著者
中村 和彦 杉山 登志郎
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

虐待関連性発達障害(自閉症様症状およびADHD様症状)を呈する成人患者に対してPET研究を行った。脳内ドパミンD1受容体の増減で、虐待関連性発達障害の病態がわかり、鑑別ができる可能性がある。虐待関連性発達障害のトラウマ処理の技法として、短時間で行うチャンスEMDRを開発しトラウマ処理への効果を見出した。少量薬物療法について、神田橋條冶による漢方処方のトラウマへの効果、少量抗精神病薬の併存症への効果を見出した。
著者
富田 雄希 高島 健太郎 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
インタラクション2019論文集
巻号頁・発行日
vol.1B-37, pp.328-331, 2019-02-27

地域活性化の施策として,多くのご当地アイドルが各地で活動している.ご当地アイドルが円滑な活動を続けるためには,新規ファンの獲得が必要不可欠である.しかし,既存ファンコミュニティによる熱狂的応援や独特のルールなどが,潜在ファンの参入障壁を形成してしまう.本研究ではこの障壁を軽減するため,役割体験学習を活用した古参ファンの体験を追体験するノベルゲームを構築し,その効果を他者理解と愛着の増加の観点で検討する.モデルケースとして,石川県西金沢の商店街を拠点に活動する西金沢少女団の既存ファンコミュニティから実体験を収集し,その実体験を織り込んだノベルゲームBNO-Storyを潜在ファンに楽しんでもらう.このゲームにより,古参ファンがなぜ熱狂的応援をするのかを理解できるか,アイドルへの愛着が増加するかを評価する.

8 0 0 0 OA 原形質流動

著者
永井 玲子
出版者
一般社団法人 植物化学調節学会
雑誌
植物の化学調節 (ISSN:03889130)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.236-248, 1999-12-25 (Released:2018-03-15)
参考文献数
62
著者
朝野 維起
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.106-114, 2013-09-20 (Released:2013-10-24)
参考文献数
54
被引用文献数
2 2

黒〜茶系色素であるメラニンは,地球上の生物に極めてありふれた存在である。髪の毛や鱗・皮膚など,我々脊椎動物の体色形成に関わるほか,植物や原生動物でも黒色色素の合成が観察される。また,本総説で説明する昆虫について見てみると,アリやクロアゲハ・カブトムシなどの色からも明らかなように,メラニンの合成は特に珍しいものではない。しかし,種々の生物がつくるメラニンは,一見すると同じ物体であるかの様に見えつつも,個々の生物に特有の合成経路・合成酵素が存在する。つまり,進化の過程に於いてそれぞれの生き物が独自にメラニン合成能を発達・進化させてきたと考えられる。この総説では昆虫のメラニン合成系について論ずるが,特に我々が直接目にする「昆虫の体そのもの」である外骨格内の酵素群について説明する。ドーパやドーパミンなどのフェノール性基質の酸化反応を触媒する含銅酵素を中心に,それらの基質合成系などにも触れる。また,ヒトなどとの違いについて説明するとともに,その進化学的な意義について議論したい。
著者
揖斐 拓人 中川 匡弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.222, pp.119-124, 2013-09-24

咀嚼という行為には脳を活性化する働きがあるとされている.本研究では,ガムを咀嚼することがヒトの集中力にどのような効果があるのかについて実験,検討を行った.実験タスクとして,集中力が関係するであろう4つのタスクを行った.『集中』の評価には,脳波のフラクタル性を用いた感性解析を用い,また,独立成分分析によって測定した脳波に含まれる咀嚼による筋電の除去を試みた.結果として,咀嚼していない状態を基準とした場合,ガム咀嚼時には『集中』が約38%程度上昇することが示された.
著者
小山 拓志 青山 雅史
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

2016年4月14日に熊本県熊本地方において,M6.5の地震が発生し,熊本県益城町で最大震度7を観測した。そして,2日後の4月16日01時25分頃には,同地域を震央とするM 7.3の地震が発生し,熊本県上益城郡益城町と西原村において最大震度7を再度観測した。この一連の地震によって,熊本市内を西流する白川や緑川,加瀬川周辺を中心に液状化現象(以下,液状化)が発生した。本発表では,地理学の立場から,本地震における液状化被害の分布を示すと共に,液状化発生地点の土地条件について報告する。
著者
香川(田中) 聡子 大河原 晋 埴岡 伸光 神野 透人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.43, pp.P-207, 2016

【目的】近年、高残香性の衣料用柔軟仕上げ剤や香り付けを目的とする加香剤商品等の市場規模が拡大している。それに伴い、これら生活用品の使用に起因する危害情報も含めた相談件数が急増しており、呼吸器障害をはじめ、頭痛や吐き気等の体調不良が危害内容として報告されている。このような室内環境中の化学物質はシックハウス症候群や喘息等の主要な原因、あるいは増悪因子となることが指摘されているが、そのメカニズムについては不明な点が多く残されている。本研究では、欧州連合の化粧品指令でアレルギー物質としてラベル表示を義務付けられた香料成分を対象として、FormaldehydeやAcroleinなどのアルデヒド類や防腐剤パラベン、抗菌剤など多様な室内環境化学物質の生体内標的分子であり、これらの化学物質による気道刺激などに関与するTRP (Transient Receptor Potential Channel)イオンチャネル活性化について検討を行った。<br>【方法】ヒトTRPV1及びTRPA1の安定発現細胞株を用いて、細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度の増加を指標として対象化合物のイオンチャネルの活性化能を評価した。Ca<sup>2+</sup>濃度の測定にはFLIPR Calcium 6 Assay Kitを用い、蛍光強度の時間的な変化をFlexStation 3で記録した。<br>【結果および考察】香料アレルゲンとして表示義務のある香料リストのうち植物エキス等を除いて今回評価可能であった18物質中9物質が濃度依存的にTRPA1の活性化を引き起こすことが判明した。なかでも、2-(4-tert-Butylbenzyl) propionaldehydeによるTRPA1の活性化の程度は陽性対象物質であるCinnamaldehydeに匹敵することが明らかとなった。以上の結果は、これら香料アレルゲンがTRPA1の活性化を介して気道過敏の亢進を引き起こす可能性を示唆しており、シックハウス症候群の発症メカニズムを明らかにする上でも極めて重要な情報であると考えられる。
著者
柳 有紀子 石川 幸伸 中村 一博 駒澤 大吾 渡邊 雄介
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.250-256, 2015 (Released:2015-08-31)
参考文献数
13
被引用文献数
4 7

女性から男性型の性同一性障害症例における,男性ホルモン投与前後の音声の経時的変化を追跡した.追跡は話声位,声域,声の使用感の聴取およびVHIにて投与前から143日間行った.投与前の話声位は187 Hzで,投与143日後に108 Hzとなった.声域は,投与48日後に一時的に拡大し,その後縮小した. 声の使用感の聴取では,投与48日後に会話時の翻転の訴えがあり,投与143日後に歌唱時の裏声の発声困難と会話時の緊張感も聞かれた.VHIは感情的側面で改善し,身体的側面で悪化した.本症例のホルモン療法の効果は話声位の低下であり,一時的に声域も拡大した.一方で翻転や裏声の発声困難,会話時の緊張感の訴えが聞かれ,声域も最終的に縮小した.本症例の各症状は,甲状披裂筋筋線維の肥大化による話声位の低下と,喉頭の器質的変化による喉頭筋群の調節障害であると推測された.これらの症状を予防するために,ホルモン投与の際には音声の変化を観察しながら投与量や投与期間の再考が必要である可能性が考えられた.
著者
青江 誠一郎 小前 幸三 井上 裕 村田 勇 峰岸 悠生 金本 郁男 神山 紀子 一ノ瀬 靖則 吉岡 藤治 柳沢 貴司
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.283-288, 2018 (Released:2018-12-17)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

本研究は, 異なる配合率のモチ性の大麦品種「キラリモチ」混合米飯の摂取が米飯と比較して食後血糖値の上昇を配合率依存的に抑制するかとGlycemic Index (GI) が配合率依存的に低下するか検証するため実施した。対象は健常な成人10名 (男性6名, 女性4名) とした。糖質50 g分の米飯 (基準食) とモチ性大麦の配合率が30, 50, 100%の大麦混合米飯 (試験食) のそれぞれを摂取し, 摂取前および摂取開始から15, 30, 45, 60, 90, 120分後の血糖値を測定した。血糖値, 血糖値上昇曲線下面積 (IAUC) , Glycemic Index (GI) について解析した。大麦の配合率が増加するほど血糖値とIAUC0-120が低下した。GIは, 基準食を100とした場合, 大麦配合率30, 50, 100%でそれぞれ, 79.7, 67.5, 48.3であった。モチ性大麦混合米飯には, β-グルカン量に依存して米飯と比較して血糖値の上昇を抑制する効果が示唆された。
著者
小森 規代 藤田 郁代 橋本 律夫
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.356-363, 2013-09-30 (Released:2014-10-02)
参考文献数
21
被引用文献数
6 2

左中前頭回脚部の限局病変により純粋仮名失書を呈した症例について,単語の音節数とモーラ数,仮名数の対応関係から症状を分析し,同部位の機能について検討した。症例は71 歳の右利き男性で,脳梗塞発症後5 年を経てなお仮名失書を呈した。本症例に仮名表記親密度を統制した仮名単語書取テストと音節数・モーラ数・仮名数の対応を統制した仮名単語書取テスト,モーラ分解テストを実施したところ,仮名表記親密度が低い語の書取が困難で,特に音節数とモーラ数,仮名数が一致しない特殊音節を含む語で誤りが顕著であった。誤りは長音,促音に相当する仮名の脱落と拗音に相当する仮名の置換であり,長音,捉音を含む語ではモーラ分解も困難であった。以上から,本症例の仮名失書は音節のモーラ分解障害および複雑な音韻-仮名変換の障害を特徴とし,左中前頭回脚部は仮名書字過程におけるモーラ分解および音韻を仮名に変換する機能に関係すると考えられた。

8 0 0 0 OA カオスの意義

著者
富田 和久
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.99-118, 1985-02-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
32

分子カオスを背景に熱力学が形成されたように, 巨視的カオスに基づいて柔かい現象論 (情報力学) が期待されることから出発する. 次に, 巨視的カオスと分子力オスの間に存在する, 力学的な類似性, また本質的差異をやや詳しく辿った後, カオスは例外的特殊現象ではなく, むしろ一般的・基本的な現象であることに注意する. 最後に, 生物のような柔かい系を扱う新たな視点が求められている現時点において, 巨視的カオス の概念こそ, 物理学を広くする鍵であることを指摘し, 関連する事項にふれる.