著者
谷本 陽祐 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-159, no.13, pp.1-15, 2023-05-09

オペレーティングシステム(OS)カーネルはシステムの根幹をなし,カーネルの障害はシステム全体に影響が及ぶ.一般的なモノリシックカーネルは単一のカーネル空間を持ち,あらゆるシステムコールは単一のメモリ空間を共有している.この問題点の一つとして,カーネル空間でメモリ破壊が発生した際に,カーネル全体に影響が伝播し,カーネルが未定義の動作を起こす可能性がある.しかしながら,現在も Linux や Windows など広く利用されているモノリシックカーネル OS において脆弱性の報告は跡を絶たず,バグ修正までの期間も要する.そこで本研究では,カーネルのメモリ破壊によるエラーの伝播の影響を小さくする手法を提案する.各システムコールが自身に許可されたメモリオブジェクトのみアクセスできるようアクセス制御を行い,不正なアクセスが生じた場合,ページフォルトを起こしてシステムコールの実行を停止させる.これによりカーネルのバグによる誤ったメモリアクセスが未然に阻止され,未定義の動作を防止することができる.本研究では単一のメモリ空間内の隔離(Isolation)に Intel MPK を用いて,提案手法を xv6 に実装し,そのすべてのシステムコールにアクセス制御を実現した.実験の結果,システムコールによる不正アクセスが生じたとき,ページフォルトが発生し実行を停止できた.また,xv6 のテストプログラムである usertests を実行したところ,全体の実行時間は従来の約 1.55 倍であった.
著者
牧 和生 Maki Kazuo
出版者
九州国際大学現代ビジネス学会
雑誌
九州国際大学 国際・経済論集 = KIU Journal of Economics and International Studies (ISSN:24339253)
巻号頁・発行日
no.6, pp.47-70, 2020-10

本論文は、2000年代(ゼロ年代)以降のアニメにおいて多数世に送り出され、現在においても一定の地位を獲得している「日常系アニメ」に焦点を当てた。さらに、本論文では日常系アニメの中でも、特に日常系4コママンガを原作とするアニメ作品を研究対象にしている。日常系4コママンガを原作とするアニメ作品は、その本数自体はアニメ全体の中でもわずかであるが、ほぼ毎年一定数が制作されるなど1つのアニメカテゴリーを成している。本論文では、これらの日常系4コママンガを原作とするアニメ作品が制作され続けていることに対する経済学的意味ついて、現代社会における閉塞感および視聴者側の心理的な側面に注目して検討したものである。
著者
服部 茂幸 Shigeyuki Hattori
出版者
同志社大学商学会
雑誌
同志社商学 = Doshisha Shogaku (The Doshisha Business Review) (ISSN:03872858)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.1043-1077, 2020-03-12

同志社大学商学部創立七十周年記念論文集(Special issue in commemoration of the 70th anniversary of the Faculty of Commerce)
著者
清水 習 Shu Shimizu
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.245-259, 2017-10-10

2007年から始まる未曽有の金融危機を契機に、新自由主義の批判的な見直しが欧米政治経済研究において、一つの潮流をなしている。学界・一般を問わず、新自由主義を論じる際、「新自由主義 = 市場原理主義」という一つの公式として捉われがちであるが、実際の議論・研究における「新自由主義」の意味は非単一的であり、複雑である。本稿では、新自由主義の定義の多様性を、系譜的に見直し、最終的に、新自由主義研究の発展の可能性を批判的に考察する。
著者
小野寺 崇良
出版者
皇學館大學人文學會
雑誌
皇學館論叢 = KOGAKKAN RONSO (ISSN:02870347)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.98-117, 2022-04-10
著者
伏見 岳人
出版者
拓殖大学国際日本文化研究所
雑誌
拓殖大学国際日本文化研究 = Journal of the Research Institute for Global Japanese Studies (ISSN:24336904)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.105-140, 2023-03-25

本論文は、「オンライン版後藤新平文書」に所蔵されている桂太郎や小松原英太郎らの後藤新平宛書簡などの資料を読み解き、台湾協会学校、東洋協会専門学校、拓殖大学に至るまでの学校運営に、後藤がいかに関わっていたのかを、一次資料に基づいて論じたものである。草創期の台湾協会学校に対する台湾総督府の補助金交付や、日露戦後の東洋協会への組織改編過程、桂没後の小松原会長時代の拓殖館設立構想などに関する後藤の関与の実態を明らかにした上で、大正八(一九一九)年に小松原の後を継いで東洋協会会長と拓殖大学学長に就任する過程を、当時の資料からあらためて再現し、植民地経営に尽力する人材育成に後藤が強い関心を抱いていた様相を歴史資料から考察する。
著者
横川 昌史
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History (ISSN:00786675)
巻号頁・発行日
no.77, pp.51-56, 2023-03-31

海岸植物のマツナ Suaeda glauca (Bunge) Bunge の大阪府における確実な分布記録はこれまで知られていなかったが,国立科学博物館植物標本室(TNS)において明治29年(1896年)に大阪府泉南郡岬町淡輪で松田定久によって採集されたマツナの標本を見いだした.この標本の詳細と合わせて,大阪府におけるマツナの分布記録の変遷についてまとめて報告した.
著者
川崎 賢太郎
出版者
農林水産省 農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 = Journal of Agricultural Policy Research (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.36, pp.13-29, 2022-02-22

政策効果に関して信頼性の高いエビデンスを得るためには,因果関係を評価できる適切な手法を利用することが重要である。本稿では,回帰不連続デザイン及び差分の差分法をレビューした川崎(2020;2021)に続き,操作変数法に焦点を当て,その基本的な概念や農業経済学分野における応用例を紹介する。There are several econometric methods for evaluating the causal impact of agricultural policies. In previous studies, the regression discontinuity design and the difference-in-differences method were reviewed (Kawasaki 2020, 2021). In this study, we review the basic concept of instrumental variable method and its applications in the field of agricultural economics.
著者
糸川 紅子 赤木 郁子 打矢 和子 小川 雅子 川原 明子 新田 純子 Beniko ITOKAWA Ikuko AKAGI Kazuko UCHIYA Masako OGAWA Akiko KAWAHARA Junko NITTA
出版者
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学教育研究開発委員会
雑誌
日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学紀要 = Journal of Japanese Red Cross Akita College of Nursing and Japanese Red Cross Junior College of Akita (ISSN:24360384)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.21-27, 2021-03-31

要旨:目的:専門看護師によるコンサルテーションにおける課題の明確化と共有のプロセスに焦点を当て、既存の資料や文献に示された知見を整理し、実践的示唆や今後の課題について検討すること。方法:「専門看護師」「コンサルテーション」「課題」「共有」をキーワードに文献検索し、コンサルテーションの定義や類似する役割、課題の明確化や共有のための働きかけに関する事項を抽出した。倫理的配慮:著作権を遵守した。結果:コンサルテーションの定義は、コンサルタントがコンサルティ課題解決を側面的に援助する過程に総括された。コンサルタントが早期に課題を明確化・共有することはモデルやアプローチの判断を促進し、そのためにインタビューをはじめとする研究的な能力、コンサルティの自己省察や気づきを得るための働きかけが活用されていた。考察:コンサルテーションにおける課題の明確化・共有を推進するためには、コンサルテーションや類似する役割に関する理解の推進、コンサルタントの専門性や研究的な能力を活用することが重要である。結論:コンサルテーションにおける課題の明確化・共有はコンサルタントの研究的な能力やコンサルティの自己省察や気づきを得るための働きかけにより推進されていた。Abstract:Objective: To focus on the process of clarifying and sharing issues in consultation with a Certified Nurse Specialist (CNS), to organize the findings presented in existing materials and literature, and to consider practical suggestions and future issues.Method: A literature review was conducted using the keywords "Certified Nurse Specialist (CNS)," "consultation," "issues," and "share." Items related to the definition of consultation, similar roles, and efforts to clarify and share issues were extracted.Ethical considerations: Copyright compliance.Results: The definition of consultation was summarized as the process by which the consultant assisted the consultee in solving the problem. Early clarification and sharing of issues by consultants facilitate the judgment of models and approaches, and for that purpose, research abilities such as interviews, self-reflection by consultants and efforts to gain awareness are utilized.Discussion: In order to promote clarification and sharing of issues in consultation, it is important to promote an understanding of consultation and similar roles, and to utilize the expertise and research ability of consultants.Conclusion: Clarification and sharing of issues in consultation was enhanced by the consultant's research ability, selfreflection of the consultation, and efforts to gain awareness.