著者
椿 俊和 小澁 達郎 松田 秀一 岩崎 郁美 杉原 雄三 赤澤 晃 小幡 俊彦 飯倉 洋治
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.124-133, 1993-08-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
26

気管支喘息児の家庭における空気清浄機の効果について検討を行った. 対象は, 国立小児病院アレルギー科に通院中の5~13歳の中等症以上の気管支喘息児17名で, これを空気清浄機にフィルターを装着した群12名と装着していない群5名の2群に分けて検討した. 第一製薬社製ベルフロースーパーを使用し, 観察期間・使用期間・観察期間の3つの期間に分けて, 臨床症状および呼吸機能の変化を朝, 昼, 夜に分けて評価した. 結果は, フィルター装着群では呼吸困難・疾・鼻水・睡眠障害に有意な改善が認められた (p<0.05). 喘息に関しては夜間に有意な改善が認められた (p<0.05). しかし, フィルター未装着群では改善はみられなかった. また, 呼吸機能に関しては有意な上昇は認められなかった.以上より, 空気清浄機は気管支喘息児の治療に有効な一手段であり, 症状改善に有用と思われた.
著者
中川 翔太郎 橋本 明憲 高橋 俊樹
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-10, 2016 (Released:2016-06-01)
参考文献数
15

窓から室内に侵入したスギ花粉挙動を,数値流体力学と粒子軌道計算の連成シミュレーションにより解析した。シミュレーションには群馬大学で開発した“数値流体力学及び浮遊粒子状物質挙動の特性解析ツール群:CAMPAS”を用いた。本研究では,窓と換気扇を有する室内を想定し,大規模な換気時の室内花粉飛散を定量的に示し,また弱換気時の空気清浄機導入による花粉捕集効果を明らかにすることを目的とした。窓を花粉の侵入源とし,窓のある壁面に対して左側面壁奥上に換気扇がついているものとモデル化した。換気回数8.3回/hの大規模換気時における花粉の室内侵入を調べるため,床面への落下率,換気扇からの排出率,または落下花粉を計算した。窓の対面壁近傍,換気扇の下などに多数の花粉が床面へ落下することがわかった。次に換気回数1回/hの弱換気時に空気清浄機を稼働した際の花粉捕集を調べた。空気清浄機の設置位置は,右側面壁中央下部とした。捕集できる花粉数は落下花粉数の半分程度であることがわかった。また,空気清浄機の生成気流により,窓から侵入した花粉を広く拡散させることも明らかになった。
著者
岸 磨貴子 今野 貴之 久保田 賢一
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学 (ISSN:13495178)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.105-121, 2010 (Released:2017-03-28)

本研究の目的は、インターネット上での異文化間の協働を実践共同体の枠組みで捉え、実践共同体が組織されるプロセスを明らかにすることで、異文化間の協働を実現する学習環境デザインのための要件を提示することである。日本とシリアの児童・生徒が、協働して物語を創作する実践を研究事例とし、実践共同体を構成する3つの次元である「共同の事業」「相互の従事」「共有されたレパートリー」が組織されるプロセスを明らかにする。本事例における「共同の事業」とは、絵本の共同制作である。また、絵本を完成するために、児童・生徒が協働し、相互に助け合うことを「相互の従事」とし、その中で、絵本を創作するために必要な計画の立て方、物語の書き方、表現などを「共有されたレパートリー」と捉える。日本とシリアの児童・生徒の学習記録とフィールド調査で得たデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき分析した。その結果、児童・生徒は、協働が不可欠な状況において、物語制作に相互に従事し、物語の作り方、コミュニケーションの方法、協働で創作する意味などのレパートリーを共有した。3つの次元の組織化のプロセスから、インターネット上での異文化間の協働を促すためには、協働が不可欠な課題の設定、学習者間の相互従事を促すための支援のデザイン、学習者間の協同的学習を促す自由度と枠組みの設置という3つが学習環境デザインのための要件として提示できた。
著者
Fernando Mata
出版者
The United Graduate Schools of Agricultural Sciences, Japan
雑誌
Reviews in Agricultural Science (ISSN:2187090X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.217-233, 2023 (Released:2023-09-15)
参考文献数
76

The stratified British sheep production system is a three-tier production system that includes the hill, the upland, and the lowland subsystems. In the hills, pure-breed ewes are kept, and draft five-year ewes are brought down to the uplands where they can still have a couple of years of productive life. In the uplands, the hill ewes are mated with an upland sire. This first cross brings together hardiness, and mothering abilities to produce dams of the Prime Lamb. These are brought further down to the Lowlands where they are mated to a Terminal Sire to produce the Prime Lamb. The system takes advantage of maternal and individual heterosis and complementarity of breeds. The system marked the British sheep industry of the 20th century, however, the new challenges faced by the industry may end this unique production system. The objective of this revision is to construct a single document easily accessible to scholars explaining the Stratified British Sheep Production System.
著者
岩崎 英哉
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.e41-e54, 2023-10-15
著者
稲垣 俊介
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.599, 2023-10-15

高等学校の情報教育は1970年代に専門教育において情報処理教育が行われるようになったことに端を発し,1989年には複数の教科で情報に関する内容が取り入れられ,1999年には「情報A」「情報B」「情報C」が新設され,2009年に「社会と情報」「情報の科学」へ再編された.そして,2018年には「情報I」が共通必履修と示され,全高校生が共通の科目を学ぶことになった.令和7年度大学入学共通テストに「情報I」が導入されることで情報の位置づけが大きく変わった.これは情報教育の大きな進展の契機となるが,受験科目となる前の「生徒が興味を持つような授業」の重要性を忘れてはならない.受験のためだけでなく,興味から情報を学ぶ授業作りが望まれる.
著者
小原 格
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.596-598, 2023-10-15

本書は,クラウドシステム全般に関する,情報技術者に対する総合的な解説書である.特定システムの製品紹介的な解説が氾濫しているなか,基礎概念の説明に限り,クラウドシステムの全側面をカバーすする総合的な解説書をめざしている.基本的な仕組みの解説から始まり,既存システムからの移行導入,運用,IoTや人工知能応用,法制度との関係など,クラウドについて知るべきことを網羅している.
著者
ドゥラゴ 英理花
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.590-595, 2023-10-15

本稿では,企業におけるAIアプリケーションの開発事例を活用し,教科・情報Iが目指す資質と能力(コンピテンシー)育成のための授業実践を行う.AIアプリケーション開発過程の中でも,特にデータ分析の手法に焦点を当てたカリキュラムにより,生徒がデータが持つ「文脈を読解する力」を習得することを目標としている.また,授業後の振り返りアンケートの回答をテキストマイニング分析によって評価し,コンピテンシーの向上に貢献する授業のアプローチ方法についても検討していく.
著者
Ikuya Yamada Atsushi Tanaka Seiji Oda Yuichi Okazaki Fumito Toda Yuta Kato Yuta Kizawa Masaya Oshita Manami Goto Amane Morimura Asuka Ochi Kaoru Toda Wencong Wang Hajime Yamamoto Hidekazu Ikeno Shunsuke Yagi
出版者
The Japan Institute of Metals and Materials
雑誌
MATERIALS TRANSACTIONS (ISSN:13459678)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.2097-2104, 2023-09-01 (Released:2023-08-25)
参考文献数
37

Chemical substitution is an effective way to improve electrocatalytic properties in transition metal oxides. We investigate the synergistic effect between Fe4+ and Co4+ ions on the catalytic activity for oxygen evolution reaction (OER) in the Fe–Co-mixed perovskite oxide CaFe1−xCoxO3. The OER activity of CaFe1−xCoxO3 is substantially increased by small amounts of Co (Fe) doping into CaFeO3 (CaCoO3), leading to the superiority compared to the pure Fe and Co perovskite oxides. The x dependences of the OER overpotential and specific activity for CaFe1−xCoxO3 (0.05 ≦ x ≦ 0.95) are expressed by constant offset from the weighted average between CaFeO3 and CaCoO3, which can be interpreted to be the synergistic effect between Fe4+ and Co4+ ions on OER activity. The absence of the optimum x for the highest activity for CaFe1−xCoxO3 contrasts with the volcano-like plots reported in various mixed-metal oxides. First-principle calculations using the special quasirandom structure models on CaFe1−xCoxO3 (x = 0.03–0.5) demonstrate that about half the amount of Fe4+ is electronically activated to possess smaller charge-transfer energies, corroborating the enhancement of catalytic activity in CaFe1−xCoxO3. These findings provide new insight into the synergistic effects in complex transition metal oxide catalysts.
著者
飯坂 正樹 五十嵐 智生 兼宗 進 中村 めぐみ 内田 卓
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.d92-d105, 2023-10-15

日本におけるIT人材の不足と国際競争力の低下はIT教育の遅れに起因している.この課題を受けて学校におけるプログラミング・情報教育の必修化がなされたが,プログラミング能力の客観的評価・可視化が困難であることから教育現場では適切な指導を行うことが難しい.そこで本稿では子どもたちのプログラミング能力の定着度実地検証を行った結果から,プログラミング教育の量や質の差によるプログラミング能力定着度の違いについて述べるとともに,今後学校や大学,プログラミングスクール等で効果的な指導を行う上での汎用的かつ有用な情報を提供する.
著者
秋信 真太郎 冨吉 政貴 吉村 理希
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.162-168, 2020 (Released:2019-12-24)
参考文献数
4

衛星回線および運用の高効率化を実現したSNGシステムを開発した.多チャネル化による周波数効率の改善とSNGとしては初めて回線をIPネットワーク化したことで,IP伝送装置との連携等,利便性が大幅に向上した.また,一部の帯域にTDMA方式を採用し,車載局と固定局間のIP双方向通信を実現し,耐災性に優れた連絡回線(IP電話)を構築した.さらにこの回線を用いることで,衛星回線を通じて車載局からインターネット接続が可能となり,大災害発生時に公衆回線が利用できない場合でも,車載局が情報ハブとして機能することで報道制作等における利便性が大きく向上した.また運用面では,システムによる自動化を導入したことで大幅な効率化も実現した.
著者
駒木 文保
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.185-204, 2023-09-07 (Released:2023-09-07)
参考文献数
44

統計的推測の問題を予測の立場からとらえる予測分布の理論について考える.真の分布から予測分布へのKullback–Leiblerダイバージェンスで予測分布の性能を評価すると,多次元正規モデルや多次元Poissonモデルにおいては,Bayes推定の問題がBayes予測の問題の極限として定式化できる.Bayes推定を利用するには事前分布の選択が重要になるため,無情報事前分布あるいは縮小事前分布についての多くの研究がなされている.予測と推定の関係に着目することにより,Bayes推定についての様々な知見をBayes予測に応用すること,Bayes予測の立場からBayes推定について新たな理解をすることが可能になる.このような予測と推定の関係について,特に多次元のPoisson分布を例にとり説明する.
著者
山本 加代子 池部 晃司 白井 和美 笹谷 真奈美 水野 誠士 川尻 なぎさ
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.83, 2007 (Released:2007-12-01)

今回、外科領域の術中検査として検査した際に全てのパネルセルと反応する不規則性抗体が検出され、精査の結果、高頻度抗原に対する抗Ku抗体を保有した症例を経験したので報告する。高頻度抗原に対する抗体を保有する場合、ほとんどすべてのパネルセルと反応し陽性となるため、一般病院での同定や抗原陰性血の確保は困難である。このような場合、血液センターとの情報交換や連携が重要となり、主治医との迅速かつ的確な連絡を改めて示唆された1症例である。 <症例>患者 : 66歳 女性 妊娠歴あり 2子出産経験あり 現病歴:2006年12月 胃部不快感出現 2007年1月 食欲低下、体重減少のため他院受診 2007年2月1日 胃癌精査のため当院外科紹介受診 2月13日 膵臓、胃十二指腸摘出手術のため、輸血に備え、 タイプ&スクリーニング実施 既往歴:特になし <結果>ABO式血液型 O型 Rh式血液型 (+) 不規則性抗体(カラム凝集法)Pegクームス法、フィシン法 (2+)~(3+)陽性 抗体同定用パネルセルにて、Pegクームス法 自己対照以外すべて(3+)~(4+)陽性 レクチンH(3+)の反応 在庫MAP3本とのクロスマッチ Pegクームス法(4+) 上記の結果より、高頻度抗原に対する抗体の保有を疑い、広島県赤十字血液センターに精査を依頼した。その結果、ABO式、Rh式以外その他の血液型検査をさらに実施したところ、Kell式血液型がK-k-、Kp(a-b-),Js(a-b-)であり、抗Ku血清と患者血球との反応が陰性であることから、稀な血液型K0が疑われた。また、O型K0血球と患者血清との反応を確認したところ、生食法、ブロメリン法、Pegクームス法すべてにおいて陰性であったため、血清中には抗Ku抗体の存在があると考えられた。 <まとめ> 全てのパネルセルと反応することから高頻度抗原に対する抗体を疑い、血液センターに連絡し、精査と適合血の確保を依頼した。抗Ku抗体の存在が確認され、適合血が広島に解凍赤血球4単位あるとの連絡があった。主治医には高頻度抗原に対する抗体を保有しているため、適合血の確保が容易ではないことや、解凍赤血球の使用について説明した。高頻度抗原に対する抗体の同定は、一般病院では困難なため、血液センターとの情報交換や速やかな血液製剤供給体制のための連携が重要となると思われた。また今回の場合、術中および時間外に対応した症例であり、タイプ&スクリーニングの事前検査の重要性を再認識し、同定不能な時の適切な対応ができるマニュアルを備えておくことが重要と思われた。
著者
小山 茂
出版者
島しょ医療研究会
雑誌
島しょ医療研究会誌 (ISSN:24359904)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.25-29, 2014 (Released:2021-03-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

一昨年 2012 年(平成 24 年)1 月 1 日、鳥島近海を震源とするM 7.0 の地震が発生した。 かつて居住者がいたが現在は無人島になっている東京の島として、八丈小島を以前紹介した。今回取り上げる伊豆諸島南端の鳥島は明治中期より 移住者が住みついたが、1902 年(明治 35 年)に噴火で在島住民全員が死亡するという痛ましい出来事があった。しかしそれ以来無人島状態が続いたわけではなく、その前後に様々な経緯ある歴史の投影された島だった。調査等で今も在島者がおり、緊急搬送も想定されうる(?)鳥島の過去から現在の姿を紹介する。