著者
Nobuhiro Murata Yasuo Okumura Katsuaki Yokoyama Naoya Matsumoto Eizo Tachibana Keiichiro Kuronuma Koji Oiwa Michiaki Matsumoto Toshiaki Kojima Shoji Hanada Kazumiki Nomoto Ken Arima Fumiyuki Takahashi Tomobumi Kotani Yukitoshi Ikeya Seiji Fukushima Satoru Itoh Kunio Kondo Masaaki Chiku Yasumi Ohno Motoyuki Onikura Atsushi Hirayama for the SAKURA AF Registry Investigators
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.727-735, 2019-03-25 (Released:2019-03-25)
参考文献数
27
被引用文献数
61

Background: Off-label dosing of direct oral anticoagulants (DOACs) is encountered clinically among patients with atrial fibrillation (AF), although data on the clinical outcomes of over- and under-dosing are lacking in Japan. Methods and Results: We examined the clinical outcomes of off-label DOAC dosing using the SAKURA AF Registry, a prospective multicenter registry in Japan. Among 3,237 enrollees, 1,676 under any of the 4 DOAC regimens were followed up for a median of 39.3 months: 746 (45.0%), appropriate standard-dose; 477 (28.7%), appropriate low-dose; 66 (4.0%), over-dose; and 369 (22.2%) under-dose. Compared with the standard-dose group, patients in the under- and over-dose groups were significantly older and had a higher stroke risk. After multivariate adjustment, stroke/systemic embolism (SE) and death events were equivalent between the standard- and under-dose groups, but major bleeding events tended to be lower in the under-dose group (hazard ratio [HR] 0.474, P=0.0739). Composite events (stroke/SE, major bleeding, or death) were higher in the over-dose than in the standard-dose group (HR 2.714, P=0.0081). Conclusions: Clinical outcomes were not worse for under-dose than for standard-dose users among patients with different backgrounds. Over-dose users, however, were at higher risk for all clinical events and required careful follow-up. Further studies are needed to clarify the safety and effectiveness of off-label DOAC dosing in Japan.
著者
松田 法子
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

講演者は都市史・建築史を専門とする。まちの成り立ちやその展開の歴史を、地理的、建築的、社会的、文化的に検討し、わたしたちの居住地や、他の様々な土地が、いったいどのような背景や経緯によって現在に至っているのかを探っている。またそこから、土地と人とが取り結んできた本質的な関係とその意義を考えようとしている。さて、「ブラタモリ」では、番組の冒頭近くで、その土地に対するある「お題」(設問)が示される。それは一見平易な内容で、出演者や視聴者は、その設問に納得したり、そんなことはもうわかっているよ、と思ったり、あるいはまた少々戸惑ったりしながら、番組の道のりを楽しく想像する。しかし問いに的確に答えていくことは、専門家をもってしても実はかなり難しい。それは既に、多岐にわたる学術分野の知見を制作チームが吸収したうえで、かつ誰もがその土地のイメージとして理解できるようなフレーズとする、という絶妙なバランスによって練られたテーマだからだ。その後に続くまち(土地)歩きは、そのお題を軸に組み立てられていく。複数分野の専門家がリレー式にバトンをつなぎながら土地の解読に付き添うスタイルは、土地を見る視点の複数性と幅広さを担保する。そして、歩きながら答えを見つけていくこのやり方は、都市や山岳、巨大土木構築物などスケールの大きな対象や長い時間の流れを、手元や足元といった身体的で小さなスケールから体感的に理解していくという、フィールドサーヴェイの醍醐味も具現化している。そうした一方で、TVプログラムであるという媒体の特性上、問いの答え探しの道のりやそのストーリー立ては、視覚的に認識しやすい資史料や場所がつながれやすいという側面ももっている。歴史分野で言えば、絵図や古文書、古写真、現場の遺構などは大いに力を発揮するが、目で見てわかりにくい事物や、土地の歴史を語る上では重要であるものの、前提として込み入った解説が必要な事項は通過されがちになるだろう。以上について、講演者の知る範囲に限り若干の話題提供を行う予定である。
著者
井部 奈生子 肥後 温子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.189-196, 2012-06-05

市販ぬれせんべい17種類の水分量は9.8〜28.7 g/100 g,水分活性は0.38〜0.81であり,製法,水分含量,テクスチャーを異にする各種の製品があった。そこで,調湿が水分およびテクスチャーに及ぼす影響を含めて製品を分類したところ,揚げせんべいタイプ,半乾きせんべいタイプ,湿せんべいタイプ,湿おかきタイプの4つのタイプに分類できた。なお,3タイプの代表的な製品について官能評価を行ったところ,破断しやすい製品が好まれる傾向がみられ,半乾きせんべいタイプの硬い食感,濃く味付けされたおかきの味が嫌われた。
著者
大道 博文 林 柚季 目良 和也 黒澤 義明 竹澤 寿幸
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

近年,インターネット上でCGアバターを介した他者とのコミュニケーションが普及しつつある.しかしアバターの表情・動作パターンを生成する際,複数の感情が混在する表情やある感情を抑圧しているような表情を表現するための典型的な特徴や統一された指標は無く,モデル作成者の経験や感覚に依るところが大きい.そのため,非熟練者や表情自動合成手法による表情モデルの作成は現状困難である.そこで本研究では,感情の部分的表出(Action Unit(AU))の組み合わせに基づいて複数の表情アニメーション動画を作成し,Shefféの一対比較法を用いて表出したい表情に対する各AUの効果について分析を行う.本研究では“ツンデレ”と呼ばれる「快感情の抑圧表情」を対象として,Ekmanの知見に基づき“中立化”と“隠蔽”の二種類の抑圧表現を用いる.実験の結果,中立化によるツンデレ表現に最も適しているAUの組み合わせは,AU6+12(幸福の目,頬,口の動作)が弱いか無い,かつ赤面が起こっている表情であった.また隠蔽によるツンデレ表現に最も適しているAUの組み合わせは,AU4(怒りの眉)かつ赤面が表出している表情であった.
著者
佐倉 統 福住 伸一 中川 裕志
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

この論文の目的は,人とAIが一緒に写っている写真を対象にしてそれらの構図を分析すること(図像分析)が,人−AI関係の文化的相違の解明に資すると示すことである.試行的に得られたインターネット上の画像から,日本由来の写真では人とAI/ロボットは横並びに位置してこちらを見ていることが多く,欧米由来の写真では人とロボットがお互いに向き合っている構図が多いことがわかった.共視論研究(北山,2005)によれば,日本の浮世絵の母子像は何か別の物(第三項)を一緒に注視していることが多く,西洋の絵画ではこのような共視は少ないという.このような“共視”は人では生後9か月から見られるようになる.浮世絵の母子関係と同じパターンが人−AI関係にも見られるのだとすると,それはAIやロボットが人間の子供と同じく何物か(第三項)を共同注視することのできる存在,それだけの認知能力をもった存在として日本では無意識に認知していることを示唆する.欧米ではAI/ロボットはもっと人に従属する存在として位置づけられているのではないか.今後より体系的な図像分析をおこない,東アジア内での国際比較(日韓台)をおこなう必要がある.
著者
津山 尚宏
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.445-453, 2014-06-05 (Released:2014-07-04)
参考文献数
28
被引用文献数
2

目に見えない放射線による被ばくを定量的に評価することは,被ばく者への健康影響を予測し医療措置を正確にすすめ予後を評価する上で必須である.事故・災害による被ばくでは線量計などによる物理的線量計測を施行できないことも多く,事後に被ばく者の生体試料を用いて線量評価を行う「生物学的線量評価,biological dosimetry」が不可欠である.現在までに様々な線量評価法が開発されてきたが,正確性の観点からリンパ球の染色体異常頻度を測定する方法がgold standardとして頻用されている.本稿では,これに加え赤血球や歯,核酸,低分子代謝物などの様々な生体試料を用いた線量評価の試みを紹介し,有用性を議論する.
著者
東 佳澄 西村 愛美 木我 敬太 中川 隆生 永井 匡 岸 昌生 細井 美彦 安齋 政幸
出版者
近畿大学先端技術総合研究所
雑誌
Memoirs of Institute of Advanced Technology, Kinki University = 近畿大学先端技術総合研究所紀要 (ISSN:13468693)
巻号頁・発行日
no.16, pp.43-50, 2011-03-01

[要約] 本研究では、ICR系統マウスを用いた体外受精ならびに、初期胚の体外培養について検討した。体外受精では、常法により過剰排卵処置を施した成熟雌マウスより卵を回収し、前培養を行うことにより、受精能を獲得させた精子と共に培養し、受精させた。精子前培養培地および受精培地からウシ血清アルブミンを除き、L-カルニチンを添加した修正HTF培地を用いた。その結果、L-カルニチン添加濃度0mMでは48%(162/337)、1mM では12%(35/294)、2mM では0%(0/311)、5mM では0%(0/292)、10mM では0%(0/270)の受精率が得られた。続いて胚培養を行った結果、L-カルニチン添加濃度0mM では78%(127/162)、1mM では57%(20/35)であり、2mM、5mM、10mM では胚の発生には至らなかった。次に、高分子物質のPVA を0.1%添加した培地でも同様の実験を行い、L-カルニチン添加濃度0mM では25%(96/390)、0.1mM では25%(91/362)、0.5mM では30%(77/256)、1mMでは34%(117/347)の受精率が得られた。続いて胚培養を行った結果、L- カルニチン添加濃度0mMでは80%(76/95)、0.1mM では81%(74/91)、0.5mM では95%(70/74)、1mM では73%(85/117)が胚盤胞期胚へ発生した。これらの結果から、L- カルニチン高濃度における受精阻害を呈することが明らかとなった。また、L-カルニチンに高分子物質であるPVA を添加することで、ウシ血清アルブミンの代替物質になる可能性が示唆された。 [Abstract] The present study examined in vitro fertilization that used the ICR mouse and the in vitro culture of the early embryo. Newly ovulated eggs from mature mouse injected PMSG and hCG were inseminated in vitro with spermatozoa recovered from the cauda epididymidis of mature males. Preculture medium of sperm and fertilization medium added the L-carnitine without bovine serum albmin. Percentage of fertilization were 48%(162/337)at L-carnitine 0mM and 12%(35/294) at L-carnitine 1mM. Following the percentage of blastocyst were 78%(127/162) and 57%(20/35). Next, the same experiment was performed using the medium that added 0. 1% PVA of polymeric mass. Results of the fertilization rate were 24%(95/390) at L-carnitine 0mM and 25%(91/362) at L-carnitine 0.1mM and 30%(77/256)at L-carnitine 0.5mM and 34%(117/347) at L-carnitine 1mM. Following the rate of developed to blastocysts stage were 73-95%. When the high density L-carnitine from these results, it was shown not to retard of fertilization. Moreover, L-carnitine was indicated the possibility for a substitute of bovine serum albumin by adding PVA.
著者
宮下 由香里 吾妻 崇 小峰 佑介 亀高 正男 岸山 碧
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

日奈久断層帯は,2016年熊本地震の発生を受け,地震活動が活発化するエリアに属することが指摘されている.しかし,日奈久断層帯の古地震履歴は不明な点が多い.産総研は,熊本地震以降,3年間にわたって日奈久断層帯の陸域及び海域において古地震調査を実施してきた.その結果,日奈久断層帯はこれまでに考えられてきたよりも,高頻度で地震を起こしてきたことが明らかとなりつつある.プロジェクト最終年度にあたる今年度は,八代市でトレンチ調査を行った.速報的な結果と過去2年間の調査結果,今後の課題を紹介する.トレンチ調査は,八代市川田町西地点で行った.トレンチは昨年度同地点で掘削したトレンチ南側に隣接する場所で掘削した.トレンチ掘削に先立ち,7孔のボーリングを掘削して,堆積物の層相と分布を把握し,断層通過位置を推定した.トレンチは2段階に分けて掘削した.1個目のトレンチでは,西側導入路部分に断層が露出したため,断層がトレンチ壁面の中央にくるように2個目のトレンチを掘削した.2個目のトレンチは,長さ17m,幅10m,深さ6m程度で,2段堀とした.トレンチ壁面の地層は,南北両壁面において,上位より,A:人工改変土,B:河川成のシルト,砂,C:チャネルを充填するシルト,砂,砂礫,D:河川成のシルト,砂,砂礫の各層に大別される.B層は古代の土師器を含む.D層は上部の縄文後期の土器を含むシルト・砂,中部の腐植質シルト,下部のK-Ah火山灰層を含むシルト/砂互層,最下部の砂礫層から構成される.断層は,南北両壁面で観察され,北東—南西走向,高角西傾斜の見かけ正断層である.D層以下を変位・変形させる.北壁面では,断層はD層中で上方に向かって分岐する.C層に削り込まれるが,C層最下底は変形に伴う開口亀裂を充填しているようにも見える.以上より,D層/C層境界付近にイベント層準を認定した.D層を構成する地層中では,断層両側での変位量の差違,引きずり変形の程度の違い,断層低下側での層厚の変化などが認められ,D層中に1回の古地震イベントがある可能性がある.南壁面では,平行な2条の断層面が認められる.いずれもD層上部で不明瞭となるが,B層には確実に覆われる.予察的な年代測定の結果,C層から1130±30 yBP,D層から6240±30 yBPが得られている.以上より,1130±30 yBPと6240±30 yBP間に,2回以上の古地震イベントが推定される.
著者
藤後 悦子 三好 真人 井梅 由美子 大橋 恵 川田 裕次郎
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.309-315, 2018 (Released:2018-08-28)
参考文献数
23
被引用文献数
2

Children’s community sports require assistance of parents, such as in overseeing practices and in transportation to and from game venues; this means that parents are deeply involved with the teams. Parents have both positive and negative experiences with respect to their children’s sports activities. As a qualitative survey, this study aimed to clarify the kind of negative experiences that mothers have regarding their children’s community sports activities and to explore the conditions necessary for building a better team environment. Eight mothers with children who belonged to the community sports team until “retirement” were interviewed. Through analysis using M-GTA, the six categories were extracted: Problems concerning children’s competitive activities, problems with coaches, difficulties in balancing their own lives and the children’s activities, problems concerning the interference from and expectations of fathers, problems related to roles and duties, and relationship problems between mothers. Based on these results, educational intervention for parents was shown to be necessary, and recommendations for the future sports environment are presented.
著者
原田 明彦 間杉 奈々子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.716-724, 2015-01-01 (Released:2015-01-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

特許係争に対して高い証拠能力をもつ実験ノートを作成することは,先発医薬品メーカーにとって重要な課題である。実験ノートが証拠として認められるためには,網羅性,検索性,保全性,実証性を満たしている必要がある。実験ノートを完全電子化し,書式のテンプレート化,検索機能,データバックアップおよび監査証跡ならびに長期署名サービスを活用することで,これらの要件を実現した。Computerized System Validationを適用することによって,電子実験ノートがFDA 21 CFR Part11に定める要件を満たすこと,および電子実験ノートが前述の要件を満たすシステムであることを担保し,電子実験ノートの知的財産保護への活用を果たしている。

8 0 0 0 OA 贋貨つかい

著者
坪内逍遥 著
出版者
駸々堂
巻号頁・発行日
1888
著者
今津 勝紀 中塚 武
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

年輪酸素同位体比の解析により、年単位の高解像度の気候復原が実現し、過去数千年にわたる気候変動が明らかになった。年輪を構成するセルロースの酸素同位体比はその年の夏期の乾燥と湿潤を反映する。文字資料のない先史時代などの分析では、気候の数十年から数百年の中期的・長期的変動が有効であるが、文字を本格的に利用する国家成立以降の段階では、年単位のイベントと気象のあり方を照合することが可能となったのである。人間の生活が、自然との応答の中にあることは間違いないが、これまでの歴史学においては、過去の人間の生活と自然との応答を客観的に把握する方法が十分ではなかった。高解像度の古気候復原は、歴史学に新たな「ものさし」をもたらしたのである。本研究では、日本の古代、とりわけ8世紀と9世紀を取りあげ、当該期の気候と社会との応答関係を明らかにする。中塚武による当該期の年単位気候復原により、8世紀は総体として乾燥気味ではあったが安定的であり、9世紀後半に不安定化して湿潤化し、10世紀に一転して乾燥が進行することが明らかとなった。当該期の歴史を記した文献資料『続日本紀』・『日本後紀』・『続日本後紀』・『日本文徳天皇実録』・『日本三代実録』にも気象に関する記事が含まれるが、それは簡略なものであり、実際にどれだけの旱や旱魃、霖雨や大雨であったのかはわからなかった。ようやく、高解像度の気候復原により、夏期の極端な乾燥や湿潤がどのような規模で、どのような被害をもたらしたのかを史料に即して理解することができるようになった。また、中長期的な気候の変動が把握できるようになることで、気候変動と国家や社会の変容との関連について見通しをえることも可能になった。とりわけ、本研究で注目したいのは、古代の人口変動と社会システムの変容についてである。8世紀初頭の大宝律令の施行により、中国に範を求めた律令国家が完成するが、律令国家の諸制度は、日本という枠組みの起源となり、その後の日本の歴史を根底において規定する重要な意味をもった。律令国家の支配人口は、8世紀初頭で450万人程度、9世紀初頭で550万人程度と見込まれており、8世紀から9世紀の年平均人口増加率は0.2%となる。江戸時代の初頭、17世紀の人口は1200万人~1800万人と推定されており、古代から近世にかけて人口は微増するのだが、中世から近世に至る800年間の年平均人口増加率はせいぜい0.1%から0.15%である。日本古代は飢饉や疫病が頻発し脆弱で流動性の高い社会であったが、中世に比して高率の人口増加が実現した。その背景には、人と田を中央集権的に管理する律令制による再生産システムが機能していたことが想定できるとともに、8世紀の比較的安定的な気候が作用していたことが考えられる。また、唐や新羅といった日本の周辺諸国の変動にともない、日本の律令制もなし崩し的に崩壊する。律令国家は、9世紀の後半から10世紀後半にかけて大きく変容するのだが、こうした社会システムの変容には、当時の世界情勢の変化とともに気候の変動が作用した。9世紀の後半には、耕作できない土地の増加や水損被害の田が問題化するが、その現実的な背景として、湿潤化という気候の変動があったことは間違いない。律令国家は、人と田を把握し管理することを放棄するようになるのであり、律令制再生産システムは崩壊していった。この時期は日本列島で地震が頻発し、火山の噴火もみられ、飢饉に疫病が集中する時期でもある。いわば、9世紀後半は日本古代社会の全般的危機の時代であった。8世紀の初頭に完成した律令国家の中央集権的構造は、9世紀の後半以降、崩壊しはじめ、中央政府は都市平安京の王朝政府へと縮小するのであった。
著者
村井 源 松本 斉子 佐藤 知恵 徃住 彰文
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.6-17, 2011-02-23 (Released:2011-04-13)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

本論文では,計量的な物語構造の分析を実現するために,人文的な物語分析の古典的手法であるプロット分析を援用し,分析結果に対する計量的解析を行った.プロット分析は人文学的手法であるが,一致度の計算を実施することでプロット分割と分類の正当性の数値的評価を行った.プロット分類の結果に対してn-gram分析を行うことで物語構造の連続的パターンを抽出した.また同様にχ二乗検定を用いて頻出プロットの時代的変化を抽出した.さらに,テーマとプロットの関係を分析するために計量的手法で物語のテーマ語を抽出し,作品をテーマごとに分類した.このテーマの分類結果を用いて,各テーマのプロット的な特徴を抽出した.本論文での分析はプロットへの分割と分類を計量的指標を用いつつも人手で行うという点で,完全な自動化の実現ではないが,本論文の成果は将来的な物語分析の完全な自動化の基礎になると期待される.
著者
木目沢 司
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.35-40, 2017 (Released:2018-03-02)
参考文献数
10

国立国会図書館(以下,NDL)は,所蔵資料のデジタル化により作成したデジタル画像(デジタル化資料)やインターネッ トから収集したPDF,EPUB形式等の電子書籍・電子雑誌(オンライン資料)等,大量のデジタルファイル形式の資料(デジタル資料)を保存・提供している.本稿では,デジタル資料を収集・保存・提供するシステムである国立国会図書館デジタルコレクション1)について,長期保存システムの国際標準Open Archival Information System(OAIS)参照モデル(ISO 14721:2012)2)の機能要件の観点から考察し,デジタル情報の長期保存の課題について述べる.
著者
杉谷 昭
出版者
法制史研究
雑誌
法制史研究 (ISSN:04412508)
巻号頁・発行日
vol.1966, no.16, pp.127-143,v, 1966

In this paper, I have made an inquiry into the San-chi-sei of<I> fu </I>(_??_), <I>ken </I>(_??_), and <I>han</I> (_??_) in the Early Meiji Era, especially into the part played by fu during the period just before the abolition of <I>han</I> (clans) and into the establishment of<I> ken</I> (prefecture) from the historical point of view of the word<I> fu</I>. Thus, I have partly made clear the process of the establishment of the centralized national government from the viewpoint of the constitutional history.