著者
渡辺 努 青木 浩介 阿部 修人 中嶋 智之 阿部 修人 塩路 悦郎 中嶋 智之 廣瀬 康生 戸村 肇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

わが国では過去20年にわたって物価下落が進行している。毎年の物価下落率は1%程度と小さく,ゆっくりとしたデフレだが,極めて長い期間続いているというのがその特徴である。この長期デフレの原因は,原価が変化しても価格を据え置くという企業行動にある。先進各国の企業は価格を毎年1-2%引き上げるのがデフォルトなのに対して,日本企業は90年代末以降,価格据え置きがデフォルトになっている。価格や賃金の引き上げに関する社会規範が変化したためと考えられる。一方,家計サイドでは,生まれてこの方デフレしか経験したことのない若年層を中心に,今後もデフレが継続するという予想が根強く,これがデフレ脱却を難しくしている。
著者
榎本 知郎 花本 秀子 長戸 康和 松林 清明
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ヒトを含む霊長類における精子競争の様相を組織学的に探る試みを行った。ゴリラ(N=11)、チンパンジー(11)、オランウータン(6)、ヒト(6)の精巣標本を、オトナの死亡個体から採取した。HE、PAS-ヘマトキシリンで染色したほか、テストステロン免疫染色も行った。その結果、ゴリラは、(1)11個体中6個体で精子形成がみとめられないこと、(2)精子形成が認められる精巣でも、間質が非信に豊富であること、(3)いずれもテストステロン染色によく染まるライディヒ細胞が非常に多く認められた。チンパンジーでは(1)精上皮が非常に厚く、各段階の精子形成細胞が多数あり、成熟期の精子細胞も豊富で、精子形成が非常に活発であること、(2)間質は疎でライディヒ細胞が少ないこと、またオランウータンでは、(1)精子形成は比較的活発であること、(2)間質もかなり豊富であること、(3)精子細胞の先体が大きいこと、などが明らかになった。ゴリラ(N=11)、チンパンジー(N=5)、オランウータン(N=4)、ヒト(N=1)の精巣標本について、精子発生指数(SI)と:減数分裂指数(MI)を算定した。ゴリラ11頭の平均SIは、チンパンジー、オランウータンより有意に低かった(マン-ウィットニー検定)。また、ゴリラの平均MIは、チンパンジー、オランウータンより、有意に低い値を示した。ゴリラは、チンパンジーの40分の1、オランウータンの8分の1の精子しか産生しておらず、またヒトは、ゴリラの6倍、チンパンジーの7分の1の精子を産生していると推定された。
著者
菊谷 正人
出版者
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
雑誌
イノベーション・マネジメント (ISSN:13492233)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.1-22, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
37

国際課税の主要な課題が国際的二重課税と国際的租税回避から国際的二重非課税にシフトした結果として、現在、「税源浸食と利益移転」(BEPS)が世界的に大きな政治・社会問題となっている。OECDは、多国籍企業のグローバル化と経済の電子化による国際的二重非課税に起因するBEPSに対処するために2015年10月に「BEPS最終報告書」を公表し、11月のG20財務大臣会議で採択されている。その後、OECDは経済のデジタル化から生じる税制上の課題に対処するために、「BEPSに関するOECD/G20包摂的枠組」(「BEPS包摂的枠組」)を2016年に設置し、BEPSに対する解決策の基礎を形成する可能性のある2つの柱の青写真に関する報告書を2020年10月に公表した。「第1の柱」は、すべての管轄地域間で公平な競争条件を確保し、課税権のより公平かつ効率的な配分を実現するために、事業利益に適用される課税根拠と利益配分に焦点を当てる。「第2の柱」では、国際的に営業している大規模事業者が少なくとも最低レベルの税金を支払うことを保証するために、最低法人税率の全世界的導入が提案されている。本稿では、「BEPS包摂的枠組」によって2020年10月に承認されたBEPSに関する2つの柱の青写真に関する報告書(「第1の柱」と「第2の柱」)のうち、「第2の柱」の内容・特徴および2021年10月のG20最終合意を解析した上で、国際課税の課題(BEPS)が理論的に探究される。
著者
竹崎 大輔 伊達 央
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.195-202, 2021 (Released:2021-03-17)
参考文献数
17

In this study, assuming a case that two of the three reaction wheels mounted on the spacecraft failed, we examined a method of controlling the attitude with the remaining one reaction wheel. Since what can be done with one reaction wheel is limited, we propose an attitude control method for maximizing the amount of solar power generation using Monte Carlo economic model predictive control, and validated the effectiveness of the method by simulation. Extensive simulations were conducted to verify whether the proposed method is effective for various initial conditions, and it was confirmed that the power generation increased in most cases. Some examples of how the proposed control method behaved are shown and discussed.
著者
中山 亜紀 篠本 祐介 佐々木 克典 米田 稔 森澤 眞輔
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.181, 2010 (Released:2010-12-01)

化学物質のリスク評価方法は現在大きな転換を求められている。 放射線のリスク評価が広島・長崎の原爆生存者調査という膨大なヒトのデータに基づいているのに対し、化学物質のリスク評価の多くは動物実験に頼ってきた。しかし、コスト・時間・動物倫理の面から、in vitro毒性試験に基づいたリスク評価の開発が望まれている。 そこで我々は、「放射線等価係数」という概念によるリスク評価方法を提案したい。 この方法ではin vitro毒性評価試験系により対象物質の毒性を等価な放射線量に換算した放射線等価係数を決定し、さらに対象物質のターゲット臓器における曝露量と放射線の発がん確率からその臓器における発がんリスクを推定するものである。 DDT及びX線について行ったin vitroトランスフォーメーションアッセイから肝臓がんリスクを評価したところ、Slope Factor(1mg/ kg 体重/日の用量で生涯にわたり経口曝露した時の発がんリスク)として0.143~0.152が得られ,US.EPAの呈示するSlope Factorと比較して良好な値であり、「放射線等価係数」によるリスク評価方法が妥当である可能性を確認した。
著者
新熊 悟 小林 信彦 前田 真紀 森戸 啓統 北村 華奈 浅田 秀夫 宮川 幸子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.169-174, 2007 (Released:2010-12-06)
参考文献数
20

57歳,女性。解離性障害による昏迷状態のため経口摂取が不可能となり,当院精神科に入院中,顔面にびまん性の紅斑・浮腫が出現した。その後,口囲に鱗屑が付着するようになり,びらん・膜様鱗屑を伴う紅斑が急速に全身に拡大した。Nikolsky 現象陽性。迅速凍結切片により表皮浅層での裂隙形成を確認し,staphylococcal scalded skin syndrome(SSSS)と診断した。起炎菌はMRSAであった。アルベカシンの点滴静注により皮疹は速やかに治癒した。成人SSSSの鑑別診断として最も重要な疾患は中毒性表皮壊死剥離症型薬疹であり,両疾患を病理組織学的に鑑別する迅速診断法に習熟する必要がある。
著者
竹内 智子 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.43.3, pp.199-204, 2008-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
36
被引用文献数
4

急速に市街化が進んだ1950~60年代、東京周辺区部において、緑地地域、近郊地帯、都市計画公園の3つの施策の相関関係、影響について考察し以下の知見を得た。1)首都圏整備法による近郊地帯は、区域設定に至らなかったが、首都圏整備計画により周辺区部の大公園に国費を入れ重点的整備が行われた。2)都市計画公園が再検討され、事業化を要しない河川緑地・社寺境内地等を都市計画緑地とし、地域制制度として活用した。3)緑地地域は計画的市街地整備に方向転換し、一団地の住宅経営事業、区画整理事業等を行い、すべき区域が継続されている区域を含め、旧緑地地域の51.7%が計画的市街地整備の誘導に寄与している。
著者
古谷 正裕 稲田 文夫
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.141-150, 2004-06-25 (Released:2010-03-08)
参考文献数
13

Experiments were conducted to investigete two-phase flow stability of a natural circulation BWR due to flashing at low pressure. The facility used in the experiment was designed to have non-dimensional values which are nearly equal to those of typical natural circulation BWR. The observed instability is suggested to be the flashing induced density wave oscillations, since the oscillation period was nearly one and a half to two times the passing time in the chimney section, and correlated well with a single line regardless of system pressure, heat flux, and inlet subcooling. Stability maps were obtained in reference to the core inlet subcooling and the heat flux at the system pressures of 0.1, 0.2, 0.35, and 0.5MPa. The flow became stable below a certain heat flux regardless of the channel inlet subcooling. The stable region enlarged with increasing system pressure. According to the stability map, the stability margin becomes larger in a startup process of a reactor by pressurizing the reactor sufficiently before withdrawing control rods.
著者
杉本 弘子
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.709-714, 1991-06-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
18
被引用文献数
11 11

The urinary excretions of norepinephrine (NE) and epinephrine (EP) were measured to investigate the physiological effects of girdles worn by women to look attractive.1) The urinary excretion of NE was remarkably increased by the wearing of a girdle in all the subjects examined, whether living conditions and stimulations were changed or remained unchanged.2) The urinary excretion of NE was increased by wearing a girdle, regardless of the type of girdle or its intensity of compression.3) The urinary excretion of NE tended to increase more by the wearing of a bodysuit having a large area of body compression than by the wearing of a girdle having a narrow area of compression.4) The urinary excretion of NE showed no specific pattern of change, even when the subjects were accustomed to the use of a girdle.These findings may indicate that a girdle of even the best-fitting size exerts a kind of stress on the human body.
著者
楠田 哲士 森角 興起 小泉 純一 内田 多衣子 園田 豊 甲斐 藏 村田 浩一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.109-115, 2002 (Released:2018-05-04)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

飼育下ブラジルバク(Tapirus terrestris)雌2頭から週1回の採血を行い,エンザイムイムノアッセイ(EIA)法により血漿中プロジェステロン(P4)濃度を測定した。P4濃度の周期性から発情周期は約4週間であることが推察された。また,国内の動物園におけるこれまでのブラジルバク出産例を調査した結果,出産は年間を通して見られたが,3月から6月にかけてピークが存在した。P4動態からは明確な繁殖季節は存在せず,周年繁殖が可能であると考えられたが,年間の出産数に偏りが見られることを考え合わせると,気候的要因によって繁殖が影響を受けていることが示唆された。
著者
朱 桂栄 砂川 有里子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.145, pp.25-36, 2010 (Released:2017-03-21)
参考文献数
13

砂川・朱(2008)は,学術的コミュニケーション能力の向上を目指して中国の大学院で実践したジグソー学習法による授業を通じ,大多数の学生に「独習型」から「協働型」へ,「受身型」から「自主型」への意識の芽生えが確認できたことを報告している。 本稿では,同じ学生に対して行ったインタビューデータを分析し,上記の意識変容が生じた要因を,活動間の有機的な連携という観点から考察する。分析の結果,以下の点が明らかとなった。①活動の過程で生じる情報差が学生の参加動機を強め,協力し合う環境作りに役立った。②活動間の有機的連携が個々の活動目的を明確にし,自主的な関わりの必要性を自覚させた。③活動中に生じた問題が次の活動の成果につながる要因として積極的な役割を果たした。すなわち,ジグソー学習法がもたらす活動間の有機的連携が,学生に自主的・協働的な研究態度の必要性を自覚させる要因となったことが判明した。