著者
中島 正彌 小林 昌義
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.27-31, 2016
被引用文献数
2

症例は71 歳女性.左足関節痛,両下肢違和感にて当院受診した.両大腿内側から下腿に伏在静脈瘤を認めた.下肢静脈超音波にて両側大腿- 大伏在静脈接合部に逆流を認めたため,全身麻酔にて両下肢に血管内レーザー焼灼術(endovenous laser ablation: EVLA),静脈瘤切除,硬化療法を施行した.術後1 日目病棟歩行時突然の呼吸困難,背部痛にてCT 室搬送となり,心停止により緊急挿管された.ポータブルUS にて右心系収縮不全あり,術後DVT,PTE を疑い緊急下大静脈フィルター留置し,ヘパリン,ウロキナーゼ投与するも全身動態に安定みられず同日夜永眠となった.本邦の文献を調べた限り下肢静脈瘤に対するEVLA 後に肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism: PTE)を併発した死亡症例の報告はないため,この誌を借りて報告する.
著者
柴田 智広
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.607-615, 2016-12-01 (Released:2016-12-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1

高齢化の進展により介護現場での人材不足が懸念される中,介護予防(要介護者の増加の抑制)や要介護者の生活支援サービスなどの分野ではロボット技術の活用が喫緊の課題となっており,国主導での研究開発が盛んに進められてきた。しかし,ロボット技術の社会実装にあたっては,安全性,コストとともに,要介護者一人ひとり異なる認知能力や身体的特性にどのように適応させるかが大きな課題となっている。本稿では,ロボット介護機器やITによる介護支援や介護予防サービスの現状を概観するとともに,筆者の研究グループによる低コストな装置(KinectやWii Balance Board)を応用した姿勢維持のリハビリテーション支援や,強化学習理論を応用した着衣介助ロボットおよびダーツ投てき運動学習支援の研究を取り上げ,現状の課題および今後の見通しを示す。
著者
本田 直子 杉本 陽子 村端 真由美
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.44-50, 2015-07-20

本研究の目的は、NICUに入院した早産児をもつ母親がわが子を抱いている時の思いについて明らかにし、抱くことの意味を母親の主観から検討することである。対象は早産児をもつ母親で、わが子を抱いている時の思いについて半構造化面接を行い、母親の思いの部分を抽出し、得られた内容をKJ法で分析した。その結果、わが子を抱いている母親の思いは【生きている存在であることの実感から子どもの生きる力の強さや生命力を感じた】【出産から今がつながり、わが子として存在をより近くで実感した】【身体の小さいことや未熟さから、保育器外の環境にいることや成長に心配や不安を持った】【子どもとのつながりが感じられ、母親として自分の存在を自覚した】【子どもを愛おしく思い、子どもと過ごす時間が大切だと感じた】【抱っこは成長の証と感じて前向きな気持ちになった】であった。早産児を持つ母親はわが子を抱いている時に五感で子どもを感じ取ることで相互作用が生じ、母親としての始まりを実感していた。早産児の身体の小ささや呼吸の荒さ、ぬくもりや重みなど子どもが意図して発していないものもサインとして受け取られていた。同時に、抱くことができるという状況から子どもの成長を感じ、今までもてなかった安堵感や前向きな気持ちを感じていた。
著者
金間 大介
出版者
日本フードシステム学会
雑誌
フードシステム研究 (ISSN:13410296)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.33-43, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
42
被引用文献数
1

The Japanese food manufacturing industry has been expected to strengthen the country's industrial competitiveness and local economy revitalization. This article examines the technological capability and profitability of food manufacturing companies in Hokkaido, which is considered one of the most active food production areas in Japan. Financial information and one output from innovation activities, specifically patent information, have been utilized and analyzed. The analysis revealed four findings. First, very few strong relationships were seen between the sales amount and net profit to sales of Hokkaido food manufacturing companies. Many small and medium companies with high profitability were prevalent. Moreover, although food companies in the Tokachi district were smaller in size, they achieved higher profitability compared to food companies in Sapporo City. Second, food companies who possess patents showed higher profitability than those who do not possess patents. Third, food companies with high technological indicators such as the number of patent examinations and cited patents seemed to be capable of further increasing their business performances. Fourth, the technological capability of the whole region including Sapporo City and the Tokachi district showed an increasing trend in general. Although the Tokachi district still had a small number of patent applications, this area exhibited rapid improvement in its technological capability.
著者
羽鳥 剛史 関 克己 小林 潔司 湧川 勝巳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_83-I_102, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
36
被引用文献数
1

火山災害により危機的事態が発生した場合,危機管理を担当する意思決定者には通常モードとは異なる状況判断や意思決定基準を採用することが求められる.本研究では,火山災害に関わる危機管理の現状と課題を考察した上で,有珠山噴火の事例を踏まえて,火山災害時の危機管理問題が災害ステージの時間的展開に応じて変化することを指摘し,各ステージの意思決定問題について検討する.さらに,危機管理に関わる意思決定モードとして,通常時と非常時の2つの意思決定モードについて考察する.その上で,災害ステージの展開に対応して意思決定モードを変更するための高次の意思決定原則(メタ原則)について検討し,メタ原則の下,危機管理に関わる討議システムを基盤として意思決定モードの選択を正統化するための規範的枠組みについて考察を試みる.
著者
前田 浩史
出版者
日本フードシステム学会
雑誌
フードシステム研究 (ISSN:13410296)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.75-86, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
8

This report examined the following two points When the globalization of the dairy products market of Japan greatly progresses by TPP agreement, the domestic dairy industry comes under what kind of influence, and what kind of problem do they face in the near future? What kind of measures should be prepared for to maintain stability of the dairy farming and dairy industry of Japan when assume them a precondition? The basic point at issue of that case is three items. 1) Reinforcement of the dairy farming infrastructure. 2) Stabilization of dairy farming management. 3) The correspondence to the change of the external factor over dairy farming and the dairy industry to show a stronger volatility. In addition, this report overlooked the present situation of the Japanese dairy farming and gave an outline that was the basic condition.
著者
大久保 豪 宮田 裕章 友滝 愛 岩中 督
出版者
The Health Care Science Institute
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.435-450, 2012

目的:近年,医療水準の評価を目的として,現実に行われた医療に関するデータを収集し,実証的な分析を行う,大規模臨床データベースが構築されるようになっている。本研究の目的は医療水準の評価を目的とした臨床データベースの正当性を明らかにすることである。<br>方法:BeauchampとChildressの生命倫理の4原則(自律尊重原則,無危害原則,仁恵原則,正義原則)に基づいて,臨床データベースの正当性を分析した。分析にあたっては,既存の資料や現在実施されている臨床データベースに関する資料を参考にした。<br>結果:自律尊重原則に基づく方法として≪データ登録に関する患者意思の尊重≫と≪登録目的,登録情報の開示≫が挙げられた。仁恵原則に基づく方法として≪登録情報の漏洩予防≫と≪登録される情報の匿名化≫が挙げられた。正義原則に基づく方法として,≪参加に係わるコストの削減≫,≪参加条件の設定≫,≪データ利用の受付条件の設定≫,≪データ分析結果の公表内容の吟味≫,≪データ分析の限界に対する配慮≫,≪データ分析結果の公表対象の吟味≫,≪資金提供元の明示≫といった方法が重要であると考えられた。一方で,臨床データベースは現実に行われた医療をそのまま記録するものであり,無危害原則に基づいて正当性を高める必要性は低いと考えられた。<br>結論:臨床データベースの構築,運営にあたっては,正確性,有用性,実現可能性を鑑みながら,本研究で明らかになった方法によって正当性を高めていくことが求められる。正当性の確保に当たっては,継続的な検証が重要である。
著者
林田 直美 高村 昇 鈴木 眞一 南 恵樹
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

福島県では、福島第一原子力発電所事故後、小児を対象とした甲状腺超音波検査が行われている。この検査では、約半数の小児で小さな結節やのう胞が認められているが、小児における甲状腺所見の頻度についての報告はないため、日本人一般における甲状腺超音波検査を行った。その結果、対象者の約半数に甲状腺のう胞が認められ、結節は0.7%にみられ、福島県と同様の頻度であった。成人での調査では、これより多い頻度で結節を認めた。甲状腺を4年間観察したところ、大半の小児でのう胞の有無や大きさが変化することがわかった。
著者
高村 昇 松田 尚樹 林田 直美 中島 正洋 折田 真紀子 柴田 義貞
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故では、放射性ヨウ素の内部被ばくによる甲状腺がんの増加が認められたが、それ以外の疾患については増加が認められていない。一方2011年の福島第一原子力発電所事故後、初期の食品管理によって内部被ばくの低減化が図られたものの、住民の間には放射性ヨウ素や放射性セシウムの内部被ばくによる健康影響への懸念が広がった。今後甲状腺がんのみならず、甲状腺の良性疾患に対する不安が広がることも予想される。そこで本研究では、チェルノブイリにおける放射性ヨウ素の内部被ばくによる甲状腺良性疾患の増加があるかどうかについて、疫学研究を行った。