著者
大野 直樹
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2010-03-23

新制・課程博士
著者
井上 果歩
出版者
日本音楽学会
雑誌
音楽学 (ISSN:00302597)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.35-50, 2020

&nbsp;&nbsp;アメルス『音楽技芸の実践』(1271年)は、ケルンのフランコ『計量音楽技法』(1280年頃)の影響を受ける以前の計量音楽論、すなわち前フランコ式理論(13世紀半ば〜1270年代頃)を伝えているが、同時代のほぼ全ての著作が言及するモドゥスやテンプスの概念には触れておらず、異色を帯びている。そのためかこの理論書の直後には3段落ほどから成る作者不詳の小論文(以下『補遺』)が付され、そこではモドゥスやテンプスが詳述される。<br>&nbsp;&nbsp;ただし『補遺』をアメルスと比較すると、音価の説明が重複し、またリガトゥラの解釈も異なるなどその内容面で不整合な点が見られる。従って本論文は『補遺』が何を意図して書かれたのか、アメルスと異なるのであればどのような他の13世紀の著作と関連しているのかを検討した。結果、『補遺』は6つのモドゥスに関しては『ディスカントゥスの通常の配置』(13世紀半ば)やヨハネス・デ・ガルランディア『計量音楽論』(1260年頃)などの前フランコ式理論を引用し、リガトゥラとそのプロプリエタス(以下Prop)に関してはフランコの理論とほぼ一致することが分かった。つまり、『補遺』のテクスト全体は1280年前後の種々の理論書の抜粋集になっている。<br>&nbsp;&nbsp;さらに譜例に注目すると、他の理論書には無い「縦線付き」のProp有りの上行3音リガトゥラが見られた。これはおそらくテクストで上行リガトゥラの説明が欠落していることに起因し、何者かが譜例を書く際に、テクスト中の「Prop有りの下行リガトゥラには縦線を伴う」という説明を上行形にそのまま応用したものと考えられる。一方で譜例は、Prop有りの上行2音リガトゥラには従来の縦線の無い記譜を適用しており、一貫性に欠く。このような譜例のリガトゥラを巡る混乱は、当時の計量音楽論の中でもリガトゥラの規則は特に難解で人々の間でその理解度にずれがあったことを暗示しているであろう。
著者
本吉谷 二郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.32-35, 2007-01-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
3

化学発光(ケミルミネッセンス)とは,化学反応によって高エネルギー状態(励起状態)の分子が生成し,これが光としてエネルギーを放出する現象である。これまで,ルミノールをはじめとする多様な有機化合物の化学発光が知られており,すでにケミカルライトや微量分析などにも応用されている。また,化学発光のしくみはホタルなどの生物発光と類似し,その研究の成果が生物発光のメカニズムの解明などに役立っている。本稿では生物発光との関連を意識しつつ有機化学発光のしくみについて解説する。
著者
高柳 茂
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.1959, no.9, pp.66-75, 1959
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1542, pp.24-29, 2010-05-24

釣り具で世界トップシェアを40年間続けるグローブライド。昨年、ダイワ精工から社名変更したばかりで馴染みが薄いかもしれないが、映画「釣りバカ日誌」でお馴染み「ダイワ」ブランドと言えば分かる方も多いだろう。2位のシマノと僅差ながらも、しぶとく世界首位をキープしてきた。 グローブライドの強さを支えてきたのが、釣り竿の材料であるカーボンの加工技術だ。
著者
竹内 真澄
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学社会学論集 = ST.ANDREW'S UNIVERSITY SOCIOLOGICAL REVIEW (ISSN:02876647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.23-64, 2021-09-28

Modern social theory, from Hobbes to Simith, is based on the concept of“private man. ”According to Hegel, private man appears after the decline ofcommunities. It refers to the atomistic type of human being in modernsociety.From the point of view of young Hegel, private man lost the totality, buthe also recognizes the value of private man in history in a definite sense.Then, he establishes the schema, that is to say, community-society-highlevel of community. Correspondingly, human beings move from Individuumvia Einzelne to a high level of Individuum.Hegel examines the experimental thoughts about dialectics in the Jenaerperiod (1801-1807). Through works preceding The Phenomenology of Spirit,including The Spirit of Christianity and its Fate, The Difference betweenFichte’s and Schelling’s Systems of Philosophy, The Critics of ModernNatural Law, and Jenaer Real Philosophy, he analyzes the self-formationfrom Einzelne to general Individuum, which is the main purpose ofphenomenology.I examine that Hegel adds the concept of private man to the context ofdialectics between Individuum and Einzelne. He establishes the base forthe dialectics Allgemeinheit-Besonderheit-Einzelheit.However, he identifies Einzelheit with Individualität at the end, on thesame condition of private property, regardless of categorical distinction ofthe two. This brings about the criticisms of Kierkegaad and Marx.
著者
大谷 典生 石松 伸一
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 = Journal of the Japanese Society of Intensive Care Medicine (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.171-176, 2007-04-01
参考文献数
6
被引用文献数
2 3

目的 : 当院救急部での末期医療の現状を明らかにし, その問題点を探る。方法 : 2004年4月~2005年3月の期間に当院救命救急センターで死亡転帰をとった患者の診療録よりデータ収集を行った。結果 : 対象は61例。発病前より自身の治療方針に関する意思表示があったのは5例。回復困難の説明時, 34例の家族は積極的治療の継続を希望していた。全例, 担当医と家族との話し合いで治療方針を決定していたが, 最終的に47例で &ldquo;do not attempt resuscitation (DNAR)&rdquo; の決定があった。倫理カンファレンスの介入はなかった。DNAR決定後, 一部治療で差し控えもしくは中断が行われていた。結論 : 末期医療は事例ごとに, あり方が異なるが, (1) 本人の意思確認が不能の際の治療方針決定方法, (2) 回復困難の判定方法, (3) DNAR決定後に許容される治療内容の変更範囲に関するガイドラインの作成が必要である。
著者
本間 英治
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.220-231, 2014-12-25 (Released:2017-08-04)

保育制度が変化し,保育ニーズが多様化する中,保育現場では,保育士と子どもとの関わりにどのような変化が生じているのだろうか。本研究では,ある自治体における保育士と子どもの関わりの実態や変化を明らかにする量的調査を行った。その結果,A市の保育士の多くが保育にゆとりがない,保育環境が悪化したと感じており,子どもの安全に不安を覚えていた。保育士と子どもの関わり方にはあまり変化はなく,日々の関わる時間(回数)も減少していなかったが,危険を回避するため,保育士が全体を見渡せる場所に立って保育をする状況が増えていた。本調査から,保育士が保育状況を評価する場合,「園児定員数」「主観的規模」「勤務形態」が大きく影響することが明らかになった。
著者
近藤 祉秋
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

近年、日本の各地でニホンジカ(<i>Cervus nippon</i>)による獣害が問題とされるようになってきたことを受けて、国や地方自治体はシカ個体数の調整を喫緊の課題と見なすようになってきた。その動きを受けて、シカ肉の商品化が各地で試みられている。本発表では、九州山地のある「ジビエ」事業を事例として、ヘザー・パクソンが提唱したmicrobiopolitics概念をたよりとして、マルチスピーシーズ民族誌の観点から分析する。
著者
Chie Watanabe Yoshifumi Kimizuka Yuji Fujikura Takaaki Hamamoto Akira Watanabe Takashi Yaguchi Tomoya Sano Ryohei Suematsu Yoshiki Kato Jun Miyata Susumu Matsukuma Akihiko Kawana
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.7639-21, (Released:2021-10-26)
参考文献数
29
被引用文献数
3

A 69-year-old woman who had undergone renal transplantation and was receiving sulfamethoxazole/trimethoprim (ST) developed pulmonary nocardiosis. To our knowledge, this is the first report of the identification of Nocardia elegans using nanopore sequencing, supported by 16S rDNA capillary sequencing findings. Chest computed tomography performed after ST initiation revealed significant improvement of the pulmonary shadows compared to previous findings. We herein report the value of nanopore sequencing for rapid identification of rare pathogens, such as Nocardia elegans. Furthermore, our findings suggest that Nocardia may infect even patients receiving ST, which is currently the most effective prophylactic drug.
著者
福田 節也 余田 翔平 茂木 良平
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
2021

<p>「『誰が誰と』結婚するのか」という問いは,結婚における重要な問題でありながら,日本の人口学における知見は限られている。また,この問題に中心的に取り組んできた階層研究者の間でも,日本における学歴同類婚の趨勢については必ずしも一致した見解が得られてこなかった。本稿においては,1980年から2010年までの国勢調査の個票データを用いることにより,日本における学歴同類婚の趨勢を描き出し,その趨勢の変化と社会的・人口学的な含意について解説を加えた。妻30–39歳の日本人夫婦を対象として,記述統計ならびにログリニア分析を行ったところ,われわれの分析結果は,1)学歴同類婚ならびに女性の学歴上方婚の連関が弱まっていること,そして2)女性の学歴下方婚の連関が強まっていることを示した。また,学歴同類婚の連関の強さを学歴別にも分析したところ,3)大学卒の女性において下方婚の連関が強くなっているという結果を得た。これらの結果は,日本や中・先進諸国における学歴同類婚の世界的な新潮流と一致するものであった。本分析で示された学歴同類婚における変化は,どのように説明することができるのであろうか。本稿では,女性の高学歴化と前後して生じた,①グローバル化による労働市場の二極化(雇用の非正規化)と②ジェンダー革命による女性の経済的役割の変化という2つの社会変動との関連を指摘した。加えて,日本で大卒女性の下方婚がより生じやすくなっていることについては,大卒男性において非正規就業の割合が増えたことに伴い,大卒男性の所得分布が下方に推移し,大卒とそれ以外の学歴の者との経済的な境界が一部曖昧となりつつあることも一因ではないか,との見方も示した。すなわち,これらの社会情勢の変化によって,高学歴女性をはじめとする稼得能力の高い女性の結婚市場における魅力が向上した。また,従来よりも男性の学歴と収入の関係が曖昧となった結果,高学歴の女性の一部においては,結婚相手の学歴にこだわらずに結婚する者が出てきた。そのため,最近の研究にみられるように大学卒女性の婚姻率が上昇し,女性の学歴下方婚,とりわけ大学卒女性の下方婚がより生じやすくなった(Fukuda et al. 2019)。現時点においては仮説にすぎないが,本稿における分析は,このようなシナリオと整合的であった。最後に,本稿における分析が示す社会的含意について述べる。今日,多くの中・高所得国においては,男性よりも女性の大学進学率が高い状況にある。先行研究によると,世界的な傾向として高等教育進学率における男女差が逆転することにより,かつて伝統的なパターンであった女性の学歴上方婚が減少し,学歴下方婚が増加している。日本においては,4年制大学への進学率で見る限り,その差は縮まりつつあるものの,これまでのところ従来の男女差は逆転していない。しかし,われわれの分析結果は,夫妻の学歴選好の面において,すでに日本においても同様の変化が生じつつあることを示した。欧米では高等教育への進学における男女差の逆転により,女性を主な稼ぎ手とする世帯の増加,平等主義的なジェンダー態度の拡散,妻学歴下方婚カップルにおける離婚率の減少といった社会規範の変化がみられるという(Esteve et al. 2016)。女性の高学歴化に加えて,わが国では人口減少局面への転換によって労働力人口が先細りつつあり,主に男性のみが就業して家族を養う性別役割分業モデルは日本のマクロ経済にとって望ましいものではなくなっている。長期的な人口減少のトレンドは,政策(例:女性の活躍推進,保育所定員の拡充等)や人々の経済合理性(例:共働き志向)に作用することによって,ジェンダー規範の変容を今後も不可逆的に推進していく一因となるものと思われる。女性の高学歴化のさらなる進展によって,日本においても欧米と同じような社会規範の変化がみられるのか注視していく必要があるだろう。</p>
著者
小尾 晴美
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.75-86, 2010-02-25 (Released:2018-02-01)

非正規形態の労働者が公務の担い手の中にも拡大しはじめている。本稿では,1993年度のA区の保育事業の事例を検討することによって,地方自治体の非正規職員の勤務実態および労働条件を明らかにし,その問題点を指摘することである。本稿で明らかになったのは以下の点である。第一に,A区区立保育園の非正規職員の中には,短時間で補助的な職務を担う勤務形態と,経験と高い専門性を必要とする職務を担い,比較的長時間勤務する勤務形態の二種類の労働者が存在したということである。第二に,非正規職員は,質的には常勤職員と同じ仕事をすることが必要であるにもかかわらず,賃金は,常勤職員と比較して低水準であるということである。第三に,非正規職員は,制度の不備から,非常に不安定な雇用の下におかれていることが明らかになった。