著者
井上 和章 清水 ミシェル・アイズマン 沖田 一彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.323-328, 2010 (Released:2010-07-28)
参考文献数
18
被引用文献数
6 3

〔目的〕脳卒中片麻痺者の自立歩行能力を判別するのに有効な指標について検討した。〔対象〕脳卒中発症後1ヶ月以上経過した片麻痺者62名(歩行自立群34名,非自立群28名)であった。〔方法〕歩行時に必要と考えられる運動機能と認知機能を,Functional Balance Scale(FBS)下位4項目(立位保持・移乗・前方リーチ・360°回転)のテストと,‘Stops walking when talking' test(SWWT)によって評価した。なお,FBSは境界点への到達項目数で判定した。統計的手法としては,二群間で各調査項目の差異を比較し,有意差の認められた項目を独立変数に,歩行自立度を従属変数にしてロジスティック回帰分析を行った。〔結果〕1) FBS4項目到達・SWWT歩行継続,2) FBS4項目到達・SWWT歩行停止,3) FBS3項目到達・SWWT歩行継続の場合には自立歩行が可能と判定された。〔結語〕境界点への到達項目数という新たな視点からFBSを用いるとともに,歩行中の認知機能評価という新たな指標を取り入れることで,より実践的な自立歩行能力の把握が可能になると考えられた。今後は縦断的かつ前向きな調査を行い,判断指標としての妥当性を検証していく必要がある。
著者
Neda Gholami Mohammad Mahdi Dehshibi Andrew Adamatzky Antonio Rueda-Toicen Hector Zenil Mahmood Fazlali David Masip
出版者
Information Processing Society of Japan
雑誌
Journal of Information Processing (ISSN:18826652)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.161-168, 2020 (Released:2020-02-15)
参考文献数
21
被引用文献数
4

For reconstructing CT images in the clinical setting, ‘effective energy’ is usually used instead of the total X-ray spectrum. This approximation causes an accuracy decline. We proposed to quantize the total X-ray spectrum into irregular intervals to preserve accuracy. A phantom consisting of the skull, rib bone, and lung tissues was irradiated with CT configuration in GATE/GEANT4. We applied inverse Radon transform to the obtained Sinogram to construct a Pixel-based Attenuation Matrix (PAM). PAM was then used to weight the calculated Hounsfield unit scale (HU) of each interval's representative energy. Finally, we multiplied the associated normalized photon flux of each interval to the calculated HUs. The performance of the proposed method was evaluated in the course of Complexity and Visual analysis. Entropy measurements, Kolmogorov complexity, and morphological richness were calculated to evaluate the complexity. Quantitative visual criteria (i.e., PSNR, FSIM, SSIM, and MSE) were reported to show the effectiveness of the fuzzy C-means approach in the segmenting task.
著者
西田 隆仁
出版者
一般社団法人 日本高圧力技術協会
雑誌
圧力技術 (ISSN:03870154)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.60-72, 2016-03-25 (Released:2016-04-29)
参考文献数
48

Gaskets have been used widely in bolted flange connections in the various plants such as chemical, petroleum refining, petrochemical, power generation and so on. The prototype of gaskets had started to use in 19 century and gaskets have improved and developed for applying severe specifications conditions in a lot of industries. The role of gaskets is to prevent leakage of inner fluid from the interfaces of connections. Asbestos gaskets have been used for a long time, however, in 1980"asbestos have replaced to non-asbestos materials in the US and Europe because asbestos have affected the human health. In Japan, the new use of asbestos gaskets was completely prohibited in 2012. In the present article, the history of gaskets is described. Recently, from the environmental regulation, the quantitative measurement of a leakage has been necessary in the bolted flange connections. Thus, the higher sealing technology is needed for satisfying the severe conditions. An overview of the recent researches and trend for designing bolted flange connections are described.
著者
Kenth Gustafsson Antoine Durrbach Robert M. Seymour Andrew Pomiankowski 隈本 洋介
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.17, no.98, pp.285-294, 2005-11-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
48
被引用文献数
3 4

タンパク質や核酸と比べて、糖鎖は潜在的により大きな多様性を持つことができる。末端糖鎖の多様性は、バクテリアとヒトのように離れた種間にも、また同一種の中でも存在する。このような広い多様性が存在する理由については依然として不明である。この中には、多型性を示す糖鎖末端のグリコシレーションのうち最も良く知られた例であるABO式組織-血液型抗原がある。粘膜表面のABO抗原に対して各々の病原体が異なった結合性を示すことに着目して、感染症と血液型抗原との関係が多数報告されている。しかし、宿主の細胞と同様の組織-血液型抗原は、宿主によって決定される抗原としてウィルス上にも存在することがある。新たな宿主に侵入すると、ウィルスは自身の持つ組織-血液型抗原に特異的な自然抗体と遭遇するようである。これによってウィルスの直接的な中和が増強されるのみならず、ウィルスに対する特異的な免疫応答も増強されるものと我々は考えている。モデル化研究の際にこのような病原体との相互作用を考慮すると、ヒトの集団で特徴的に見られるABO血液型の頻度を2種類の選択圧によって説明することができ、さらに末端糖鎖の多型が進化してきた様式と原因を説明できる。
著者
永井 貴士 石井 良和 市田 博子 小森 愛子 山田 孝
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.26-37, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
29

本研究の目的は,家族介護者の従事する「介護」という作業の構成概念を生成することである.要介護者と在宅介護生活を1年以上経験している家族介護者16名を対象に非構造化面接を実施し,SCAT(Step for Cording and Theorization)を用いて分析した.その結果,構成概念は102の意味コードが生成され,家族介護者の想い,介護する生活,介護と環境の3つの大カテゴリーが得られた.作業療法士は家族介護者の作業適応への支援として,これらの視点で検討する必要性が示唆された.
著者
上原 哲太郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.231-233, 2020-02-15

2019年12月,神奈川県が使用していたHDDがリサイクル業者から持ち出され,オークションにおいて転売されていたことが判明した.この事件を機にHDD等の記憶媒体の廃棄のあり方について大きな議論が巻き起こった.HDD等の確実な消去のためには物理破壊が確実ではあるが,リース等の契約形態によっては利用者による物理的破壊が困難な場合も少なくない.そこでHDDの論理的消去としてNIST SP800-88rev.1に基づく論理的消去の普及が望まれる.しかし我が国ではCryptographic Eraseに関する技術的検討が未だに不十分であることや,論理消去されたことをどのように証明し履歴を残すべきかの標準化された手順がないことなどに課題を残している.
著者
小島 泰雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.86, 2018 (Released:2018-12-01)

1.中国の辛い地域 四川料理が辛いことを説明するのは、夏が暑いことを論じるようなある種の徒労を感じる作業である。「麻辣」が正しい辛さの表現である、四川料理にも辛くない料理がある、湖南人の方が「怕不辣」であるといったことも、耳を傾けるべき指摘であるが、ここでは中国のどこが辛い料理を好むのかについてなされた興味深い報告を紹介したい。藍勇(2001)は、シリーズとして刊行された中国12省市の料理書の調味記載を定量的に分析(「辣度」)し、辛さの地域分化を提示している(下表)。この表は、中国食文化の多様な地域的展開において、一つの特色ある地域文化として四川料理を捉えるべきことを示唆している。2.とうがらしの伝播 辛い四川料理はそれほど長い歴史をもつものではない。その辛さにはとうがらしが主たる貢献をなしていることから、新大陸原産のそれが四川に到達して以降であることは容易に思い至るだろう。 この方面の研究も近年、詳細さを深めている。丁暁蕾・胡乂尹(2015)は、明清期の地方誌に記載されたとうがらし関連の記載を全国にわたって丹念にたどり、とうがらしの中国国内での伝播を復原している。初期のとうがらしの呼称である「番椒」は、明朝末期から18世紀までは主に東南沿海地区と黄河中下流という離れた2つの地域で確認され、19世紀前半に東南沿海から北上および内陸に展開している。四川の方志にとうがらしの記載が見られるのは、19世紀になってからとする。方志が数十年間隔で編纂されたことを加味するならば、四川でのとうがらしの普及が18世紀に遡る可能性はあるが、それにしても清朝中期のことである。 新大陸原産の作物が、現代中国の農業と食において欠くべからざる存在となっていることは、とうもろこしやさつまいも、じゃがいもといった主食となる作物、あるいはトマト、なす、かぼちゃといった野菜の名を挙げるだけで十分に理解されよう。これらの入っていない中国料理はなんとみすぼらしいことだろうか。こうした新大陸原産作物の伝播は、時間と空間において決して単純なものではなく、繰り返し様々なルートでもたらされたものとされる(李昕昇・王思明2016)。3.自然地理と歴史地理 熱帯で栽培される胡椒と異なり、とうがらしは温帯でも栽培できる香辛料であり、新大陸から運び出された種子は持ち込まれた世界各地に定着していった。食文化の地域性は、その素材となる動植物の分布・農牧業を媒介項として、気候や地形といった自然地理と結びつけられて解釈されることが一般的である。中国は季節風により夏季温暖多雨であり、とうがらしは農耕地域であればほとんどの地域で栽培しうる。したがって中国における辛さを好む地域性は異なる理路で説明されることが求められることとなる。 とうがらしは、寒冷や湿潤に伴う身体的反応と結びつけられてきたが、類似の気候条件で辛さを好まない地域を容易に提示できることから明らかなように、環境決定論的な単純な推論は説得力を持ち得ない。そこで考慮すべきなのが、社会経済的な、あるいは文化的な、言い換えれば歴史地理的な推論である。 現在、中国では各地で四川料理が食べられているが、共通するのがその庶民性である。とうがらしの入った料理は素材の善し悪しをそれほど問わない。とうがらしが定着していった清朝中期、四川はまさにフロンティアであった。多くの移民を受け入れ、人口過剰な情況になった四川には普遍的な貧しさがあり、「開胃」(食欲増進)に顕著な効果のある(山本紀夫2016)とうがらしは、地域住民に歓迎されたと考えられる。 ただし前近代の農村の不安定性は、四川に特権的な貧しさを認めないであろう。そこで食文化の連続性が浮かび上がる。中国在来の香辛料である花椒が陝西から四川にかけて多く使われていたとする指摘は、さらに深く考究してゆくに値するであろう。 モンスーンアジアに視野を拡げると、胡椒産地であるインドが熱烈なとうがらし受容地域であるのに対して、食文化に関して多様な地域性をもつ中国がとうがらしの受容において選択的であることは、まさに食文化の連続性を物語る対照性と言えるのではないであろうか。
著者
湯沢 威
雑誌
學習院大學經濟論集 (ISSN:00163953)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.1-25, 1983-03-01
著者
石倉 智樹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.565-570, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
14

パンデミックは人類の歴史上繰り返し発生し、大きな健康被害とこれに伴う社会的影響をもたらしてきた。近年でも、高病原性インフルエンザ(A/H5N1型)の流行など、世界的な感染症流行の拡大が生じている。パンデミックが生じると、都市の社会機能や経済活動の混乱が起きる。パンデミックが発生した際には、ワクチンの開発には最低でも3~6ヶ月はかかると言われている。それまでの間、感染拡大を抑制または遅延させるための有効な政策として、公共交通の停止や学校閉鎖といった人々の活動制限が考えられる。一方でこれらの政策は、経済活動の縮小を伴うものであり、行うタイミングを誤れば効果が半減するだけでなく、経済活動へ大きな損失を与える。すなわち、活動制限による適切な政策効果を得るためには、政策実施を適切なタイミングを把握することが求められる。そこで、本研究は、パンデミック時の、特に初期の段階、すなわちワクチン生産等の医療対策が整っていない段階において、公共交通の停止や地域間境界閉鎖のような水際対策などの社会経済活動制限を行うか否かの判断、および活動制限の最適な実施タイミングを導出する方法論を提案する。

61 0 0 0 OA PM2.5 とマスク

著者
明星 敏彦
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.287-291, 2013-12-15 (Released:2014-01-07)
参考文献数
8
被引用文献数
2

From January 2013, severe air pollution in Chinese cities including Beijing was reported and Japanese people were afraid of PM2.5 as a new toxic substance. JAAST provided the information about PM2.5 using the official homepage. People are very much concerned whether the commonly used masks are effective against PM2.5. This article introduces health effect of aerosol inhalation, structures of surgical masks and dust respirators, performance of fibrous filters against aerosol particles, and fitness between masks and wears. In terms of effectiveness of masks, the fitness of masks is more important than the filter performance against aerosol particle inhalation.
著者
Kimihiro Okubo Satoshi Ogino Toshikazu Nagakura Takeru Ishikawa
出版者
Japanese Society of Allergology
雑誌
Allergology International (ISSN:13238930)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.379-386, 2006 (Released:2006-12-18)
参考文献数
25
被引用文献数
79

Background: Seasonal allergic rhinitis (SAR) induced by Japanese cedar pollen is a substantial problem in Japan. Omalizumab, a novel humanized monoclonal anti-immunoglobulin E (IgE) antibody, has already been proven to reduce symptoms associated with SAR. We investigated the safety and efficacy of omalizumab in the treatment of patients with Japanese cedar pollen-induced SAR compared to placebo. Methods: A randomized, placebo-controlled, double-blind study was conducted in 100 Japanese patients with a history of moderate-to-severe SAR induced by Japanese cedar pollens. Omalizumab (150, 225, 300, or 375mg) or placebo was administered subcutaneously every 2 or 4 weeks based on serum total IgE and body weight at baseline. The primary efficacy variable was the mean of daily nasal symptom medication scores (sum of the daily nasal symptom severity score and daily nasal rescue medication score) during the treatment period. Secondary efficacy variables included the daily ocular symptom medication score and related variables. Results: Primary and all secondary efficacy variable scores were significantly lower in the omalizumab group than in the placebo group (P Conclusions: Omalizumab was effective and safe in the treatment of SAR induced by Japanese cedar pollen.
著者
竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.10-16, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
7

昨今,医療・介護領域でエビデンスに注目が集まっている.エビデンスとは証拠であり,正確な医療・介護を実施するためのフレームである.エビデンスに基づいたアプローチ(Evidence based practice)を行う際には,なくてはならないものである.しかしながら,リハビリテーション領域,特に作業療法の領域では,これらエビデンスの構築が遅れていると,団体内外から声が上がっているのが現状である.本稿では,その中でも比較的エビデンスが豊富な領域である作業療法における脳卒中後の上肢麻痺に関わるエビデンス構築の推移を,事例報告からランダム化比較試験まで記載した.
著者
尾田 正二
出版者
The Japanese Society of Environmental Toxicology
雑誌
環境毒性学会誌 (ISSN:13440667)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.9-17, 2016-06-30 (Released:2018-09-04)
参考文献数
26

The 4 morphological criteria for a new species of Japanese medaka, “Oryzias sakaizumii” proposed by Asai et al.(2011) were examined in males of 75 closed colonies derived from wild populations caught in the Japan islands and maintained for longer than 30 years in laboratory. Males of 14 colonies from the Northern population medaka (“O. sakaizumii” ) were identified only by one criterion: “dense network of melanophores along each scale margin on body side” , and it was impossible to distinguish the males of the Northern populations from those of the Southern population(O. latipes) by the other 3 criteria. In addition, it has been known that hybrid populations between the Southern and the Northern populations are present in Tajima-Tango area in wild, providing the evidence for crossing of the two medaka populations in Japan in this area. In this report, the author concludes that the Southern and the Northern populations of Japanese medaka are the same species and the Northern population is a geographical subspecies of O. latipes), since both populations have crossed naturally and the confirmed morphological difference between them is slight, not giving a clear implication that these populations have differentiated into separate species.
著者
筒井 淳也
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.156-162, 2017 (Released:2017-07-19)
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
花田 恵介 空野 楓 河野 正志 竹林 崇 平山 和美
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.118-126, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
20

右手動作の拙劣さと両手に道具把握の障害を呈した,左の前頭葉および頭頂側頭葉梗塞例を経験した.手指分離動作は十分可能で協調運動障害もなかった.しかし,右手での手指形態模倣や,衣服のボタン操作,手袋の操作が困難であった.さらに箸やスプーン,ハサミなどが,左右手ともうまく把握できなかった.この症状に対して右手の課題指向型訓練を14日間実施した.本例は道具を一旦正しく把握できれば,それ以降の使用動作は問題なく行えた.また,把握の誤りは,検査者が道具を手渡したり,一方の手でもう一方の手に道具を持たせたりすると少なくなった.この残存能力を生かして訓練を行ったところ,日常生活における右手の使用頻度が増加した.