著者
坂井 章浩 天澤 弘也 仲田 久和 宮原 要 木原 伸二
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

今後の自治体等による除染計画の策定及び除染活動の実施の際に必要となる知見・データを蓄積することを目的に家屋(庭を含む)、畑、牧草地、果樹園等を含む様々な土地の利用形態を対象に面的除染を実施した。除染エリア毎の地形、土地の利用状況等に応じて容易に実施可能な除染方法を用いた結果、除染後の空間線量率の平均値は概ね除染前の1/2まで低減した。<br>個別の除染作業について、屋根の除染では、Csが特定個所に付着・残留して居る傾向があり、汚染状況に応じて、拭き取り方式や電動研磨方式を用いることが有効であった。コンクリートスラブの汚染に対しては、スチールブラストショット除染が有効であった。
著者
上田 篤志 山本 暁彦 加藤 大輔 岸 義人
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2014

<p> ハリコンドリン類は上村、平田らによってクロイソカイメンから単離および構造決定されたポリエーテル系マクロリドである。<sup>2)</sup>その複雑な構造もさることながら、強力な抗腫瘍活性を示すことから創薬研究のシード化合物としての利用も試みられ、ハリコンドリンの右側部分をモチーフとした誘導体であるハラヴェンが2011年に乳ガンの治療薬として上市されている。構造的にハリコンドリン類は、C12およびC13位の酸化度の違いによりA、B、およびCシリーズに分類され、他方側鎖の構造によってノルハリコンドリン、ハリコンドリン、およびホモハリコンドリンに分類される (Figure 1)。これらの組み合わせからなる9種の亜種のうち、ハリコンドリンAを除いた8種類が現在までに単離報告されている。今回、未だ自然界からは単離されていないハリコンドリンAの初の全合成を達成したので報告する。合成のハイライトとしては、(1)Cr触媒によるC13/C14位でのカップリングとビニロガスエステルの面選択的エポキシ化を鍵とするC1–C19フラグメントの合成、(2)不斉Ni/Cr触媒反応<sup>3)</sup>に続くフラン環形成反応及び椎名マクロラクトン化による右側マクロラクトン環の構築、(3)C1–C38とC39–C54フラグメントのNi/Cr試薬による連結、(4)TMSOTfを用いた新規高立体選択的異性化反応によるC38-epi-ハリコンドリンAからハリコンドリンAへの異性化の4点があげられる。さらに合成したハリコンドリンAの構造の正しさを証明するため以下の実験を行った。第一にハリコンドリンAの合成に用いたC1–C38フラグメントから、既知の天然物ノルハリコンドリンA(2)およびホモハリコンドリンA(3)を合成した。第二にハリコンドリンAとその他のハリコンドリン類とのNMRデータの比較を行った。<sup>4)</sup></p><p>Figure 1.Structure of the halichondrin class of natural product.</p><p>(1)Cr触媒的カップリングと選択的エポキシ化によるC1−C19部位の合成</p><p> C1−C19フラグメントはヨウ化アルキン4と臭化ビニル5から合成した(Scheme 1)。これら二つの原料はいずれもNi/Crカップリング反応の良好な基質であるが、Ni触媒の量を低容量に抑えることでヨウ化アルキンのみを選択的に活性化させ、アルデヒドとのカップリング体を91%の高収率で得ることに成功した。生じた水酸基を酸化した後に得られたイノン6を、過剰のピリジン存在下HF・ピリジンで処理することで、三つのTBS基のうち、C9位とC11位のTBS基を選択的に脱保護することに成功した。この過程においてC9位の水酸基はイノン部位にオキシマイケル付加し、C11位の水酸基との水素結合による安定化でE体のビニロガスエステル7が選択的に得られた。ビニロガスエステル7のエポキシ化はジメチルジオキシランを用いることでコンベックス面から選択的に進行し、続く酸によるエポキシドの開環とHFによるTBS基の脱保護を伴うC14位でのケタール化までの3工程をワンポットで行うことで、収率92%でC12、C13位に水酸基を有するハリコンドリンA骨格の構築に成功した。最後にC12/C13位ジオールをp-アニシリデンで保護することにより、C19位でのカップリングの基質8へと導いた。Scheme 1において</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
藤原 俊輔 藤本 健
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.112, no.5, pp.459-466, 1992-05-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
6
被引用文献数
4 5

There is a levitation method which uses 8-shape levitation coils arranged on the vertical surface of the guideway. These coils can act as a guidance means as well as the levitation means. The characteristics of this system is examined using numerical examples and experimental data. The cables connecting right and left coils are not connected to a high voltage power source unlike the usual guidance system which is combined with propulsion. Thus the electric insulation of the cables is now not a problem. Numerical examples show that the levitation characteristics of the combined levitation and guidance system is almost the same as in the system without the guidance function, and that it atains reduced running resistance with necessary guidance stiffness obtained. Test run was done at Miyazaki Test Line equipped with coils of this type arranged about 120m, and the results show stable running and balanced displacement which agrees with calculated value.
著者
福田 典子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.15, 2004

<目的>生活用水の使用量は年々増加傾向にある。この用水は排水として、下水に流されるが、わが国の約半数といわれる下水道の完備されていない地域においては、直接河川に排出されている。一般に河川には微生物等の力で、汚濁物質を分解する能力があるが、短期間に多量の物質が流入し、水中の汚濁物質が高濃度になり、微生物の分解能力を超えると、水棲生物などへの影響が生じる場合も予想される。生活用水は様々な生活場面で不可欠であり、その家族構成やライフスタイルにより異なるが、使用量の多いものから、調理・入浴洗面・洗濯となることが知られる。これまでに、洗濯排水に関しては界面活性剤やリン酸塩などが問題視され、生産者サイドでは様々な対策が講じられてきた。行政サイドには、下水道の充実や汚水処理施設の充実を一層望む。生活者サイドの役割について日常生活での行動から考えると、生活における用水の使用状況を見直し、節水やカスケード利用の方法を実践的に指導し、定着を図ることが何よりも優先されよう。第ニに、汚れと基質(汚れが付着しているもの)の性質に応じた洗剤の種類や濃度の選択についての正しい知識を有し、実践力を身につけさせることが不可欠であろう。そこで、家庭科教育において家庭や学校における指導を徹底し、生活者一人一人の行動変容を期待したい。そこで、本研究では、日常生活において最も身近であり、実践し易い行動の1つである「衣料用洗剤を適正量使用すること」に注目した。洗剤の使用量と汚れ落ちの関係を実物の観察によって実感させ、児童・生徒が洗剤濃度に関心を持ち、自らの洗剤の使い方に意識を高め、正しい利用ができることをねらいとした実験教材を開発した。大学生を対象とした授業実践を通して、その教材の有用性と課題等について指導方法を含めて考察することを目的とした。<br><方法>研究授業は2003年1月、国立大学構内調理実習室において、45分の1回で実施した。授業対象は大学生女子20名であった。当日の水温は11℃、天気は雪のち晴れであった。実験教材の試料は綿スムース(綿100%白ニット)10cm角、モデル汚染物質は希釈用コーヒー飲料、モデル洗剤は市販洗濯用合成洗剤であった。汚染布は室温にて、授業日の1日から3日前に直接浸漬処理して作成し、風乾させて用いた。同一濃度に均一に汚染させるよう配慮した。実験教材の洗浄方法は、1リットルのペットボトル内に1リットルの水道水を入れ、キャップをして、50回手で上下に振ったのち、水道水で軽くすすいだ。授業の流れを以下に示した。まず導入部では、コンサートに出掛けるために服を選ぼうとして、洋服に染みがついていたという劇を見せ、着用後の手入れの重要性を意識化させた。展開部で着用後の衣類は実際にどのようにしているか学習者自身の日常生活を振り返らせ、手入れの中でも主要な洗濯という日常の衣類管理上不可欠な行為に目を向けるように配慮した。次に、10cm角のTシャツ生地にコーヒーの染みがついてしまったら、1リットルの水で洗うとしたら、洗剤はどのくらいの量が必要だろうか。という発問を投げかけ、洗剤量を予想させた。そこで、8条件の実験で用いる洗剤グラム数を提示し、予想させた。実験は4班に分かれて、班ごとに、2つの濃度の違う洗剤液を作成させ、それを用いて洗濯を行い、汚れ落ちの具合を観察比較させた。実際に洗浄後の汚染布の状態は師範台の上に並べた8枚の様子を洗剤濃度とともに示した。洗浄後の布をビデオカメラで接写し、プロジェクターで投影し、拡大して、8枚の汚れ落ちの程度を並べて学習者に観察しやすいように工夫した。終結部では、洗濯機の中に洗剤を多く入れても、汚れ落ちは変わらず、排水中の洗剤濃度を高めるだけであることを知らせ、洗剤の適正量を守ることの重要性を伝えた。<br>【結果】実験後記述された学習カードの分析より、学習者が洗剤は多く入れれば入れるほど、汚れが良く落ちるわけではないことを実感し、洗剤には水の量(洗濯物の量)に応じて、適正量があることに気付いている様子が伺えた。また、環境に負荷の少ない洗濯方法を実践しようとする態度が形成されることが期待できた。衣服を着用すると、手入れが必要であり、適切な手入れをすることは、環境に負荷が少ないだけでなく、経済的であることにも気付かせることが可能であることがわかった。実験の際には、予想をさせる段階で、どのような内容(情報)をどのような方法で学習者に対して与えるかについて、一層検討すべきであることがわかった。また、本実験教材では、汚れ落ちの観察方法の説明において、汚染布と洗浄布を比べて、洗剤濃度によって、どのくらい汚れ落ちの程度が違うのかを比較するということをしっかりと明瞭に指示する必要があることがわかった。

1 0 0 0 OA 近畿墓跡考

著者
鎌田春雄 著
出版者
大鐙閣
巻号頁・発行日
vol.大阪の部, 1922
著者
木村 大治 Kimura Daiji
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発資料 = JAXA Research and Development Memorandum (ISSN:13491121)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RM-14-012E, pp.45-49, 2015-03-27

This study considers human contact with extraterrestrial intelligence, the so-called "first contact" in science fiction, from the perspective of anthropology and communication theory. Science fiction has performed various thought experiments regarding whether and how mutual understanding is realized in such human-alien interaction circumstances. First contact can be classified into two categories: the scaffold for understanding based on rationality and objective truth, or on embodiment and internal understanding. Finally, we discuss the existence of another layer that we call the "stance of understanding," namely, the belief that "they must be trying to communicate."
著者
大澤 智子 Osawa Tomoko オオサワ トモコ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科教育学系
雑誌
大阪大学教育学年報 (ISSN:13419595)
巻号頁・発行日
no.7, pp.143-154, 2002
被引用文献数
1

論文トラウマ体験を持つクライエントとのセラピーに従事する臨床家は、自身はそのような体験をしたことがないにも関わらず、クライエントと同じような外傷性のストレス反応を示すことが報告されている。このような現象は「二次受傷(Secondary Trauma)」または「こ二次的外傷性ストレス(Secondary Traumatic Stress)」と呼ばれ、その研究は1990年代ごろから主にアメリカで盛んになった。しかし、二次的外傷性ストレスおよび二次受傷は一握りの専門家にしか知られていない。それにはこの概念が発達過程であるため、多くの名称や関連概念が存在しており、理解に困難を覚えるところにも寄与していると思われる。そこで、この論文は、その中でも代表とされる「燃えつき(Burnout)」、「逆転移(Countertransference)」、「外傷性逆転移(Traumatic Countertransference)」、「代理受傷(Vivarious Traumatization)」、「共感的疲弊(Compassion Fatigue)」をとりあげ、それぞれの特徴を考察し、今後の課題を提示した。
著者
保坂 宗一郎 大垣 裕嗣 廣岡 慶彦 西川 雅弘
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.650, 2005

1980年代後半のTFTR のスーパーショット以来、高性能コアプラズマがしばしば周辺での低リサイクリング条件によってもたらされることが良く知られている。実際、ボロニゼーション等の壁コンディショニングが多くの閉じ込め実験で日常的に行われている。しかし、捕獲された粒子による表面飽和のためにボロニゼーションの効果は有限の寿命があり、再コンディショニングが必要である。従って、将来の長時間放電炉に向けては低リサイクリングを定常状態で維持できる新しい壁コンセプトの開発が必要になってくる。 ひとつの解決策として移動表面式プラズマ対向機器概念が提唱され[1]、最近その原理検証実験が行われ前回の報告では、リチウムの連続的蒸着により定常リサイクリングが75%まで低減されることが示された。 今回は、リチウムを液体の粒子リサイクリング挙動を調査したので、その結果を報告する。
著者
飯島 朋子 野田 文夫 須藤 桂司 村岡 浩治 船引 浩平 Iijima Tomoko Noda Fumio Sudo Keiji Muraoka Koji Funabiki Kohei
出版者
航空宇宙技術研究所
雑誌
航空宇宙技術研究所報告 = Technical Report of National Aerospace Laboratory (ISSN:13474588)
巻号頁・発行日
vol.1465, 2003-07

近年、航空機事故防止の有効な手段としてCRM(Crew Resource Management)訓練が重要視されている。航空宇宙技術研究所(以下、航技研)では、運航乗務員におけるCRMスキルの向上を訓練で実現するための有効な手段として、訓練や実運航で具体的にCRMスキルを実践するためのCRMスキル行動指標を開発した。開発のために、日本の大手エアライン(日本航空株式会社(JAL)、全日本空輸株式会社(ANA)、株式会社日本エアシステム(JAS))のCRM訓練担当者や運航乗務員などの協力のもと、CRMスキル行動指標に関する検討会を実施した。開発の過程でCRMスキル全体の考え方、スキルの分類およびスキル要素の作成のための乗員の問題解決プロセスモデルおよびスキル要素の強調度を示すマトリックスを作成した。この問題解決プロセスモデルやマトリックスにおける分析を基に、航技研で行動指標案を提示し、検討会で行動指標案に対する討議および事例・行動例を収集した。本報告書はCRMスキル行動指標の作成方法およびその結果をまとめたものである。
著者
島田 真衣 松田 真季 藤江 亮太 野村 悟 粟飯島 辰樹 藤井 菜穂子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】厚生労働省よるとVDT(Visual Display Terminals)作業者の7割以上が首・肩のこりや痛みを感じていると報告し,それらの労働衛生管理上の問題点を指摘している。また昨今,携帯情報端末が急速に進歩・普及し,携帯やスマートフォンは日常生活に欠かせないものとなっている。携帯情報端末が身体・精神機能に及ぼす影響は少なくないと思われるが,それらについてほとんど報告されていない現状である。そこで今回我々は,姿勢への影響に着目し,携帯とスマートフォン利用時の写真撮影による画像および脊柱形状分析器を用いた姿勢評価を行い検討した。【方法】1.対象被験者は健常成人男性9名(平均19.9±0.78歳 平均身長170.7±7.38cm平均体重65.7±8.11kg平均座高92.5±3.86cm)で,携帯・スマートフォンともに使用歴のある者とした。2.方法1)計測環境と条件設定被験者は座位となり,膝関節90°屈曲位,体幹回旋0°で下腿後面を椅子の端と密着させた。足部は肩幅に開き足底全面接地とした。上半身裸で下半身はスパッツを着用し,骨指標にマーカー(耳垂,C7棘突起,肩峰,上前腸骨棘,上後腸骨棘,S3棘突起,大転子)を貼付した。デジタルカメラ(EX-Z800:CASIO)は被験者から115cm離れた場所に設置し,基準線をともに撮影した。上記姿勢を保持後,以下4条件を行った。・被験者は操作端末を持たず真っ直ぐだと思う任意の点を見つめる。(通常姿勢)・携帯を片手で操作し課題を行う。(携帯)・スマートフォンを片手で操作し課題を行う。(スマホ片手)・スマートフォンを両手で操作し課題を行う。(スマホ両手)課題は「自己紹介文を打つこと」とした。操作端末として,携帯(W51T/約103×51×21mm/142g),スマートフォン(iPhone4S/115.2×58.6×9.3mm/140g)を用いた。2)計測手順上記4条件を安定して遂行していることを確認後,矢状面から写真撮影し,その後,脊柱計測分析器(スパイナルマウス:Index社製)を用いてC7~S3棘突起側部の筋膨隆部をなぞることで,脊柱・骨盤のデータを採取した。撮影した写真よりソフト(計測シートforデジカメ写真)を用い以下の①~④,スパイナルマウスより以下の⑤~⑦のデータを得た。①<u>頭部屈曲角度</u>(耳垂-外眼角点を結ぶ線と水平線のなす角度)②<u>頸部屈曲角度</u>(水平線と肩峰点-耳垂を結んだ線のなす角度)③<u>画面角度</u>(携帯情報端末の画面と水平線のなす角度)④<u>画面と座面との距離</u>(携帯情報端末の上端と座面との距離)⑤<u>骨盤傾斜角度</u>⑥<u>胸椎後弯角度</u>⑦<u>腰椎後弯角度</u>【倫理的配慮,説明と同意】被験者には本研究の目的と方法を説明し研究協力の賛同を得た。本研究は国際医療福祉大学倫理委員会の承認を得て実施した。(承認番号13-Io-110)【結果】頭部屈曲角度(①)および頸部屈曲角度(②)は,片手操作である「携帯」および「スマホ片手」よりも両手操作である「スマホ両手」で有意に低値を示し,頭頸部をより屈曲していた。画面角度(③)は,「携帯」,「スマホ片手」,「スマホ両手」の順に有意に減少し(p<0.01),画面をより水平位に保持していた。画面と座面との距離(④)は,片手操作である「携帯」および「スマホ片手」よりも両手操作である「スマホ両手」で有意に低値を示し(p<0.05),操作端末が座面へ近づいていた。骨盤傾斜角度(⑤)は,「携帯」より「スマホ両手」で有意に減少し後傾していた(p<0.05)。胸椎後弯角度(⑥)は,「携帯」より「スマホ片手」で有意に増大し後弯していた(p<0.05)。【考察】携帯情報端末利用時の空間内における操作端末の位置は,「片手操作」よりも「両手操作」で,より座面に近く水平位に保持していたことがわかった。それに伴い「両手操作」では,頭・頸部をより屈曲しており,操作端末の位置が姿勢に影響を及ぼしていることが示唆された。骨盤と胸椎において,「携帯」よりも「スマートフォン」操作で骨盤をより後傾し,脊柱は円背する傾向を示すことがわかった。本研究から,携帯情報端末利用による姿勢への影響の全体像をとらえることができた。今回は,被験者への自由度が高い状態で評価を行ったため,姿勢変化の詳細な影響因子を特定するまでに至らなかった。今後は,条件設定を検討するとともに,どのような因子が姿勢へ影響するかさらに特定する必要がある。【理学療法学研究としての意義】本研究により,携帯情報端末利用時の姿勢変化が明らかとなった。現在,端末の小型化・軽量化が進み,タブレットや小型PCなどの普及とともに,いつでもどこでも長時間VDT作業を行える環境となっており,身体への影響は増大していると思われる。不良姿勢となる詳細な因子を特定し,そのリスクや疾患との関連性を検討することで,理学療法の立場から予防や治療につなげることができると考える。