著者
栢下 淳
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

嚥下障害や咀嚼障害者に対する栄養管理は、経口からの栄養補給と非経口からの栄養補給を併用することが多い。経口摂取する場合に、適切な物性の食事提供は難しいと考えられている。そこで、経口摂取を進めるために段階的な嚥下食物性値に準じた市販食品に分類およびレシピについて検討した。また、この段階的な嚥下食物性値は、2009年から施行された厚生労働省特別用途食品えん下困難者用食品の基準策定にも用いられた。
著者
河野 昌仙
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

1次元の厳密解と鎖間結合が弱い極限からの近似法とを組み合わせた方法によつて、異方的2次元フラストレート系の磁場中で現れる準粒子について調べた。その結果、今回得られた準粒子は、通常の磁性体の準粒子として知られているマグノンや1次元系の準粒子とは異なる様々な特異な性質を示すことが明らかになった。特徴的は振る舞いとして、磁化に強く依存した波数におけるスピン密度波型の非整合秩序、複数の準粒子による磁場中のクロスオーバー、高エネルギー領域に現れる強いスペクトル強度をもつモードなどを挙げることができる。これらの振る舞いは、通常の線形スピン波理論では説明することができず、また、発現メカニズム、動的構造因子の形状、秩序化の有無、次元性、統計性などにおいて1次元系の準粒子とは異なる。これらの特徴的振る舞いは、その発現メカニズムに起因している。つまり、通常のスピン波理論では、マグノンは自発的対称性の破れによって安定化するのに対し、今回の準粒子は1次元準粒子の鎖間ホッピングによつて形成される結合状態とみなすことができる。したがつて、発現メカニズムはマグノンよりもむしろフェルミ液体で現れる集団励起のものに似ており、基底状態の対称性の破れに依らず、個別励起間の多粒子プロセスによつて生じる。この意味で、今回得られた準粒子は、異方的2次元のスピン液体または、1次元準粒子であるプサイノン、反プサイノン、2-ストリングの準粒子の液体とみなすことができると考えられる。また、今回得られた準粒子描像によって、異方的三角格子反強磁性体Cs_2CuCl_4の磁場中で観測されていた様々な異常な振る舞いを統一的かつ定量的に説明することに成功した。
著者
平野 博之
出版者
岡山理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

「太陽熱を蓄える池」という意味のソーラーポンドを利用し,各種施設の暖房用熱源としての利用の可能性について,実験と数値解析の観点から検討を行った.実際に用いたポンドは,塩水の上に淡水を置き,太陽光を塩水に蓄熱するという塩濃度勾配型とよばれるものを用いた.このポンドでは,塩水と淡水の間の濃度勾配層が蓋の役割を果たすために蓄熱が可能となる.検討の結果,太陽熱の20%程度の量を蓄熱することが可能であることがわかった.
著者
登倉 尋実 緑川 知子 登倉 尋実
出版者
奈良女子大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

実験1)平成8年度の実験で両大腿部加圧時に唾液消化能力への被服圧の影響が大きいことがわかったので、今回は両大腿部に10mmHg,2mmHg,30mmHgの圧力を加えて加圧量により唾液消化能力・自律神経機能がどの様な影響を受けるかを調べた。被験者の両大腿部に血圧測定用カフを巻いただけの非加圧期間30分の後、60分カフに空気を送り加圧を行った。唾液消化能力の低下がすべての加圧時に、唾液分泌速度の低下、唾液中アミラーゼ濃度の低下が20mmHg,30mmHg加圧時に見られた。唾液中カルシウム濃度の上昇が30mmHgで、コルチゾール濃度の上昇は20mmHgで顕著に見られた。光に対するボタン押し随意反応時間は20mmHg、音に対する随意反応時間は30mmHg加圧時に遅延する傾向が見られた。皮膚圧迫により心臓における副交感神経活動の有意な亢進と交感神経活動の抑制が認められ、心拍数は有意に減少した。今回の加圧量と加圧部位においては交感神経系地域性能のより、加圧が唾液腺への副交感神経活動を抑制していたことが示唆された。実験2)実験において唾液腺への副交感神経が加圧により抑制されていることが示唆されたので、今回はさらに加圧によるストレスが唾液腺に影響を与えた可能性があると考え、ストレス下での加圧を試みた。ストレスとして環境温35±0.5°C,相対湿度60±3.0%の人工気候室内で暑熱負荷を行い体温調節反応も併せて測定した。その結果加圧時には発汗量が抑制され深部体温の上昇度が有意に多くなった。唾液中コルチゾール・尿中カテコールアミン類・アンケートによる疲労感・不快感が加圧時に上昇を示した。唾液分泌量の減少が認められた。以上のことから、被服圧は加圧部位における直接的な影響からは計り知れない生理的影響を,自律神経系ストレス系を通して体中に生じていることが示唆された。
著者
田村 淳二 高橋 理音
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、基本的に電力系統に接続しないスタンドアローン形のウィンドファームを想定し、風力発電出力を用いて電気分解装置により水素製造を行うシステムの設計を行った。具体的には、固定速風力発電機から成るシステム、交流励磁形誘導発電機から成るシステム、永久磁石形同期発電機からシステムを対象として、風力発電機、電解槽、蓄電装置の協調制御により水素を発生するシステムを構築し、それぞれの性能を検証した。
著者
清水 裕彦 猪野 隆 武藤 豪 嶋 達志 佐藤 広海 大森 整 北口 雅暁 舟橋 春彦
出版者
名古屋大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2007

J-PARC スパレーション中性子源に、基礎物理学のための冷中性子ビームライン BL05 を建設・整備した。光学デバイスにより精密に制御された中性子ビームを用い、中性子寿命の高精度測定をはじめとする物理実験が行われている。超冷中性子の高密度輸送法などの開発は従来の限界を超える測定を可能にする。物質研究においても磁気集光光学系を用いた極冷中性子小角散乱や共鳴スピンエコーなど新たな測定法を開発した。
著者
近藤 康久
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

研究課題である縄文時代網漁の再評価に向け、第2年度は地理情報システム(GIS)によるデータ解析を中心に、以下の通り研究を実施した。1縄文遺跡・漁網錘データベースの拡充を図った。これは今後の考古学の研究基盤を整備したという点において重要な意義を有する。この中から、これまでに少なくとも354遺跡から11,657点の漁網錘が出土している東京湾西岸帯を重点分析対象地域に選定した。2上記の数量は、(1)遺跡ごとの発掘面積のちがいと(2)自治体間の調査頻度のちがいに起因するバイアスを被っている。そこでまず(1)を補正するために、遺物検出率と遺跡の未掘面積・発掘面積比から遺跡あたりの遺物存在期待値を求める方法を考案した。次に(2)の問題を空間的自己相関分析の手法を用いて検証した結果、存在期待値は報告実数にみられた自治体間のバイアスを低減する方向に作用することが明らかになった。3対象地域内の自然遊歩道でGPS歩行実験を行い、その結果に基づいて分析地域に適用する移動コスト推定式を設定した。この式を用いて錘具出土地点から谷筋沿いに最寄りの大規模集落を特定するアロケーション分析を行い、大規模集落の漁撈活動領域を推定した。その上で、集落領域ごとの錘具の特徴を調べたところ、海岸に近づくほど土器片錘の比率が増し、上流にさかのぼるほど石錘の比率が増すというパターンを明確にとらえることができた。4解析結果を総合的に検討した結果、時間的には土器型式の細別段階レベル、空間的には1kmメッシュレベルの精度で、縄文時代網漁業の時空間動態を復元することに成功した。特に西南関東では、縄文前期の黒浜式期以降段階的に発展した網漁業が、中期中葉の勝坂I式期から中期後葉の加曽利EII式期にかけて極相に達し、後期初頭の称名寺式期の一時的な落ち込みと後期前半堀之内I式期の回復を経て、低調に転じることが明らかになった。
著者
渡邉 孝男 猿渡 英之
出版者
東北文教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日中韓の成人、 園児等地域住民を対象に陰膳法の食事調査で採取した検体によりてケイ素摂取量の測定を実施した。(1)日本国内の飲料水中のケイ素は九州と東北地方に20 mg/Lを越す高濃度地域が認められた。食事中ケイ素摂取量は数十mgと推定されるが、飲料水のSi高濃度地域は食事摂取量の50%を越すことが示唆される。日本のケイ素濃度は中国よりも全体的に高い。(2)園児の爪中のケイ素等各種元素の測定を実施した。元素濃度は個人、園間での変動幅が大きい。
著者
原田 純孝
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

「平成の農地改革」を標榜した2009年の農地制度改正について、その課題並びに内容と特徴を農政改革の全体的な文脈のなかで分析し、(1)農地貸借の自由化により農地制度の方向性が逆転したこと、しかし、(2)それが農業の構造改革にどう寄与するかは未知数であるうえ、制度改正自体も「道半ば」の状態にあり、(3)その行きつく先の如何(とくに所有権取得の自由化の成否)によっては、土地法制全体にかかわる様々な問題が生じうることを明らかにした。
著者
小島 宏建
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2008

生体組織透過性の高い近赤外光を利用し、実験動物を生かしたまま生体内分子を画像化する方法、あるいはそれを発展させた診断法を確立すべく、社会的にも動脈硬化など各種病態との関連について関心の高い酸化ストレス、活性酸素種を主なターゲットとして必要な蛍光プローブ分子の設計と合成、そしてその応用を行い、生体中で活性酸素種の可視化に成功した。このことは今後の画像診断薬創製の有用な知見となる。
著者
大町 真一郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

自ら移動して環境の情報を積極的に取得して行動する知能ロボットへの応用を想定し、映像を用いた実環境中の物体の頑健でかつ高速な探索法を開発することを目的として研究を行った。高速化を実現するために、画像を多項式で表現する手法、および、多項式を用いて探索を高速に行う方法を開発した。まず、画像を関数で適切に表現する手法について検討した。様々な関数形を調査した結果、多項式により画像を十分な精度で表現できることが分かった。ただし、多項式で近似する際に最小二乗法等の良く知られた方法を用いたのでは計算誤差によって適切な近似画像が得られないことも確認された。そのため、直交多項式を用い、直交多項式の完全性を利用して画像の近似を内積計算で実現する手法を開発した。次に、画像を近似する多項式と入力画像との類似度計算を効率よく行う手法を検討した。その結果、多項式の係数ごとに類似度を計算し、それを足し合わせることで、高速に類似度計算を行う手法を開発した。実験を行い、従来の高速化法と比較して、提案手法がはるかに高速であることを確認した。ところで、一般に画像パターン認識では単一の画像を用いるよりも、複数の画像を用いて統計的に適切な認識結果を得る方が一般に性能が良い。これらを考慮し、提案手法を部分空間法に適用する手法を提案した。部分空間法では、複数の学習パターンからそのパターンを表わす基底を構築し、基底への射影成分を求めることで認識を行なう。これにより認識精度が向上するだけでなく、一般に基底は低周波成分の多いパターンとなるため、多項式による近似精度も向上させることを可能とした。さらに、本手法の考え方を、代表的な信号処理の手法である連続ウェーブレット変換の高速計算に応用した。多項式を用いた内積計算の高速化法を拡張し、連続ウェーブレット変換に必要な積分計算を高速化する手法を開発した。
著者
井上 雅雄
出版者
立教大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

主要5大都市のホワイトカラー50名(男40、女10)に対して「仕事と余暇」に関する面接聴き取り調査とアンケート調査を実施した。その結果、次の諸点が明らかとなった。1)会社での仕事の時間配分は各人の裁量によるところが多いが、あらかじめ残業を織り込んでいるため、正規の終業時間内で仕事を終えるという時間意識が弱く、時間管理に厳密性が欠けている。その最大の理由は、仕事量に比して要員が少ないもとで、常に「仕事の区切り」のほうを「時間の区切り」よりも優先しているところにある。2)残業が多かれ少なかれ恒常化しているとはいえ、退社時間については各人が自由に設定しており、職場での集団的な拘束性はほとんどみられない。これは、かつてのごとく残業時間の長さが人事考課の対象となることがなくなり、専ら仕事の成果に移ってきたこととあいまって、職場での各人の時間管理の自立性をあらわしている。3)平日勤務の帰宅後は、男性の場合、家族との団欒やTV鑑賞など休養が圧倒的で、家事への参加度はきわめて低い。この傾向は年齢が高くなるほど顕著である。女性の場合は、そのほとんどの時間が家事に費やされ、若干の例外を除けば、その夫の家事の分担もまたきわめて少ない。他方、男性のうちごくわずかではあるが、週に1-2回演奏会に向けて楽器演奏の練習に参加するなど、自分の固有な時間をもっている場合がある。4)土、日の休日は、ショッピング、スポーツ、ドライヴ、散歩など家族で過ごす時間が多く、読書やゴルフなどの私的時間を確保している度合いも高くなる。5)多くの場合、仕事は単なる生活の資を稼ぐための手段というよりも、生きがいの核をなし、多かれ少なかれ自我の拠り所としての性格をもっている。これに対し余暇は、心身を癒し、仕事への活力の源泉という域をでず、余暇活動にアイデンティファイする事例は例外的であり、生活文化の限界が看取される。
著者
沼崎 一郎
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

本研究では、植民地期から戦後にいたるまでの日本と台湾との企業間関係のエスノヒストリーを再構成することを目的とし、文献調査と聞き取り調査を組み合わせて、日台企業文化交流史の基礎資料の収集を行った。植民地期の台湾における日本人企業家と台湾人企業家の交流については、自伝や回顧録、社史やパンフレットを収集した。戦後の日台企業関係については、台湾駐在経験のある日本人ビジネスマン数名を対象にインタビューを実施した。戦前の台湾で企業活動を行っていた日本人に対する聞き取りは実施できなかった。これは今後の課題として残る。ただし、戦前台湾に居住していた大学教授夫人にインタビューし、女性の立場から見た当時の日本人と台湾人との関係についての体験を聞くことができた。植民地期の台湾では、多くの台湾人が日本人経営の商店で丁稚奉公をしており、そのような体験を通して、日本的な商業慣行や文化を学習した。これに対して、日本人の側は、日本語を解し、日本的行動様式を学習した台湾人とのみ交流した結果、台湾商人固有の商業文化を学という姿勢は見られなかった。ここで、台湾では「日本式」企業文化が通用するという「誤解」が形成され、この「誤解」は現在まで継承されている。この「誤解」の中核にあるのが、台湾側が個人と個人の関係とみなす関係を、日本側が組織と組織の関係と誤認することである。しかし、この文化的「誤解」は、日本と台湾の企業間関係を損なうこともあったが、新たな展開を生むこともあった。台湾人社員を日本的な組織人と「誤解」した日本企業が技術研修を与え、退社して独立した台湾人が本社の下請け企業となり、結果として意図せざる技術移転が行われた事例が多々ある。このようにして、日本的に社会組織に台湾的な個人企業を結び付くという、新しい形態の異文化間ビジネス・ネットワークが形成されてきたことが明らかとなった。
著者
正岡 寛司 藤見 純子 嶋崎 尚子 澤口 恵一 西野 理子 大久保 孝治 白井 千晶
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、19世紀・20世紀半ばまでの重量型資本主義の基盤を第一次エネルギー供給の面から下支えしてきた石炭鉱業の経済史的ならびに社会学的な意義と特殊性、そしてその発展と終焉過程とを緻密に記述することを目的としたものである。あわせて、それを比較歴史的な記録資料として利用可能な状態で保存する。具体的には以下の5点の作業をすすめ、成果をえた。(1)旧常磐炭砿株式会社磐城砿業所(福島県いわき市)で就労した労働者の職業キャリアの大規模なミクロ・データの構築。(2)入社から退社にいたるまでの個別砿員の職業を中心として各種キャリアの時系列データの分析。(3)磐城砿業所の閉山にともない解雇された労働者の炭砿での職業キャリアと閉山後に形成した職業キャリアとの連結と、その分析(非自発的職業中断の影響)。(4)炭砿で就労した経験をもち、かつそこを解雇された元炭砿労働者たちの職業生活から離脱過程のデータの構築と分析(解雇経験後の職業キャリアと引退後生活)。(5)以上の諸ミクロ・データをデジタル化したうえで、大規模ミクロ・データの公共利用。上記作業の結果、昭和30年代の「採解簿データ」(約80,000件)をデジタル化し、6,459名の入社から退職にいたる職業キャリアの大規模なミクロ・データを構築した。他方、4,209名の離職者の89%にあたる3,747名の追跡調査を終えた(調査終了1,427名(34%)、調査不能879名(21%)、死亡確認(34%)1,441名)。彼らの閉山後の職業キャリアデータと入社から退職までの職業キャリアデータとを連結し、生涯職業キャリアデータを構築した。これらの生涯職職業キャリアデータを用いて、非自発的職業中断の影響、解雇経験後職業キャリアと引退生活の分析をすすめ、その成果を報告書にまとめ刊行した。本研究で構築した大規模ミクロ・データについては、HP上でその一部を公開した。
著者
中野 栄二 庄司 道彦 王 志東 高橋 隆行
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.実験機の試作操縦型連続移動歩容の検証のために,18自由度をもつ脚車輪ロボットの実験機を製作した.2.オペレータによる操縦に的確に反応する脚相管理歩容の実現オペレータの指示する速度が限度を超えたときに,脚の復帰動作が間に合わずに推進動作が停止する問題が明らかになり,この点の解決に特に重点を置き,集中的に研究を行った.その結果,これまで提案してきた脚相管理歩容ときわめて親和性の高い,かつ効果的な方法の開発に成功した.この方法の主要な部分は以下の通りである.(1)ベースとなる脚相管理歩容とは,脚が可動限界に到達して推進動作が継続不可能になる時刻を予測し,それに基づいて脚の復帰動作開始タイミングを決定する手法である.この手法は,脚の機械的な可動限界到達までの時間と,可動限界からの復帰に要する時間を比較し,継続的な推進動作を実現するものである.(2)しかしながらオペレータの指示速度が過大で,脚の動作タイミングの制御のみでは推進動作の継続性が維持できない場合,速度指令を強制的に小さくすることにより,機体が実現可能な範囲内で最大の速度が出せるようにする.この二つの手法を併用することにより,制御対象である脚車輪型ロボットを不整地上で継続的に動作させることに成功し,また速度指令が一定の場合については,脚の復帰動作を最小限に抑えた効率的な推進動作が実現できることを確認した.3.安定性を考慮に入れた脚相管理歩容の拡張上述の脚相管理歩容を,任意に設定した転倒安定余裕を確保しつつ継続的推進動作が可能なように拡張した.
著者
屋良 朝彦 金光 秀和 本田 康二郎 蔵田 伸雄 須長 一幸 永澤 悦伸 大小田 重夫 坂井 昭宏 長谷川 吉昌
出版者
長野県看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

(1)科学技術によってもたらされる不確実なリスクに対処するための意思決定モデルとして、「予防原則」を検討した。その際、予防原則にはどのようなレベルのリスクに対処するべきか明確な基準が欠けていることが明らかにされた。そのため、予防原則はリスクに関する合意形成モデルによって補完される必要があることが示された。(2)科学技術による不確実なリスクの本質を知るために、それをリスクコミュニケーションの観点から分析した。
著者
菊谷 正人
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

企業結合の先進国である英・米の会計基準および国際会計基準(IAS)または国際財務報告基準(IFRS)を検討するとともに、わが国の会計基準(「企業結合に係る会計基準」と「企業会計基準第22号 : 企業結合に関する会計基準」)との国際比較を行うことによって、企業結合会計基準の国際的収斂を確認することができた。企業結合会計として「パーチェス法」が強制適用されることになったが、のれんの会計処理として国際的には「減損テスト法」が基準化され、わが国では「20年以内規則的償却法」が基準化された。「フレッシュ・スタート法」は論議されるに止まり、制度化されるには至っていない。
著者
山形 眞理子 松村 博文 鐘ヶ江 賢二 田中 和彦 俵 寛司
出版者
昭和女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

平成21年度にベトナム中部・ホアジェム遺跡の第二次発掘調査を行った。カムラン湾岸に位置する鉄器時代埋葬遺跡である。この遺跡で甕棺墓に副葬される土器群は、フィリピン中部カラナイ洞穴、タイ南部サムイ島出土土器と酷似する。考古学的な考察から土器の年代は紀元後2~3世紀と推定され、埋葬人骨の放射性炭素年代もそれを裏付けた。東南アジアに国家が出現する時期、南シナ海を渡って交流した人々の存在が明らかになった。
著者
山本 幹雄
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、音声認識技術を活用した(1)音声字幕付き教材配信システムおよび(2)要約復唱(リスピーク)方式による情報支援システムの開発を行うとともに、同システムを実際の大学講義に導入し、事例研究にもとづく教育効果の定性的分析および実用化のための課題整理を行った。これにより、情報保障および教育効果のベンチマークが明らかになり、市販の音声認識エンジンを活用した実用的な教育支援モデルの提案を行うことができた。
著者
多田 雄一
出版者
東京工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

オヒルギの耐塩性遺伝子を同定するために、3種のオミックス技術を活用した。それらは、塩応答性遺伝子の同定とその機能解析、アグロバクテリウムを宿主としたオヒルギcDNAの網羅的な耐塩性スクリーニング、プロテオーム解析による塩応答性たんぱく質の同定である。これらによって選抜された遺伝子のいくつかが、シロイヌナズナに耐塩性を付与することを確認した。