著者
横山 雄一 松岡 耕史 三沢 幸史 島田 真太郎 伊藤 富英
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.794-800, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
15

MOMOは主に神経難病や高位脊髄損傷患者の上肢機能支援として活用されるアームサポートである.本研究は,脳卒中後にうつ病やアパシーを呈し,リハ拒否や意欲低下が見られた症例に対し,MOMOを活用した介入を実施した.その結果,自身の身体状態を悲観的に捉える症例の自己効力感の向上を促すことに成功し,Apathy Rating Scale(ARS)やMotor Activity Log(MAL)のスコア改善へと繋がった.これらより,MOMOを活用して意味のある作業への参加を援助することで,対象者の自己効力感が向上し,生活全般に対して意欲的となるといった精神的賦活効果の一助となる可能性が示唆された.
著者
宍戸 聖弥 古山 千佳子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.772-779, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
11

本報告は放課後児童クラブ(以下,児童クラブ)において,作業に焦点をあてたコンサルテーションを行った実践報告である.今回,COPMやスクールAMPSを活用したことで,児童クラブの支援員が事例に期待している作業に焦点を当て,その作業遂行の改善を目的とした提案を行うことができた.結果,児童クラブ支援員と作業療法士の協働がより進み,支援員間で対応が共有化されたことで,事例の作業遂行に改善がみられた.よって,学校の教室に近い環境下であれば,COPMやスクールAMPSに基づいたコンサルテーションに一定の効果があることが示唆された.
著者
稲垣 慶之 飯塚 照史 車谷 洋 太田 英之 長谷川 龍一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.763-771, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
37

橈骨遠位端骨折受傷後1ヵ月間は大腿骨近位部骨折の発生リスクが急増するとされる.この一因として,外固定がバランス機能に影響するとされるが,近年では外固定を必要としない早期運動療法の報告がなされている.本研究では,早期運動療法例を対象に,バランス機能の継時的変化について検討した.その結果,動的・包括的バランス機能において術後1週間で低下することが明らかとなった.ただし,転倒を招くとされるカットオフ値を下回っていなかった.このことから,早期運動療法例の動的バランス機能の低下は転倒を誘発する“きっかけ”となり,その他の要因と重なることで術後に転倒リスクを増加させる可能性が示唆された.
著者
中村 恵理子 小林 隆司
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.755-762, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
20

作業療法士養成校にとって,学生の学習意欲を高め主体的な学習へ導くことは重要な課題である.本研究では,作業療法士を目指す学生が,主体的な学習へと学習意欲を変化させる過程について複線径路等至性アプローチを用い,変化の時期や内容を分析した.その結果,学習意欲の変化の時期は8つの区分に分かれ,早期からの学習意欲の向上には関係志向と自尊志向を利用した学習支援や早期体験型学習などで実用志向,充実志向を促すような学習の重要性が示唆された.
著者
四條 敦史 泉 良太
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.745-754, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
30

本研究の目的は作業療法士(以下,OT)を対象とした肩の機能改善のための卒後研修プログラムについてインストラクショナルデザイン(以下,ID)を参考に作成し,その有用性を確認することである.OT45人に対しオンライン研修を実施した.研修前後にアンケートを用い対象者の反応・学習・行動変容指数を比較検討した結果,肩甲胸郭関節運動に関する知識・技術の臨床活用項目を始め,Problem-Based Learning(以下,PBL)にて用いた文献の調べ方・見方の活用項目が有意に向上しOT業務の自信との間に有意な正の相関がみられた.本研究によりID・PBLを用いて研修設計・実施を行うことの有用性が明らかとなった.
著者
大熊 諒 八重田 淳
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.736-744, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
22

本研究は,就労支援機関が医療機関に求める連携・協力に関する実態を明らかにすることを目的とした.対象は東京都内の特例子会社・就労支援機関の責任者385名で「医療機関に対する協働支援の期待」「地域連携」に関する質問紙を作成し調査を行った(有効回答数136件,回収率35.3%).結果,「継続的な診療を行い,必要な時に連携を取れる相談窓口や担当者を定める」「退院後の支援に関する情報の説明・提供」「自身の障害に対する理解を促す支援」が特に期待される割合が高いことが明らかになった.また,退院後,就労支援を開始した後に医療機関と連携が必要だとする回答が多く,長期的な協働支援体制を整える必要性が示唆された.
著者
赤堀 将孝 小西 美智子 今磯 純子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.726-735, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
28

本研究の目的は地域での生活支援に必要な作業療法学生の卒業時コンピテンシー項目を明らかにすることである.デルファイ法を3回実施し,地域実践作業療法士87名から51項目を作成した.必要度が75%以上の項目は,自己の健康管理,対象者のリスク管理,対象者と家族を含む支援者との信頼関係構築に関する項目など19項目,51~75%未満の項目は,家族や他職種との協働や作業療法過程,住環境や地域環境に関する項目など22項目,50%以下の項目は,近隣住民を含む連携,地域資源の情報収集に関する項目など10項目であった.卒業時に地域で生活支援を行うためには,これらの修得に向けた教育内容を取り入れる必要性が示唆された.
著者
池田 公平 笹田 哲
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.709-717, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
32

本研究の目的は, セラピスト連携実践尺度(TCPS)の信頼性と妥当性の検証である.対象は回復期リハビリテーション病棟のセラピストとした.信頼性の検証(n=53)ではTCPSを2週間の間隔で2回実施し,ICC=0.97(95%CI;0.95~0.98,p<0.01),Bland-Altman plotのプロットがLimits of agreement内に収束した.妥当性の検証(n=210)では,多職種連携を評価する2種類の既存の尺度と中等度の相関(r>0.60)があった.これらの結果から,TCPSはセラピストの多職種連携実践を評価する尺度として良好な信頼性と妥当性が示唆された.
著者
南 庄一郎 髙 登樹恵
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.701-708, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
22

本研究では児童思春期精神科医療に従事する作業療法士にフォーカス・グループ・インタビューを行い,テーマ分析によって児童思春期精神科医療における作業療法士の役割を明らかにした.本研究の結果,子どもとの関わりに作業(遊び)を活かすことは作業療法士の専門性であり,子どもの自己肯定感と自己効力感を向上させ,生きる力を育むことが作業療法士の役割と考えられた.一方,現行の診療報酬に作業療法士が明記されておらず収益に繋がらないことなどが課題として挙げられた.こうした現状を打開するべく,作業療法士同士のネットワークを構築して研鑽を図ることや児童思春期精神科作業療法の効果研究などを積み重ねていく必要がある.
著者
松村 健史 守村 融 新谷 哲也 横山 勝英
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.I_1039-I_1044, 2017 (Released:2018-02-28)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

複雑な平面形状を有する筑後川感潮河道を対象として三次元流動シミュレーションを構築し,大潮期の塩水遡上の特徴について検討を行った.2002年9月の観測データを用いて精度検証し,水位,塩分,流速のいずれも十分な再現性があることを確認した.三次元計算の結果,本川・筑後川と比べて支川・早津江川における塩水の遡上・後退運動は活発でないことがわかった.これは,支川の河道距離が本川に比べ長く,また河道は蛇行し,川幅が途中で狭まっていることが原因と考えられる.さらに,本川においても導流堤の存在により,左右岸で塩水の挙動が異なり,左岸側澪筋において,水深が深いために塩水運動が活発であるとことが分かった.三次元流動シミュレーションにより河道地形が塩水遡上の時空間変動におよぼす影響を理解することができた.
著者
渡邊 幸樹 稲村 浩 中村 嘉隆
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.379-380, 2018-03-13

近年,BLEビーコンによる屋内の人流把握が注目され,特に滞留行動の把握は様々な効果が期待される.本稿では,試作したセンシングデバイスにて周囲の移動端末に搭載されたBLEの挙動を検知し,人流から滞留者の検知と働きかけの対象となる潜在顧客の判別を試みる.取得したRSSI値の変動に対してDTWを用いたテンプレートマッチングにて潜在顧客の行動特徴を示した滞留者の判別を行った.このセンシングデバイスは環境発電による間欠動作を想定している.しかし,人流のように連続的な計測が必要な場合には間欠動作では判別精度の低下が懸念される.ハードウェア最適化を考慮した上で判別に適切な動作間隔についても議論する.
著者
宮崎 博之 伊藤 翼 中山 浩 廣田 真史
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 令和元年度大会(札幌)学術講演論文集 第3巻 空調システム 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.209-212, 2019 (Released:2020-10-31)

個別分散空調は、室外機の設置状況(壁近傍、集中設置等)によっては、高温(冷房時)の吹出空気を吸込面から直接吸込むショートサーキットが生じ、能力が低下することが知られている。本研究では、室外機の設置状況、外気温度、負荷率によりショートサーキットがエアコンの性能に与える影響を定量的に把握することを目的にする。本報では環境試験室に建物壁や障害物を模擬した壁を設置し、室外機の吸込温度と外気温の関係について明らかにしたので報告する。
著者
伊藤 健吾 秋山 吉寛 近藤 高貴 岸 大弼
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

希少種カワシンジュガイの保全のため,宿主魚を多く養殖している養魚場の活用を試みた。その結果,養魚場のような高密度で宿主魚が生息している環境であれば,ごく少数の母貝から吐出されるグロキディウム幼生であっても十分な個体群を維持できることが明らかになった。また,幼生の寄生による宿主魚への影響を調べたところ,本調査地におけるカワシンジュガイの個体群維持に必要なレベルの寄生数(宿主魚一尾当たり数百)では成長率及び生残率には影響がないことが示された。以上の結果,イシガイ目二枚貝の保全には,水産業のような宿主魚を高密度で養殖している場所を積極的に活用することが非常に効果的であることが明らかになった。
著者
綾部 忍 三木 綾子 永松 正代 元村 尚嗣
出版者
一般社団法人 日本創傷外科学会
雑誌
創傷 (ISSN:1884880X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.27-33, 2014 (Released:2014-01-01)
参考文献数
8

基底細胞癌 (basal cell carcinoma : 以下,BCC) は,外鼻にみられる悪性腫瘍では最も多く,局所破壊性は強いが転移をきたすことはきわめてまれであり,腫瘍の完全切除により根治が期待できる。 鼻部皮膚欠損創の再建には周囲からの局所皮弁が選択されることが多いが,顔面に新たな瘢痕が形成されること,デザインに熟練を要することなどが問題となる。 今回われわれは,鼻部BCC切除後の皮膚欠損創 3 例に対し,2007年にHanらが報告した dermis graft で再建を行った。この方法は分層植皮片を脱上皮したものを移植し,周囲からの上皮化させるというものである。 色調・質感の点で良好な結果を得ることができたが,殿部という荷重部が採取部となることが問題であると考え,鼠径部から採取するよう修正した。 われわれの方法は手技が簡便で非荷重部から採取し,顔面に新たな瘢痕を形成することがないため,鼻部 BCC 切除後の再建方法として有用であると思われた。
著者
小林 泰輔 岡田 昌浩
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.131-137, 2009 (Released:2009-08-01)
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

We report on two cases of cerebellar infarction in the territory of the medial branch of the posterior inferior cerebellar artery (mPICA) mimicking acute peripheral vertigo. Case 1 was a 54-year-old man with WPW syndrome presenting with sudden vertigo. When he was admitted to our hospital, he had direction fixed horizontal nystagmus towards the left. His symptom disappeared in several days, however, MRI revealed a haemorrhagic infarct in the territory of the right mPICA. Case 2 was a 47-year-old man who was admitted with sudden rotatory vertigo. Direction fixed horizontal nystagmus towards the right was noted and head CT was normal. The nystagmus disappeared on the 5th day of the illness and caloric testing did not show canal paresis. Because of prolonged gate ataxia, a CT scan was performed again. It showed a cerebellar infarction and MRI revealed a cerebellar infarction of the left medial hemisphere and vermis. Infarcts of mPICA sometimes cause acute vertigo presenting horizontal direction fixed nystagmus mimicking peripheral vertigo. In a patient presenting with acute vertigo, head MRI should be performed when he or she has history of risk factor for cerebellar infarction such as diabetes mellitus, ischemic heart disease, and so on. The patients with prolonged ataxia and headache should also undergo MRI.
著者
Yuji Hatano Hiroto Shimoyachi Tatsuya Asano Takahiro Kenmotsu Takuro Wada Yasuhisa Oya Hiroaki Nakamura Susumu Fujiwara
出版者
Japan Society for Simulation Technology
雑誌
日本シミュレーション学会英文誌 (ISSN:21885303)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.198-205, 2022 (Released:2022-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

The goal of this study is to establish a simple experimental system to examine the rate of double strand breaks (DSBs) of genome-sized DNA molecules under irradiation of β-rays from tritium under well-controlled conditions for the validation of computer simulation on interactions of biomolecules and ionizing radiation. Irradiation effects were insignificant at tritium concentration of 1300 Bq/cm3, indicating that the effects of β-rays were far smaller than those of oxidation and/or thermal motion at the low dose rate (4.3 μGy/h). Clear increase in DSB rate was observed at tritium concentrations of 3.0—4.0 MBq/cm3. The temperature dependence of DSB rate was examined by using the high concentration tritiated water.