著者
中嶋 真理子 中山 朋子 前濱 和佳奈 緒方 麻記 尾崎 茜 水谷 慎介 小島 寛
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.504-510, 2019-10-31 (Released:2020-02-29)
参考文献数
19

目的:障害者が歯を喪失する原因を調査した.対象と方法:知的能力障害,発達障害,身体障害,精神障害を有し,2015年4月から2018年3月までに当科に来院した患者を対象とし,第三大臼歯や過剰歯を除く歯を抜去した患者を抽出した.抜去した歯の診断は,う蝕(著しい歯冠崩壊または根尖性歯周炎),歯周疾患,その他(歯の破折,外傷など)に分類した.結果:調査期間中に来院した障害を有する者は897人で,20歳未満が242人,20~39歳が438人,40~59歳が177人,60歳以上が40人であった.抜歯処置を受けた患者と来院した患者の数は,知的能力障害が51/361人(14.1%),Down症候群が7/90人(7.8%),自閉スペクトラム症が15/238人(6.3%),その他の発達障害が6/25人(24.0%),身体障害が17/138人(12.3%),精神障害が18/45人(40.0%)であった.知的能力障害,Down症候群,自閉スペクトラム症,その他の発達障害における抜歯原因は161歯(83%)がう蝕,19歯(9.8%)が歯周疾患,14歯(7.2%)がその他であった.身体障害,精神障害では,49歯(62%)がう蝕,22歯(27.8%)が歯周疾患,8歯(10.1%)がその他であった.結論:抜歯原因はう蝕が多くを占め,知的能力障害,Down症候群,自閉スペクトラム症,その他の発達障害でその傾向が強かった.
著者
角皆 静男
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.180, 2010 (Released:2010-08-30)

私が大学に入った1957 年に,Keeling はIGY 国際地球観測年の一環としてハワイのマウナロアで大気中CO2 濃度の連続観測を開始した.この年の暮に315 ppm(季節変動を補正)だったその濃度は,2010 年には390 ppm に達した.その増加の主因は人間活動であるが,人間が大気に放出したCO2 量はその2 倍以上だった.今後どうなり,何を引き起こすかについては,大気のCO2 の測定だけではわからない.流体である海洋を中心とする物質循環は,ホリスティックであり,動く海水の中での化学物質の特性と太陽光を受けて始まる生物の食物網がこれに深く関与し,大気圏との交換,河川からの陸源物質,死の世界ではない海底との間のやりとりなどに支配されている.従って,その部分部分のどこか1 カ所を深く追究しても,真の姿を描き出すことは難しい.私は,複数の研究を同時に進めながら,それに迫ることを試みてきた.得られた結果のいくつかを物語風に解説する.
著者
松下 哲明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.1-10, 2019 (Released:2019-01-20)
参考文献数
29
被引用文献数
1

熊本地震では風評被害の低減に向け,観光客に対する助成制度(ふっこう割)が実施された.多くの観光客が利用したことが報じられているものの,施策の効果は定量的に評価されていない.そこで本研究は九州各県の宿泊観光統計を用い,ふっこう割が観光客の回復過程に及ぼした影響を分析した. その結果,熊本県と大分県は同じ割引率であったものの,熊本県は大分県よりも観光客の増加が少なかったことを示した.観光資源,宿泊施設,道路網など被害の有無が影響を及ぼした要因として考えられる.また,熊本県,大分県以外の地区は,復旧トレンドを大きく変化させるほどの影響は認められなかった.このような分析結果は予算規模,対象地区,割引率,割引期間など制度設計の改善に向けた基礎資料として有用と考える.
著者
奥村 拓朗 伊藤 雅広 岡出 美則
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.262_3, 2018

<p> 国立教育政策研究による平成25年度学習指導要領実施状況調査では、小学校高学年の6年生を対象としたボール運動領域ゴール型における、攻撃に関する達成規準を通過した児童の割合はいずれも90%を超えていた。しかし、この調査は中学年段階については検討していない。そこで、本研究では2017年に小学校4年生2学級65名を対象としたフラッグフットボールの授業(8時間単元)のメインゲームにおいて発揮されたゲームパフォーマンスの達成度を学習指導要領に示された指導内容の例示に即して評価することで、学習指導要領に示された指導内容の例示の妥当性について検討した。分析対象は、8時間目のメインゲーム中のゲームパフォーマンスとした。2名の分析者間の分析結果の一致率は93.8%であった。その結果、中学年の内容として例示されている「ボール保持者と自分の間に守備者がいないように移動すること」を通過した児童の割合は84.6%で、学習指導要領実施調査で設定されている評価の基準と対応させると相当数の児童が通過しており、示されている内容が妥当であることが確認できた。</p>
著者
由井 義通
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.41, 2006

1.問題の所在経済のグローバル化の進展は,労働力の国際的な移動をもたらせた.企業活動は国際的に展開し,それに伴って駐在員として,あるいはその家族の随伴移動を生じさせながら海外勤務者が増加していることは容易に想像できる.また,近年では海外就職に内容を特化した就職情報誌が刊行されるなど,就職先として海外を選び,自らの意志で「海外で働く」ことを選択することが珍しくなくなっている.このような国際的な人口移動の内容に関しては,まだ十分な検討がなされているとはいえない.1994_から_95年に日本人の海外就職ブームが起こったとされるが,それはホンコンでの就職がマスコミなどで取り上げられたことで火がついた.当時,日本における深刻な景気後退に伴う就職の困難さも海外での就職に目を向けさせたといえる.また,海外の日系企業においても,駐在員を減らし,現地採用者への切り替えたりすることによってコスト削減を図るところが出てきた.しかしながら,海外就職は就労ビザ取得の制約が大きく作用するため,専門的技能や知識などをもった労働者しか就労ビザの発給をしない欧米諸国では就労することは困難である.そのような状況のなか,シンガポールでは4年制大学卒業者であれば比較的容易に就労ビザを取得することができるうえに,英語で仕事ができることや治安が良いことなど,海外就職希望者にとって好条件がそろっている.それに加えて,受け入れ側となる企業においても,東南アジア全体を統括するリージョナルセンターとして機能を拡張している日系企業やそれらとの取引の多い外資系企業が,日本語を話すことができる就業者を求めている.また,上記のような経済的背景とは違った観点から海外就職者に特徴的な現象を報告したThangほか( 2002, 2004)の先行研究がある.それらの研究では,シンガポールでは多くの日本人女性が就労の機会を得ており,彼女たちが海外就職を希望した理由が日本の雇用状況や就業における女性の地位のアンチテーゼ的な意味を持つことや,日本人女性にとって海外で働くことの意義,海外就職の際の求職活動などが詳細に報告されていた.海外勤務を求めて人材紹介会社に登録する日本人の約80%が女性で,彼女たちの大部分が人材紹介会社の求人情報を利用して求職活動をしていることから,本研究は,海外で働く日本人女性の就労と生活を明らかにする調査とリンクさせ,海外就職における人材紹介会社の役割に関する調査を実施した.本発表はその研究成果について報告する.2.研究方法人材紹介会社への聞き取り調査は,2006年2月に日本国内で海外への人材紹介をしているJ社本社,2006年3月と8月にシンガポールでC社,J社,P社,T社に実施した.上記の聞き取り対象の人材紹介会社は,日本商工会議所や日本シンガポール協会の紹介などを通したもので,シンガポール内では大手と中堅の日系人材紹介会社である.併せて人材紹介会社や研究グループの知人の紹介などによって,シンガポールで働く日本人女性に対してもインタビュー調査を行った.3.シンガポールの人材紹介会社日本国内の大手人材紹介会社の大部分は,シンガポールにオフィスを置いている.転職行動の盛んなシンガポールには現地資本や外資の人材紹介会社が数多くあるが,日系人材紹介会社は,シンガポールやその周辺国の日系企業や外資系企業への現地採用日本人社員の人材紹介,第二に日系企業の現地採用外国人(日本語の会話能力があるシンガポール人やマレーシアの中国系)を主たる業務としている.日本企業が人材紹介会社を通して人材を募るのは,人材選定の作業を人材紹介会社に任せることができるからである.なぜなら,人材募集の広告をシンガポールの新聞等で行う場合,多数の応募があるため,人材選定のスクーリングを人材紹介会社に依存せざるをえないからである.4.人材紹介会社の求人情報一部を除いて人材紹介会社の求人情報は,web上で公開されている.本研究では,J社のweb上に公開されている求人情報について国別に集計した結果,タイやインドネシアでは製造業の求職情報が大部分を占めるのに対して,シンガポールでは職種では営業職,IT関連のカスタマーサービスやSE,事務職,サービス業など多様な雇用があることが明らかとなった.
著者
久喜 絵理 桑垣 佳苗 吉野 恭正
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.239, 2011 (Released:2011-08-03)

【目的】うつ病があるとリハビリテーション(以下,リハ)は滞り,予測通りにはADLが向上しにくい.また,うつ病には波があり躁期と増悪期がある.今回,うつ病を有する右膝蓋骨骨折の患者を担当し,入院中にそれぞれの時期を経験したので,以下に報告する. 【方法】カルテ記録より経過を追い考察をする.本症例には発表の了承を得ている. 【結果】2010年4月4日自宅の庭で転倒,右膝蓋骨骨折を受傷,同日入院.翌日より術前リハ開始.4月15日観血的整復固定術施行,翌日より術後リハ開始.4月22日骨折部の転位あり,4月27日再度観血的整復固定術施行.翌日より右膝関節運動禁忌にて術後リハ再開.5月6日骨折部の再転位あり.右膝関節伸展位でのギプス固定にてリハ介入継続.この頃から消極的な発言が聞かれ始めた為,リハ介入時間を統一した.5月17日よりルジオミール投薬開始.この頃から他者依存や危険行動が目立ち始めた.7月1日ギプス固定からニーブレースへ変更.大声,暴言も著明となり明らかなうつ病の増悪と意欲・発動性の低下が認められた. 7月14日精神科受診にて炭酸リチウムが減薬となった.病棟での問題行動は続いていたが,言動や表情がやや改善されてきた.7月30日主治医より,自宅退院かそれ以外か決めるよう説明がされた.8月5日自宅への試験外出以降,リハ意欲の向上を認め,病棟生活の質も向上した為,リハ介入時間を再度統一した.9月4日介護サービス導入にて自宅退院となった. 【考察】うつ病患者は意欲を持ちにくく,意欲が安定して継続しない為,リハは難渋しやすい.生活の中にパターン化・習慣化された行動を取り入れることが効果的とされている為,介入時間と訓練内容を一定化させた.生活範囲の狭小化に伴う流入刺激の減少にて,うつ病が増悪するとされている為,病棟での安静度や歩行練習量を増減させた.更に本患者は他者依存が強かった為,口頭指示のもと監視下でのADL動作練習を行い,病棟へ伝達した.うつ病治療薬の効果は,投与後1~2週間で発現する.本患者はうつ病増悪後,専門医により抗躁薬が減薬された.リハ意欲が伺え始めたのは減薬9日後であり,病棟生活も含め快方を認めたのは減薬23日後であった.薬効が現れ始めた頃に自宅への試験外出を行ったことで, 今後の見通しが定まり,心理的相乗効果が精神状態を安定させたと考える. 【まとめ】うつ病には波がある為,投薬状況と患者の言動や精神状態の観察と照合が必要と考える.また,身体能力と精神状態に応じて,運動負荷や課題の難度調整が必要である.
著者
佐合 純造 松浦 茂樹
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.127-137, 1999-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
32

The government, which had established a river improvement plan in 1925, started improvement projects in 1930 on the Asahi River. Main purpose of the project was to improve the inland navigation system as well as flood control City planning law was applied to Okayama city in 1923.Since the navigation system of the downstream of the Asahi River was very important for the urban development, it was asserted that the downstream of the Asahi River should be turned into a canal.The Hyakken. River had been diverged from the main stream of the Asahi River in the 1600s.The people of Okayama raised objections to the original plan, and besides, there was the intense struggle with the improvement plan between those who lived in the area near the main stream and those who lived in the area near the diverged channel.Finally, the Hyakken River was officially designated as a diversion channel in the plan, and the main stream of the Asahi River was improved to serve the needs of navigation system as well as a flood flow channel.
著者
茂木 快治
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、因果推論、欠損データ分析、コピュラモデルの三者を結びつけることである。これら3つの研究分野を融合させるのは、本研究独自の取り組みである。まず、本研究は一般性の高いモデルの下で因果推論の精度向上を達成する。さらに、提案した因果推論の手法を応用し、欠損データに対するコピュラモデルの推定を可能にする。因果推論と欠損データ分析の間の理論的な類似性を利用すれば、両者を自然な形で結びつけることができる。欠損データに対するコピュラモデルの推定を実現させることにより、経済予測の精度が高まる。
著者
山中 俊治
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.276-279, 2019-05-01 (Released:2019-05-29)

「デザインこそが新しい価値をもたらす」をキーコンセプトに,生産技術研究所は,デザインとエンジニアリングの融合によるイノベーションの創出と,デザインエンジニアリングの教育を目的として価値創造デザイン推進基盤を設置した. 2017年からは,英国RCA(Royal College of Art)と共同でRCA-IIS Tokyo Design Labを設置し,研究者,クリエイター,企業とのコラボレーションを通じて,未来の価値を具現化したプロトタイプを制作し,内外に発表している.
著者
西島武郎 著
出版者
鶴書房
巻号頁・発行日
vol.野球学校の巻, 1949
著者
長谷川 光一 ペラ F マーチン カーン マイケル ウー ジュン
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヒト多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)は、特定の培養条件下で、多能性を保ったまま無限に増殖させること(自己複製)や、人体の全ての細胞種を作り出すことが可能である。このため、細胞移植治療や創薬、疾患研究への利用が期待されている。本研究では、大量の細胞が必要となるこれらの応用利用を安全に安価で行うために、自己複製のメカニズムを解明し、化合物で制御することで合成培養システムの開発を行った。その結果、3種類の化合物を用いることで、従来より安価で安定した合成培地を開発し、この培地を用いた培養システムの開発に成功した。本システムによって多能性幹細胞を利用した再生医療が加速されるものと期待される。
著者
楠元 史 今井 亮太 兒玉 隆之 森岡 周
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.479-483, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
21
被引用文献数
4 1

〔目的〕本研究は,メンタルローテーション課題時における脳神経活動領域の経時的変化を脳波解析により明らかにし,反応時間との関連性を検討した.〔対象〕右利き健常大学生15名.〔方法〕課題として,1試行計48枚の手画像をランダムに呈示した.脳活動は高機能デジタル脳波計を用いて記録計測した.対象者を反応時間の速い群,中間群,遅い群に分け,そのうち,速い群と遅い群の比較を行った.〔結果〕反応時間の速い群では後頭葉・側頭葉・前頭葉の順で,遅い群では後頭葉・頭頂葉・前頭葉の順に脳活動が認められた.〔結語〕メンタルローテーション課題において,運動学習に関与する脳領域を活性化させるためには,対象者に心的回転を行う時間的余裕を与え,呈示された画像を自己の身体として捉えることが大切ではないかと示唆された.
著者
岡村 圭祐
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.44-45, 2010-01-05
被引用文献数
1

1 0 0 0 OA 愉快小僧

著者
井上一雄 著
出版者
鶴書房
巻号頁・発行日
1949
著者
高橋 誠一
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.582-588, 1966-12-30 (Released:2012-11-20)
参考文献数
65
著者
飯田 隆夫
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
no.44, pp.35-52, 2016-03-01

論考の目的本稿は、相模国の山岳寺院大山寺の支配にあった御師が、神仏分離直前、国学平田家および神祇伯白川家の関東執役古川将作とどのような関係をもち、行動を選択していたのかを安政六(一八六九)年から慶應三(一八六七)年を対象に考察することをねらいとする。研究の方法分析ツールとして、白川家「門人帳」・平田家「門人帳」と大山寺宮大工、大山寺、平田家等に残された日記類を使用する。分析の結果相模国大山寺は幕府の庇護を受け、文化・文政期、大山信仰は最盛期を迎えた。その信仰を牽引した大山御師は大山寺の強い支配下にあったが、幕末期これら御師の中に不満が蓄積され、慶応三年にはその力関係を逆転させた。本論は、以下のキーワードをもとにその検証を試みるものである。白川家教線拡大復古派国学の波及白川家・平田家重複入門相模大山の安政大火御師の身分的転換