著者
林 優佳 西本 創 谷田部 良美 森茂 亮一 桃井 貴裕 谷口 留美 高見澤 勝
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.117-122, 2019 (Released:2019-03-31)
参考文献数
10

ヨモギやシラカンバ花粉症は欧州で多くみられ, 交差反応性からスパイスアレルギー (Celery-birch-mugwort-spice症候群) を発症することが知られているが, わが国からの報告は少ない. 症例は14歳女児. セロリ入りミートソースやカレーの摂取で口腔内違和感, 咳嗽, 呼吸困難がみられた. 皮膚プリックテストではコリアンダー等セリ科のスパイスのみが陽性で, 食物経口負荷試験にてセロリとコリアンダーにより症状が誘発された. 吸入抗原の特異的IgE抗体はシラカンバ・ハンノキで陽性, ヨモギは陰性で, カバノキ科花粉の飛散時期に一致して新たに花粉症の症状が出現したため, カバノキ科花粉症により花粉-食物アレルギー症候群としてセリ科のスパイスアレルギーを発症したと考えた. セロリ, ヨモギのプロフィリンと, シラカンバのBet v 2は相同性が高く交差反応するとされているが, 本症例ではBet v 2が陰性であり他の部位に対する感作と推測された. 近年, カバノキ科花粉症が増加しており, 同様の症例に注意が必要である.
著者
Wang Chao Jiang Heng Zhu Yi Guo Yingying Gan Yong Tian Qingfeng Lou Yiling Cao Shiyi Lu Zuxun
出版者
日本疫学会
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
2021
被引用文献数
2

<p><b>Background:</b> Increasing number of studies has suggested the time to first cigarette after waking (TTFC) have significant positive effect on respiratory diseases. However, few of them are focused on Chinese population. This study aims to estimate the impact of TTFC on the prevalence of chronic respiratory diseases (CRD) in Chinese elderly and explore the association in different sub-populations.</p><p><b>Methods:</b> Cross-sectional data of demographic characteristics, living environment, smoking-related variables, and CRD were drawn from the Chinese Longitudinal Healthy Longevity Survey in 2018. Multivariate stepwise logistic regression analyses were conducted to examine the association of the TTFC with the prevalence of CRD.</p><p><b>Results:</b> This study includes 13208 subjects aged 52 years and older, with a mean age of 85.3 years. Of them, 3779 participants are ex- or current smokers (44.9% had the TTFC ≤30 minutes, 55.1% >30 minutes) and 1503 have suffered from CRD. Compared with non-smokers, participants with TTFC ≤30 minutes seemed to have higher prevalence of CRD (OR 1.97; 95% CI, 1.65-2.35) than those with TTFC >30 minutes (OR 1.70; 95% CI, 1.44-2.00), although the difference was statistically insignificant (<i>P<sub>interaction</sub></i>=0.12). Compared with TTFC >30 minutes, TTFC ≤30 minutes could drive a higher prevalence of CRD among female participants, those aged 90 years and older, urban residents, and those ex-smokers (<i>P<sub>interaction</sub></i><0.05).</p><p><b>Conclusions:</b> Shorter TTFC relates to higher prevalences of CRD in Chinese older females, those aged 90 years and older, urban residents, and ex-smokers. Delaying TTFC might particially reduce its detrimental impact on respiratory disease in these specific subpopulations.</p>
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.288-289, 2019

表紙の説明:春の野山にすみれの花を探しに行った.山の斜面にすみれとは違う鮮やかなショッキングピンクの花が視界の中に飛び込んできた.「カタクリだ!」思いがけない出会いほどうれしいものはない.カタクリの粉は,現在は食用に用いられることが多いが,昔は滋養薬としても利用されていた.カタクリの開花時期は咲く場所の気候・標高・環境の 違いにより3月から6月までと幅広い.カタクリの群生地に出かけるのも楽しいが,春の野山をハイキングし,思いがけない出会いを楽しんでみては?
著者
原川 守 辻 政雄 小宮山 美弘
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.119-124, 1981

シアン化合物を含む雑豆(バター豆)を用いて製あん工程を改善し,安全でかつ合理的製造方法を確立することを目的とし,まず現在操業中の新旧の典型的な2工場の工程解析を行った。<BR>現在の食品衛生法に準拠して製造した場合,製品に遊離シアンは検出されなかったが,渋切りや煮熟が不十分であると定量値も高く検出されやすかった。一方遊離したシアンの一部は排水中に流出し,特に豆の浸漬温度が高い場合の排水に多かった。浸漬工程でのシアン遊離率(シアン化合物分解率)は新しい工場で30.2%,古い工場で21.3%であった。
著者
桜井 章一 川岸 徹
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.9, no.19, pp.72-76, 2010-12-07

昭和30〜40年代にかけて麻雀の「裏プロ」として活動し、その強さから「雀鬼」の異名を取った桜井章一さん。現在は裏プロ稼業から足を洗い、麻雀を通して人間性を磨く道場「牌の音」を主宰する。自然体な生き方は若者の共感を呼び、著書は相次いでベストセラーに。そんな桜井さんの人生に迫った。
著者
渡邊 瑛季
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2021, 2021

<p> Ⅰ はじめに</p><p></p><p> 非大都市や選手輩出地を対象としたスポーツイベント開催によるレガシー研究は日本では少ない状況である。本研究は,国際大会や国内上位大会の開催に伴うスピードスケート選手輩出地におけるレガシーを,北海道十勝地方を対象にして考察する。</p><p></p><p> </p><p></p><p>Ⅱ 十勝におけるスピードスケート文化</p><p></p><p> 十勝では,1950年代から冬の体力づくりの一環として学校体育でスピードスケートが指導されてきた。現在でも小学生だけで約1,000人が競技に取り組むスピードスケート盛行地域である。冬季には学校の校庭や各市町村の運動公園などにスケートリンクが造成され,十勝関係者の競技結果は地元新聞紙面をにぎわすなど,スピードスケートは十勝の冬の風物詩である。中学,高校の全国大会では,十勝の学校が上位入賞の常連校であり,競技レベルは非常に高い。清水宏保氏や髙木菜那・美帆選手など五輪メダリストも輩出してきた。よって,十勝ではスピードスケートは世界に通用するスポーツとして認識されている。</p><p></p><p> 勝利志向に特徴づけられるスケート文化の存在の一方で,十勝でのワールドカップ(W杯)などの国際大会の回数は,2007年まで3回のみであった。高校卒業後は,ほとんどの選手がスケート部のある関東甲信の大学や実業団に進む。十勝での選手の引受先も少なかったため,十勝は有望選手の輩出地といえる。</p><p></p><p> </p><p></p><p>Ⅲ 屋内スピードスケート場の建設による国際大会の増加</p><p></p><p> 十勝のスケート関係者は,夏季にも使用可能な屋内のスピードスケート場の設置を長く懇願していた。また,長野五輪で帯広市出身の清水宏保氏がスピードスケート競技では日本初となる金メダルを獲得した。こうした背景から,1999年に帯広市長を会長とする「北海道立屋内スピードスケート場十勝圏誘致促進期成会」が発足し,屋内スピードスケート場建設の機運が高まり始めた。しかし,北海道の財政難により2004年には帯広市が建設主体になった。2006年の帯広市長選では総事業費約60億円とされたスケート場の建設が争点になったものの,地元経済界の後押しもあり,推進派が再選された。その結果,2009年8月に日本で2例目の屋内スピードスケート場である「帯広の森屋内スピードスケート場(明治北海道十勝オーバル)」が帯広市郊外に開設された。地元選手の練習場所でもあるほか,W杯やアジア冬季競技大会などの国際大会が約2年に1度,全国規模の国内上位大会が毎年数回開催されるようになった。</p><p></p><p> </p><p></p><p>Ⅳ 国際大会によるレガシーとしてのスケート文化の強化</p><p></p><p>帯広市での国際大会や国内上位大会を直接観戦する住民が増えている。十勝の小中高生選手は,世界や国内を転戦する自身の学校やチーム出身の一流選手のレースを観戦し,レース後に交流する機会も時折ある。これは,全国制覇を志向する選手が,十勝出身の一流選手を目標的存在として認識する契機となり,また競技力向上への意識を高めることにつながっている。</p><p></p><p>また,主に帯広市に本社を置く企業の経営者が,国際大会や国内上位大会で活躍する十勝や北海道出身選手の姿を見て,子どもの頃と比べた成長に感銘を受け,スポンサーになったり,スケート場内に企業広告を掲示したりするケースが多数みられる。個人競技であるがゆえ社名がメディアで報じられやすく企業の宣伝などに寄与すること,また経営者がスピードスケート経験者であって,競技への理解があることが主な背景にある。国際大会や国内上位大会に伴うこれらの変化は,十勝関係の選手の競技力を育成面・資金面で向上させることに寄与している。</p><p></p><p> </p><p></p><p>Ⅴ おわりに</p><p></p><p>十勝はスピードスケート選手の輩出地と,国際大会や国内上位大会の開催地とが重なる場所である。出身地での一流選手の活躍が大会で住民に可視化されることは,勝利志向に特徴づけられるスケートの文化的価値の強化というレガシーを形成した。</p>
著者
吉澤 文寿
出版者
朝鮮史研究会
雑誌
朝鮮史研究会論文集
巻号頁・発行日
no.36, pp.171-195301, 1998

This article is an analysis of the negotiations over property claims during talks between Japan and South Korea, focusing on the period beginning with the conference between Foreign Ministers Kosaka Zentaro and Ch'oe Tok-shin in March 1962, followed by talks in October and November at which agreement was reached between Ohira Masayoshi and Kim Chong-p'il, and concluding with the approval by both countries' leaders in December of the so-called Ohira-Kim Chong-p'il memorandum. The central question underlying this research was my suspicion that, because both Japan and South Korea, from the biginning of negotiations, saw property claims (compensation) and economic aid (economic development) as linked, a political compromise was finally reached over property claims when both sides accepted intervention by the United States. Accordingly, in this article I examine how Japan, the United States and, particularly, South Korea saw the relationship between property claims and economic assistance. I also clarify the structure of Japan's "bureaucratic offense" and South Korea's "political defense." Moreover, I point out the formation of diplomatic policies based on a non-conciliatory "businesslike approach" and a conciliatory "political approach" on the part of the Japanese and South Korea governments at the stage of political compromise, In addition, I criticize the perception of the compromise as a political one achived under U.S. leadership, emphasizing that, despite Washington's "political" intervention, Japan and South Korea had worked toward a compromise until October and that, after the talks deadlocked, a breakthrough came besed on a "political approach" by those two countries. I also attempt to explicate the true character of the diplomacy pursued by Japan and South Korea, which accepted U.S. intervention.
著者
平 雅之 若狹 邦男 山木 昌雄 松井 昌
出版者
日本歯科理工学会
雑誌
Dental Materials Journal (ISSN:02874547)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.26-34,122, 1989
被引用文献数
7

日常の歯科臨床における切削機械として広く普及しているエアータービンは,軸受け機構の違いから2種類に大別されている。本研究では,まず,これらの無負荷時回転数を空気圧との関係で調べ,次いで,切削実習用に新たに開発されたガラス・セラミックス素材を用いて定荷重切削実験を行ないトルク性能と切削効率について比較検討を加えた。<br>エアーベアリング式タービンはより高速(48&times;10<sup>4</sup>rpm)で回転するものの常に一定の高い空気圧を必要とした。一方,ボールベアリング式タービンは空気圧を調整することで回転数を15&times;10<sup>4</sup>rpmから32&times;10<sup>4</sup>rpmに可変させ使用することができた。<br>エアーベアリング式タービンは負荷をかけると回転数が低下しやすくより低いトルク性能を示したが,切削効率はより大きかった。ボールベアリング式タービンは逆に,より高いトルク性能とより小さな切削効率を示した。<br>歯科切削においては,このようなエアータービンの特長に十分留意すべきことが示唆された。
著者
秋富 克哉
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.251-278, 2013-09-30 (Released:2017-07-14)

技術を哲学的に主題化するとき、そこには、技術の本質がどのように規定されるかという課題と、それに対して人間の本質ないし可能性がどのように理解されるかという課題が含まれる。ハイデッガーは、戦後四年目にドイツ・ブレーメンで行なった一連の講演で、技術的世界における「近さ」の不在という洞察のもと、そのような状況を産み出した現代技術の本質を「総かり立て体制」として取り出し、その根底に「危険」を指摘する一方、「近さ」の回復を、「四方界」と呼ばれる世界と「物」の独自な関わりにおいて描き出した。問題は、技術的世界のなかで四方界の世界がいかにして回復されるか、そこに人間がどのように関わり得るかということである。本稿は、上記二つの課題の観点から、ブレーメン講演を中心に同時期の主要テキストを読み解き、特に「死すべき者たち」としての人間に注目し、技術的世界における人間の本質と可能性を取り出すことを試みた。
著者
志和 資朗 松田 俊 佐々木 高伸
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.38-42, 1999-03-31 (Released:2017-05-23)

本研究では, 広場恐怖を伴う慢性のパニック障害患者に対して, その症状の軽減を目的として, マルチフィードバック療法の適用を試みた.患者自身の日常生活における不安階層表に基づき, 患者は段階的に恐怖場面に曝露された(現実的脱感作).同時に, マルチフィードバック訓練により, 複数の生理反応の自己コントロールが試みられた.その結果, この患者は自分自身の生理反応のコントロールが可能となり, さらにそのような進歩を患者自身が確認できたことにより, 抵抗なくより高次の不安場面への曝露が可能となった.3ケ月にわたる組合せ療法により, 広場恐怖が解消し, 復職が可能となった.この症例にみられる結果は, 従来の方法ではその解消が困難な場合が多々ある広場恐怖の治療において, 現実的脱感作とマルチフィードバック療法の組合せが有効であることを示唆するものである.今後さらに症例を重ねて検討していきたい.

1 0 0 0 OA 大豊町史

著者
大豊町史編纂委員会
出版者
大豊町
巻号頁・発行日
vol.近代現代編, 1987-09-01
著者
千田 崇文 吉川 茂
雑誌
研究報告 音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MUS-89, no.2, pp.1-4, 2011-02-04

本研究では 2 つの異なる初期条件: “up-plucking” と “down-plucking” が与えられた際のサワリ機構との接触を伴う撥弦振動を高速度ビデオカメラを用いて可視化した。その結果、振動周期や高周波の形成過程に関して初期条件が弦振動に与える影響が確認された。
著者
周 徳 今 久 孫野 長治
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.43-53, 1973
被引用文献数
10

1970,71年の夏季,札幌において晴天積雲の移動速度をステレオ写真方式で観測した.また雲の周辺の気象条件として札幌管区気象台のレーウインゾンデの資料をつかって解析して次の結果を得た.<br>1.雲底が地上高700m以上の高い晴天積雲では,その移動方向は,その雲の高度(雲底)の風向とよく一致するが,700m以下では地形の影響が大きい.<br>2.晴天積雲の移動速度は一般に雲底高の風速よりおそいが,そのなかで次の傾向が認められた.低い雲ほど,また大きい雲ほどおそい傾向がある.また風の垂直シャー(上方が速い)が大きいほど雲速に比べておそくなる.<br>これらの傾向は,雲内で小さい運動量が下方から輸送されるということで理解される.