出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.487-556, 2017 (Released:2017-12-27)
被引用文献数
21 20
著者
鈴木 努
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.49-62, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
38

社会ネットワーク分析において指数ランダムグラフモデル(Exponential Random Graph Models: ERGM)や経験的ネットワーク分析のためのシミュレーション手法(Simulation Investigation for Empirical Network Analysis: Siena)といった統計的ネットワーク分析の手法の適用が広まってきている.本稿ではこれらの手法の特徴を概観し,社会ネットワーク分析におけるその意義を検討した.統計的ネットワーク分析の手法には,ネットワークに含まれる頂点や頂点対の諸特性が頂点間の結合に与える効果を多変量モデル化し,その統計的有意性を検定することができるという利点がある.近年の統計パッケージの整備によって,その実データへの適用は容易になってきているが,その意義については社会構造の解明という社会ネットワーク分析の目的にとっては限定的であるという疑義もある.本稿では統計的ネットワーク分析が主にミクロなネットワーク特性に着目しており,マクロなネットワーク特性をモデル化しにくい点,頂点結合に対する諸効果の一様性を仮定している点を指摘したうえで,社会ネットワークの形成,発展,衰退といったプロセスの分析に統計的ネットワーク分析を適用することを提案した.
著者
抱 喜久雄
出版者
関西法政治学研究会
雑誌
憲法論叢 (ISSN:24330795)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.13-23, 1994-04-15 (Released:2018-01-10)

It has been argued how the state should compensate for damages caused by state-run inoculation program. In 1984, the Tokyo District Court handed a ruling in favor of the plaintiff's claims for indemnity by analogically applying Art.29, cl.3 of the Japanese Constitution. In the appellate trial, however, the Tokyo High Court overturned the initial decision and approved the claims of the appellant (plaintiff in the first trial) for damages by applying Art.1, cl.1 of the State Liability Act. In this paper, I will study problems related to 'state compensation' through an analysis of the decision by Tokyo High Court.
著者
柴田大輔編
出版者
聖公会出版
巻号頁・発行日
2014
著者
小椋 純一
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.203, pp.113-160, 2016-12-15

2011年3月に発生した福島第一原発事故は,東日本大震災を引き金にして起きたものであったが,その原発事故により広大な国土が放射能に汚染され,国土の一部は長く人が住むこともできない大地となり,また今後長期にわたり多くの人々への健康被害が懸念されるなど,大災害となった。その大災害に至った1つの大きな要因として,メディアによる原発の必要性や安全性などを訴える広告などの情報が,原発の問題を指摘する情報よりもはるかに多大であったこともあるが,その一方で,本来伝えられるべきであったと思われる原発関係の情報が十分伝えられてこなかったということがあると思われる。そうした情報の中で,本稿では,福島での原発事故が起きるまでは最悪の原発事故であった旧ソビエトのチェルノブイリ原発事故後による食品汚染についての情報について検討した。1986年に起きたその原発事故により,タイやフィリピンなどでは大きな放射能汚染食品騒ぎがあったが,少なくとも関西地方ではほとんど伝えられなかった。それらのニュースの内容をタイなどの地元紙の記事などから確認し,それらが実際にあまり報道されるべき価値のないものであったのかどうか検討した。また,それらのニュースが日本国内で実際にどの程度報道されたのかについて,国内の強力な新聞記事等のデータベースである「日経テレコン」により確認した。一方,福島第一原発事故から5年以上を経て,放射能汚染食品や放射線による健康被害など,また原発関連の報道が十分になされない部分が出てきている。その近年の状況についても,データベース利用などにより確認し考えてみた。メディアの編集者が放射能汚染食品や人々の健康被害に関する情報を制限する背景として,社会的不安などが生じることへの配慮もあると思われるが,正しい情報が伝えられないことにより,福島での原発事故の忘却が早められ,しっかりと原発について考えようとする流れが弱められている。
著者
川西 諭 田村 輝之
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.87-104, 2019-04-16 (Released:2019-04-15)
参考文献数
51

本稿では,グリット(Grit)とマインドセット(Mindset)という2つの心理学概念に関する研究を紹介し,労働生産性向上をめぐる議論への含意,および行動経済学研究への応用の可能性について議論する.グリットとは,長期的な目標達成に向かって「やり抜く力」であり,本稿で紹介するマインドセット研究は「固定思考」と「成長思考」という2つの対極をなす思考を問題とする.既存のグリット研究とマインドセット研究はいずれも私たちの能力のうち,努力によって後天的に獲得される資質が常識的に考えられているよりも重要であること,そして資質の獲得が私たちの心理や思考によって強く影響を受けることを指摘している.これらの研究に照らすと,労働生産性を低水準にしている原因として,人々の考え方が,先天的資質を重視する固定思考に偏ってしまっている認知バイアスが浮かび上がる.
著者
王 張嶠 石川 忠晴 吉田 圭介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.67-76, 2012 (Released:2012-04-20)
参考文献数
34

揚子江下流河道には洪水期に大量の土砂が供給され堆積が進行している.また河口潮位変動が大きく,洪水時においても流れが脈動するため,河床変動の機構は非常に複雑である.本研究では河道幅が拡大する江陰から下流の145kmの区間について洪水流の数値計算を行い,潮汐によって生じる非定常流況とそれが流砂特性にもたらす効果を考察した.その結果,潮汐の影響により澪では概ね澪軸に沿った脈動流が生じるが,砂州上では河道横断方向にも大きな偏差が生じ,このことが砂州地形と澪の蛇行を増幅するものと考えられた.揚子江下流河道の澪にはほぼ一定間隔(約22km)で深い区間が存在するが,これは干潮での順流ピーク時から満潮での澱み発生時までの浮遊砂移動距離に関連すると考えられた.
著者
林 美帆
出版者
学校法人 自由学園最高学部
雑誌
生活大学研究 (ISSN:21896933)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-19, 2017 (Released:2017-12-21)

日本近代女性史の中で大きく取り上げられる、与謝野晶子と平塚らいてうが中心となって行われた大正期の母性保護論争は、女性が母となることで国家から金銭的援助を得ることの可否を問うものであった。羽仁もと子はこの論争に直接的には関わらず、どちらかの主張を指示する言説は発表していない。しかしながら、羽仁は家計簿をはじめとした家庭論や職業論など、独自の視点を『婦人之友』誌上で展開し、多くの女性の支持を集めていた。本稿では、与謝野と平塚の母性保護論争における主張を整理し、羽仁の家庭論および職業論と対比することで、同時代の女性がおかれている状況を明らかにする。その上、二人と羽仁との共通点および差異を考察し、羽仁が示した解決策の一つが「女性の組織化」であったことを論じる。
著者
竹森 美穂
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
no.47, pp.19-34, 2019-03-01

本稿は,近年の社会福祉に関する政策動向の中で,ソーシャルワークがマネジメントに矮小化される状況に対する危機感から,ソーシャルワーカーの現代的専門職像を考察することを意図したものである。専門職論の系譜を手掛かりに,自律性と管轄権が専門職の鍵概念であること,そしてこの二者は国家との関係性によって影響を受けるものであることを確認した。新自由主義政策の影響を受けた現代ソーシャルワークは本来の多様な機能が十分に発揮されず,マネジメントの比重が重くなっていることを指摘し,同じく現在の我が国の政策によって共助と公助の衰退の上に成り立つ地域共生社会の担い手としての「参加」を求められる人々と,ソーシャルワーカーの向き合い方を手掛かりに現代的なソーシャルワーカー像を考察した。 ソーシャルワーカーは,政策の意図する人々の「参加」を促すのではなく,共同主体的関係性の再構築に協働的志向で参画することが求められる。専門職像ソーシャルワーカー参加協働性共同主体的関係性
著者
保正 友子 杉山 明伸 楢木 博之 大口 達也
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.140, pp.1-20, 2019-03-31

本研究の目的は,現任医療ソーシャルワーカー(MSW)を対象に,現在の職場において過去にMSW 業務から離職しようと考えたことがあるかどうか(MSW 離職意向),もし考えたことがあれば何が影響しているのかという背景要因を明らかにすることである. 2 県の医療社会福祉協会会員のうち,医療機関に所属する701 人に郵送での質問紙調査を実施し,回収した397 通(回答率56.6%)のうち欠損値のない314 人分を分析対象とした. 確証的因子分析に基づき,鄭らの開発した「職場離職意向尺度」を参考にMSW 離職意向尺度を作成し,重回帰分析,共分散構造分析を行った結果,離職意向に影響を及ぼす次の2 系統が見出された.①「上司の配慮・誠実さ→部署環境の良し悪し→職員を尊重する組織運営/ワーク・エンゲイジメント」,②「多様で標準化困難な業務」.考察では,結果が見出された理由の検討と今後の対応策の提示を行った.