著者
大武 由之
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.37-42, 1983
被引用文献数
2

食肉工場で原料肉処理の際, 輸入めん羊枝肉から得られた3頭分の上腕骨, 大腿骨, 肩甲骨および肋骨から, それぞれ骨髄脂質を抽出し, それらの脂肪酸組成と, 骨髄脂質のトリアシルグリセロール (TG) 内の脂肪酸分布を調べた。ついで, めん羊骨髄脂質をアセトン分別結晶法によって分画し, 製取した画分についても脂肪酸組成と脂肪酸分布を調ベた。<BR>めん羊の骨髄脂質は, 融点が40℃近くで, 飽和脂肪酸に富み, C<SUB>18: 0</SUB>が比較的多かった。骨髄脂質はほとんど大部分が中性脂質から成っていたが, そのリン脂質画分は全脂質に比べてC<SUB>16: 0</SUB>やC<SUB>18: 1</SUB>が少なく, 多価不飽和脂肪酸に富んでいた。<BR>骨髄脂質のTG内の脂肪酸分布では, C<SUB>16: 0</SUB>は1-位置に多く, C<SUB>18: 0</SUB>は1-および3-位置に多く結合していて, これに反してC<SUB>18: 1</SUB>とC<SUB>18: 2</SUB>はTGの1-位置と3-位置よりも, 2-位置に多く結合していた。<BR>アセトン分別結晶法によって骨髄脂質から, 飽和脂肪酸含量が多くて融点の高い2画分と, 軟質な脂肪の画分と, 室温では淡黄色の液状油の画分とを分取した。画分の融点が低くなるにつれて飽和脂肪酸が減少し, 不飽和脂肪酸は増したが, Frac. 1はその90%近くが飽和酸から成り, 液状油ではその70%近くが不飽和酸から成っていた。<BR>分別した画分にあっても, C<SUB>18: 0</SUB>はTGの1-位置と3-位置に多く, C<SUB>18: 1</SUB>とC<SUB>18: 2</SUB>は2-位置に多く結合していて, 1-および3-位置は2-位置に比ベて飽和脂肪酸含量が多かった。
著者
金 池潤 金 栽滸 加藤 孝明
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.829-835, 2019

<p>本研究は,韓国史上最大の被害規模を記録した浦項地震における応急仮設住宅の供給について振り返り,日本と韓国での事例を比較して,今後の改善の方向性を模索することを目的としている.浦項地震における応急仮設住宅の特徴は,被災者の所有地で設置する自己敷地仮設住宅・仮設店舗併用住宅・一戸当たり屋外空間の一定規模が確保できる団地型仮設住宅・団地内管理事務所の設置などがある.日本と韓国における応急仮設住宅の事例を供給思想・供給類型・提供までの期間,建設コストなどの観点から比較分析を行った.</p>
著者
池上 真平 佐藤 典子 羽藤 律 生駒 忍 宮澤 史穂 小西 潤子 星野 悦子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20005, (Released:2021-09-30)
参考文献数
36
被引用文献数
2

Regardless of the time and location, people listen to music. One may ask why people listen to music and what function it serves. This study clarifies the psychological functions of listening to music and the attributes associated with the individual differences found in these functions. A total of 916 participants between the ages of 15 and 88 were asked to rate various psychological functions of music listening and Big Five traits. A factor analysis identified the seven factors of psychological functions of music listening: “self-awareness”, “emotion regulation”, “communication”, “tool”, “embodiment”, “social distance regulation”, and “solace”. The results revealed that the individual differences in the functions were the result of gender, age, and personality traits. The nature of these seven functions and future directions are discussed.
著者
石田 彩佳
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
巻号頁・発行日
pp.179, 2013 (Released:2014-02-14)

近年ヒトへの警戒心が薄れることによって,人為的環境に接近するキツネが増加しており,畜産や農業被害あるいはエキノコックス症の感染リスク拡大が問題となっている.そのため北海道帯広市においては,キツネは有害鳥獣駆除の対象として年間約 150頭が駆除されている.キツネにとって家禽や農作物などは容易に手に入る餌資源であるため,しばしば利用することが知られている.しかしながら,キツネがどの程度の割合で農作物・家禽等を利用しているのかについて詳細に調べた事例は少なく,農地に出現するものの農作物ではなく専らネズミ類等の餌資源を利用していた場合,キツネの駆除施策そのものを見直す必要があるかもしれない.またエキノコックス症に関しては,キツネの糞中に排出される虫卵を経口摂取することでヒトへの感染が成立するため,排糞頻度の高い場所の環境要因を明らかにし,ヒトへ積極的に注意を促すことで,キツネの駆除個体数を減らしてもエキノコックス症感染リスクの低減が可能であるかもしれない. 本研究では日本を代表する農畜産業地域である十勝地方において,キツネの糞を用いて,その食性を明らかにする.さらにエキノコックス症感染リスク低減を目指して,キツネの糞が頻繁に排泄される地点の周囲環境要因を特定する.これらを把握することで現在のキツネの個体数管理方法の妥当性を検討し,農地におけるヒトとキツネとの共存を目指すための基礎情報を呈示することを目的とした.2012年の 5月から 10月にかけて 20ヵ所の調査区について月ごとに踏査を行い,合計 247個の糞を収集した.そのうち DNA分析によりキツネのものと認められたのは 141個であった.本発表では,これらのキツネの糞を用いた食性分析の結果および位置データによる排糞頻度の高い環境要因の特徴について考察する.
著者
大谷 侑也
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100087, 2017 (Released:2017-05-03)

地球温暖化は近年の人類が直面している喫緊の問題である。そのような状況下、近年最も影響を受けているのが氷河である。アフリカにはキリマンジャロ、ケニア山、ルウェンゾリ山の3つの氷河があるが、いずれも10-20年後には消失するとの予測がなされている。中でも、世界遺産に指定されているケニア山の氷河は年約7~10mの非常に速いスピードで縮小している。このままのスピードで減少を続けると、十数年後には完全に消滅することが予想されている。もし山麓域の河川水、地下水がその消えゆく氷河を主な水源としているならば、将来的にその量は減少することが予想され、それが現実となった場合、地域住民生活および生態系に及ぼされる影響は大きいと考えられる。しかし本地域において、その氷河縮小がもたらす水環境の変化や地域住民への影響を調べた研究は未だ無い。当該地域の水資源を維持、保全する上でそのような情報を得ることは非常に重要である。 ケニア山の氷河縮小と山麓水環境の関係性を把握するため、2015年8月~10月、2016年7月~9月に現地調査を行った。ケニア山西麓および東麓の標高2000~5000mの間で河川水、湧水、氷河融解水、降水、湖水を採水し、現地観測を行った。その結果、ケニア山および山麓域で標高毎に採水された降水サンプルのδ18Oから、明瞭な高度効果(標高が高くなるにつれ酸素・水素同位体比の値が低くなる効果)が見られた。この高度効果直線の算出により、湧水および山麓域で利用される河川水の涵養標高を推定することができた。 西麓の標高1997m付近に流れ、住民に広く利用されるティゲディ川の酸素同位体比は−3.089‰であった。この値を今回得られた高度効果の直線(y = -469.35x + 3630.4)に代入すると5080.2(m)となる。その標高帯は氷河と積雪が多く存在することから、ケニア山西麓の河川水は氷河と降雪の影響を強く受けている可能性が高い。それを裏付けるように、今回の調査では山麓の河川水位が1985~2016年にかけて減少傾向にあることを示したデータが得られている。 一方で、標高1972mの山麓湧水の酸素同位体比(−3.32‰)から、その涵養標高を推定すると5191.8(m)と算出されることから、山麓湧水においても山頂部の氷河と降雪が大きく寄与していることが示唆される。今回の結果から、地域住民に広く利用される水の涵養源に対して、氷河と降雪が少なからず寄与していることが判明した。したがって将来的な氷河の消滅は山麓住民の水資源の減少をもたらすことが予想される。
出版者
日経BP
雑誌
日経ビジネス = Nikkei business (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.2016, pp.60-63, 2019-11-11

日本ではここ数年、「あおり運転」やそれを原因とする事故が社会問題となっている。ドラレコはもともとタクシーなど業務用から普及が進んだが、最近では自己防衛のためにドラレコを設置する自家用車が増加している。 GfKジャパンの調査によると、2018年の一…
著者
近藤 隼人
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.1129-1134, 2020-03-25 (Released:2020-09-10)
参考文献数
9

PātañjalayogaśāstraにはYogasūtra 4.10に対する注釈として,縮小拡大する心の輪廻を主張する「他の者たち」(apare)の異説と,遍在する心の機能(vr̥tti)が縮小拡大すると主張する「学匠」(ācārya)説との対立が伝えられている.本稿においては,ヴァーチャスパティ・ミシュラ(10世紀)による注釈Tattvavaiśāradīにもとづき,この異説がサーンキヤ説に相当し,さらに「学匠」説がそのサーンキヤ説と対置されるヴィンディヤヴァーシン説に相当することを解明する.この異説をサーンキヤ説に帰する論拠としては,(1)イーシュヴァラクリシュナ著Sāṃkhyakārikāに登場する喩例や用語法との対応,そして(2)細長いシャシュクリー(dīrghaśaṣkulī)に対する言及という二点が挙げられる.まず(1)に関して,「他の者たち」に論難を加える論敵は心が輪廻の際の基体となることを示すために杭や画布を喩例として挙げるが,これはSāṃkhyakārikā 41の喩例に対応するものであり,さらに微細身を「恒常的」(niyata)とする記述もSāṃkhyakārikā 39に対応する用語法である.次に,(2)細長いシャシュクリーは心と身体が同じ大きさであることを示すための実例として言及されるが,これは一度嚙めば五官が同時に働く例として度々言及される菓子を指す.NyāyamañjarīやVyomavatīはこれを五官の同時認識と関連付けつつ,いずれも同説をカピラに帰しており,サーンキヤとの関係性を窺わしめる.さらに,ヴァーチャスパティ自身がNyāyavārttikatāt­paryaṭīkāにおいて同説をサーンキヤ説とみなしている点も,本異説をサーンキヤに帰す根拠として十分である.そして,この異説に対して学匠説では「機能」(vr̥tti)の縮小拡大が説かれるが,“vr̥tti”という概念はサーンキヤ知覚論において感官の対象への到達を想定するために主張されたものである.とりわけ感官の遍在を主張し,対象への到達を想定しないヴィンディヤヴァーシンにとっては,対象において開顕する“vr̥tti”の想定によって学説の整合性が確保されるほど,この“vr̥tti”は枢要な概念であった.さらに,微細身の存在を否定し,“vr̥tti”の有無を生死と結びつけるTattva­vaiśāradīの記述がYuktidīpikāにみられるヴィンディヤヴァーシン説と符合している点も考慮すると,「学匠」はヴィンディヤヴァーシンを指すものと考えられる.以上の点は,通常のサーンキヤ説とヴィンディヤヴァーシン説との懸隔を示しているばかりか,夙に指摘されるPātañjalayogaśāstraと「学匠」ヴィンディヤヴァーシンとの親和性を確証させる一証左たりうる.
著者
佐々木 寛
出版者
社団法人 日本印刷学会
雑誌
日本印刷学会誌 (ISSN:09143319)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.244-251, 2012

The use of electronic money based on digital data is spreading in today's society thanks to recent advances in information technology. In Japan, electronic payment systems such as Edy, Suica, PASMO, nanaco, and WAON have become increasingly popular, and they are used widely for making small payments. This study aims to assess the influence of the proliferation of electronic money on present currency by investigating the status of electronic money usage, the amount of currency in circulation, and other factors. The results indicated that the proliferation of electronic money influences the circulation of notes only slightly, while its effect on coins with smaller denominations is non-trivial.
著者
堀籠 悠河 窪田 亜矢 益邑 明伸
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.189-200, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究は、特定の区域における最寄り品アクセス環境の把握において、特定の距離圏を徒歩圏として想定する従来の手法に不足する視点を考慮することで、より精緻な把握が可能となることを示している。本研究で提案する「包含率線」は、個々人の移動能力を考慮に入れた任意の距離圏とこれに含まれる区域内人口割合の関係を図示したもので、居住者ごとの移動可能距離の差異を考慮に入れた分析が可能となる。区域内の最寄り品アクセス環境は、「包含率線」全体のふるまいで把握できるが、市街化区域・ DID ・立地適正化計画の誘導区域の三区域の差異もそれぞれの「包含率線」を比較により明らかにできる。また、同一地区における高齢者・非高齢者の「包含率線」は一致し、高齢化率の高い地区は偏在する一方で、全体的には高齢・非高齢者は同程度に包含されていた。そして、既存手法の有効性も一定程度確認された。
著者
Sugawara Y. Wright O. B. Matsuda O. Takigahira M. Tanaka Y. Tamura S. Gusev2 V. E.
出版者
American Physical Society
雑誌
PHYSICAL REVIEW LETTERS (ISSN:00319007)
巻号頁・発行日
vol.88, no.18, pp.185504, 2002-04-18
被引用文献数
106

We present a new method for imaging surface phonon focusing and dispersion at frequencies up to 1 GHz that makes use of ultrafast optical excitation and detection. Animations of coherent surface phonon wave packets emanating from a point source on isotropic and anisotropic solids are obtained with micron lateral resolution. We resolve rounded-square shaped wave fronts on the (100) plane of LiF and discover isolated pockets of pseudosurface wave propagation with exceptionally high group velocity in the (001) plane of TeO2. Surface phonon refraction and concentration in a minute gold pyramid is also revealed.
著者
石井 重美
出版者
東京動物學會
雑誌
動物学雑誌
巻号頁・発行日
vol.27, no.317, pp.165-166, 1915
著者
Atsuhito Saiki Yasuhiro Watanabe Takashi Yamaguchi Masahiro Ohira Daiji Nagayama Naoko Sato Mizuho Kanayama Mao Takahashi Kazuhiro Shimizu Masao Moroi Yoh Miyashita Kohji Shirai Ichiro Tatsuno
出版者
Japan Atherosclerosis Society
雑誌
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis (ISSN:13403478)
巻号頁・発行日
vol.28, no.10, pp.1083-1094, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)
参考文献数
32
被引用文献数
8

Aim: In the TOHO Lipid Intervention Trial Using Pitavastatin (TOHO-LIP), a multicenter randomized controlled trial, pitavastatin significantly reduced cardiovascular (CV) events compared to atorvastatin in patients with hypercholesterolemia. To investigate the mechanism by which pitavastatin preferentially prevents CV events, we investigated the relationship between CV events and cardio-ankle vascular index (CAVI) using the TOHO-LIP database. Methods: For the subgroup analysis, we selected patients from a single center, Toho University Sakura Medical Center. After excluding those who had CV events at baseline or during the first year, 254 patients were enrolled. The primary end point was the same as that of TOHO-LIP, and three-point major cardiac adverse events (3P-MACE) was added as secondary end point. Results: The cumulative 5-year incidence of 3P-MACE (pitavastatin 1.6%, atorvastatin 6.1%, P=0.038) was significantly lower in pitavastatin group (2 mg/day) than in atorvastatin group (10 mg/day). CAVI significantly decreased only in pitavastatin group during the first year (9.50–9.34, P=0.042), while the change in low-density lipoprotein cholesterol (LDL-C) did not differ between the two groups. The change in CAVI during the first year positively correlated with 3P-MACE and tended to be an independent predictor of 3P-MACE in Cox proportional hazards model (hazard ratio, 1.736; P=0.079). The annual change in CAVI throughout the observation period was significantly higher in subjects with CV events compared to those without. Conclusions: In this subgroup analysis, the reduction in CV events tended to be associated with the CAVI-lowering effect of pitavastatin, which was independent of the LDL-C-lowering effect.
著者
久保寺 逸彦
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤大學文學部研究紀要 (ISSN:04523636)
巻号頁・発行日
no.28, pp.39-53, 1970-03
著者
藤本 健治 佐藤 彰記 福永 修一
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.102-108, 2012 (Released:2012-03-02)
参考文献数
9

This paper proposes a parameter estimation method for state-space models based on the variational Bayes method. The proposed algorithm employs the prior and posterior distributions in the same form. This allows us to use it iteratively to obtain accurate estimation whereas the existing algorithms cannot be used iteratively. Furthermore a numerical example demonstrates the effectiveness of the proposed method.