著者
高橋 謙 大久保 利晃
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.237-243, 1995

本稿は,特に安全衛生に関連した最近の国際労働条約を取り上げ,その特徴を明らかにした上で,総括を試みた.同分野に関連し, 1960-93年の期間中に採択された条約数は13である.これらの条約は,異なる目的をもって安全衛生分野の各領域を網羅しているため,対比的に記述した.条約は批准される必要があるため,日本の批准状況をILOおよびOECD加盟諸国と統計的に比較した.日本は, 1993年6月現在,このうちの3条約を批准したが,この水準はILO加盟国平均をわずかに上回るが, 24のOECD加盟国中11位の批准割合であった. ILO条約のうち,日本の批准割合の相対的水準は,安全衛生分野の方がそれ以外の分野よりも高かった. ILO条約は,引用や参照によって相互に関連しているため, 155号(労働安全衛生)や148号(作業環境)条約などの基本的条約の批准努力が安全衛生分野における他条約の批准を容易にすることが考えられる.
著者
山形 辰史
出版者
財務省財務総合政策研究所
雑誌
フィナンシャル・レビュー (ISSN:09125892)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.1, pp.171-191, 2005-02

HIV/AIDS、SARS、鳥インフルエンザといった新興感染症、薬剤耐性を持った病原体の出現によって問題が深刻化している結核、マラリア等再興感染症への関心が世界で高まっている。感染症の予防や治療はそれを個人に施すことのプラスの効果が国境を超えてスピル・オーバーすることが多く、国際公共財としての性質を持っている。また、新薬・ワクチンの成分・製法に関する情報および、感染症の流行に関する情報は典型的な公共財であり、誰しもがフリー・ライドするインセンティブを持っている。したがって、これら公共財の過少供給の問題を解決するためには国際的な協調行動が必要である。 世界の感染症対策は、感染がより大規模に広まっている発展途上国を中心としたものにならざるを得ない。現在これをリードしているのはアメリカであり、日本はWHOへの出資については存在感を示しているものの、それ以外の機関への出資や二国間協力の面において、少なくとも今現在においては貢献度が大きいと見られていない。また、新薬・ワクチン開発については日本の財政的な面での貢献は全く目立たない。 国際的な感染症対策に関する日本の印象を高めるためには、沖縄感染症イニシアティブの際になされたような形で金銭的貢献度を再び高める、あるいは、国際的に必要と考えられているものの他国が協力を決めていない分野への貢献をいち早く宣言する、等の対応が考えられる。
著者
Dagvadorj Otgonjargal 中村大 川口貴之 渡邊達也 川尻峻三 宗岡寿美
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.137, no.7, pp.69-78, 2021-07-31 (Released:2021-07-31)
参考文献数
16

In this study,field surveys were carried out at the damaged area of slope stabilization works,where the main cause was presumed to be the frost heaving of the rock mass.Field measurements of the freezing depth and the amount of frost heave were also conducted.In addition, the effectiveness of the slope stabilization work with the frost heave measures was verified based on the investigation results.The findings are summarized as follows. (1) From the results of the field survey and the field measurements,it was found that even if frost heaving occurred in the extreme surface layer, the rock mass would be degraded and the slope stabilization work would be affected.(2)From the results of the frost heaving tests, it is clear that the frost susceptibility of the damaged rock slope is extremely high, and there was wide agreement between the results of the frost heaving tests and the results of determining the frost susceptibility of the damaged rock slope using a simple strength test method. Therefore, the validity of the simple method proposed by Nakamura et al. for determining the frost susceptibility of rocks by using the strength test was also verified. (3)It was confirmed that both the gabion and the continuous fiber reinforced soil work were effective in preventing the freezing front from advancing into the rock mass.The method of covering the rock slope with non-frost susceptible material to prevent the penetration of the freezing front was found to be effective as a countermeasure against frost heaving.
著者
高橋 菜奈子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.376-381, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)

小倉百人一首LODは,かるたゲームの情報と和歌の情報を整理し,Linked Open Dataにまとめたデータセットである。本稿ではデータのモデルと語彙の設計を解説する。全国各地の図書館に所蔵され,オープンデータとして公開されている古典籍の画像データをLODでつなぐことにより,オープンデータ画像の活用事例を示す狙いがある。画像データは,IIIFを使って,正確に領域を特定してリンクし,画像の比較が容易にできるようにした。翻訳本も対象に追加し,多言語に対応したモデル設計を行った。文化情報資源を組織化し,精緻にLOD化することで,人文学研究や文化的な利用にデータを活用できることを示した。
著者
福田 一史
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.366-371, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)

ビデオゲームに関わる教育や研究活動が国際的に活発化しており,ビデオゲームの知的情報資源としての側面に注目が集まりつつある。膨大に頒布されるビデオゲーム群を保存し,資料体として共同で管理し運用するためには,目録が必要不可欠である。本稿ではビデオゲームの目録作成とりわけそのデータ構造について着目し,先行研究を概観した上で,立命館大学ゲーム研究センターのゲーム保存の事例を通じて,その記述的特性を踏まえた機能要件の抽出とデータモデルの策定ならびに目録作成や,オンライン目録などによるデータ公開の手法を論じる。
著者
宇都 雅輝 植野 真臣 Masaki UTO Maomi UENO
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18810225)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.5, pp.459-470, 2020-05-01

近年,学習者の実践的かつ高次な能力を測定する手法の一つとしてルーブリック評価が注目されている.ルーブリックは評価者の主観による評価基準をより客観的にするためのツールであるが,それでも評価がパフォーマンス課題や評価者,ルーブリックの評価観点の特性に依存してしまうことが指摘されてきた.この問題を解決する手法の一つとして,これらの特性を考慮して学習者の能力を測定できる項目反応モデルが近年多数提案されている.しかし,既存モデルは学習者・課題・評価者・評価観点で構成される4相の評価データに直接には適用できず,課題・評価者・評価観点の特性を同時に考慮した能力測定は実現できない.また,ルーブリック評価の評点は一般に段階カテゴリーとして与えられ,各カテゴリーに対する評価基準は評価者と評価観点の特性に依存する.しかし,既存モデルでは評価基準は評価者と評価観点のいずれか一方にのみ依存すると仮定している.以上の問題を解決するために,本論文では,評価観点と評価者の評価基準を考慮して,ルーブリック評価の4相データから学習者の能力を測定できる新たな項目反応モデルを提案する.また,シミュレーション実験と実データ実験を通して提案モデルの有効性を示す.
著者
大角 玉樹 Osumi Tamaki
出版者
琉球大学国際沖縄研究所
雑誌
国際琉球沖縄論集 = International review of Ryukyuan and Okinawan studies (ISSN:21867933)
巻号頁・発行日
no.7, pp.39-50, 2018-03

本稿では、沖縄感染症研究拠点形成促進事業の一環として実施されているイノベーション・エコシステム形成に向けた研究を紹介し、政策提言に向けた分析を行う。地球温暖化、グローバル化、ヒトやモノの移動の急増により、感染症のリスクが急増しており、実効性の高い政策が求められている。沖縄も、観光客と物流の急増を受けて、感染症対策が急務であり、内外の研究機関や公的機関と連携をとりながら研究開発とネットワーク形成を推進しており、将来的には持続的なイノベーションを創出する感染症研究拠点形成も予定されている。本稿では、その実現に向けたCSV モデルと今後の政策的課題を提示する。
著者
井内 太郎
出版者
広島史学研究会
雑誌
史学研究 (ISSN:03869342)
巻号頁・発行日
no.194, pp.p48-70, 1991-09

In the royal financial administration of medieval England, the Exchequer functioned as the main department. The system of assignment was one of the important ways to receipt and issue the money which was used in the Exchequer from mid-14th century to mid-17th century.In former studies, the role of this system has been underestimated. It has been said that this system was the obstacle of the financial administration of the Exchequer, and it was one of the reasons why the Exchequer was on the decline from Lancasterian period to mid-Tudor period. The purpose of this article is to re-examin this estimation of this system. The authours's argument is as follows;(1) The function of this system is devided into four types. The function was very defferent by each period, espicially changed at York and Cromwellian period.(2) Through this system, the Exchequer continued to function as the main department with the king's Chamber in the financial system.(3) As the result, the development of this system gave the opportunity to reform the accounting system of the Exchequer to the efficient one. The Exchequer, therefore, is not always unchaned nor conservative.The conclusion is that the Exchequer functioned as the main department in the financial system with the Chamber even in York and early Tudor period through the system of assignment. The second is it was recovering the size of the revenue enough to be the main department and efficiently changing the accounting system by the reform of 1554. Therefore, the Exchequer was not always unchanged nor conversative.
著者
岩倉 成志 新倉 淳史 高平 剛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.2004, no.765, pp.39-48, 2004

本研究では経路選択行動におけるサービス水準の知覚誤差を分析する. 離散選択モデルは分析者側が設定したサービス水準を用いることが通常だが, 特定の経路に系統的な知覚誤差が発生する場合は, 知覚誤差をランダム項で吸収できない. 東海道線と横須賀線の利用者を対象に知覚誤差の分析を行った結果, 所要時間や混雑率に大きな知覚誤差が発生すること, またその要因として過去のサービス悪化の記憶や個人の路線の評価, 情報探索性向などが影響することを明らかにした. 以上の観察結果をもとに, サービス水準の知覚誤差モデルを構築するとともに, 選択肢集合の形成と選択行動を同時表現するPLCモデルで習慣強度を考慮した経路選択モデルを検討した.
著者
池尾 恭一
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.6-15, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
43

新型コロナウィルス感染症の流行は,日本のマーケティングのあり方にも大きな影響をもたらした。激変する環境のなかで,マーケティング戦略をいかに適応させていくかは,マーケティング研究,マーケティング実務の双方にとって,きわめて重要な課題である。しかも,今回の新型コロナ危機がマーケティングに及ぼす影響は,それにとどまらないであろう。生活様式や購買行動の変化に不可逆的な部分が含まれるならば,長期的には,マーケティングのあり方を抜本的に変えてしまいかねない可能性も秘めている。本稿は,そうしたなか,新型コロナ危機のなかで広がった,オンライン商談,D2C,オムニチャネルに焦点を当て,これらの動きが,流通チャネル政策を通じて,将来に向けてどのような戦略課題をもたらすかを明らかにしようとするものである。