著者
関 智子 岡島 成行 進士 五十八
出版者
一般社団法人 日本環境教育学会
雑誌
環境教育 (ISSN:09172866)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.35-46, 2009-03-31 (Released:2011-06-04)
参考文献数
27
被引用文献数
1

The purpose of this study is to present philosophical elements useful in re-examining the foundations of environmental education in Japan by analyzing two of Ishida Baigan's representative works: “Tohi mondo” (Dialog between Sages and Commom People) and “Kenyaku seika ron (Bringing Order to One's House through Frugality)”.   Our findings can be summarized into the following three points. First, the relationship between humans and nature as espoused in Baigan's philosophy is founded on the philosophy of banbutsu ittai (the unity of all things). Second, a rereading of Baigan's Kenyaku ron (Frugality) and Shonin no michi (The Way of the Merchant) in the context of the first finding makes possible the following interpretations: (i) wealth represents not personal assets, but public interest within the global environment, and therefore must be used in ways that are useful to the environment; (ii) the merchant's job is to distribute wealth properly. Third, we can therefore view Baigan's philosophy as an environmental philosophy.   From these results, we conclude that environmental education in Japan should put a high priority on “the integration into nature” based on the philosophy of “the unity of all things.” By ensuring that this integration is not obstructed in any way, we will be able to develop approaches to the environment that are based on our traditional philosophies and are easier to accept for the public. The results of this study also suggest that Baigan's practical philosophy transcends time and is therefore applicable in modern environmental education as well.
著者
近藤 一博
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

疲労、特に脳の疲労は、うつ病や自殺などの重要な社会問題に直結するため、早急に解決すべき課題である。しかし、これまでの国内外の疲労研究は、がん患者や脳神経疾患患者の疲労を対象に行われており、労働によって生じる生理的疲労のメカニズムは不明な点が多かった。我々は最近の研究で、労働や運動による身体の生理的疲労の発生と回復のメカニズムを見いだした。本研究では、この身体疲労のメカニズム研究をもとに、脳疲労の原因を探るとともに、脳疲労の回復やうつ病の予防法を検討する。本研究により、栄養、生活習慣、環境などの改善による、うつ病リスク低減法の開発が容易になると考えられる。
著者
森 恵里子 井上 歩 園山 和代 宮川 大樹 後藤 希 山田 雅 國嶋 憲
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.497-504, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
5

京都市立病院では,2020年9月より臨床検査技師が救急室で業務を行っている。その主な業務は,検査業務,診療補助業務,その他業務があげられる。配置導入時には人員確保の問題などがあったが,短時間の滞在から開始し,現場の意見を取り入れながら徐々に業務や配置時間を拡大することができた。配置から約1年後に実施した医師・看護師対象のアンケートでは,臨床検査技師の救急室配置は必要だとする回答が90%以上を占めた。また臨床検査技師による救急室での静脈路確保についても必要だとする回答が85%以上を占めた。アンケートで肯定的な意見が多数であった要因としては,救急室で他職種と協働するなかで,臨床検査技師の有用性が認知されてきた点が大きい。今後も臨床検査技師として,検査に関する専門性を活かしながら,従来の枠にとらわれない幅広い業務を行い,多方面で患者に貢献できる存在を目指していきたい。
著者
ピンヘイロ マルセロ・ホセ・ペドロサ 佐方 啓介 佐方 あけみ 牧田 登之
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.113-116, 1997 (Released:2018-05-05)
参考文献数
7

野生動物の減少を防ぎ, 畜産的に飼育繁殖をはかる目的で, クビワペッカリー(学名:Tayassu tajacu, 現地名Catetuカテトウ)の飼育をはじめた。雄1頭雌2頭を一組として, 3組を1群とする。野生の3群と, 自家繁殖による3群を, 10m×12mの区画に1群ずついれ, 飼料(ペレット), メロンなどの果物, イモなどの根菜, を給餌する。各群内で雌は共有されるが, 他群の雌を混ぜると侵入者とみなし殺す。雄が死んだ場合は群内の雌を総入替えする。性周期が約24日で, 発情期は約4日間である。通年発情を示す。妊娠期間は142〜149日で, 通常1頭を出産するが2頭のこともある。出産時には産場に雌を移す必要がある。出産後2〜3時間で子供は歩ける。1日位母親についているが, 4〜5日で親からはなして育てる。泌乳期は6〜8週間で, 子供は背後から乳頭に吸いつく。乳質は低脂肪である。野生群, 自家生産群との境界における両群の成体の行動のパターンを目下観察中である。
著者
篠原 清昭
出版者
日本教育経営学会
雑誌
日本教育経営学会紀要 (ISSN:02872870)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.69-80, 1983 (Released:2017-07-06)

The main purpose of this thesis is to make the following points sufficiently clear: (1) what position village communities held, and (2) what role they played, in the construction and maintainance of village elementary schools in the beginning of the Meiji era. To attain this purpose studies have been made into the subject of the School Farm System introduced in Aomori Prefecture of those days. In conclusion, (1) village elementary schools were regarded as the common. property of the village community members and (2) the Meiji administrative power practiced usurpation upon village communities so as to establish modern educational system in their place.
著者
札 周平 佐藤 信輔 林 可奈子 小河原 孝司
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.85-91, 2022-12-01 (Released:2023-06-19)
参考文献数
11

根深ネギのネギハモグリバエ B 系統を対象に茨城県の主要産地で普及しているチアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤について,現地秋冬どりネギ栽培圃場で慣行防除に加え,梅雨入り時,または梅雨明け後にそれぞれ株元散布を行った。粒剤処理後の捕殺数および被害度により,防除効果を評価した結果,8 月中旬の第 1 発生ピーク時には両処理時期ともに無処理区よりも捕獲数,被害度が少なく推移したが,収穫直前の 9 月下旬の第 2 発生ピーク時では,すべての試験区で第 1 発生ピークを上回る捕殺数,被害度が確認された。また,供試したチアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤について,ネギハモグリバエの防除により寄与している成分を明らかにするため,茨城県農業総合センター園芸研究所内圃場でチアメトキサム粒剤,シアントラニリプロール粒剤と比較したところ,チアメトキサム粒剤はチアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤と同等の効果があることが認められた。さらに,チアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤よりも安価で,同等以上の効果が期待できる粒剤を検討するために,ネギのネギハモグリバエまたはハモグリバエ類に登録のある各種粒剤(クロチアニジン粒剤,ニテンピラム粒剤,ジノテフラン粒剤,シアントラニリプロール粒剤,チアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤)について比較試験を行った。その結果,ジノテフラン粒剤で最も高い効果が確認され,低コストかつ使用成分回数の削減につながると考えられた。
著者
Shota Kawai Shunsuke Takashima Masafumi Ando Sayaka Shintaku Shigemitsu Takeda Kazuya Otake Yuma Ito Masaki Fukui Megumi Yamamoto Yoshimichi Shoji Hiroaki Shirahase Tatsuya Kitao
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.701-716, 2023-09-01 (Released:2023-09-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1

The readthrough mechanism, which skips the premature termination codon and restores the biosynthesis of the defective enzyme, is an emerging therapeutic tactic for nonsense mutation-related diseases, such as Hurler syndrome, a type of mucopolysaccharidosis. In the present study, novel triaryl derivatives were synthesized and their readthrough-inducing activities were evaluated by a luciferase reporter assay with a partial α-L-iduronidase (IDUA) DNA sequence containing the Q70X nonsense mutation found in Hurler syndrome and by measuring the enzyme activity of IDUA knockout cells transfected with the mutant IDUA gene. KY-516, a representative compound in which the meta position carboxyl group of the left ring of the clinically used ataluren was converted to the para position sulfamoylamino group, the central ring to triazole, and the right ring to cyanobenzene, exhibited the most potent readthrough-inducing activity in the Q70X/luciferase reporter assay. In Q70X mutant IDUA transgenic cells, KY-516 significantly increased enzyme activity at 0.1 µM. After the oral administration of KY-516 (10 mg/kg), the highest plasma concentration of KY-516 was above 5 µM in rats. These results indicate that KY-516, a novel triaryl derivative, exhibits potent readthrough-inducing activity and has potential as a therapeutic agent for Hurler syndrome.
著者
星野 晋太郎 楠瀬 博明
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.27-33, 2016-01-05 (Released:2017-04-22)
参考文献数
53

低温で電気抵抗が突如として消失する超伝導現象は,その発見から今日に至るまで多くの人々の心を惹きつけている.この現象の本質は1957年に提出されたBardeen-Cooper-Schrieffer(BCS)の理論によって解明され,物理学全体に影響を与える重要な概念となっている.例えば,2012年から翌年にかけて標準理論の最後のピース,ヒッグス粒子が発見されたことは記憶に新しいが,その着想にBCS理論が多大な影響を与えたことをこ存じの方も多いだろう.超伝導の研究分野では,ヒッグス場の役割を果たす電子ペア凝縮体の多様性が大きな興味の1つであり,その中でもひときわ風変わりな超伝導状態が本稿の主題である.超伝導は,格子振動などによって媒介される引力によって結びつけられた電子のペア(クーパー対)が位相をそろえて量子凝縮した状態と考えられている.ヒッグス粒子のスピンはゼロと同定されたようだが,BCS理論で想定されたクーパー対も等方的な(s波)スピンゼロ(1重項)状態である.この状態は元素で言えば軌道やスピンなどの自由度をもたない希ガス(閉殻構造)にあたる.周期表には内部自由度をもつ遷移元素や希土類元素もあり,多彩な物性の源になっている.局所的に強い斥力が働く系では,粒子はお互いに避け合って空間的に離れたクーパー対ができやすく,その波動関数は2つの粒子の相対座標の原点に節をもつ(異方的超伝導).実際,銅酸化物高温超伝導体や液体^3Heではd波1重項やp波3重項のペアが実現していると考えられている.では,空間的にではなく時間的に避け合ったペアは可能だろうか?このような新しいペアは1974年に液体^3Heを対象としてBerezinskiiによって提案された.そのペア波動関数は時間方向に節をもつ奇関数であり,そのフーリエ変換は奇周波数成分によって特徴づけられるため,奇周波数超伝導と呼ばれている.ペアの結びつきが時間とともに振動し,同時刻では消えてしまうという奇妙な状態である.奇周波数超伝導という物質の新しい量子状態には様々な驚きが潜んでいると思われ,これまでに理論・実験両方の観点から議論されている.しかしながら,この時間方向に「異方的」なペアに対して従来の超伝導理論の処方箋を適用すると,熱力学的に不安定で,かつ従来とは逆符号の電磁応答を示すなどの非物理的な解が得られることが指摘され,研究者を悩ませてきた.本稿では超伝導体に対して通常仮定される2つの条件を個別に見直すことにより,熱力学的不安定性の問題が解決されることを示す.第一に見直す点は,ペアを特徴づけるギャップ関数に対して暗に仮定されている「エルミート性」である.これにより,奇周波数超伝導は熱力学的に安定な状態となり,正しい電磁応答係数を得ることができる.また第二の解決策は,「エルミート性」の仮定はそのままに,クーパー対の重心運動量がゼロという通常用いられる条件を見直すことである.実際に,局所電子相関を厳密に取り扱う手法を用いて重い電子系のモデルを解析することで,有限の重心運動量をもつ奇周波数クーパー対が安定に存在することが示される.このように最近の研究の進展によって,奇周波数超伝導の本質的な理解を妨げていた問題点が解決されるとともに,その特異な物性が具体的なモデル計算により明らかになりつつある.
著者
高橋 和則
出版者
中央大学
巻号頁・発行日
2017

元資料の権利情報 : この資料の著作権は、資料の著作者または学校法人中央大学に帰属します。著作権法が定める私的利用・引用を超える使用を希望される場合には、公開者へお問い合わせください。
著者
金内 雅夫
出版者
畿央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

メタボリックシンドロームは糖尿病や心血管病など生活習慣病の根幹をなす重要な病態である。過度の肥満者では食事由来の燃焼CO2排出増加と1回換気量の増大が見込まれることから、メタボリックシンドロームが身近なところでCO2排出や地球温暖化と連関している可能性が窺われる。しかし、メタボリックシンドローム者のCO2排出とエネルギー代謝について論及した研究は少ない。本研究では、職域健診受診者を対象にメタボリックアナライザーを用いて酸素摂取量・基礎代謝量を測定し、推定CO2排出量を算出した。日常活動量を加算して年間CO2排泄量を推定すると、非メタボ群に対しメタボ群では有意に過剰であり、身近な温暖化対策としてのガソリン約12lの節減に相当することが判った。推定CO2排泄量を加味したエネルギー代謝の評価は、肥満対策を目指した保健指導に役立つと考えられる。
著者
周尾 卓也
出版者
北陸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,メチル水銀による中枢神経障害の発現機構の解明に向け,タンパク質分解酵素と細胞外基質分子の動態を解析した.研究期間内において,メチル水銀により活性化されたタンパク質分解酵素MMP-2が細胞外基質分子ニューロカンを分解すること,メチル水銀は神経細胞の形態変化を引き起こすことを見出した.また脳組織には細胞内領域を欠いた膜貫通型分子ニューログリカンCが存在することを明らかにした.