著者
堀口 明男 新地 祐介 齋藤 大蔵
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.29-37, 2021 (Released:2021-05-12)
参考文献数
34

男性の尿道外傷は骨盤骨折にしばしば合併し, 膜様部尿道が球部尿道との接合部である尿生殖隔膜から引き抜かれて損傷する. 外尿道口からの出血, 排尿困難や尿閉による下腹部の膨隆, 会陰部の血腫などは尿道外傷を疑う症状であり, 速やかに尿のドレナージルートを確保する. 循環動態が不安定な患者に対してはベッドサイドで一度だけ尿道カテーテル留置を試み, 挿入できなければ速やかに膀胱瘻 (suprapubic tube, SPT) を造設する. 循環動態が安定している患者では, まず逆行性尿道造影で損傷の有無や程度を確認する. SPTではなくprimary realignment (PR) による尿道カテーテル留置を選択してもよいが, たとえ成功しても外傷後1年以内に尿道狭窄を続発する可能性が高い. 尿道狭窄に対する最も有効な治療は尿道形成術 (狭窄部切除・尿道端々吻合術) であり, 外傷後の炎症や感染が沈静化するまで3~6ヵ月待機してから行う. 本稿では男性の尿道外傷のマネジメントについて解説する.
著者
浅井 博
出版者
日本原生生物学会
雑誌
原生動物学雑誌 (ISSN:03883752)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.133-152, 2005-10-01 (Released:2018-08-04)
参考文献数
63
被引用文献数
2
著者
向 祐志
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1118, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
4

狭い治療濃度域を有する薬物や体内動態の個人差が大きい薬物では,therapeutic drug monitoring(TDM)が患者間の体内動態の違いを補正するために有用である.我が国におけるTDMは,特定薬剤治療管理料の算定対象薬物について実施されることが多く,一部の免疫抑制薬を除いて,血漿あるいは血清が薬物濃度測定用の検体として用いられている.近年,欧米を中心にdried blood spot(DBS)を検体とした薬物血中濃度測定法が盛んに報告されている.DBSによる検体採取には,1検体あたりの採取量が1滴の血液で済み,患者宅での採取が可能なため,医療コストを低減できる等の様々な利点がある.Linderらは抗てんかん薬のうち,カルバマゼピン(CBZ),ラモトリギン(LTG)およびバルプロ酸(VPA)では,DBS中濃度を血漿中濃度の代替指標として用いることができる可能性を示したので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Evans C. et al., AAPS. J., 17, 292-300(2015).2) Martial L. C. et al., PLoS. One., 11, e0167433(2016).3) Li W., Tse F. L., Biomed Chromatogr., 24, 49-65(2010).4) Linder C. et al., Clin. Biochem., 50, 418-424(2017).
著者
鶴田 幸恵
出版者
千葉大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
巻号頁・発行日
2020

本研究は、女と男に二元化されない新しい性別概念である「ノンバイナリー」というアイデンティティ・カテゴリーがどのようなものかを、カナダでのフィールドワークとトランスジェンダー、ノンバイナリーの活動家へのインタビューをもとに明らかにする。インタビューによって得たデータを、社会学の一つの手法であるエスノメソドロジー・会話分析の方法を用いて分析することで、ノンバイナリー概念が相互行為の中でどのように使用されているのか、またそれによって性別という現象にどのような新たな理解がもたらされているのかを析出する。
著者
岡村 眞
出版者
一般社団法人 電気設備学会
雑誌
電気設備学会誌 (ISSN:09100350)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.887-890, 2009-11-10 (Released:2014-10-08)
参考文献数
3
被引用文献数
2
著者
水野 毅 荒木 獻次
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.1145-1151, 1996-08-31 (Released:2009-03-27)
参考文献数
10
被引用文献数
9 10

A new type of mass-measurement system under weightless conditions is proposed which uses a dynamic vibration absorber as a measuring device. In this system, an object to be measured is fixed to a rotating table (rotor) at a distance from the rotational axis. Since it makes the rotor unbalanced, a centrifugal force whose amplitude is proportional to the mass is generated during rotation. It works as a harmonic excitation and forces a structure supporting the table to vibrate. However, a dynamic vibration absorber attached to the structure is tuned or controlled to reduce the vibration to zero. When the structure does not move at all, the absorber mass vibrates in such a way that the product of the mass and the displacement amplitude is equal to the amount of unbalance, that is, the product of the mass to be measured and its distance from the rotational axis. Therefore, the mass of the object is determined by measuring the displacement amplitude of the absorber mass. In this study, the principles and features of the proposed mass-measurement system are investigated. Experiments are carried out with a developed apparatus having an active dynamic vibration absorber. This apparatus can perform measurement at various rotational speeds because the absorber's natural frequency can be easily tuned by a feedback parameter. Experimental results demonstrate the feasibility of the proposed mass-measurement system.
著者
堀江 真行
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.47-54, 2022 (Released:2023-10-27)
参考文献数
19

私たち生物のゲノムには内在性ウイルス様配列(endogenous viral element: EVE)とよばれるウイルス由来の遺伝子配列が存在する.EVEの多くは数百万年以上前に宿主生物のゲノムへと組み込まれたことが知られており,太古のウイルスの「化石」として,存在年代・宿主生物・配列(系統)を知る貴重な手がかりとなる.私たちは近年,RNAウイルスであるボルナウイルス由来のEVEの大規模検索と網羅的な「古ウイルス学」的解析によって,約一億年にわたるボルナウイルス感染の歴史の一端を明らかにした.本稿では上記の研究を概説するとともに,得られた知見の中でも特に「古ウイルス学とウイルス学の接点」を詳説する.
著者
松野 啓太 西條 政幸
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.19-30, 2022 (Released:2023-10-27)
参考文献数
78

クリミア・コンゴ出血熱(Crimean-Congo hemorrhagic fever,CCHF)はクリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHF virus,CCHFV)の感染によって引き起こされる致命率の高い急性熱性疾患であり,エボラウイルス病などとともにウイルス性出血熱に分類される疾患である.CCHF患者はアフリカ,ヨーロッパ,アジアで散発的に発生しており,その発生地域は主なCCHFVの媒介節足動物であるHyalomma属のマダニの分布域と一致する.日本国内での患者発生はない.CCHFVは自然界においては動物とマダニの間で生活環を形成して存在している.家畜を含む幅広い種類の動物種がCCHFV感染に感受性であり,ヒトはCCHFVを保有するマダニの刺咬,あるいはウイルス血症を伴う動物(主にヒツジなどの家畜)との直接的接触で感染する.CCHFは人獣共通感染症である.臨床症状は初期では症状が非特異的熱性疾患であり,重症例では出血,意識障害などの症状が出現する.ダニ媒介脳炎,重症熱性血小板減少症候群,さらには最近北海道で新規ブニヤウイルス感染症として発見されたエゾウイルス感染症など,日本でもダニ媒介性ウイルス感染症が相次いで発生している.世界的に最も重要なダニ媒介性ウイルス感染症であるCCHFについても,その動向を今後も注視していく必要がある.
著者
李 明恩 駒 貴明 岩崎 正治 浦田 秀造
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.7-18, 2022 (Released:2023-10-27)
参考文献数
96

南米出血熱とは南米大陸におけるアレナウイルス科マーマアレナウイルス属のウイルスによる出血熱の総称である.南米出血熱には1. フニンウイルス感染によるアルゼンチン出血熱,2. サビアウイルス感染によるブラジル出血熱,3. ガナリトウイルス感染によるベネズエラ出血熱,4. マチュポウイルス感染によるボリビア出血熱,そして5. チャパレウイルス感染による出血熱の計5つが含まれる.これらのウイルスは系統学的,血清学的,そして地理的にラッサウイルス等が含まれる旧世界アレナウイルスと異なる新世界アレナウイルスに分類される.本稿では,南米出血熱の原因となる新世界アレナウイルスについてその基礎と感染予防・治療法研究の現状を概説する.
著者
渡部 潤
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.114, no.6, pp.342-349, 2019 (Released:2023-10-27)
参考文献数
35

醸造微生物のゲノム解析は,既視感もあるが,まだまだこれからの分野である。一般にゲノム解析は,専門的な内容になりやすく,門外漢には読みにくい面があるが,本報告は,世界的に見ても極めて高度な内容を,従来の形態的な報告と併せて,事例を丁寧にそして非常にわかりやすく解説していただいていた。醤油の研究開発のみならず,醸造微生物に関わっている関係者の皆様には是非ご一読をお勧めする。
著者
大谷 琢磨
出版者
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
雑誌
アジア・アフリカ地域研究 (ISSN:13462466)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-25, 2023-09-30 (Released:2023-10-27)
参考文献数
51

This paper clarifies the practices of motorcycle taxi drivers in urban Uganda to create norms and acquire customers at their customer waiting area. In Uganda, motorcycle taxis are the main means of transport. They are used in everyday life and business settings. Motorcycle taxi drivers wait for customers in a specific area called a “stage.” They form voluntary organizations at their stage and set up committees called “lukiikos,” which have many roles including providing mutual aid and regulating admission. The committees set up rules, and members monitor drivers’ behavior in and around each stage. Under the committee’s control, drivers maintain the quality of service. Therefore, each stage is premised on a system by which the committee members guide drivers in line with customary group values and norms. Through this system, drivers provide accurate and quick transport and build trust with people around their stage. This has led to the motorcycle taxi becoming an important mode of transport for citizens in these areas.
著者
清水 達哉 佐藤 真理 藤田 尚正 辻 潔美 北川 善政 田村 正人
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual57, no.Abstract, pp.S175_1, 2019 (Released:2019-12-27)

目的:骨組織はメカニカルストレスに応答する事が知られ、臨床では超音波刺激による骨折の治療法が確立されているが、詳細なメカニズムは不明である。本研究では、骨組織の超音波刺激応答細胞を同定するため、骨細胞をもつゼブラフィッシュともたないメダカを用いて骨折実験を行った。また、超音波刺激への細胞内応答機構を調べるために骨細胞株に超音波刺激を行ない遺伝子発現を調べた。材料と方法:ゼブラフィッシュとメダカの尾骨を骨折させ、超音波刺激による骨折治癒過程を骨組織染色にて評価した。骨細胞株に超音波刺激を加え、刺激群および対象群からRNAを抽出しqPCRによる遺伝子発現解析を行なった。結果と考察:骨細胞をもつゼブラフィッシュは骨細胞をもたないメダカに比べ超音波刺激により骨折治癒が有意に促進された。この事から、主に骨細胞が骨組織への超音波刺激に応答していると考えられた。また、骨細胞株に超音波刺激を加えると種々のGrowth factorの遺伝子が3-50倍上昇した。つまり、骨細胞は超音波刺激を感知してこれらGrowth factorを分泌する事で、骨折の治癒に重要な血管誘導、繊維芽細胞増殖を増強して治癒を促進すると考えられた。
著者
田上 直美
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.244-249, 2022 (Released:2022-07-28)
参考文献数
5

日本におけるCAD/CAM冠の歯科医療保険収載は,2014年の小臼歯部への適用を皮切りに始まった.同年,公益社団法人日本補綴歯科学会医療問題検討委員会は,「保険診療におけるCAD/CAM冠の診療指針2014」を作成し,CAD/CAM冠を用いた補綴歯科診療方針の詳細を,学会ホームページにて会員に,診療報酬改定関連セミナー等を通じて広く歯科医療従事者に報知した.その後,保険収載が大臼歯や前歯部へ拡大したことを受け,同委員会は改めて2020年に「保険診療におけるCAD/CAM 冠の診療指針2020」を作成した.本解説では,診療指針2014を基本としつつ大幅に改訂された診療指針2020の概要についてまとめる.