著者
清野 陽平 山西 良典 辻野 雄大 松村 耕平
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2023-EC-69, no.7, pp.1-6, 2023-10-19

日常会話における発話は,コンテクストや感情などによって異なる.意味を含まない「はぁ」という一言を発話する場合でも,発話者自身が伝えたいコンテクストによって発話は異なり,その差異によって聞き手も発話者が意図したコンテクストをおおよそ理解する事ができる.本研究では,多様な意味を持つ同一発話からの意図の推定を目標とし,コンテクストごとの発話特徴量の究明を目指す.この発話分析の端緒として,「はあ」データセットの構築と音声に対する基礎分析を行う.データセット構築のために遊びながらデータ収集が可能なフレームワークを設計し,「はぁ」の発話データを収集した.各コンテクストの発話に対して,音声全体から抽出される音響特徴と音量の変化を分析した.
著者
山崎 武俊 峯 尚志 土方 康世
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.287-292, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
12
被引用文献数
6 5

冠攣縮性狭心症は冠動脈が一時的に収縮するためにおこる狭心症であり,薬物治療が有効である。ただし治療に難渋する症例も多い。今回,我々は冠攣縮性狭心症に対して四逆散と桂枝茯苓丸を併用し,症状の消失を認めた2症例を経験したので報告する。症例1:73歳,男性。安静労作に関係のない胸部不快感を自覚。ホルター心電図で症状に一致するST 上昇を認めた。抗狭心症薬を処方されたが症状が消失せず。四逆散と桂枝茯苓丸を投与したところ,症状が完全に消失した。症例2:58歳男性。安静時の胸部不快感を自覚。アセチルコリン負荷試験陽性となり上記診断を得られた。抗狭心症薬を処方されたが,胸部不快感が消失せず。四逆散と桂枝茯苓丸を処方。症状が完全に消失した。治療抵抗性の冠攣縮性狭心症に対して,四逆散と桂枝茯苓丸の併用が有効である可能性が示唆された。
著者
中西 弘樹
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.169-176, 1988-08-31 (Released:2017-05-24)
被引用文献数
3

A total of 20 myrmecochorous plant genera and 19 seed-dispersing ant species were recorded from the warm-temperate zone of Japan. Of these plant genera, Akebia, Humulus and Lindera were newly found to be myrmecochorous. Akebia quinata, A. trifoliata and lindera citriodora, which had been regarded as mammal-or bird-dispersed species, seemed to be diplochorous, since their seeds contained in the faeces of mammals or birds were frequently observed being carried away by ants. The disseminule weight of the myrmecochorous species varied widely from 0.178mg (Corydalis racemosa) to 47.538mg (Akebia trifoliata), but was most frequently between 0.4mg and 2 mg. Unlike cool-temperate myrmecochores, which usually occur on the forest floor, warm-temperate myrmecochores were usually distributed in open or semiopen habitats such as at the forest margin, in cracks in stone walls, in grasslands and at the roadside. Seed dispersal occurred mostly from late spring to early summer, but occasionally took place even in autumn.
著者
毛利 学 西尾 正寿 毛利 純 島津 薫
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.1373-1377, 1979-10-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
21
被引用文献数
1

In performing tonsillectomies, we observe the following precautions: (1) the operation is performed under general anesthesia with fluothane with nitrous oxide and oxygen. (2) local epinephrine injection for the control of postoperative hemorrhage is avoided as there is the risk of evoking postoperative bleeding from reactive vasodilatation after the peripheral vasoconstrictive effect of the drug has worn off. (3) hemostasis is accomplished by ligation of vessels encountered during extirpation.During the past nine years, a total of 284 tonsillectomies among patients ranging from three to thirty-eight years were performed, adhering to these three principles. Gratifying results were obtained in 282 cases. Postoperative hemorrhage occurred in 2 patients. Examination of the surgical wound by direct laryngoscopy revealed the cause of bleeding to be loosening of a ligature. Another complication was dislocation of a central incisor in one case.
著者
綿貫 幸三
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1091-1093, 1971 (Released:2011-10-14)
参考文献数
5
著者
藤村 諭史 釜﨑 大志郎 末永 拓也 吉田 禄彦 森永 秀和 大田尾 浩
出版者
公益社団法人 佐賀県理学療法士会
雑誌
理学療法さが (ISSN:21889325)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.29-34, 2023 (Released:2023-10-26)
参考文献数
18

[目的]本研究は,若年者のアーチ高率と歩行速度の関係を検討することを目的とした。[対象]対象者は,健常若年者67名(19± 1歳,男性64%)とした。[方法]基本情報として性別,年齢,身長,体重,body mass index を記録した。身体機能は,最大歩行速度,アーチ高率,握力,膝伸展筋力,足指把持力を測定した。まず,各測定項目の相関をPearsonの相関分析で検討した。次に,最大歩行速度を従属変数とした重回帰分析を行った。[結果]最大歩行速度はアーチ高率,握力,膝伸展筋力,足指把持力と有意な相関関係を示した。さらに,重回帰分析の結果,最大歩行速度にはアーチ高率が関係することが明らかになった(標準化係数:−0.36,p=0.016)。[結語]アーチ高率の低下は,若年者の最大歩行速度を上昇させる要因である可能性が示唆された。
著者
保坂 公大 大田尾 浩 吉田 傑 今村 純平 田中 順子 柴田 元
出版者
公益社団法人 佐賀県理学療法士会
雑誌
理学療法さが (ISSN:21889325)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.41-46, 2023 (Released:2023-10-26)
参考文献数
14

[目的]慢性期の脳卒中者の短下肢装具(ankle foot orthosis:AFO)を変更することが歩行能力の向上に繋がるかを検証した。[対象]膝のロッキングを認める発症から2年9 ヶ月経過した脳卒中者1名を対象とした。[方法]基礎水準期にはUD フレックスAFO を,操作導入期には大河原式AFO を使用した。評価項目は10m 歩行速度,歩行率,6分間歩行距離(6 minute walking distance:6MWD),歩容,改訂長谷川式簡易知能評価スケール,brunnstrom recovery stage,足関節関節可動域,握力,膝伸展筋力,表在感覚,深部感覚,膝関節のNRS(numerical rating scale),FBS(functional balance scale),TUG-T(timed up and go test)とした。基礎水準期と操作導入期の回帰直線から,水準と勾配を回帰式の値で判定した。また二項検定により10m 歩行速度,歩行率,6分間歩行距離を比較した。[結果]基礎水準期と比較して操作導入期の10m 歩行速度,歩行率,6MWDに有意差が認められた。膝のロッキング等の歩容が改善した。[結語]慢性期の脳卒中者の能力に適したAFO への変更は即時的な歩行能力の改善に有効である可能性が示唆された。
著者
高松 洋一
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

14世紀から20世紀初頭まで存続し、ヨーロッパ、アジア、アフリカにまたがる広大な国土を領有したオスマン朝は膨大な量のアーカイブズを残した。トルコ共和国のイスタンブルにある総理府オスマン文書館の所蔵資料は1億5000点以上を数えると言われ、このアーカイブズは世界史研究において第一級の価値をもつ人類の貴重な財産である。しかしながら1840年代以前の資料は、長く公文書館に収蔵されずにイスタンブル市内の倉庫に分散して保管され、移動を繰り返した結果、少なからぬ資料が失われ、互いに混ざり合い、原秩序の再現が困難になった。1930年代以降オスマン朝のアーカイブズは出所原則に基づき、部局の名称を冠したフォンドごとに整理されるようになった。しかしながら、すでに資料の多くが混交してしまったために、個々の資料についてその出所とされる部局は、推定に基づくのに過ぎず、本来の出所がそのフォンドの名称である部局ではない危険性がある。オスマン朝の政策決定過程は一般にボトムアップ型であったが、中央政府への報告に対して決定された政策が勅令の形で発布されるまで、一つの案件に関わる文書が様々なフォンドに分散して現存している。したがってアーカイブズのこの特質を活かし、ある案件に関し、具体的な文書処理過程を完全に再構成することが可能となる。資料の電子カタログ化により、複数のフォンドに分散してしまった同一案件の処理文書を、データベース上で相互にリンクさせる工夫が期待される。また一連の文書処理過程において、作成された文書の様式は他の文書のテキストにおいて相互に言及され、またテキスト自体も引用され、反復されるため、ときには未発見あるいは散逸した資料の大要を再構築することも可能である。先般の戦争で壊滅的打撃を受けたイラクにおけるアーカイブズも、オスマン朝期に関しては、資料をある程度まで再現することも可能であろう。
著者
鈴木 拓 山本 英一郎 仲瀬 裕志
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.859-866, 2019-11-10 (Released:2019-11-11)
参考文献数
31

大腸がんは,遺伝子変異の段階的な蓄積により発生するという多段階発がん説がよく知られている.さらに染色体不安定性,マイクロサテライト不安定性,CpG island methylator phenotypeなどの分子異常に基づく大腸発がん理論が提唱されてきた.近年のオミクス解析技術の進歩により,がんゲノム・エピゲノムを網羅的に把握することが可能となり,従来の知見の整理とさらなる解明が進んでいる.また,トランスクリプトーム解析に基づくサブタイプ分類や,数理解析による大腸がん進化モデルの提唱など新たな展開も見られており,より精密ながんゲノム医療の実現に寄与することが期待されている.
著者
角屋 由美子
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.206-214, 2012-08-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
8

米沢藩は,上杉謙信を家祖とする名門上杉氏を領主としていたが,米沢藩初代藩主となった上杉景勝は,関ヶ原の戦いで敗者となり,会津120 万石の大大名から米沢30 万石に減封となった.さらに三代藩主上杉綱勝の急死に伴う養子手続きの不手際により,鷹山が上杉家の養子となり家督を相続した時は,領知は15 万石まで激減していた.鷹山は,財政難に苦しむ米沢藩の藩政改革に生涯をかけて取り組み,成功に導いた藩主であった. 平成23 年3 月11 日,東日本を襲った大震災に混迷する社会を反映し,鷹山ならどのようなリーダーシップを発揮しただろうと,鷹山に対する関心が高まっている.鷹山の数々の施策を,水害・飢饉・火事など米沢藩領内の災害について,その備えや対応の視点から歴史的立場で報告する.
著者
武田 道寛 西野 智哉 滝沢 志絵 櫻井 馨士 若井 慎二郎 守田 誠司 中川 儀英 猪口 貞樹
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.326-328, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
11

浸水性肺水腫 (immersion pulmonary edema, 以下IPE) は, 本邦での報告例はいまだ少ないため認知度が低い。症例は既往のない50歳代女性で, 潜水中に呼吸困難を自覚し救急要請された。救急隊接触時の動脈血酸素飽和度は80% (室内気) であり, 来院時は両側肺野に水泡音を聴取し, 重度の低酸素血症と肺水腫を呈していた。心電図, 心臓超音波検査では心原性を示唆する所見は認めなかった。意識清明であったため, 非侵襲的陽圧換気 (noninvasive positive pressure ventilation, 以下NPPV) による治療を開始したところ速やかに自覚症状と酸素化は改善した。チョークスや動脈空気塞栓症を疑う所見に乏しく, また海水誤嚥のエピソードもなかったため, IPEの可能性が高いと考えられた。
著者
田中 雄一郎 高橋 篤司
雑誌
DAシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.221-226, 2014-08-21

本稿では,平面基板上の集積回路設計における配線問題と親和性の高いペンシルパズルである,ナンバーリンクの特性について考察し,その解法について述べる.ナンバーリンクは,縦横斜めの周囲 8 マスで隣り合う数字を一塊にして島とすることで,空洞内島配線問題として解くことが可能である.外部配線問題において,CHORD-LAST 法は全ネットが配線可能である時,平面性を失わないネットの配線順序を与える.提案アルゴリズムでは,この順序を利用してナンバーリンクの解を生成する.また,対となる数字が共に外側のマスに位置する時,その数字を結ぶ配線で配線領域を分割することが可能であり,他の数字の組は共に片側の領域に位置する.領域の分割を用いた枝刈りを組み合わせることにより,計算量を削減したアルゴリズムを提案する.
著者
新井 久稔 井上 勝夫 浅利 靖 宮岡 等
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.15-23, 2017-01-15 (Released:2023-09-07)
参考文献数
13

北里大学病院救命救急・災害医療センター(以下当センター)に勤務する精神科医の立場として,救命救急センターに搬送され精神疾患が疑われた患者に対する対応に関して検討した。筆者は,救命救急センターに搬送となった急性薬物中毒や縊首,墜落外傷,刺切創など自殺企図の症例や,重篤な身体疾患の治療にて入院となり精神症状を合併した症例などに精神科医としての立場から対応している。当センターでは,①救命救急センターにおける精神科医の関与は自殺企図症例の割合が高いこと,②自殺企図症例の精神科診断は,F3(気分障害)の割合が高く,退院後精神科医療機関へつなぐケースの割合も高いこと,③自殺企図の手段により,入院期間に影響(過量服薬は短期間,転落外傷は入院が長期化)する傾向が見受けられた。さらに,救命救急センターに勤務して感じた点は,①従来の報告どおり,救命救急センターに搬送される患者のなかでも自殺企図患者が1割以上を占めて高いこと,②精神科医としての役割において自殺企図患者の対応が中心であること,③救命センターのベッドは早い回転が必要であり,早めの治療・ケースワークの必要とされること,④精神科医療機関との効率的な連携に関してはさらに検討が必要と考えられた。
著者
正宗白鳥著
出版者
福武書店
巻号頁・発行日
1983
著者
天貝 義教
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.31-40, 1996-09-10 (Released:2017-07-25)
参考文献数
38
被引用文献数
1

アルバースの用語法によれば、色彩は芸術において最も相対的な媒体となる。アルバースの色彩教育に対するアプローチと絵画制作の中心にはこうした概念があり、アルバースの教育と芸術との最も直接的な結び付きは、色彩の分野において認めることができる。アルバースの色彩教育は、1933年の合衆国への移住後、まずブラック・マウンテン・カレッジで始まり、後にイェール大学において行われた。また、アルバースはこの色彩教育に加えて、多数の抽象絵画の制作を試みており、1950年には『正方形讃歌』の連作が着手されることとなった。この連作はアルバースが1976年にその生涯を閉じるまで描き続けられたのである。本稿の目的は、アルバースの色彩教育の発展過程を跡づけるとともに、その色彩教育の内容とアルバースの代表作に位置づけられる『正方形讃歌』の連作との相互関係を検討することによって、アルバースの教育と芸術における色彩の意味を考察することにある。