著者
小林 淳
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.63-66, 2000-02-20

バキュロウイルスは, 標的害虫を効果的かつ選択的に防除できるので, 化学殺虫剤の魅力的な代替物である.しかしながら, 遅効性などの制限要因により, バキュロウイルス殺虫剤の使用はあまり普及しなかった.即効性改善のための遺伝子操作法がいくつか考案された.遺伝子操作されたバキュロウイルス殺虫剤は, エクダイステロイドUDP-グルコシルトランスフェラーゼ遺伝子(egt)を欠失させたウイルスと外来遺伝子(昆虫ホルモン遺伝子, ホルモン関連遺伝子, 昆虫特異的毒素遺伝子など)を挿入したウイルスの2種類に分類される.これまで試された中で, 昆虫特異的毒素を発現する即効性バキュロウイルスが化学殺虫剤と対抗しうる効果を示した.昆虫特異的サソリ毒(AaITやLqhIT2)を発現する組換えAutographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)の欧米における野外試験は, 野外での殺虫即効性と作物の食害の減少を立証した.現在までに蓄積したデータは, 昆虫特異的サソリ毒の挿入がバキュロウイルスの安全性を損なわないことを示している.組換えバキュロウイルス殺虫剤の実用化にとって重要な問題点についても考察した.
著者
田附 紘平
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.191-205, 2016-03-01 (Released:2017-01-07)
参考文献数
36
被引用文献数
2

親子関係はアタッチメント理論の根幹を担っているものの,成人のアタッチメントにおいては,意識的な親イメージは中心課題とされてこなかった。そこで本研究では,アタッチメントスタイルと,親イメージの構成要素とその構造との関連について探索的な検討を行うことを目的とした。283名の調査協力者に対し,20答法を援用した親イメージの把握と日本語版Relationship Questionnaireを実施し,テキストマイニングによる分析を行った。その結果,安定型は社会的で肯定的な親イメージを抱きやすく,軽視型は自分との関係から親イメージを捉えやすいことが明らかになった。とらわれ型とおそれ型は自分との良好な関係を強調した親イメージと否定的な親イメージを同時に抱きやすく,親イメージが類似していることが示された。得られた結果から,各アタッチメントスタイルが抱く親イメージに関して考察を行った。
著者
清水 康生 原口 公子
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.31-38, 2017 (Released:2017-01-10)
参考文献数
18

水環境健全性指標の活用方法として, 小学校教育の総合学習へ適用することが考えられる。しかし, 適用の有効性については指摘されているが, その効果を具体的に検証している事例はない。本稿では同指標を活用した授業の有効性について同じ児童を4年時と5年時の二カ年に亘り調査し検証を試み, さらに, 三カ年目に新5年生の児童にも検証のための調査を行った。内容としては, 同指標の調査を行うと同時にアンケート意識調査と感想文の記述を行ってもらい, 指標の回答内容の変化と意識内容の変化を比較し, 回答に関係する意識の広がりや深まりなどの変化が学習効果を表していると考えた。分析の結果, 水環境健全性指標による調査経験は, 児童の水環境に関する知識の取得だけでなく意識の変化とも関連し, 生物のような分かり易い事項からゴミや汚れという環境問題へと関心が広がっている学習効果を確認した。
著者
小松 国子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第59回大会・2016例会
巻号頁・発行日
pp.102, 2016 (Released:2017-01-13)

【目 的】 昨今「家庭基礎」2単位を履修する学校が増加した。「実習時間」 「調べ学習」などの活動が減少して、座学による一斉授業が増えて いる。そのため、知識・技術を習得させることが多くなり、活用・ 思考・表現の場が不足していることが指摘されている(野中ら,2011・ 2012,長澤ら,2011,松井ら,2011)。また、学習指導要領や秋田県学校教育の指針では、生活を主体的に創造する実践的な態度や適切な解決方法を探究する活動の充実が求められている。新学習指導要領においても、「生活の中で課題を設定し、解決する力」が目指す力となっている(中央教育審議会教育課程部会,2016)。そのため家庭科においても探究や協働の力を育む授業の再構築を検討する必要がある。そこで、課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学びを行う手法として「アクティブラーニング」を取り入れた学習を検討した。【方 法】(1)調 査:2015年7月~8月に、秋田県高等学校家庭科教員を対象に「仕事の負担度」「授業項目の重視度」「ホームプロジェクトについて」「技術検定」「施設訪問」「分野統合、他教科連携、他校種連携」「探究及び体験型の学習について」などのアンケート調査を実施した。(2)実 践:2016年4月から、秋田県立K高等学校の「家庭基礎」(1年生で実施)で授業実践を行った。 【結果および考察】(1)調査より県内でも共通教科の選択は「家庭基礎」が70%を超えており、「住生活」「ホームプロジェクト」「被服実習」「高齢者の生活と福祉」の順で教員の授業重視度が低いことが明らかになった。また「ホームプロジェクト」の実施に際しては、複数の課題を感じている教師が多いことや「分野統合」「他教科との連携」は、「やっていないが、今後取り組みたい」という回答が多かった。一方「ロールプレイ」など様々な手法を取り入れている教師は多いが、それが探究・体験型の学習として生徒の主体的な活動に繋がっているか否かまで、評価できていないことが明らかになった。  「家庭科の授業で悩んでいること」の自由記述では,KHcoderを用いて共起ネットワークによる分析を行ったところ、「検定」「時間」「不足」という語を中心とする共起から、悩みを抱える教師の姿が見て取れた。 (2)そこで「授業の振り返り」「探究型授業実践」に焦点をあて、授業のデザインを検討した。授業の振り返りとして、「リフレクションカード」(表裏14回分記載)を使用し、授業終了時の記入を定着させた。それにより、生徒・教師双方の気づきに繋がり、学びの向上が見られた。「社会保障について」の協働学習では、様々な意見を聞き、協議をしながらポスターをまとめることができた。しかし、全員の学習効果が高まっていない状態も見えた。グループ学習に参加することが苦手な生徒への対応も課題である。「高齢者について」のグループ学習では、ポスターセッションを導入することで、グループ全員が真剣にテーマと向き合っている姿があった。発表後に質問を受けることで、高校生である自分達が高齢化にどのように向き合うか、議論を深めている様子が窺えた。このようなグループ学習は、入学間もない生徒達が仲間を知るきっかけにもなった。【今後の課題】「ホームプロジェクト」については、冬季休業中に実施し、主体的・協働的学習の成果を考察したい。また、授業後の生徒の感想については、KHcoderを使った質的評価を検討する。4月に調査した「中学校で身につけた力」と今現在「身についた力」についても分析を行いたい。
著者
石橋 洋輝 鈴木 博 府川 和彦 須山 聡
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.130, pp.137-142, 2009-07-09

受信アナログ信号から同相・直交成分のディジタル信号を生成するIQ検波において,リアルゼロ系列から波形を再生する技術を適用し,受信信号の飽和増幅出力からIQ波形を生成する方法を提案する.この方法では受信線形増幅における非線形歪抑圧の要求が大幅に緩和される.そのため,今後のRFとベースバンドを一体化したSi-CMOS技術に適合している.まず変調された受信信号の帯域外に正弦波を加える.その後信号を増幅し直交検波を行う.受信増幅器としてはある一定レベル以下には線形増幅の領域があり,それ以上では飽和する飽和形線形増幅器と,線形領域がない完全なリミタ形の2種類について検討する.リアルゼロ系列の時刻をサンプリングするTDCには線形補間形と単純量子化形の2種類を検討する.計算機シミュレーションにより提案した検波器の性能を明らかにする.最大変調周波数の64倍の搬送周波数で信号を送信する狭帯域信号に対して,ピーク振幅の1/32以上が飽和する歪の大きな受信増幅器でもEVMが-50dB以下の高い精度で検波波形を再生できることを示す.また,それ以上の歪の増幅器の場合,EVMが-27dB程度と再生波形の精度が大きく劣化することを示す.
著者
笠原 広一
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.223-242, 2014

ポストモダンの芸術体験におけるコミュニケーション研究から,理性と感性の統合におけるコミュニケーションの感性的位相に着目した実践研究を行った。幼児の絵画表現ワークショップを対象に,参与観察とビデオ記録によるビジュアル・エスノグラフィーを基にエピソード分析を行った。芸術体験の中で相互に情動が感受・共有される様子や相互の変容,関係性と場の変容が生まれる様子と過程を明らかにした。こうした芸術体験における相互の変容は言葉の意味伝達だけでなく,情動や身振り,場の雰囲気などが力動感(vitality affect)を伴いつつ,非自覚的・非直接的なコミュニケーションとして豊かに媒介されていた。芸術体験の実相とその意味生成には,感性的コミュニケーションが大きく影響していることが明らかになった。
著者
胡 克龍 府川 和彦 鈴木 博 張 裕淵
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.490, pp.183-188, 2015-02-25

無線通信用のRFアナログ回路とベースバンド・ディジタル回路とを一体化したSi-CMOS ICの実現を目指し,アナログ回路の低電圧化,SNR低下,低利得化,素子不均一性等に対処できる新しいアナログ・ディジタル変換方式を検討する.具体的にはTDC(Time Digital Conversion)に基づき,バンドパス信号から基準信号である正弦波を減算し,基準信号とバンドパス信号が交差する時刻の系列,即ちリアルゼロ(ゼロクロス)系列を用いて,ベースバンド信号のサンプリング値を拘束条件付き最小2乗法を用いて推定する.また,バンドパス信号の系列長が長いとき,推定すべきサンプリング値の数が非常に多くなり,演算量が膨大になる,この演算量削減のため,信号を一定区間に分割して推定する.計算機シミュレーションにより,基準信号の周波数及びリアルゼロ系列の時間精度をパラメータにして,提案手法の信号再生の精度を定量的に評価する.
著者
林 一雅
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.Suppl., pp.113-116, 2010-12-20 (Released:2016-08-07)
参考文献数
8
被引用文献数
3

本研究の目的は,アクティブラーニングを導入するために教員に対して授業支援を行うために,ICT支援型ラーニングスペースで実施された授業の類型化をすることである.レスポンスアナライザやタブレットPCなどのICTを活用したアクティブラーニングの授業を参与観察し,その授業形態や什器の配置から類型化を行った.その結果,講義+ディスカッション型,タブレットPC活用型,プレゼンテーション型,実習型の4類型を見出した.これらのことから,アクティブラーニングが行われる同一のラーニングスペースであっても教員や授業内容により多様な学習空間の利用方法があることを明確にした.さらにそれぞれの類型の特徴を指摘し,目的に応じた方法がとられるべきであることを指摘した.
著者
三輪 睿太郎
出版者
日本ペドロジー学会
雑誌
ペドロジスト (ISSN:00314064)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.133-136, 2007-12-31
被引用文献数
1
著者
畠山 史郎 片平 菊野 高見 昭憲 菅田 誠治 劉 発華 北 和之
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.158-170, 2004-05-10
被引用文献数
10

近年関東周辺山岳域で見られる森林衰退の原因・として大気汚染物質の影響が重要ではないかといわれている。しかし,この地域でのこれまでの観測は電源の都合により,長期的な観測が出来ず,そのため観潮時の天候に大きく影響されて,大気汚染の影響が十分把握されていない。本研究では電源に太陽電池を用いることにより,実際に森林被害の激しい前白根山山頂付近で,大気汚染物質であるオゾン(O_3)を,約3ヵ月にわたって長期的に観測することで,この地域でのO_3濃度変化を明らかにした。更に高濃度O_3が現れる頻度やその起源,それらが出現する気象条件を考察した。その結果,今回の観測では,期間中の最高濃度は1時間平均値で70ppb弱であり,過去に観測された100ppbを超えるような高濃度は観測されなかった。また,長期間の統計的なO_3濃度変化を調べることにより,この地点でO_3が高濃度になるのは夏季の卓越した南風に加えて,日射強度が大きい時であることが分かった。これは強い日射により,都市域で発生した一次汚染物質が光化学反応を起こしながら,広域な海陸風循環によって輸送されてきた為であると考えられた。また,9月以降の秋季には03の平均濃度が上がると共に日食化か小さくなった。これは山頂付近では自由対流圏大気の影響が大きくなり,アジアのバックグラウンドオゾンが輸送されていて,関東平野部からの汚染空気の寄与が小さくなるためと考えられた。
著者
角田 隆 Tran Chi Cuong Tran Duc Dong Nguyen Thi Yen Nguyen Hoang Le Tran Vu Phong 皆川 昇
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第64回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.50, 2012 (Released:2014-12-26)

ネッタイシマカとヒトスジシマカはデング熱の有力なベクターである.ベトナム国ハノイ市には毎年デング熱患者が発生し,ネッタイシマカとヒトスジシマカの両方が生息する.ハノイ市におけるデング熱患者発生の機構について明らかにするためには,これらの蚊の発生消長を調べる必要がある.2010年7月から2012年3月まで,ベトナム国ハノイ市内の8つの区に定点を設置してデング熱媒介蚊の調査を行った.毎月一回,各区から15軒の家をランダム抽出し,家の中と庭の人工容器に蚊の幼虫と蛹がいるか,確認した.蛹は実験室に持ち帰って,成虫になってから種を判別した.ヒトスジシマカは 9月から次第に減少し,冬期にはまったく採集されなくなった.一方,ネッタイシマカは冬期にも採集された.ハノイ市においてデング熱患者は 11月頃まで発生するため,ネッタイシマカが秋から冬にかけての患者発生に関与していると考えられた.まだ,デング熱患者は市の中心部の3つの区に毎年多く発生する傾向がある.これらの区ではネッタイシマカが優占する傾向が見られた.
出版者
[国土交通省]
巻号頁・発行日
vol.平成7年度, 1995