著者
吉岡 昌美 中江 弘美 篠原 千尋 十川 悠香 福井 誠 日野出 大輔 中野 雅徳
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.16-24, 2023-04-30 (Released:2023-09-10)
参考文献数
13

要介護高齢者の口腔機能低下やそれに伴う食形態の制限は,低栄養や免疫機能低下を通じて発熱や肺炎の発症リスクを上昇させると考えられる.本研究では,経口摂取が可能な施設入所要介護高齢者を対象に,「口腔ケア支援簡易版アセスメントシート」を用いた約1 年半のコホート調査を行い,その間の37.5℃以上の発熱とベースラインの口腔アセスメント結果との関連性について調べ,発熱発生に関連する要因を明らかにすることを目的とした.1 年間の発熱の有無が確定できた259 名を対象に分析した結果,1年間の発熱有無と主食形態,開口困難,舌の前突困難,飲み込みにくさ,口腔ケア自発性なし,開口保持困難,水分保持困難との間に有意な関連を認めた.さらに,観察期間を限定せずデータが得られた279 名を対象にこれらの項目と発熱発生との関連性について分析した結果,年齢,性別,BMI, 認知症自立度で調整しても開口困難,舌の前突困難,飲み込みにくさ,口腔ケア自発性なし,開口保持困難,水分保持困難との間に有意な関連性が認められた.また,年齢が高いほど,BMI が低いほど発熱リスクは高く,女性に比べて男性で発熱リスクが高いことも明らかとなった.以上のことから,開口,舌の前突,飲み込み,水分保持などに関する口腔機能の低下が,発熱リスクの予測因子となりうる可能性が示唆された.
著者
伊崎 聡志 藤田 英樹
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.329-333, 2022-12-01 (Released:2023-02-12)
参考文献数
32

Among malignant skin tumors, malignant melanoma (hereinafter referred to as melanoma) is well known forits strong metastatic potency and poor prognosis. Moreover, it is safe to say that it is the most famous malignanttumor of the skin. The field of melanoma is at a stage where new findings are emerging one after another, and thespeed of progress is remarkable. Clark’s classification has been used for a long time to classify melanoma, butproblems have arisen in that there are certain tumor types that do not fit into this classification and that the relationship between tumor types and desirable treatment methods and prognosis is unclear. As a result, new taxonomies have been developed. In addition, what used to be common sense, contraindication for skin biopsy and thesignificance of lymph node dissection, for example, are no longer valid. Treatment methods have also advanceddramatically. The new drugs are already being used in clinical practice, and their effectiveness is already well recognized. In addition, therapeutic methods from new perspectives are now being developed.We have come to an era where we are always required to update our knowledge. This review is primarily forphysicians who wish to start learning malignant skin tumors and those other than dermatologists. We mainly focuson changes in attitudes toward managing melanoma.
著者
渡辺 健太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

化合物半導体からなる太陽電池は高効率が期待できる反面、高コストであることが課題であった。この問題に対して、結晶成長時にGaAs基板上に疑似格子整合するInGaAs/GaAsP体重量子井戸層を介して太陽電池を形成し、この多重量子井戸が選択的に赤外線を吸収する性質を利用して、波長1064nmのレーザー光照射によるドライプロセスによって太陽電池層と基板を剥離する赤外線レーザーリフトオフ(IR-LLO)技術を提案し、基礎研究を行った結果、数mmサイズの小規模ながら剥離工程が確認された。
著者
吉岡 亮衛
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 15 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.453-454, 1991-07-26 (Released:2018-05-16)

自由連想法で得られたデータをコンピュータで処理する際に、行われるデータのクリーニング作業で整理された語について分析した結果を、今後のデータのクリーニングの際に注意しておくべき観点としてまとめた。
著者
原島 沙季 吉内 一浩
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.144-151, 2017 (Released:2017-02-01)
参考文献数
14

がん患者は病状進行や治療に関連してしばしば消化器症状による苦痛を経験し, 治療や患者の生活の質に影響を及ぼす. がん患者の代表的な消化器症状としては, 嘔気・嘔吐, 便秘, 腹水がある. 各症状のマネジメントにおいては, 原因・病態の評価を適切に行い, 薬物療法, 非薬物療法を組み合わせた対応が重要である.
著者
野家 啓一
出版者
東北大学哲学研究会
雑誌
思索 = SHISAKU (ISSN:0289064X)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.145-166, 2020-12-24
著者
柳田 慶浩 中島 秀雄
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.63-78, 1999-03-30 (Released:2017-08-10)
参考文献数
16
被引用文献数
2

The moth fauna of the Ogasawara (Bonin) Islands was surveyed from March 22 to March 29, 1998 on Chichi-jima I., Haha-jima I. and Ani-jima I. A total of 101 species including 12 unrecorded species is listed.
著者
鵜飼 康東 長岡 壽男 竹村 敏彦 峰滝 和典 高橋 洋一
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、第一にマルチエージェント・シミュレーションの手法を用いて、いかなる社会的および個人的条件の下で、金融パニックが発生するかを解明することである。第二に、社会シミュレーションの関数系のパラメータを確定して、金融パニックを回避するための妥当なミクロ金融政策の支援ツールを開発することである。なお、金融パニックは、本研究では、預貯金の取り付け騒ぎ、金融機関の連鎖倒産、金融資産価格の暴落をもたらす経済状況と定義される。シミュレーションに入力するデータとして、ウェブ調査により収集した個票データを用いる。平成21年度には、鵜飼が、平成20年度に設計した金融パニックシミュレーションを二つの英文査読誌に投稿して採択された。レフェリーに高い評価を受けた点は預金者行動に地域的特性が強いということを新たに発見した点である。さらに、韓国慶北国立大學校情報科学部、中国復旦大学社会主義市場経済研究所および上海社会科学院において当該論文の報告を行った。最も重要なコメントは、銀行信用度が預金者行動に大きな影響を与えているという韓国の研究者の指摘であり、第二の重要なコメントは、マルチエージェント・シミュレーションにこだわらず、遺伝的アルゴリズムなどの他の社会シミュレーションツールも有効ではないかという中国の研究者の指摘であった。竹村と峰滝は、シミュレーションツールをコンピューターネットワークに実装するツールを開発してハワイにおける国際会議で報告した。長岡は、平成20年度の「金融機関における取り付け騒ぎの事例研究」の英語版をトルコにおける国際会議で報告した。いずれの国際会議もツールの現実妥当性を強める上で非常に有益であった。竹村は、データの統計的分析結果を英文査読誌に投稿して採択された。レフェリーに高い評価を受けた点は預金者行動の心理的特性パラメータを推計したことである。
著者
遠藤 操 左 士イ 岸本 一男
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会論文誌 (ISSN:24240982)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.305-316, 2006-09-25 (Released:2017-04-08)
参考文献数
20
被引用文献数
1

This paper develops a new model describing intraday price changes in the Tokyo Stock Exchange and the Osaka Securities Exchange. The price changes are specified by the repetition of one tick price moves, each of which is caused by the termination of a continuous double auction system described by the classic queuing theory. This model predicts that the one tick price move follows the first order Markov process. We test the null hypothesis of this Markov property for the tick-by-tick data of Nikkei225 Futures on the Osaka Securities Exchange, to find the null hypothesis is not rejected.
著者
矢賀部 隆史 宮下 達也 吉田 和敬 稲熊 隆博
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.141, no.5, pp.256-261, 2013 (Released:2013-05-10)
参考文献数
60
被引用文献数
2 1

野菜や果物は栄養学上「体の調子を整えるもの」として,ビタミン,ミネラルの重要な供給源であるが,これら栄養成分の他にも,ファイトケミカルと呼ばれる「健康によい影響を与える」化合物が微量含まれている.中でも,天然の色素であるカロテノイドは,経口摂取すると吸収,運搬され,様々な組織に蓄積する.カロテノイドは,そのプロビタミンAとしての作用や活性酸素を消去する抗酸化作用から,多くの疾病の予防や改善への効果が期待されてきた.本総説では,野菜や果物に含まれている主なカロテノイドである,リコピン,β-カロテン,ルテイン,ゼアキサンチン,β-クリプトキサンチン,カプサンチンについて,それぞれ特にエビデンスが蓄積し,予防や改善が確かになりつつある疾病への効果について,最近の疫学研究の成果を中心に紹介する.
著者
金子 秀
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.892-899, 2012 (Released:2017-12-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

醤油のうま味成分の主体はグルタミン酸,アスパラギン酸などのアミノ酸であるが,それ以外の醤油のうま味寄与成分については,不明な点が多い。そこで,著者はそれ自身はうま味を示さないにも関わらず,グルタミン酸ナトリウムのうま味を強めるアマドリ化合物であるFru-pGlu[N-(1-デオキシ-D-フラクトス-1-イル)ピログルタミン酸],Fru-Val,Fru-Met,ピログルタミルペプチドであるpGlu-Gln(ピログルタミルグルタミン),pGlu-Glyを単離・同定したので,解説いただいた。
著者
森谷 理紗
出版者
大東文化大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-01-04

最終年度は、新型コロナウイルスの影響で当初計画していた海外出張が遂行できなかったが、これまでに収集したロシア公文書館の資料分析を続行した他、国内でシベリア抑留中に作られた曲の楽譜や当時書き留められた歌詞集の手稿、さらにシベリアから持ち帰られた楽器等が新たに見つかりこれらをもとにシベリア抑留をめぐる芸術文化の歴史を知る上で重要な新たな発見があった。特に、公文書館で入手したイルクーツク州タイシェットの第7収容所で活動した「新声楽劇団」関連資料を補完する楽劇団の当事者であった元抑留者の手記が見つかり、日本とロシアの史料を照合して楽劇団活動の実情を詳らかにした。研究成果はロシアで開催された若手研究者のための国際学術会議『古代から21世紀までのロシア史: 課題・議論・新しい視点』(モスクワ、ロシア歴史大学)でオンラインにて発表した。さらに、この学術会議の論文集に、論文「シベリア抑留下の日本人捕虜たちの創造活動(1945-1956)」(論文集『古代から21世紀までのロシア史: 課題・議論・新しい視点』、Y.ペトロフ、O.プレフ編、ロシア歴史大学、2021年、466-476頁)が掲載された。また、複数の手記や写真資料などから素材・製法・形状などの情報を総合して再現楽器「ラッパ付きヴァイオリン」を製作したほか、収容所で印刷され捕虜たちに配布された『ソヴェート歌曲集(附)日本闘争歌集』の歌の音源資料化を行い、平和祈念展示資料館の企画展「シベリアでの出会いー抑留者の心に残った異国の人と文化」に出展した。さらに大東文化大学、舞鶴引揚記念館、舞鶴市立若浦中学校(京都府)で『シベリア抑留と音楽・文化ー記憶の継承へ』と題したレクチャーコンサートを企画し、シベリア抑留研究者や日本人・ロシア人アーティストを招いた講演と演奏を行い、抑留中に創作された曲の初演をするなどアウトリーチ活動にも力を注いだ。