著者
小泉 元宏
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、近年急増するアートプロジェクト(AP)を事例に、その地域社会における社会的・文化的影響を、アーティストやAPに関わる市民の社会関係に関する調査から研究してきた。結果、APが、人々の暮らしに密接に関わった場合、市民が潜在的に持つ多様な技能や知識を引き出し、それが市民も交えた新たな文化・社会活動を生むきっかけとなりうることが示された。しかし創造性を持った人々に対する地域活性化に向けた過度な期待は、時にAPにおける市民の役割に目を向けることを阻む場合もあり、既存の創造階級論の見直しの必要性が示唆された。以上の成果は国際学会報告・国際誌への論文投稿等を通じて積極的に国内外に発表している。
著者
小場隆行 中所武司
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI) (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.1-6, 2011-02-26

数独とは,ナンバープレイスとも呼ばれるペンシルパズルの一種である.長年,この数独に対して数学・情報科学等の様々な分野から研究がなされ,近年では高性能な自動解法プログラムや問題の自動生成プログラムなどが作られるようになっている.本研究では,その中でも数独の研究分野の一つである問題の難易度判定の手法に関して述べるものである.既存の数独の難易度判定アプリケーションは,問題の難易度判定の基準を予め定義している難易度埋め込み型であるのに対し,本研究ではユーザに問題の難易度判定の基準の定義を委ねる難易度定義型のアプリケーションを提案し,前述した難易度埋め込み型アプリケーションとの比較検証を行う.比較検討は,一般の書店で販売されているパズル誌二誌を使用し,難易度埋め込み型と難易度定義型における難易度判定の精度を比較した結果,難易度定義型を採用したことによって,判定結果のばらつきを減らすことができた.Recently, Sudoku solvers and Sudoku generators have been studied in the fields of mathematics and information science. In this paper, a method of difficulty level ranking by using application programs is described. Most of conventional applications for difficulty level ranking have given the fixed definition of the difficulty level criteria. This paper proposes a new method in which the difficulty level criteria are defined by users. An application supporting this method is developed and used for feasibility studies with two articles on difficulty level ranking in the popular journals. As a result, it is confirmed that the new method reduces dispersion of difficulty level ranking by using application programs.
著者
柴野 京子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.310-314, 2013
参考文献数
20

ここ10年ほどの間に,日本の新刊書店数は7割程度まで減少した。とくに著しいのは個人経営の小規模書店の閉店だが,郊外化や都市部への大型出店をすすめてきたチェーン書店や大書店もまた,ブックオフやアマゾンなど,既存の枠組みの外からもたらされた環境の変化に直面している。ここではそれらの状況を概観したうえで,インターネット書店のデザインが現実の書店にもたらした影響や,バーチャルとの対比で新たに発見される「リアル」書店のありようなどについて,代表的な事例を用いながら,実験的に言及していく。
著者
古川 隆久
出版者
公益財団法人史学会
雑誌
史學雜誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.457-494, 605-606, 1990-04-20
被引用文献数
1

From 1935 to 1945 reformist bureaucrats in Japan occupied virtually the center of policy making along with a group of politically and economically concerned military officers. These bureaucrats were not only able to exert influence in the complete bottom-up process of policy formation, but also, despite little formal powers, were also able to effect decision making to a far greater extent than in the era of the political party cabinets. These reformist bureaucrats belonged to a group of government officials who had received their formal university education in the 1920's in the Marxist tradition. They rose up through the ranks in the latter half of the 1930s from personal and professional relationships in the background of building a controlled economy. They philosophically refuted both Marxism and capitalism, which they viewed as degrading the human character by the strong emphasis on materialism. Focussing their views on success in Manchuria, they stressed domestic totalism (planned economy) according to political priorities (presuming of course the existence of the monarchical [Tenno] institution), and insisted on the "East Asian (toa) bloc" as the corresponding state of affairs on the foreign front. This way of thinking was based on German totalistic thought; however, we can also discern their Marxist educational background enabling them to adopt such an ideology. In terms of concrete goals, their totalism was commonly directed towards "reform" plans geared to increasing the military strength of the army. It was for this reason that these reformist bureaucrats joined hands with politically and economically concerned military officers in policy making and political action. The practical behavior of these reformist bureaucrats, being based generally on this kind of ideology, was geared towards carrying out within such integrative offices as the Cabinet Planning Board (Kikaku-in) a radical state reorganization effort (almost impossible in peacetime) as one link in the creation of a wartime system for supporting the war in China and the Pacific War. Their efforts meet with a fair amount of success. The true intentions of the whole "reformist faction", which included these bureaucrats and embraced totalism in the wake of the German victorids on the European front, came to light during the Konoe New Organization movement of 1940 and 1941. However, the "citizens organization" plan that they were most eager to put through was not realized fully due to resistance in the National Diet. In any case, these reformist bureaucrats, as a result of giving up on both Marxist and capitalist solutions, inevitably plunged Japan into the Pacific War and continued to hold this ideology even after the War was over. While we can say on the one hand that their criticism of both Marxism and capitalism was not completely irrelevant in that it can be linked in the end to Japan's postwar high economic growth, on the other hand, it was because of their hastiness in trying to reform the present situation that they brought a great many of human and material damages in the Pacific War. Furthermore, when looking at the problem in terms of comparative history and national system theory, in the sense that it was the army officers and reformist bureaucrats who exerted real political influence through their commitment to totalist ideology, but were able to realize only a part of their goals in very gradual steps, we could call this period in Japanese history "a wartime state regime tending gradually towards totalism".
著者
山内 一史 望月 悦子 田中 裕二 丸山 良子 石川 稔生
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.7-12, 1983-03

3種のインスタントコーヒー(NESCAFE GOLD BLEND DECAFFEINATED, NESCAFE GOLD BLEND及びMAXIM)を用いて,二重盲検法により,暗算の作業量を指標としてカフェインの効果を調べた。結果は次の通りである。(1) NESCAFE GOLD BLEND DECAFFEINATED飲用群を対照群として,NESCAFE GOLD BLEND飲用群,MAXIM飲用群との間で暗算作業量の2群比較を行うと,いずれもカフェインを充分含有していると考えられる後者の飲用群に,作業量の増加がみられた。(2)被験者は,インスタントコーヒー飲用直後にカフェイン含有の有無を推定することは出来なかったが,カフェイン含有インスタントコーヒー飲用群では,暗算作業の能率の向上を主観的に感じている者の多いことが示された。(3)インスタントコーヒーカップ一杯に通常含まれる量の2倍程度のカフェイン飲用では,脈拍数の変化はみられなかった。以上の実験結果から,NESCAFE GOLD BLEND DECAFFEINATED飲用群を対照とした暗算作業実験の作業量の増加は,カフェインの中枢神経興奮作用によるものと考えられ,この実験がカフェインの作用を客観的定量的に調べる手軽な方法として,今後の研究に役立つものと考えられる。
著者
浅野 一成 並木 美太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.83, pp.87-94, 2007-08-03
被引用文献数
2

本報告では, Microperl を用いた PerlOS の試作とその評価について述べる. Microperl を拡張し,I/Oポートや実メモリへアクセスを行う機構を取り入れ,Perl メソッドコールのAPI を使うことで, Perl で割込み処理やデバイスドライバが記述できることを示す.今回は試作段階として,デバイスドライバと割込み処理を扱った.ドライバと割込み処理の実装は,キーボードについて行った.評価では,I/Oポートの入出力時間と割込みハンドラの起動時間について, C と Perl での実行時間を比較した.その結果, C に対する Perl のI/O ポート入出力時間は,最大で85%,割込みハンドラの起動時間は17%の性能比となった.各種ドライバやファイルシステムの実装・評価が,今後の課題である.This paper describes a design and evaluation for perl interpreter running on a bare machine.We propose that Extented-Microperl can access to I/O port and physical memory, and that perl program provieds device drivers and interrupt handlers using Perl method call API. This time, the updated interpreter provides device drivers and interrupt handlers. Keyboard driver and handler has been implemented. In evaluation, we have compared access time to I/O port and uptime to interrupt handler with C. As a result, each performance is 85 percent and 17 percent as fast as C code. Other device drivers and file systems are prospected.
著者
馬田 敏幸 笹谷 めぐみ 立花 章
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 = Journal of plasma and fusion research (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.190-197, 2012-03-25
参考文献数
34
被引用文献数
1

放射線の個体への影響について,人の疫学調査で得られた知見を一般的な観点から述べ,マウス個体を使ったトリチウム水による高線量・高線量率の研究により,何がわかっているのか明確にする.そして低線量・低線量率の放射線披ばくによる生物影響を感知する実験系をトリチウム生体影響研究に応用した研究や,必要とされている新しい高感度検出系の開発について概説する.

10 0 0 0 OA フォード

著者
平野威馬雄 文
出版者
講談社
巻号頁・発行日
1954
著者
松井 利幸
出版者
愛知教育大学体育教室
雑誌
愛知教育大学体育教室研究紀要 (ISSN:02884712)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.37-45, 1994-03-02

本研究は、学校五日制が児童生徒の疲労にどのように影響するかについて明らかにすることを目的とした。文部省の学校五日制のための調査研究協力校である愛知県下郡部に位置する足助小学校、足助中学校を実験校とし、名古屋市内の1小学校1中学校を対照校とし、それぞれの児童生徒を対象に、1990、1991年の2年にわたって、疲労自覚症状調査を実施し、比較検討した。〔小学校について〕1)疲労自覚症状訴え項目数を全体的にみた場合、実験校対照校とも、2年目に大きな増減は認められなかった。2)しかし、疲労症状を分野別にみた場合、2年間であまり変化のみられなかった対照校に較べて、実験校の児童は、「眠けとだるさ」分野の平均訴え項目数が増加し(2.2→3.8項目)、逆に、「注意集中の困難」分野のそれが減少した(3.8→2.9項目)。3)具体的には、実験校は、<横になってねたい>及び<口の中がかわ<>の有訴率が約10%増加、逆に、<考えるのがめんどくさい>、<きちんとしていられない>及びくちょとしたことが思い出せない>の「注意集中の困難」分野の有訴率がすべて50%台から40%台に減少した。4)同様に、実験校の初年度では、「注意集中の困難」分野に最も多い項目数を訴えていたものが約5割と多かったが、2年目は、「眠けとだるさ」分野に6割以上のものが占めるという、疲労内容の大きな変化が認められた。一方、対照校では、両年度とも「眠けとだるさ」分野に占める割合が7、8割であり、大きな変化はみられなかった。〔中学校について〕1)実験校の疲労自覚症状訴え項目数は、全体としてみた場合、対照校と比較して、2年目に顕著に増加した。これを分野別平均訴え項目做でみた場合、「眠けとだるさ」分野が3.6から4.3項目に、「注意集中の困難」分野が1.9から2.6項目にと、ともに増加した。2)分野別にみた訴え上位項目の有訴率は、そのほとんどの項目において、対照校より実験校の方が高率となった。具体的に約10%以上有訴率が増した項目は、<ねむい>、<横になってねたい>、<考えるのがめんどくさい>及び<いらいらする>であった。3)3分野間で最も多くの疲労項目数を訴えていたものは、「眠けとだるさ」分野の約8割であり、この割合は実験校対照校とも、かつ、両年度とも差は認められなかった。4)2年目の実験校は、それぞれの分野において、訴え項目数が増加したものの割合が最も多かったのに対して、対照校では、逆に、3分野とも訴え項目数が減少したものの割合が最も多く、この相反する結果は統計的に有意な差とたった。以上、本調査での学校五日制試行が児童生徒の疲労自覚症状に及ぼす影響は、小学校児童については、量的には大きな変化は認められなかったが、質的には、いわゆる精神的疲労感を減少させ、モの分、身体的疲労感を増す方向にあり、また、中学校生徒については、質量ともに疲労感を増大させる結果を示した。しかし、この結果は、小中学校の学校種の違い、地域の特性、さらに大きくは、学校ごとに異なる学校五日制への取り組みの違いによって、著しく差が生じたものと考えられる。1992年9月以来、制度上、学校五日制は月1回実施に移され、今後どれ程まで拡大されていくのか定かではないが、制度面のみならず、各学校の対応も含めて、児童生徒並びに教職員の"健康"という視点での検討は緊要である。
著者
小嶋 稔 羽場 麻希子
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2012年度日本地球化学会第59回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.36, 2012 (Released:2012-09-01)

原発のメルトダウンの結果、燃料のウランが現在どのような物理・化学的状態にあるのか、不明である。メルトダウン・ウラン燃料がオクロ天然原子炉の状況に近い環境下にある可能性も否定出来ない。我々はこうした結果や東電の公式発表データ等を基に再臨界の評価を試みた。具体的には想定されるメルトダウン・ウラン燃料や環境の物理・化学的状態で黒田の計算の再チェックを試みる。
著者
大向一輝著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
2007
著者
長坂 和茂
出版者
大学図書館問題研究会
雑誌
大学図書館問題研究会誌 (ISSN:13489186)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.15-23, 2014-08-01

本研究では、CiNii Books、NDL-OPAC、 国立国会図書館サーチの3つの書誌データベースについて、それぞれのデータベースが異体字を検索する際にどのような範囲で同じ文字として処理しているのか、調査を行った。結果、それぞれのデータベースにより、挙動が大きく異なることが確認できた。異体字を含む可能性がある文字を含むキーワードで検索する際には、データベースの特性を理解し、検索漏れに注意する必要がある。
著者
堤 浩之 遠田 晋次
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.9, pp.559-570, 2012-09-15 (Released:2013-01-26)
参考文献数
31
被引用文献数
5 14

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(Mw 9.0)によって東北日本弧の応力場が大きく変化し,誘発地震が多発している.2011年4月11日の福島県浜通りの地震(Mw 6.6)は,これまでに発生した最大の内陸地殻内誘発地震である.この地震に伴って,従来推定活断層と認定されていた湯ノ岳断層や井戸沢断層の西側トレースに沿って明瞭な正断層型の地震断層が出現した.地震断層の長さはともに約15 kmであり,最大上下変位量は前者が約0.9 m,後者が約2.1 mである.井戸沢断層の西側トレースのトレンチ掘削調査では,ひとつ前の活動時期が12500〜17000年前と求められ,869年の貞観地震の際に活動した痕跡は見出せなかった.2011年4月の福島県浜通りの地震は,海溝型超巨大地震に誘発されて活動する内陸活断層が存在することを示すと共に,変位地形が不明瞭な推定活断層もそのような状況下で大地震を発生させ得ることを示した.
著者
山本 善之
出版者
公益社団法人日本船舶海洋工学会
雑誌
らん : 纜 (ISSN:09160981)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.63-67, 1998-07
著者
牧村 真帆 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.173-176, 2009
参考文献数
4

ワークショップのデザインプロセスのうち,初期段階のアイディアの生成過程における実践家の思考過程を明らかにすることを目的とし,6名の実践家を対象に,思考発話法と半構造化インタビューを用いて実験を行った.案の生成と下見時の空間体験との関係について分析を行った結果,新たな案が生まれる際に,空間がそのきっかけとなっていることが明らかになった.また,デザインプロセスにおいて既出の案が別の案へと展開される際にも,多くの場合空間に関する気づきや解釈がきっかけとなっていることがわかった.
著者
渡井 有 渡邉 理江 深澤 基児 宇津木 忠仁 加納 宣康 杉山 彰英
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.758-764, 2003
被引用文献数
5

今回我々はロタウイルス腸炎罹患中に十二指腸潰瘍穿孔を合併した2幼児例を経験した.症例は1歳7ヵ月と2歳10ヵ月の男児で両例ともに腸炎罹患数日後,急激に消化管穿孔をきたし,緊急手術を施行された.1例では開腹術施行前に,全身麻酔下腹腔鏡検索を施行したが,球部後壁の穿孔であったため開腹術へ移行した.両症例ともに十二指腸潰瘍穿孔であり,大綱充填術と肝鎌状靭帯の被覆術を施行した.Helicobacter pylori抗体は陰性であった.術後経過は良好で,胃粘膜保護剤も中止したが発育成長に問題を認めていない.