著者
山口 哲生
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2021-04-01

植物の根と土からなるシステム(土壌)を,一種の複合材料と捉える.根の分岐ネットワーク構造を系統的に変化させ,土壌の強度を評価するモデル実験を行い,強度を配する諸因子を明らかにすることで,根による土壌の強靭化機構を解明する.また,分岐構造と強度との関係を記述する数理モデルを構築する.さらに,得られた知見をもとにして,簡単に地中に挿入でき土壌を強化できる,分岐をもつアンカー(固定用金具)や,分岐をもつ繊維の配合による樹脂複合材料の開発にも取り組む.本研究により,「根に学ぶ複合材料の強靭化」という新たな分野の創出を目指す.
著者
池田 太臣
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.51-67, 2004-06-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
25

支配は, 政治学および社会学において, 中心的なテーマのひとつであった.けれども近年, この支配についての関心は衰退し, その概念の有効性も疑われつつあるように思われる.この'支配概念の有効性の衰退'ともいえる現象は, 一体, いかなる理由によるものであろうか.この問いに答えるためには, なによりもまず, 支配研究の源流にさかのぼる必要があると思われる.というのも, 支配概念の導入の初発の関心を明らかにすることではじめて, その概念の社会科学上の存在意義を解明することができるからである.今述べた “支配の社会学の初期設定” を探るために, 本稿では, トマス・ホッブズの『リヴァイアサン』を取り上げる.なぜなら, この書におけるホッブズの議論こそが, 支配の社会学の嚆矢であると考えることができるからである.上記の関心にしたがって, 本稿では, まずホッブズの議論の特徴として2つの点を指摘する.これらが, “支配の社会学の初期設定” である.さらに, このような設定を可能にしたホッブズの思想的前提を, 人間観と社会観との2つの観点から明らかにする.この指摘によって, ホッブズの議論の限界と可能性が明らかになると同時に, ホッブズ以降の支配論ないし支配の社会学の歴史を整理するための足かがりが得られる.そして最後に, 議論の簡単なまとめと今後の研究の展望について触れることにしたい.
著者
森 信介 山地 治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.2191-2199, 1997-11-15

本論文では,形態素単位のn?gramモデル(1〓n〓16)による日本語の情報量の上限の推定方法とその結果を示す.各n?gramモデルは,データスパースネスの問題に対応するため,低次のn?gramモデルとの補間を行ってある.補間係数は,最も有効であると考えられている削除補間法により求める.実験ではEDRコーパスの約9割からモデルのパラメータを推定し,残りの1割に対して情報量を計算した.その結果,n=16のときに1文字あたりの情報量は最小の4.30330ビットであった.また,学習コーパスの大きさとモデルの次数による情報量の変化を調べた結果,モデルの次数を上げることによる情報量の減少量は微小であるが,学習コーパスを大きくすることによる情報量の減少量はかなりあるということが分かった.さらに,パラメータ数とエントロピーの関係についても議論する.これは,実際の日本語処理にn?gramモデルを応用する際に,適切にnの値を選ぶ指標となる.
著者
青木 賢人 林 紀代美
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.29, 2007

<BR>1.はじめに<BR> 2007年能登半島地震は,2007年3月25日午前9時41分,能登半島西方の門前沖で発生した海底活断層による地震で,Mj6.9,最大震度6強(輪島市,七尾市,穴水町)を観測した.建築物の倒壊や生活インフラの寸断など,様々な被害が輪島市を中心に発生している(青木・林,2007a).気象庁は地震発生の2分後,9時43分に石川県に津波注意報を発令し,11時30分に解除している.実際には,津波は珠洲市長橋で22cmの津波を観測したのが最高で,幸いにも被害は生じなかった.また,第1波が最大波高では無かったとともに,押し波であったことは,本地域での津波対策を考える上で注意すべき点である.<BR> 本研究では,津波被害が生じなかった本地震に際して,地震発生直後に住民が津波に対してどのような意識を持ち,回避行動を取ったのか否かについて明らかにすると共に,その意識や行動を規定した既往教育歴や被災経験を検討するために,被災地である輪島市・志賀町の中学校の生徒およびその保護者を対象にアンケート調査を行った.<BR><BR>2.アンケート調査の概要<BR> 津波回避行動に関する調査を行うために,能登半島の震源地側(西岸)に位置する輪島市,志賀町の中学校の内,校区内に海岸線を持つ7校にアンケート調査への協力依頼を行い,志賀町立志賀中学校,輪島市立門前中学校,上野台中学校,南志見中学校,町野中学校の5校から協力を得た.志賀中学校については生徒に対する抽出調査となったが,他の4校では全校生徒およびその保護者に対する全数調査となった.予稿集投稿時には上野台中から回収できていないため4校の値となるが,回収数は生徒から330通,保護者から308通,合計638通である.<BR><BR>3.アンケート結果の主な内容<BR> 津波からの避難行動を行ったか否か:避難行動を取った生徒は12%(38/309),保護者は22%(62/280).避難を行わなかった被験者には,海から遠い,高台にいたなどの適切な理由から避難しなかったなどもあり,一概にこの値を低いと判断出来ない部分もある.<BR> 津波に関する情報を確認したか:生徒の72%(221/306),保護者の60%(169/280)が,テレビ,防災無線などで津波情報を確認している.また,旧門前町では,停電が発生したため「情報が確認できなかった」という回答もあった.一方で,生徒の54%(169/312),保護者の66%(193/293)が地震発生時に津波を想起している.<BR> 地震発生時の津波の想起,あるいはテレビなどでの情報確認を行った率はかなり高いと言えよう.しかし,その一方で想起や情報が必ずしも避難行動に結びついていない.避難行動を起こさなかった具体的な理由として,以下のような回答が得られていることから,必ずしも適切な判断が行われているわけではないことが推察される.<BR>・津波の心配はないと報じられたから<BR>・父が海に行って「大丈夫」と言っていたから<BR>・海を見ていて、津波が来るけはいがなかったから<BR>・津波の高さが50cmと聞いたので<BR> 現実には,地震発生後2時間近くも津波注意報は解除されていないし,第1波は押し波であった.対象地域内には漁業者も多く居住しており,海に関する経験や知識が豊富であるとも思われるが,その知識が逆に危険な方向に作用している場合もあることが確認された.<BR> このほか,詳細に関しては当日に報告する.
著者
新居 智将 鈴木 泰成 徳永 裕己
雑誌
量子ソフトウェア(QS) (ISSN:24356492)
巻号頁・発行日
vol.2022-QS-5, no.27, pp.1-10, 2022-03-17

表面符号は現在量子誤り訂正符号として最も注目されているものの 1 つである.表面符号の復号方法の 1 つに,エラーの推定を最小重み完全マッチング問題に帰着して復号する方法がある.量子ビットによってエラーが起きている確率が均一でない場合,重みが不均質な最小重み完全マッチング問題を解くことで復号の精度が向上することが知られている.しかし,その際に必要な計算量は確率が均一である場合に比べて大きくなってしまう.この発表では,一定の仮定の下でフェニック木を用いることで,最小重み完全マッチング問題による表面符号の復号で必要となる計算量を削減する方法を提案する.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1500, pp.102-104, 2009-07-20

年明け以降、電機最大手の日立製作所で激震が続いている。最初の揺れは、2009年3月期連結決算で最終損益が7000億円の赤字になるとの見通し(最終的には7873億円に拡大)を発表した1月30日のことだった。
著者
佐久間 啓
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.110-114, 2013 (Released:2014-10-11)
参考文献数
26
被引用文献数
4

難治頻回部分発作重積型急性脳炎 (acute encephalitis with refractory, repetitive partial seizures; AERRPS) は1986年に粟屋らにより報告され, 発熱に伴い顔面を中心とする持続の短い部分発作の頻発が特徴である. けいれんは極めて難治で遷延し, 難治てんかんと知能障害を残し予後不良である. 近年類似の疾患概念febrile infection-related epilepsy syndrome (FIRES) が提唱された. AERRPSの原因は不明だが, イオンチャネル遺伝子の異常や抗神経抗体との関連が示唆されている. 脳波上の周期性放電やMRIでの前障病変を認める例がある. 治療として主に高用量バルビタール酸が用いられているが弊害も指摘されている.
著者
Kamada Akira Duan Zhengnan Masui Ryuji Kutomi Nozomu Sogabe Maina Ohzeki Masayuki
出版者
京都大学学際融合教育研究推進センター高大接続科学教育ユニット
雑誌
ELCAS Journal
巻号頁・発行日
vol.2, pp.75-77, 2017-03

今まで日本で発生した地震データから,地震が発生する特徴を表すパターンを抽出し,地震予測に用いることができないかを考えた.そのため,2004 年2 月から2016 年の5 月に日本で発生した地震のデータを「YAHOO! 天気・災害」から取得し,行列として表現し,非負値行列制約因子分解を用いて解析を行った.その結果,地震発生の典型的なパターンと,突発性に伴う困難を示唆する結果を得た.この研究結果は,未来の技術として繋がることを考えている. Using data collected from past earthquakes in Japan, we extracted patterns representing earthquake occurrence characteristics and explored the possibility of using these for earthquake prediction. We obtained data from "Yahoo! Weather and Disaster" concerning earthquakes that occurred from 2004 February to 2016 May, and expressed them in the form of a matrix. We analyzed the resulting matrix using non-negative matrix factorization. Our results suggest some typical patterns of earthquake occurrence as well as difficulties accompanying sudden outbreaks. We expect that this method will lead to the development of future technologies.
著者
FELBER Helmut GALINSKI Christian (著) GALINSKI Christian 大島 富士子 (訳)
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.25, no.8, pp.659-670, 1982 (Released:2012-09-28)
被引用文献数
1

この論文では, ターミノロジーつまり〔専門〕用語学を, 言語学, 論理学, 存在論, 情報科学と諸科学技術における専門分野との境界領域および学際分野にある新学問として紹介する。この学問, 特にそれに基づく具体的ターミノロジーワークというのは, 実際の専門分野における諸活動において (殊にコミュニケーションに関連して) 重要な役割を果たしている。ターミノロジーは学問としても具体的ターミノロジーワークとしても, まず人間の考え, 知識や討論の成分である概念を対象としている。さらに, 学問としてのターミノロジーは概念用語体系の諸問題を研究している。〔専門〕用語学とターミノロジーワークやそれぞれの成果を概説するとともに, 基本的なターミノロジー原論に基づく用語や概念を説明した。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1111, pp.184-187, 2001-10-08

南仏、スペイン国境にほど近いリゾート地。そこに、砂浜に打ち上げられた一艘の大型船がある。名前をリディア号という。 30年ほど前、それはカジノ船だった。タキシード姿の紳士とドレスをまとった淑女の社交の場。しかし、当時の喧騒は今はなく、ひっそりとたたずんでいる。海を眺める初老のライフセーバーに聞いてみた。「何でも、オーナーは日本人だったらしいね。
著者
金沢 幾子
出版者
実践女子短期大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 = The bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.143-161, 2013-03-19

明治・大正・昭和初期の近代経済学者、社会政策学者、また大正デモクラシーの先駆者である福田徳三博士は、明治期の経済学者、「東京経済雑誌」の創刊者の田口卯吉から影響を受けた。 福田の母・信子は、田口の姉・木村鐙子を深く尊敬し、たえず話題にした。 田口の「東京経済雑誌」の後継者・塩島仁吉は、福田の結婚相手を仲介。 「東京経済雑誌」の投稿者・布川孫市は早くから福田の学問を評価した。後年、福田を東京高等商業学校から退職させた松崎蔵之助の学術上の誤謬を指摘した。
著者
芝田 隼次 奥田 晃彦
出版者
資源・素材学会
雑誌
資源と素材 : 資源・素材学会誌 (ISSN:09161740)
巻号頁・発行日
vol.118, no.1, pp.1-8, 2002

The separation and purification methods of precious metals from the scrap containing precious metals are introduced in this review. The solid waste containing precious metals first is dissolved by the solution somprising oxidation agents and ligands, such as aqua regia, Cl2+HCL and NaCN+O2. The separation of precious metals in the leached solution or wasted solution is carried out by using various methods like classic precipitation, cementation, ion exchange resin, activated carbon adsorption and solvent extraction. It depends on the concentration and combination of precious metals what kind of separation method is applied. Generally, adsorption and ion exchange methods are applicable to the dilute solution, while precipitation, cementation and solvent extraction are used for the concentrated solution. In the recovery of the precious metals in automoble catalyst, the collection of the platinum group matels in Cu or Fe metals melted by a plasma melting method is performed as one of the recovery techniques by the pyro-metallurgy. The fundamental of separation and purification methods, and some commercial plant examples are described for recycling of precious metals.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1471, pp.48-50, 2008-12-22

2008年10月、名古屋駅前に不思議なカップルが登場した。ウエディングドレスで着飾った女性と、タキシードを身にまとった男性。"駅前結婚式"と思いきや、さにあらず。大塚製薬の栄養食品「SOYJOY(ソイジョイ)」のサンプルを配布する風景だ。 SOYJOYは、女優役を演じる田中麗奈とマネジャー役の豊川悦司が軽妙にやり取りするテレビ広告が話題になっている。
著者
下高原 理恵 島田 和幸 柴田 興彦 河野 麻理 島田 達生
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.17-22, 2006 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20
被引用文献数
1

ヒトの肛門から直腸にかけての上皮の形態を光学顕微鏡、走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡を用いて調べた。組織学的所見から、我々は肛門縁から肛門直腸結合部までを肛門管と定義し、その長さは約4cmであった。さらに、肛門管を歯状線上部と歯状線下部に二分した。肛門と歯状線下部の上皮は角化重層扁平上皮からなり、歯状線下部における角化の程度は肛門よりも弱かった。歯状線上部 (肛門柱と肛門洞) は非角化重層扁平上皮からなっていた。肛門管と直腸の境界は明瞭で、直腸は単層円柱上皮からなっていた。結果的に肛門管は物理的刺激に対して強く保護されているが、直腸は形態学的に刺激に対して弱い構造であった。
著者
本間 覚 山口 巖
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.31-37, 2002-01-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
6