂線となる位置で描出した。この位置の腰部多裂筋の深層に、靭帯領域が存在する。描出した画像に、腸骨稜と第1仙椎棘突起とを結ぶ線を引いた。その線と骨縁からなる領域を総面積とした。総面積と靭帯領域の面積をimage Jにて計測し、総面積に対する靭帯領域の割合の平均値の差をSIJ群とN群とで比較した。統計処理はMann-Whitney U検定を用い、有意水準を5%未満とした。【結果】総面積に対する靭帯領域の割合は、SIJ群38.9±11.6%、N群29.4±7.7%であり、SIJ群の方が正常群より優位に靭帯領域が広かった(P<0.05)。【結論(考察も含む)】SIJ群の靭帯領域はN群と比べて優位に面積が広かった。よってSIJ群は後仙腸靭帯、骨間仙腸靭帯が肥厚している可能性と、靭帯領域周囲の軟部組織が変性している可能性が示唆される。仙腸関節ブロックが有効な点も加味して考えると、仙腸関節痛患者に対する運動療法として、靭帯領域に着目することは有用である可能性が示唆された。今後の課題として、組織学的に検討することが必要である。【倫理的配慮,説明と同意】対象者に本研究の目的と意義について十分に説明し同意を得た。またヘルシンキ宣言に沿って本研究を進めた。
著者
小野部 純 今村 幸恵 神保 和美 山本 優一
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1184, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】Axillary web syndrome(以下AWS)は,乳がんの術後にみられ,腋窩から上腕内側または前腕にかけて皮下に索状物(cord)がみられ,強い疼痛と肩関節の可動域制限を呈する病態を指す。これは,手術による外科的侵襲によりリンパ管または表在静脈系の凝固能が亢進したために管内に血栓が生じ,さらに脈管の線維化が生じたためとされており,Mondor病の一種とも考えられている。AWSの多くは術後8週以内に発症し,通常2~3ヶ月程度で自然回復されるとされているが,長期化するケースも報告されている。また,有効な治療手段は確立されておらず,各治療施設によって異なる対応がとられている可能性が高い。そこで本研究では,文献検索によりAWSの治療介入方法の種類とその効果について抽出することとした。【方法】対象とする資料収集は2015年10月時点において,データベースとする医中誌データベースおよびMEDLINEより提供されている医中誌WebならびにPubMedを用いて行った。両データベースとも使用したキーワードは「Axillary web syndrome」とし,評価論文の種類は原著論文,症例報告とし,Reviewや会議録は除外した。収集した論文の選定は,テーマ,アブストラクトを確認し,以下の基準で選定を行った。選定基準として,①乳がん患者の術後を対象としていること,②理学療法の介入手段が記載されていること,とした。【結果】医中誌Webによる検索の結果,10編が該当し,その中から会議録を除外した結果,2編となった。次に,PubMedによる検索の結果32編が該当し,26編が選定基準に該当した。さらに内容を確認した結果,AWSに対する治療方法が記載されていたのは3編のみであった。該当した論文から,効果があった治療手技として挙げられていたのは,関節可動域訓練,ストレッチ,モビライゼーション,軟部組織への徒手療法,温熱療法,コッドマン体操であった。その効果としては,肩関節可動域の改善と疼痛の軽減が報告されていた。【結論】本結果から,AWSに対する理学療法手技を抽出することは出来た。しかし,論文数や対象者数が少なく,ランダム化比較試験は含まれておらず,効果的な治療手技が抽出できたとは言い難い。さらに,関節可動域訓練,ストレッチ,モビライゼーション,徒手療法のそれぞれの手技の違いが明確ではなく,ストレッチに関しても皮膚,筋,codeのどれを対照としてアプローチしているのかも一定ではなかった。AWSは,強い痛みと可動域制限から,著しくQOLを低下させてしまう。Torresらは,AWSの経過は一定期間で自然に収束する症状として見過ごされがちであるが,その病態を短縮できる治療方法の研究が必要であると提言している。本研究からは,現在行われている治療方法について抽出できたが,効果検証までには至らなかった。今後,増加するであろう乳がん術後の後遺症の一つとしてとらえ,有効な介入方法を確立していく必要があると考える。
著者
橋田 剛一 井上 悟 阿部 和夫
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0151, 2007 (Released:2007-05-09)

【はじめに】感染後横断性脊髄炎では感染後に脊髄が横断性に障害され、運動麻痺・感覚障害及び膀胱直腸障害などが生じ、後遺症が問題となる。今回、対麻痺症状を呈した2例を経験したので報告する。【症例1】36歳、女性。感冒症状発現の10日後頃より排尿障害、対麻痺が出現し、近医から当院に転院し、急性横断性脊髄炎と診断され、入院後12日より、往診で理学療法(PT)開始。筋力は下肢近位部1~1+、遠位部2-~2、上肢は4であり、弛緩性対麻痺とTh7以下での表在感覚中等度鈍麻、深部感覚は軽度鈍麻を認めた。坐位・起居動作は介助が必要であり、ADLでは食事動作以外で介助が必要であった。尿意はなくバルーン留置状態であった。開始時ASIA(motor)は52点、FIM は62点であった。車椅子移乗動作、坐位、起居動作練習からPTを開始した。開始後15日頃より下肢の痙性が出現したため立位練習を展開し、開始後22日より、ロフストランド杖等を用いて歩行練習も行った。開始後37日のリハビリ転院時には筋力は上肢5、下肢は近位部3+~4-、遠位部4-~4、表在・深部感覚は軽度鈍麻に改善した。起居動作全般は自立し、立位保持は軽度wide baseで可能となった。歩行は両ロフストランド杖レベルとなった。ADLは最少介助レベルで可能、自己導尿管理が自立した。終了時ASIAは84点、FIMは 94点であった。【症例2】43歳、女性。頭痛、下肢のしびれ感出現、近医に入院。その後対麻痺が出現、徐々に臥床状態になった。発症後2ヶ月で当院に転院し、横断性脊髄炎と診断され、入院後16日より、往診でPT開始。筋力は下肢近位部で右1、左1+、遠位部で右0~1、左1~2であった。上肢は4-~4であった。Th7以下での表在及び深部感覚の重度鈍麻を認めた。ADLはほぼ全介助で、尿意はなくバルーン留置状態であった。開始時ASIA(motor)は 51点、FIM は60点であった。PTでは、早期離床目的でベッド上動作、坐位練習から開始、開始後10日には、車椅子移乗まで進めた。開始後37日より車椅子出診を開始し、下肢痙性の出現に応じ立位練習も進めた。開始後55日のリハビリ転院時には、筋力は上肢5、下肢近位部で右2~3+、左2+~4-、遠位部で右0~2-、左2+~3+となった。移乗動作は修正自立、床上動作は監視下で自立し、立位練習レベルまで至った。ADL全般は介助レベル、排尿はバルーン留置のままであった。終了時ASIAは69点、FIMは 72点であった。【まとめ】やや異なった経過を辿った2症例を比較することで、早期からPT介入する必要性と痙性の出現、機能回復に応じて立位・歩行へのアプローチにつなげていく重要性を認識した。また、脊髄炎後遺症の長期的な回復を見越したPT介入も求められることが示唆された。
著者
伊藤 直樹 高野 映子 相本 啓太 小早川 千寿子 太田 隆二 谷本 正智 近藤 和泉
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0371, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】高齢者の転倒・転落による骨折は,予後を左右する重要な問題であり,様々な予防策が講じられている。当センターは,2014年10月より地域包括ケアシステムを支える目的で地域包括ケア病棟45床の運用を開始した。当病棟のリハビリテーション(リハビリ)対象疾患としては,大腿骨近位部骨折や脊椎圧迫骨折の割合が多く,在宅復帰を目標に,多職種が協力し離床の促進やバランス練習,基本動作練習,日常生活活動練習を積極的に実施している(リハビリ1日平均単位数2.25)。そこで,本研究の目的は,転倒・転落による骨折後に,地域包括ケア病棟を経由することで再転倒や転落のリスクが減少するか否かを検討することである。【方法】対象は,2014年10月1日から2016年9月30日に当センター地域包括ケア病棟を退院した患者614名のうち,入院中にリハビリを行った主病名が骨折の204名とした。対象者の年齢,在棟日数,転帰先,入棟及び退院時のFunctional Independence Measure(FIM)とバランス評価Standing Test for Imbalance and Disequilibrium(SIDE)の結果をカルテより抽出した。入棟時と退院時のFIMの合計を対応のあるt検定,入棟時と退院時のSIDEをカイ二乗検定で比較分析した(P<0.05)。【結果】入棟時もしくは退院時のFIMとSIDEの評価結果が欠損している者を除外した結果,分析対象者は97名(男性24名,女性73名)となった。対象者の属性は,平均年齢が82±9歳,平均在棟日数は48.7±62.5日,疾患別では,脊椎圧迫骨折が56%,大腿骨近位部骨折が27%,その他(上腕骨,膝蓋骨,大腿骨骨折)17%であった。転帰先は,在宅が83%,施設入所が17%,転院や死亡はいなかった。入棟時と退院時のFIM合計では入棟時78.3±32.8点(平均±標準偏差)であったが,退院時86.4±32.9点と有意に改善した(P<0.001)。SIDEについても入棟時(0:55名,1:12名,2a:16名,2b:4名,3:9名,4:1名)に比べ退院時(0:29名,1:6名,2a:20名,2b:10名,3:28名,4:4名)では有意に改善を認めた(P=0.001)。【結論】地域包括ケア病棟は,在宅復帰を支援するための体制が整えられている一方で,施行単位数の制限や短い在棟期間など制約がある病棟である。一般病床から地域包括ケア病棟を経由することで,退院後を見越した日常生活動作やバランス能力を改善する練習を積極的に提供できる。当センターにおいても多職種が協力して積極的にリハビリを行った結果,FIMやSIDEは有意に改善した。特に,SIDEは転落危険度が高いレベル0と1が減少し,転倒危険度が低いレベル2b,3,4が増加していたことから,転倒転落リスクを軽減できる可能性が示唆された。今後,実施プログラムの内容について検討し,より良いリハビリが提供出来るような体制を築きたい。
著者
田中 秀明 井舟 正秀 石渡 利浩 川北 慎一郎 西願 司
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100594, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに】臨床実習において,対象者との信頼関係や知識・技術向上のために理解しやすく円滑な実習が行えるよう対象者選定を行っている.学生のスキルにもよるが,理学療法プロセスを理解してもらうために経過が比較的安定している神経系・運動器障害を対象者とすることが多い現状がある.しかし,各施設の対象者としては内部障害が年々,増加している.また,神経系・運動器障害の対象者であっても,合併症として内部疾患を有しているケースは多々見られる.これからの理学療法士は施設の特徴もあるが,就職後すぐに内部障害を担当することも多くなってくると予想される.今回,当院での臨床実習で学生に内部障害対象者を担当してもらい,実習終了後に意識調査を実施し学習の効果について検討したので若干の考察を加えここに報告する.【方法】対象は,当院で臨床実習を行った学生10名(男性6名,女性4名)であった.実習内容についての大まかな流れについて説明する.対象者は実習期間中に退院でき,理学療法開始後早期の対象者を選定し説明と同意を得た上で学生が担当した.疾患は間質性肺炎,慢性閉塞性肺疾患,冠動脈バイパス手術後,慢性心不全急性増悪,急性呼吸窮迫症候群であった.指導内容は事前に電子カルテで疾患に対しての情報収集をし,病態の把握を行ってもらい医師に直接確認する場を設けた.収集した情報が的確であるか否かを指導者が確認し,不足している情報があれば修正し対象者の評価を行った.実習中では適宜,軌道修正を加え日々,変化する病態把握に対応した.全体像の把握してもらうために,退院の目途が立ち次第,家屋評価や介護保険の申請をし,退院後の生活支援にも関わった.また,症例に関わる文献抄読も行ってもらった.意識調査の方法は学校卒業後にアンケートを実施した.内容は(1)以前に内部障害を担当したことがあるか.(2)実習は学習になったか.(3)学校で習得した知識は生かせたか.(4)実習後の学習に役に立ったか.(5)内部障害に対する意識に変化はあったか.(6)今後も内部障害を担当したいか.(7)自由記載.以上の7項目についてアンケートを実施した.回答は,「はい」・「いいえ」・「どちらでもない」,その他自由記載とした.統計学的分析はKolmogorov-Smirnov検定を用い分析を行い,有意水準は5%とした.【説明と同意】倫理的配慮として,本研究の目的に対し十分な説明を行い,同意を得た上で実施した.【結果】(1)「はい」0名,「いいえ」10名.(2)「はい」10名,「いいえ」0名.(3)「はい」1名,「いいえ」9名.(4)「はい」10名,「いいえ」0名.(5)「はい」9名,「いいえ」1名.(6)「はい」8名,「いいえ」1名,「どちらでもない」1名.(7)症例が少ないので見られてよかった,考え方の変化があった,実習を通して苦手意識が解消された,国家試験対策になった,座学でわからなかった内容が実践を通してわかりやすかった,血液データの読み方が難しかった,離床を進める上での患者のアセスメントが難しい,まずは脳血管や運動器障害を見たい,手技的なテクニックを身につけたいなどの回答が得られた.尚,統計学的分析の結果(2)は「いいえ」,それ以外の項目は「はい」の方で有意差を認めた(p<0.01).【考察】今回の結果から,内部障害を担当したことで興味を持ち,有益な学習ができたと考えた.各養成校では,カリキュラムで様々な工夫をして授業を行っている.循環器・呼吸・代謝系理学療法を独立した授業を行っている養成校もある.座学では知識を整理し学習することが困難との意見があった.充実した授業で得た知識を活用するためにも,臨床実習で学習することで,学生のスキルが向上し国家試験対策に繋がるものと考えた.離床する際やデータの読み方などは各症例に対しケースバイケースで考える必要があるため,難しいとは思うが,臨床実習を通して考え方を経験することが重要と考えた.一部の学生から学習にはなったが,まずは神経系・運動器障害の担当希望や徒手療法などのテクニックを習得したい意見もあった.当然,あってしかるべきであり研鑽してほしいと考えるが,全身状態を考えた時に理学療法を施行する上での阻害因子を十分考慮し,リスク管理のために学習してほしいと思う.指導者側では,以前からの実習スタイルがあり,学生のみの問題ではなく指導者が内部障害の理学療法プロセスを十分に指導ができないことも要因として挙げられるため指導方法を確立することが重要と考えた.【理学療法学研究としての意義】内部障害を臨床実習で担当し経験をすることで有益な学習ができた.今後,臨床実習での指導方法を確立していくことが重要であると考えた.
著者
青木 利彦
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0094, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】人工膝関節全置換術(TKA)術後早期の異常歩行パターンの一つとして,Double knee actionの低下を臨床上経験する。原因として疼痛や荷重応答期での膝伸展モーメント減少により衝撃吸収機能が低下することなどが報告されている。我々は中高齢者で普及しているノルディックウォーキング(NW)がTKA後早期に膝伸展筋の負担軽減型歩行になると報告しており,今回,NWがDouble knee actionの改善に有効な歩行運動となりえるかを,独歩,および杖歩行と比較検討したので報告する。【方法】変形性膝関節症に対してTKAを施行し術後3週経過後に独歩可能となった10名の女性(年齢76.3±7.0才)を対象とした。課題動作は10m直線歩行路における自由速度での独歩,1本杖歩行(1本杖),およびジャパニーズスタイルのNWとし,表面筋電図と床反力計を用いて検討した。表面筋電図は術側の内側広筋(VM),外側広筋(VL),大腿二頭筋(BF),前脛骨筋(TA),下腿三頭筋(GS)を被験筋として表面筋電図を測定し,筋毎に%SWDM(Segment Weight Dynamic Movement)法にて振幅を正規化し,歩行1周期の平均筋放電量を求めた。床反力計は直線歩行路に埋め込み,術側下肢と対側に使用する杖の鉛直成分を計測した。計測値は飯森らの方法を使用し,第一,第2の山をF1,F2,F1とF2の間の谷をF3,立脚時間をTとしknee functional score(KF値)を算出(KF=(F1-F3)+(F2-F3)/T)しDouble knee actionの円滑さの指標とした。また下肢の着床と杖・専用ポールの着床時間の差を各々の鉛直成分検出時間の差で求めた。試技は各課題を3回実施し最大値の平均値を計測値とした。歩行様式間の比較には1元配置分散分析を行い,主効果を認めた場合は多重比較を行った。下肢と杖・専用ポールの着床時間の差はt検定を用いてNWと1本杖を比較検討した。【結果】表面筋電図での平均放電量(%SWDM)で主効果を認めたのはVMで,NW(51.8±9.0)は,独歩(58.2±10.1),1本杖(57.3±10.2)より低く,VLもNW(46.5±11.1)は,独歩(54.3±11.8),1本杖(52.4±11.8)より低い値となった(p<0.05)。床反力では,下肢の着床と杖・専用ポールの平均着床時間はNWが下肢着床前0.06秒で,1本杖は着床後0.13秒と2群間に有意な差を認めた(p=0.00)。また,KF値はNW(267.31±65.76)は独歩(170.30±46.82),より有意に高い値を示し(p=0.003),1本杖歩行(213.21±50.74)より高まる傾向が見られた。【結論】NWは上肢を大きく前後に振る様式であることから独歩や1本杖と比べ下肢の着床前にポールを床につきやすくなりVM,VLの能動的活動の抑制に貢献し,荷重と抜重の円滑さに作用したと考えられた。膝伸展筋の筋力低下を来たしやすいTKA術後早期のNWは,独歩,1本杖歩行と比べ,膝伸展筋活動の負荷軽減型の歩行様式であり,Double knee actionを改善する作用が得られる歩行運動である可能性がある。
著者
輿石 哲也
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab1330, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 臨床において筋力・筋持久力増強等の運動療法を行う際に、患者から疲労感の訴えを聞くことがある。しかし、どの程度の疲労感で運動を一時中止し休憩を挟むべきか、また最大筋力の低下が起こり、筋疲労が起こるかの先行研究は少ない。そこで今回、筋持久力に着目し、主観的な疲労感と筋疲労の関係を明確にすることを目的として、自覚的運動強度のScaleである15段階のBorg Scaleを疲労感の指標に、中等度の運動負荷で膝関節伸展運動を反復する運動課題を行った。その後、どの程度の疲労感から筋疲労が起こるか、群間における運動課題前後の筋力の変化率を比較し検討した。【方法】 対象は健常成人女性60名(年齢27.1±5.3歳、身長158.0±5.3cm、体重52.4±7.4kg)、対象を15名ずつ4群に分け、Borg Scaleを疲労感の指標にし、Borg Scale 13「ややきつい」まで運動課題を行う群(以下BS13群)、Borg Scale 15「きつい」まで行う群(以下BS15群)、Borg Scale 17「かなりきつい」まで行う群(以下BS17群)、運動課題を行わないcontrol群(以下C群)とした。筋力測定・運動課題の開始肢位は、端座位で両腕を胸の前で組み、右膝関節90°屈曲位、下腿は下垂した肢位とした。筋力測定は、各群とも運動課題前後に実施し、右大腿四頭筋の最大筋力を3回測定し平均値を求めた。測定方法は、Hand-held dynamometerアニマ社製μ-Tas F-01(以下HHD)を使用し、センサーを下腿遠位部前面に付けベッド脚と固定用ベルトで連結した。また、最大等尺性収縮で5秒間測定し、30秒以上の休憩を挟んだ。運動課題は、重錘バンドを右下腿遠位に着け、2秒に1回のペースで右膝関節伸展運動を反復させた。重錘バンドの重さは、女性の体重の24%から膝関節伸展運動の最大挙上重量の予測値を算出し、予測値の40%に設定した。また、運動課題の量は、Borg Scaleの表を見ながら、右大腿四頭筋がBS13群は「ややきつい」、BS15群は「きつい」、BS17群は「かなりきつい」とそれぞれ感じるまで運動を反復し、運動課題を中止させた。運動課題前後の最大筋力の変化率は、(運動後最大筋力-運動前最大筋力)/運動前最大筋力×100で算出し、各群間の変化率を比較した。統計処理は、Kruskal-Wallis検定後、scheffe法による多重比較を行った。有意水準は危険率5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、当院の倫理委員会の承認を得て実施した。また、対象に対して本研究の目的や方法を説明し、署名による同意を得た。【結果】 運動課題前後の最大筋力の変化率はC群0.02±2.89%、BS13群-4.79±7.34%、BS15群-15.10±12.50%、BS17群-21.88±12.42%であった。検定の結果、C群とBS13群では最大筋力の変化率に有意差が認められず、C群とBS15群、BS17群では有意差が認められた(p<0.01)。また、BS13群とBS15群、BS13群とBS17群では有意差が認められた(BS13群-BS15群:p<0.05、BS13群-BS17群:p<0.01)。BS15群とBS17群では有意差が認められなかった。【考察】 筋疲労とは、筋収縮を連続して行う際、筋力低下が起こることであり、疲労とは生体がある機能を発揮した結果、その機能が低下する現象や組織・器官の興奮性が低下する現象、また、予防的な警告であり、疲労困憊に陥る前に活動をやめさせる神経メカニズムや生体の防御反応といわれている。今回の結果から「ややきつい」の疲労感では筋力低下が起こらず、「きつい」の疲労感では筋力低下が起こり、筋疲労が起こっていると示唆された。これは、「ややきつい」と「きつい」の間で筋疲労が起こり始めており、「ややきつい」の疲労感は筋疲労が起こる前の警告、「きつい」の訴えは筋疲労が起こっている警告として捉えられると考えられる。宇都宮は、最大筋力の15~40%の負荷で疲労が起こるまで反復すると筋持久力増強に効果があると述べている。本研究も同様に最大筋力のおよそ40%の負荷をかけていたため、筋持久力増強における反復量は、筋疲労が起こり始める「ややきつい」と「きつい」の間までの反復が適切と考えられる。また、筋疲労の起こり始めに休憩を挟むことで、過度な疲労の蓄積を防ぎ、過負荷の予防につながると考えられる。今後は、疾患の有無や性別・年齢による違い、疲労感による目安が筋力・筋持久力増強時の運動負荷量の指標になるか検討が必要である。【理学療法学研究としての意義】 Borg Scaleを指標にした今回の結果から、「ややきつい」の疲労感では筋疲労が起こらず、「きつい」の疲労感から筋疲労が起こっていた。臨床においては、「ややきつい」と「きつい」の疲労感の間で注意を払う必要があると示唆された。これは、筋疲労の有無の判断となり、運動負荷量の設定や運動療法時に休憩を挟み、過負荷を予防するひとつの目安になると考えられる。
著者
河田 雄輝 須藤 恵理子 横山 絵里子
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1961, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】高度肥満者は治療が困難で,重篤な合併症や心理・精神的問題を有することが多く,治療法の選択に注意を要する。本邦ではBody Mass Index(BMI)30以上の肥満は欧米諸国に比べ少なく,BMI59以上ではリンパ浮腫を呈しやすい。今回高度肥満を契機に両下肢リンパ浮腫を生じ,両大腿内側にソフトバレーボール大の巨大な腫脹を来した症例を経験した。重篤なリンパ浮腫に対する圧迫療法は困難を極めたが,圧迫方法を工夫し,多職種と連携しながら取り組んだことにより,減量とリンパ循環障害の改善を認めたので報告する。【症例紹介】症例は36歳の男性,高度肥満症,脂肪性続発性両下肢リンパ浮腫,2型糖尿病,睡眠時無呼吸症候群,変形性股関節症,変形性膝関節症と診断された。現病歴は中学時60kg,高卒時140kg,20歳代190kgであり,2009年に減量目的でS病院に入院し234kgから200kgまで減量した。その後,運動不足や過食によりリバウンドかつリンパ浮腫の増悪が生じ,活動量の低下を来たしたため2013年当センターに入院した。入院時,身長169.7cm,体重234.7kg,BMI81.5であり,リンパ管が圧迫され両下肢リンパ浮腫International Society of LymphologyGrade(ISL)病期分類III期を呈し,右下肢に象皮症を生じ,両殿部~大腿内側にソフトバレーボール大の腫脹(大腿を含む腫脹最大周径150cm以上),リンパ漏や乳頭腫も認めた。屋内歩行はT字杖で自立していたが,息切れや心拍数の上昇により耐久性15mだった。【経過】肥満症の治療として,Nutrition Support Team(NST)介入による食事療法(1100kcal),看護と連携し毎日の体重変化を記載したグラフ化体重日記による行動療法,理学療法(PT)および作業療法(OT)による運動療法を入院翌日より開始した。並行してリンパ循環障害に対するスキンケアやリンパドレナージ,両下腿に対する圧迫療法,圧迫下での運動療法を組み合わせた複合的理学療法を施行した。また病識低下,意欲低下を認め,心理面に配慮しながら,肥満やリンパ浮腫の教育指導も行った。その結果,入院1ヶ月後には210kgまで減量したが,その後の減少は停滞した。入院3ヶ月後,リンパ漏や乳頭腫は軽減したが,両大腿部にリンパ液が貯留し,腫脹の硬結が悪化した。両大腿腫脹部の圧迫療法により貯留しているリンパ液を中枢へ還流する必要があると判断された。当初はロール状スポンジと弾性包帯にて圧迫を施行したが,重力や姿勢の変化,歩行動作で圧迫が外れやすく難渋した。OTと連携し,大腿部の形状に合わせて伸縮性のあるネオプレーンを用いたベルクロ付き圧迫帯を作製し,大腿全体を覆い固定した。看護師,OTと情報交換しつつ,日中を中心に時間を調整して圧迫療法を試みた。この結果,徐々に大腿部のリンパ液が中枢へ循環され,入院5ヶ月後の退院時には体重172kg,BMI58.8へ改善し,リンパ浮腫はISL病期分類II期,大腿を含む腫脹最大周径は圧迫開始時144cmから99cmまで縮小した。腫脹の縮小によって,徐々に運動量は増加し,T字杖歩行は耐久性100m以上に向上した。【考察】リンパ浮腫に対する圧迫療法は,高いエビデンスレベルにあるものの,不適切な圧迫は逆に浮腫を悪化させる可能性がある。本症例の腫脹に対する圧迫療法は,入院後3ヶ月間不良な皮膚状態であり困難を極めたが,その後の2ヶ月間は体格に合わせた圧迫帯を用いて適応できた。本症例ではリンパ浮腫の重症度に応じた介入が,リンパ循環障害の改善と体重の減量,歩行耐久性の向上をもたらしたと推察される。肥満やリンパ浮腫に対する教育指導はリンパ浮腫の改善のみならず,ADLやQOLの改善にも有効であった。【理学療法学研究としての意義】合併症や精神的問題を有する高度肥満症には,リンパ浮腫の重症度に応じた対応,患者個人に合わせた工夫を多職種と綿密に連携することが有効であると考えられた。また,心理状態に配慮しながら肥満や合併症への患者教育を行うことも効果的である。
著者
平岡 浩一
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-15-1, 2019 (Released:2019-08-20)

歩行などのリズミカル運動では中枢パターン発生器(central pattern generator; CPG)が駆動される。左右異なる速度で動くトレッドミル上で乳児を歩行させると左右異なるリズムのステップで対応するという知見などから,CPGは左右独立して存在すると考えられている。また,胸髄レベルで離断した除脳動物において,上・下肢のリズミカルな筋収縮をそれぞれ個別に誘発できるという知見から,上肢と下肢のCPGもそれぞれ独立しているとされる。各肢の制御を目的に独立して存在するCPGであるが,それらは固有脊髄路を介して互いに協調している。除脳動物において薬物を投与すると上下肢の協調したリズミカル運動が生じるが,その後胸髄レベルでも脊髄を離断するとこの協調は消失することから,固有脊髄路が上下肢のCPGを協調させていることがうかがえる。ヒトにおいても上肢の歩行様の腕振りにより,歩行時のパターンに合致したヒラメ筋H反射の相依存的な変調が同側と対側双方に出現する。これは,ヒト歩行時における上下肢CPG間の協調を裏付ける知見である。固有脊髄路は対側へ分岐した経路を介して左右肢の協調にも関与する。たとえばヒトにおいて,片側足関節のリズミカル運動をすると,安静している側のヒラメ筋H反射がtonicに抑制される。つまり,片側CPGの駆動は安静にある対側伸筋に対して持続性の強い交差性抑制をもたらす。これに対して両側足関節の交互運動をしている時には反対側に対しては位相依存的な抑制が生じるが,両側足関節の同位相性運動をするとその抑制は生じない。これは,両側を交互にリズミカルに活動させる歩行などに特化して位相依存的な抑制が生じることを示唆する。さらに重要なのは,リズミカルでない運動中は固有脊髄路を介した上下肢の協調を示唆する皮膚反射が消失することから,固有脊髄路を介した四肢運動協調は課題依存的に柔軟に回路を開閉できるという知見である。
著者
蛯名 岳志 永嶋 高大 西村 由香
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0979, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】座位は,立ち上がり動作の準備段階として捉えることができ,座位姿勢の状態を把握することは立ち上がり動作を分析する上で重要である。立ち上がり動作は椅子の高さ,肘掛けの有無など周囲の環境に影響を受け,環境設定によっては動作遂行者に掛かる負荷が変化しうる。即ち,環境設定によって立ち上がり動作の遂行を容易くすることや難易度を調節することができると言える。また,立ち上がり動作における骨盤の前傾は第1相で重心を前方に移動させる際に重要な役割を担っているとされている。そこで本研究の目的は,環境設定によって座位での骨盤の前傾を促せるかどうかを明らかにすることとした。【方法】対象は健常成人20名(男子10名,女子10名,年齢21.6±0.6歳,身長165.5±8.6cm)とした。座面高を3条件,座面奥行きを2条件とし,それぞれの組み合わせで骨盤傾斜角度の測定を行った。対象者のうち8名に対しては下肢荷重量の測定も行った。座面高は下腿長,下腿長+5cm,下腿長+10cmの3条件,座面奥行きは大腿長1/2が座面端上にくる条件(以下,座面奥行きが広い条件)と大転子が座面端上にくる条件(以下,座面奥行きが狭い条件)の2つとし,測定は座面高が下腿長,下腿長+5cm,下腿長+10cmの順に,座面奥行きはランダムとし,座位姿勢は,左右足部を肩幅程度に離してもらい,足関節は底背屈0°,上肢は胸部前方で組みリラックスして座るよう指示した。骨盤傾斜角度の測定方法は,上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ線と水平線のなす角とした。触知にてランドマークの確認を行い,右側からビデオカメラで撮影後,画像解析ソフトImage Jを用いて算出した。測定は3回行い,後傾方向を正の値,前傾方向を負の値とし,平均値を算出した。対象者の8名に対しては,同時に体重計を足底へ設置し,同条件下での下肢荷重量を測定した。荷重量は体重で除し,補正した。座位における座面高と座面奥行きの条件による骨盤傾斜角度と下肢荷重量を比較し,両者の相関関係をみた。分析は,座面奥行きによる差に対しては対応のあるt検定,座面高による差に対しては反復測定の一元配置分散分析として,繰り返しのない二元配置分散分析を行い,多重比較法はTukey-Kramer法を用いた。危険率は5%未満とした。相関関係はピアソンの相関係数の検定を用いた。【結果】骨盤傾斜角度は,座面奥行きの広い条件では,どの座面高でも有意差を認めなかった(下腿長:12.4°±8.3°,下腿長+5cm:11.6°±8.1°,下腿長+10cm:12.9°±7.6°)。座面奥行きの狭い条件では,下腿長(17.7°±6.8°)と下腿長+5cm(14.9°±6.7°),下腿長+10cm(12.8°±7.6°)との間でそれぞれ有意差を認め(p<0.01),座面の高い方が骨盤が前傾していた。また,座面高が下腿長,下腿長+5cmでは,座面奥行きによって骨盤傾斜角度に有意差があった(p<0.05)。下肢荷重量は,座面奥行きが広い条件で下腿長(21.5%±1.7%)と下腿長+5cm(18.8%±3.2%),下腿長+10cm(12.5%±2.7%)との間に,下腿長+5cmと下腿長+10cmとの間に有意差を認め(p<0.05),座面の高い方が荷重量は少なかった。座面奥行きの狭い条件では,下腿長(24.4%±3.9%)と下腿長+10cm(25.6%±3.4%)との間に有意差を認めたが,下腿長+5cm(24.6%±3.1%)は他との有意差がなかった。骨盤傾斜角度と下肢荷重量の相関関係について,座面奥行きが広い条件では相関関係が認められず(r=-0.149,p=0.488),座面奥行きの狭い条件では負の相関が認められた(r=-0.441,p=0.031)。【考察】座面奥行きの狭い条件では,座面を高くすると骨盤の前傾を促すことができ,下肢荷重量が多くなることが分かった。座面奥行きの狭い条件で座面を高くすることは,自身での骨盤前傾動作が困難な方の骨盤前傾を促し立ち上がり動作を簡易的にすること,運動療法時の立ち上がり動作の段階的な負荷量決定の指標になる可能性が示唆された。また,日常生活において立ち上がり動作が困難な方の身体状況に合わせた高さの椅子や昇降式ベッドを導入することで,活動性の拡大につながると考える。座面奥行きの広い条件では下肢荷重量は少なかったが,奥行きの狭い条件よりも骨盤が前傾していたことから,随意的な骨盤前後傾運動を行う際には有用な環境である可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】座面高,座面奥行きによる環境を含めた設定によって座位骨盤傾斜角度の調節が可能であることが示唆された。運動療法や日常生活の環境設定の一助となる。