著者
健山 正男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.1112-1118, 2005-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

肺疾患を基礎疾患に有さない患者が感染を契機として炎症期から肺胞腔内の線維化期に至る感染性肺炎はレジオネラ肺炎,ニューモシスティス・カリニ肺炎,一部のウイルス性肺炎,結核などで報告されている.感染性肺炎において肺の線維化が早期より認められる場合や線維化の程度の強い場合には重症化しやすいことが報告されており,このような感染性肺炎においては血清KL-6などの線維化マーカーは予後予測因子として測定する意義は高い.
著者
櫻井 文教
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.99-105, 2019-03-25 (Released:2019-06-25)
参考文献数
36

1990年に米国にて、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に対して世界で最初の遺伝子治療が実施されてから、25年以上が経過した。この間、素晴らしい治療効果が観察された臨床例もあったが、期待されたほどの治療効果が得られた例は限られており、また重篤な副作用も報告されたことから、遺伝子治療は冬の時代を迎えた。しかし、その後の研究者の絶え間ない努力により、2012年のリポタンパクリパーゼ発現アデノ随伴ウイルスベクター(商品名Glybera)の承認を皮切りに、7種の遺伝子治療薬が相次いで承認され、いよいよ遺伝子治療は現実のものとなってきた。そこで本稿では、ウイルスを基盤とした遺伝子治療薬の開発の現状ならびに今後の展望について紹介する。
著者
アンドレア デ・アントーニ
出版者
観光学術学会
雑誌
観光学評論 (ISSN:21876649)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.81-93, 2013 (Released:2019-07-08)

本論文は相互作用に着目しながら、「ダークツーリズム」を検討する。フィールドワークによって収集したデータに基づき、供給と需要間の相互作用を検討し、現代京都でダークツーリズムが構築されていく過程を支えるさまざまな関係性を明らかにする。このとき、幽霊が出現するとされる場所(心霊スポット)を訪れる「京都怪談夜バス」ツアー、および「花山洞」という心霊スポットを検証する。まず事例をダークツーリズムの分野の中で位置づけ、アクターネットワーク論を参照しながら、ツアーとそこに関わる人間やモノ(=アクター)の間で相互的に構築されるネットワークを分析する。このネットワークによって、歴史における人間の死についての記憶も、観光客の体験を方向付けるアクターとして構築されると論じる。特に、その記憶と、ツアーで訪れる場所との関係が戦略的であり、語りをつうじて構築されていることに着目する。これはツアーの成功の理由になるが、同じメカニズムがツアーを中止させてしまったことを明確にする。このとき、死についての記憶と場所との間の「距離」(Latour, 2005)という概念を参照することによって、ダークツーリズムの再考をめざす。
著者
生田 美智子 Икута Митико イクタ ミチコ
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科
雑誌
言語文化研究 (ISSN:03874478)
巻号頁・発行日
no.37, pp.265-290, 2011-03-31

言語社会専攻В 1806 -1813 гг. в русско-японских отношениях создалось настолько кризисное положение, что в Японии их называли даже «войной». Однако благодаря деятельности Такадая Кахэй и П. И. Рикорда японцы и русские смогли урегулировать эту ситуацию. В настоящей статье будет рассмотрен секрет успеха этой дипломатии с четырех сторон: а) где проходили переговоры и кто был на них посредником, б) кто работал переводчиком, в) каковы были дипломатические ритуалы, г) какова была логика разрешения конфликта. Анализ этих аспектов позволяет проследить, как японская система изоляции страны уже в то время дала трещину и как с помощью России готовилась «мягкая посадка» для открытия страны.
著者
粕田 晴之 福田 博一 池野 重雄 清水 禮壽 林 和
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.103-108, 1997-09-10 (Released:2010-07-21)
参考文献数
26
被引用文献数
3

手術室看護婦と麻酔科医師10人 (看護婦医師群) と臨床実習生10人 (医学生群) について, 擦式アルコール消毒剤 (ウェルパス®3ml;丸石), 電解酸性水 (超酸化水®流水式500ml・1分;シオノギ) あるいは手術用滅菌手洗い水 (流水式5l・1分) を用いた衛生学的手洗いを行い, 寒天培地接触法を用いて除菌効果を比較検討した. 電解酸性水については手洗い時間 (250ml・30秒, 500ml・1分, 750ml・90秒, 1000ml・2分) と除菌効果との関係も検討した.擦式アルコール消毒剤を用いた手洗いによる除菌率は看護婦医師群, 医学生群それぞれ96.4±4.5%, 91.2±9.9%と差がなかったが, 流水式電解酸性水による手洗いではそれぞれ90.5±13.5%, 37.3±69.0%と医学生群で有意に低かった.流水式手術用滅菌手洗水による手洗いでは除菌されず, むしろ菌数の増加がみられた. 電解酸性水による手洗い時間と除菌効果との関係では, 看護婦医師群で手洗い1分から手洗い時間依存性に生菌数の有意な減少が認められたのに対し, 医学生群では30秒で菌数の増加がみられ, 1分30秒後から有意な減少が認められた.擦式アルコール消毒剤による衛生学的手洗いは, 日頃手洗いを行っていない手指保菌数の多い医学生群に対しても看護婦医師群同様に有効な除菌法であることが示された.日頃手洗いを行っていない手指保菌数の多い医学生群が流水式電解酸性水による手洗いで有効な除菌を得るためには, 看護婦医師群よりも30~60秒長い手洗い時間が必要で, 手洗い対象を考慮した手洗い時間を設定する必要のあることが示された.
著者
李 永寧
出版者
文教大学
雑誌
言語と文化 = Language and Culture (ISSN:09147977)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.136-146, 1997-03-01

Taking the view that the language a person uses when he or she is angry is a key to understanding that person's value system and true character, I will examine the language of abuse available to the native speaker of Chinese and show its connection to the "Chinese spirit."
著者
四ノ宮 成祥
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.3103-3113, 2012 (Released:2013-11-10)
参考文献数
11

バイオテロは決して頻度の高い事象ではないが,一旦起きると社会への衝撃は計り知れない.我々は,過去にオウム真理教のバイオテロ未遂事件やアメリカ炭疽菌郵送事件のような事例を経験したことを忘れずに,適切な対策を講ずる必要がある.また,過去に生物兵器として開発された生物剤がテロに用いられることのないよう注視するだけでなく,今後は遺伝子組換え技術を利用した新たなタイプの生物剤を用いたテロが起きないよう防止することも大切である.
著者
飯淵 康一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.60, no.472, pp.149-158, 1995

The following results have obviously been obtained from the study on the exit and the riding place in the Residence of Toin-Kinkata. 1. The Kinkata, as the master, had mainly used Chumonro (中門廊) as an exit. 2. Kintaka used to ride in carriage at the Chumonro or outside the gate. 3. In case of riding at Chumonro, generally Utokihito (外人) did not accompany the master. 4. Utokihito is one kind of person who is contrary to the so-called Karei (家礼) and Jikkinnohito (昵近人).
著者
田島象二 著
出版者
和泉屋半兵衛[ほか]
巻号頁・発行日
vol.2編 上之巻, 1874
著者
水間 智哉
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.213-220, 2013 (Released:2013-08-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

酒米の炊飯特性について,代表的な酒米品種の山田錦と食用米品種のコシヒカリを比較検討することによって,以下のことを明らかにした。(1)酒米に特異的に一定の割合で混在する心白米(心白構造を持つ米粒)は,通常形態の無白米(心白構造を持たない米粒)と吸水速度が異なるため,炊きムラが生じやすい。これを防止するには十分な浸漬時間が必要であると考えられた。(2)山田錦はコシヒカリに比較して,少ない白米で多くの炊飯米ができ,「釜増え」が大きかった。官能評価結果より,山田錦は,コシヒカリと同程度の良食味性を有することが明らかとなった。(3)山田錦の炊飯米はコシヒカリとは異なる新しい物性特性(硬くてこしが強いが,粘性は低い)を持つことがわかった。今後は,食感の違いをいかした調理面での応用も期待される。(4)これらの特性には,山田錦の高いアミロース含量や酒米固有の心白構造及び大粒性が関与していると推察された。
著者
上谷 直克
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.51-70, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
15

2019年の5月にV-Dem(Varieties of Democracy)研究所から発行された年報『Democracy Facing Global Challenges-V-Dem Annual Democracy Report 2019』によると、昨年のレポートでここ約10年の世界の民主政の特徴として指摘された、「民主主義の後退(democratic backsliding)」や「専制化(autocratization)」傾向が相変わらず続いているという。中南米地域についても、引き続き「専制化」が指摘されるニカラグアやベネズエラ、「後退」するブラジルに加え、新たにハイチやホンジュラスでも「後退」や「専制化」傾向が認められた。そこで本稿では、そうして「専制化」するホンジュラスや、隣接するグアテマラ、エルサルバドルの、いわゆる中米の北部三角地帯諸国(Northern Triangle of Central America、以下NTCs)の「民主主義」の現状について、V-Demの様ざまな指標の変化に着目しつつ、報告する。
著者
三浦 航太
出版者
独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所
雑誌
ラテンアメリカ・レポート (ISSN:09103317)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.1-15, 2020 (Released:2020-01-31)
参考文献数
22
被引用文献数
3

本稿は、2019年10月中旬以来チリで発生した社会危機を、2011年の学生運動や新しい左派勢力という視点から検討する。軍政下に導入され民主化後も継続してきた既存の政治経済社会システムは、経済格差や社会と政治の乖離を生み出し、それは市民の不満の蓄積、そして近年の抗議行動の増加へとつながった。2011年に大規模な学生運動が発生したことや、そこから生まれた新しい左派勢力である広域戦線が2017年総選挙で台頭したことは、2019年の社会危機の以前から既存のシステムに対する問題提起がなされていたことを示している。これまで学生運動や新しい左派勢力が示してきた変革への意思は、2019年の社会危機を通じてチリの多くの人々からも示され、新憲法制定に向けた合意へとつながった。2020年4月には新憲法をめぐる国民投票が実施される。既存のシステムを修正して維持するのか、新しいシステムへ変革していくのか、チリは大きな岐路に立たされている。
著者
GENG Biao KATSUMATA Masaki TANIGUCHI Kyoko
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
pp.2020-026, (Released:2020-02-06)
被引用文献数
4

This study investigated the impact of mixed Rossby-gravity waves (MRGWs) on the diurnal cycle of precipitation over the southwestern coastal area of Sumatra using data captured during a pilot field campaign of the Years of the Maritime Continent (YMC) Project. The study focused on a 19-day period from 24 November to 12 December 2015, using data from intensive surface observations, radiosondes, a C-band polarimetric radar collected onboard the research vessel Mirai at 4.067°S, 101.900°E, and data from global objective analysis. The results indicated a relationship between oscillations with periods of several days in the intensity of diurnal precipitation and the wind field. Wind oscillations were attributed to several westward-propagating MRGWs traversing the study site. Diurnal convection and precipitation over the land and ocean were enhanced (suppressed) when MRGW-induced offshore (onshore) wind perturbations dominated. Large-scale low-level convergence and upper-level divergence, stronger sea-breeze flow, and colder land-breeze flow were also observed with the intensification of MRGW-induced offshore wind perturbations. However, diurnal precipitation displayed a similar well-defined phase and propagation pattern over the land and ocean, coherent with the regular evolution of sea- and land-breeze circulations, regardless of wind perturbations induced by MRGWs. The results suggest that local convergence induced by the land-sea contrast is mainly responsible for driving the diurnal cycle. Notwithstanding, MRGWs exert a significant impact on the amplitude of diurnal convection and precipitation by modulating the large-scale dynamic structure of the atmosphere and the intensity of local sea- and land-breeze circulations.