著者
平田 未季
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
vol.26, pp.42-65, 2023-03

本稿では、江別市を事例とし、来訪者との国際交流を目的として活動を開始した住民有志による団体が、地域の内なる国際化に目を向け日本語教室を開設するに至るまでの過程と、彼らが教室の運営において抱える課題や思いを、当事者へのインタビュー調査に基づき記述する。インタビューから、当事者が、日本語教育や多文化共生支援は専門家が行うものであり自らが主体的に関われるものではないと認識していること、日本語教室が軌道に乗らない中でかつての国際交流活動こそが多様化する市において必要な活動ではないかと考えていること、しかし、現在の文脈で国際交流を中心とする団体には戻ることは難しいという意識があることが分かった。本稿では、日本語教室が団体にもたらした質的変化についても述べ、地域日本語教室の存在意義について考える。
著者
小柴 等
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.SAI-039, pp.09, 2020-11-21 (Released:2021-08-31)

予算等の資源を配分を行う際,一部に対して優先的・集中的に配分する "選択と集中” 戦略 が選択される場面は珍しくない.ここで,投資に対して見込める利益率の分布が "べき分布” をとり,か つ,見込める利益率の予測ができない場合には選択をせず,遍く対象に投資する方が全体としての利益 が大きくなることが示されている [野田 19].ただし,予算等の資源は有限ではないため,たとえば申請 があったものについてはすべて予算を支出するとした場合,予算が十分に確保できない可能性が高いほ か,当初から利益が見込めない課題を乱発して自己の資源確保最大化を図るような行動も予想され,現 実的には遍く対象に投資することは難しく,一定のフィルタリングは必要になると考えられる.そこで 本報では投資に対して見込める利益率の分布が "べき分布” の場合に,選択と集中の程度と,個々の課題 の利益率に関する予測精度の関係について,モンテカルロ・シミュレーションを通じて明らかにした.
著者
鹿子木 康弘 高橋 英之 松田 剛
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究では,視線入力インタフェース技術を用いた独自の参加型認知実験パラダイムを構築し,今まで方法論的な限界により検証不可能であると考えられていた乳児の他者に対する道徳的ふるまいを明らかにすることを目的とする。本研究により,従来研究から漠然と示唆されていた乳児の道徳性の 実証が可能になるとともに,乳児の行動そのものを測るという乳児研究手法のコペルニクス 的転回が実現できると期待している。また,乳児の道徳的行動を直接観測することで,分断 が叫ばれる現代社会に横たわる様々な問題の背後に存在する道徳性や暴力性の発達的要因の解明がより進むことも期待される。
著者
小原 恵 小野 文徳 平賀 雅樹 佐藤 学
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1323-1326, 2013-12-31 (Released:2014-07-02)
参考文献数
10

症例は39歳,男性。土木業。20歳のときに胃十二指腸潰瘍で胃切除術を受けた既往がある。作業中に転倒した際,腹部に鉄筋が刺さって受傷し,当院に救急搬送された。来院時,意識は清明だが痛みのため座位しかとれなかった。腹部単純X線写真で鉄筋が明らかに腹腔内に貫通していることを確認したが,体位の問題などからCT検査は施行せず,救急外来から直接手術室に移動させて緊急手術を施行した。鉄筋は腹壁,横行結腸間膜,網囊,残胃後壁を貫通していた。開腹手術の既往により上腹部の癒着が高度で残胃の修復が困難であり,鉄筋の刺入ルートに沿ったドレナージを施行した。また,術後第1病日に左血気胸が判明し,胸腔ドレーンを留置した。術後第7病日に上部消化管造影を行い,穿孔部の閉鎖を確認して食事摂取を開始した。術後経過は良好であり,術後第20病日に退院した。状況に応じて適切な判断が求められる症例であり,文献的考察を加えて報告する。
著者
石丸 隆 伊藤 友加里 神田 穣太
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.143-149, 2017 (Released:2020-02-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

2011年3月11日の福島第一原発事故により大量の放射性物質が海洋生態系に拡散した.我々は同年7月以降,ほぼ半年ごとに練習船による調査を行ってきた.プランクトンネット試料のCs-137濃度は時間とともには低下せず,大きく変動した.原因は,オートラジオグラフィーにより確認された高セシウム線量粒子の混在であると考えられる.ベントスでは,事故当初は原発近傍とその南側で高い濃度のCs-137が観察された.その後原発近傍では低下したが,原発南側の岸よりで下げ止まっている.2014年12月から1年半の間,原発近傍の水深約25m の定点で,大量ろ過器により採集した懸濁粒子のCs-137濃度は約2,000Bq/kg-dry で変化したが有意な低下の傾向はなく,またCs-137濃度全体に対する高線量粒 子の寄与は大きかった.陸域からの高線量粒子の供給が続いていると考えられるが,高線量粒子は不溶性であることから魚類に移行することはない.
著者
堀川 英則 原田 大輝 加藤 晋朗
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.139-141, 2016-05-31 (Released:2016-09-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

We examined the efficacy of preventing thrips from invading a fig (Ficus carica L.) field and preserving natural enemies through the use of the sorghum as barrier crops surrounding the fig trees. From June to November, we counted the number of thrips that were captured with the blue sticky plate set in a fig field surrounded by either the sorghum or the petunia in addition to the sorghum. The total numbers of thrips invading the fig fields under these experimental conditions were about half that found in the control, conventional field surrounded by windbreak nets with 4mm mesh. Additionally, we also confirmed the efficacy of generating indigenous natural enemies such as the arachnids, the orius, and the neididae in the fig field surrounded by the sorghum.
著者
Yasuhiro Hirano Kyotaro Noguchi Mizue Ohashi Takuo Hishi Naoki Makita Saori Fujii Leena Finér
出版者
Japanese Society for Root Research
雑誌
Plant Root (ISSN:18816754)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.26-31, 2009 (Released:2009-12-15)
参考文献数
13
被引用文献数
23 24

We describe a new and easy technique for placing and lifting root meshes to estimate fine root production in forest ecosystems. The method improves upon previously proposed mesh placement techniques by using a sharp stainless steel blade and two thin stainless steel sheets to insert mesh more easily and accurately in the soil, and utilizing a narrow garden spade to lift the soil block containing the mesh. The proposed technique takes significantly less time than the widely used ingrowth core method, causes minimal disturbance to the soil, and requires only simple equipment. The detailed documentation of the method provided herein should improve estimations of fine root production in forest ecosystems.
著者
和田 猛
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.160-161, 2022-08-01 (Released:2022-08-01)
参考文献数
3
著者
林 哲生 喜名 政浩 入佐 隆彦 濱田 貴広
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.92-94, 2006 (Released:2006-05-23)
参考文献数
12

We retrospectively reviewed the results for seven patients who were less than twelve years old with eight discoid lateral menisci. The average age at the time of operation was 8.1 years, and the average duration of follow-up was 9.3 months. The state of meniscus and cartilage was evaluated with Watanabe's classification and Fujisawa's classification. The clinical results were rated according to the Japanese Orthopedic Association (JOA) Score for Meniscus Injuries. The mechanism of injury was not clear in all cases. The diagnosis of complete lateral discoid meniscus was confirmed in seven cases (88%) and the degeneration of cartilage was slight. Subtotal meniscectomy was required in the complete type (seven cases) due to prevalence of horizontal tear and hypermobility. The average JOA score at initial presentation was 50 points, and it remarkably improved to an average of 96 points at postoperative recent follow-up examination.
著者
佐藤 亜紀 中野 庸子 田頭 美春 加藤 有一 大谷 優子 太田 光明
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.457, 2010 (Released:2010-12-01)

<はじめに> 近年、検査室の役割として、診療現場においてそれぞれの専門性を発揮し、より診療効果、治療成績に貢献できる検査技師の【チーム医療への参加】が求められている。当検査科でもこれまで各診療のニーズに応え、 循環器部門、整形外科・脳外科の術中モニタリング、さらにNST、ICT、糖尿病教室など、多くの部門に参画してきた。当院の新生児センター(以下NICU)は、平均入院患者数が常時定床の1.5倍と極めて高い診療需要に対し、スタッフは日々多忙な業務に追われている。このいつ破綻してもおかしくない状況を改善していくためには、医師・看護師の業務軽減が主たる課題の一つであった。そんな折、総合周産期医療センターの提案がなされ、小児科医から「検体検査測定」の充実が望まれた。また、業務軽減の対策として専任技師派遣の要望が出された。そこで検査科としても全面的な協力をする時期であると判断し「業務の効率化」と「仕事の合理化」を推し進め、小児科部門と検査業務見直しを行い、平成20年5月よりNICUへ専任検査技師を常駐させることとした。その勤務状況と効果、今後の展望について報告する。 <勤務状況>平成22年5月現在 【検体検査】検体測定(血液ガス分析、血清総ビリルビン、CRP) 【生理検査】脳波検査、A-ABR(ABRスクリーニング) 【管理業務】各検査機器メンテナンス、精度管理、検体検査データ入力及び成績管理 以上の検査業務を技師1名で行っている。 <効果> 専任技師の常駐前と比べ多くの改善がみられ、各職種がそれぞれの専門分野に集中できるようになった。改善点として、1)迅速な検査実施により診療の質が向上、2)午前の医師診療量軽減、3)機器トラブル時などのストレス軽減、4)検査領域への疑問を迅速かつ容易に解消できる、5)脳波、A・ABRのタイミングを調整しやすくなった、6)当日緊急の検査に柔軟に対応できるなどが挙げられる。 また検査科と病棟間の交流増進という意見が医師・看護師から得られた。技師も臨床の状況を把握しながら効率よく検査業務をこなすことができるようになり、相互の連携強化となった。 <まとめ> 平成18年4月に小児科より専任技師派遣の要望が出され、技師の育成及び業務の効率化、技師確保に25ヶ月(2年1ヶ月)を要した。現在の検査業務に加え、休日対応、新たな検査項目導入、検査情報の提供、看護師や研修医への勉強会開催等、臨床側からの要望や期待はまだ大きい状況にある。現在専任技師業務の土台は完成され、今後は検査科が目的意識を明確にして、当院が目指す総合周産期医療の一翼を担うよう努力していきたいと考えている。