著者
大西 俊一郎 小林 一貴 横手 幸太郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.417-426, 2019-10-25 (Released:2019-11-22)
参考文献数
41

高齢者においても,総コレステロール(TC),Non HDLコレステロール(Non-HDL-C),LDLコレステロール(LDL-C)値が高くなれば,冠動脈疾患の発症は増加する.一方で,高齢者における脂質異常症と脳卒中,認知症発症,ADLとの関係は明らかとは言えない.このように高齢者の脂質異常症の病態は成人(65歳未満)と類似点が多く,基本的には同様に扱う.続発性脂質異常症を鑑別したうえで,日本動脈硬化学会の定める基準を用いてリスクに応じた治療目標を設定し,食事療法と運動療法を基本として治療する.また,高齢者には身体機能や合併症など種々の多様性があり,治療においては高齢者特有の病態への配慮が必要である.食事療法では極度のカロリー制限は避け,重度の腎機能障害がなければ筋肉量維持の観点からたんぱく質の摂取を積極的に勧める.運動療法では有酸素運動と,可能であればレジスタンス運動を併用するが,高齢者は運動器・呼吸器・循環器などの障害を有していることも多く,個々人に合った運動メニューを考慮する.薬物療法としては二次予防および前期高齢者(65歳以上75歳未満)の一次予防においてスタチンの有用性が示されている.2019年にはエゼチミブ単剤投与による後期高齢者(75歳以上)の一次予防効果が本邦より報告され,今後のガイドラインへの反映が期待される.
著者
川島 尊之
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.555-561, 2018-10-01 (Released:2019-04-01)
参考文献数
11
著者
山本 賢三
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
燃料協会誌 (ISSN:03693775)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.29-33, 1959-01-20 (Released:2011-10-21)

核融合反応の実用化には多くの困難が伴われるが, 実用化の曙には燃料資源がほとんど無制限に全世界に解決されるなどの多くのすぐれた利点をもつている。本報では核融合反応のもつ種々の特徴と制約および核融合反応装置としての種々のプラズマ発生装置が簡単にのべられている。
著者
松井 勇佑
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.140-141, 2023-02-15

非線形次元削減の代表的手法であるLocally Linear Embeddingについて簡単に解説する.
著者
塚根 芳将 富家 進 元吉 菜緒子 吉村 匡史
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.90-95, 2019 (Released:2019-12-02)
参考文献数
1

新型MAZDA3では人馬一体の走る歓びを更に進化させるために人の行動原理を分析,人が普段から歩行する際に使っているバランス保持能力に着目した。そして運転中でもバランス保持能力を発揮できることが,車と人を一体に感じさせる車のあり方であると考え,シート,車体,サスペンション,タイヤの機能を根本から見直し,新たな車両構造技術(SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE)を開発した。その結果,新型MAZDA3では,まるで自分の手足のように違和感なく運転でき,長時間運転しても疲れを感じない運動性能を実現させ,人馬一体の向上と走りの質を高めることができた。
著者
川崎 明子
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.271-297, 2020-09-30

ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』において,不思議の国の〈不思議〉を構成する最大の要素は,多種多様な〈変身〉である。これらの〈変身〉には,言語的要素と生物的要素があり,両者は互いに密接にかかわっている。前者は静的で,死に近く,完結していて,秩序があり,時間がかからない。後者は動的で,生命を持ち,制御しにくく,時間を伴う。物語の根底で作用しているのは数学者キャロルによる言葉遊びの原理,特に地口における単語の置換という言語的変身であるが,そこにも生物がかかわり,変身後に生物の存在感が強まる。生物の強い存在感,特に個体が自由に動いたり時間を伴って変化したりすることは,同時代のチャールズ・ダーウィンの進化論による生物への注目と連動している。本論文では変身を,言葉や物質が登場人物化する〈非生物の生物化〉と,アリスをはじめとする登場人物が物理的に変化する〈生物の変身〉に大別して論じる。
著者
田中 美郷 芦野 聡子 小山 由美 吉田 有子 針谷 しげ子 熊川 孝三 武田 英彦
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.153-162, 2013-04-28 (Released:2013-09-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1

新生児聴覚スクリーニングで難聴が疑われ, 1歳頃より難聴が進行した自閉症スペクトラム障碍及び重度知的障碍を伴う難聴児に3歳11か月時人工内耳を装着させた。本児は聾学校へ入る前から手話を導入した言語教育を受けてきた。本児は現在12歳に達したが, 現在のコミュニケーションは聴覚的言語理解は発達しつつあるものの言語表出は専ら手話である。本児は一時期聴覚過敏症があって人工内耳を拒否するようになった。しかし現在はこれを克服して人工内耳を常用している。本児は社会生活を送る上で必要なskillを実体験を重ねて身に付けつつある。これには両親の熱意はもちろん, 地域社会のいろいろな分野の機関や人々の支援があった。両親は我々のアドバイスにも耳を傾けて, 各方面に働きかけてこの体制を築いてきた。この努力の成果として, 言語発達も含めて社会的経験も積んで本児になりに豊かに育ちつつある。
著者
竹内 幸絵
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

テレビCM放映は1953(昭和28)年に始まったが、「昭和30年代」に入った当初は戦前からの技術的・人的蓄積があったグラフィック広告界が隆盛し、テレビCM界の地位は低かった。しかし当該10年の後半に至って広告メディアとしての両者の社会的地位は転倒する。この現象は、テレビCMを中心に起きた「見て理解する」から「感覚的に受け入れる」への視覚性の画期であったと思われる。本研究は今日の視覚メディアの原点としても重要な本現象を、大量の実広告資料、関係者の聞き取り、雑誌などの周辺資料をもとに多角的な視座から検証し解明を目指す。同時に成果をもとに、メディアの視覚性を歴史認識に取り込む方法論の構築を検討する。
著者
長津 美代子
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.研究の概要「個人の枠をしっかりと確保し、配偶者と親和的な関係を築くと同時に、外部の多様なネットワークとも繋がり、重層的な関係のなかで生きること」が理想的な老いの姿となるであろう。こうした理想的な老いを実現するためには、老いの入り口にあたる50代の中高年期に夫婦関係や社会関係の再構築を行う必要がある。平成12(2000)年度は、夫婦関係の再構築尺度を作成し、再構築状況を把握すると共に、それに影響する要因を明らかにした。平成13(2001)年度は、12年度調査から選び出した13名を対象に、結婚3〜40年に及ぶ夫婦としての歴史を夫婦関係の危機との関連で把握すると共に、危機解決にどのような資源が活用されているかをインタビュー調査でとらえた。平成14(2002)年度は、パーソナル・ネットワークの現状と夫婦の情緒的統合およびウェルビーイングとの関連を明らかにした。平成15(2003)年度は、平成13年度に調査したケースを危機発生-対処-適応の二重ABC-Xモデル(McCubbin, H.L.)に当てはめて分析しようとすると、情報不足のあることが判明したので、追加のインタビュー調査を行った。2.結果の概要1)夫と妻に共通して、夫婦関係の再構築に影響している要因は、「夫婦共通の友人の有無」「就寝形態」「夫の母親と妻の関係(嫁姑関係)」「夫婦の個人化」であった。「夫婦の個人化」のみ負の相関で、他は正の相関である。2)夫と妻に共通して、パーソナル・ネットワーク規模、夫婦単位の付き合い組み数は、夫婦の情緒的統合と正の相関が認められた。また、ネットワーク規模の大きさは夫のウェルビーイングを高める要因であるが、妻の場合にはそうした関連が認められなかった。3)夫あるいは妻は、さまざまな資源を活用しながら夫婦間に生じた危機を乗り越え夫婦関係経歴を築いている。その危機は、社会・経済状況の変化によって生じた場合も多く、夫婦関係は社会・経済状況によっても規定されているといえる。
著者
山中 美由紀
出版者
龍谷大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

韓国家族の世代間における位置関係の変化を把握するために、嫁と姑の関係に焦点をあて、韓国水原市において調査を実施した。1992年4月以後、京都韓国学校、韓国文化院資料室(東京)他において資料および情報の収集を行った。9月に訪韓し、韓国老人問題研究所に調査協力を依頼するとともに、水原市において下調べを実施した。調査は、10月ほぼ1カ月間にわたって実施したが、対象者は、嫁として、姑と同居した経験をもつ女性を対象とした。永福女子中学校、永信女子高等学校、老人大学4か所で調査票の配付と回収を行ったが、配付部数は1170部、回収率は80%であった。11月初旬に日本に返送された調査票を整理し780ケースを有効とした。コーデイングしたのち2月にコンピュータによる処理を行った。調査結果のうち主目的であった権威類型については、結婚年次別に分類した4段階の各世代間の変化として、旧世代から新世代に移るにしたがって姑優位型が減少し、嫁優位型が増加する傾向を捉えることができた。また、一致型の減少に対して自律型の増加がみられ、嫁の姑へ追従関係から、嫁、姑の生活領域の個別化の傾向を伺うことができた。こうした嫁・姑の位置関係の逆転現象は、本調査が依拠したところの、増田光吉が神戸市近郊で実施した20年前の調査結果と類似するものであった。
著者
Shingo FUJIMOTO Takuma TAKEUCHI Yoshiki HIGASHIKADO
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE Transactions on Information and Systems (ISSN:09168532)
巻号頁・発行日
vol.E105.D, no.2, pp.227-234, 2022-02-01 (Released:2022-02-01)
参考文献数
25
被引用文献数
4

Blockchain is a distributed ledger technology used for trading digital assets, such as cryptocurrency, and trail records that need to be audited by third parties. The use cases of blockchain are expanding beyond cryptocurrency management. In particular, the token economy, in which tokenized assets are exchanged across different blockchain ledgers, is gaining popularity. Cross-chain technologies such as atomic swap have emerged as security technologies to realize this new use case of blockchain. However, existing approaches of cross-chain technology have unresolved issues, such as application limitations on different blockchain platforms owing to the incompatibility of the communication interface and crypto algorithm and inability to handle a complex business logic such as the escrow trade. In this study, the ConnectionChain is proposed, which enables the execution of an extended smart contract using abstracted operation on interworking ledgers. Moreover, field experimental results using the system prototype are presented and explained.
著者
河原 剛一
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

一般的に成人の心筋細胞は終末分化した細胞と考えられ,生まれた直後に分裂能を失い,増殖しないものと理解されてきた。したがって,心筋梗塞や拡張型心筋症によって心筋細胞に壊死が起こった場合,心筋細胞は再生されずに心不全になって死亡する。成人の心筋細胞が生後の分化によって,細胞周期から抜け出して分裂能を喪失するメカニズムは,これまでにも,その重要性から,様々な観点から膨大な研究が行われてきたが,未だ「謎」として残されている。本研究の目的は,「脱分化した終末分化心筋細胞において核分裂と細胞分裂の解離を制御している,すなわち肥大と増殖をスイッチしている制御メカニズムを解明する」ことである。本年度における研究成果は,以下のようにまとめられる。1.昨年度の本研究成果として,新生ラット心室筋細胞の培養系において,RNA干渉法によりCx43の発現をdown-regutationすると,心筋細胞は細胞分裂周期に再突入し,増殖することを明らかにしたが,本年度はそのメカニズムの解明を目指した。その結果,Cx43 knockdownによって,細胞内におけるROS生成が抑えられ,それがp38 MAPK活性の抑制そして増殖能増加につながっていることが分かった。2.昨年度,心筋細胞培養系に対して過酸化水素(H_2O_2)を付加すると,p38 MAPKの活性化を介するCx43発現増加が起きることを明らかにしたが,H_2O_2の付加によるCx43発現の増加は,心筋細胞膜上や細胞内ばかりではなく,ミトコンドリア内膜での発現(mtCx43)も上昇することが分かった。このmtCx43の発現増加が心筋細胞内ROS産生の増加につながり,その結果生じるp38 MAPKの持続的活性化が心筋細胞の分裂能の喪失に関与している可能性を明らかに出来た。