著者
小倉 加奈代 田中 唯太 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告 ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.20, pp.1-8, 2012-05-25
被引用文献数
2

本稿では,大皿料理のように,共食者が料理を共有する共食場面において,しばしば見られる「遠慮のかたまり」という状況がどのような状況かを明らかにすべく,大皿上の料理の残量が最後の一個,最後の一口に近づくにつれ,食事をしている人々の取り分け行動にどのような特徴,変化がみられるのかに着目した分析,考察を行った.その結果,食事開始中盤から終了前にかけて,取り分け行動の停滞,停止が起こり,その停滞,停止直後に起こった取り分け行動が短い間隔で 2,3 度連続して起こることがわかった.この,停滞→取り分け行動の活発化という流れが「遠慮のかたまり」につながる最後の一個に向けての準備行動である可能性があることがわかった.In this paper, we try to analyze serving food to reveal a situation of "the last on piece of food". When we analyzed video data of table talks with some platters, we focused on serving food for each platter and for dining table. As a result, we confirmed situations of suspending serving foods from middle stage to end often occurred. In addition, we found after suspending serving food, serving food occurred continuously for short time span. A series of suspending and activating serving food is important for us to handle a situation of "the last one piece of food".
著者
坂井 伸子 深見 聡
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, 2020-10-30

本研究の目的は、『十六夜日記』の和歌表現に関して、歌枕を一つの指標として分析し、その特質を明らかにすることである。特に歌枕が頻出している「路次の記」を考察の対象とする。歌論書・同時代の紀行文等12の文献との比較や和歌表現の分析を行うことにより、伝統的な名所歌枕の価値を認め詠歌しつつも、時代の変化に合わせ新奇な地名において、自身の感懐を表現する和歌がみられることがわかった。そこには、伝統的かつ古典主義的な知識を踏まえながらも、新しい視点で東海道の景観や風物を活写し、自身の感懐を読み手に伝えようとする阿仏尼の姿勢が看取される。『十六夜日記』「路次の記」の和歌には、題詠の時代から一歩踏み出し、新しい地名に一つの評価を与える阿仏尼の新見性がみられることが明らかになった。
著者
Yoshitaka HARADA Yuki OHMURO-MATSUYAMA Mika TSUNA Hiroshi UEDA
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
Analytical Sciences (ISSN:09106340)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.455-459, 2021-03-10 (Released:2021-03-10)
参考文献数
13
被引用文献数
4

Immunochromatography assay is an easy and rapid on-site detection method. However, conventional sandwich immunochromatographies using two antibodies can only detect target molecules above a threshold size. Small molecules below 1000 in molecular weight are usually detected using competitive immunoassay. However, competitive immunoassay is not suitable for visual detection of low concentration samples. Based on the principles of open sandwich immunoassay, which detects small molecules via interchain interaction of separated variable region fragments (VH and VL) from a single antibody, we developed non-competitive open sandwich immunochromatography. Bone Gla protein (BGP)-C7, a peptide containing the seven C-terminal amino acids of human osteocalcin, was selected as the target. By using VL fragments fixed on a nitrocellulose membrane, and colored cellulose bead-labeled VH fragments, we specifically detected 10 ng/mL of BGP-C7. This is the first report of open sandwich immunochromatography, which is an easy and rapid method for on-site, signal-on detection of small molecules.
著者
Kazuo HOSOKAWA
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
Analytical Sciences (ISSN:09106340)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.399-406, 2021-03-10 (Released:2021-03-10)
参考文献数
35
被引用文献数
9

Point-of-care testing (POCT) of biomarkers, such as proteins and nucleic acids, is a hot topic in modern medical engineering toward the early diagnosis of various diseases including cancer. Although microfluidic chips show great promise as a new platform for POCT, external pumps and valves for driving those chips have hindered the realization of POCT on the chips. To eliminate the need for pumps and valves, a power-free microfluidic pumping method utilizing degassed poly(dimethylsiloxane) (PDMS) was invented in 2004. In this article, the working principle of the degas-driven power-free microfluidic chip is first described, and then applications of those chips to biomarker analysis are reviewed. The biomarker analysis on the chip was typically achieved with a small sample volume of ∼1 μL and a short analysis time of ∼20 min. For protein analysis, the sandwich immunoassay format was adopted. The limit of detection (LOD) was improved by three orders of magnitude by using laminar flow-assisted dendritic amplification (LFDA), which was a newly devised amplification method specialized for microfluidic chips. For analysis of nucleic acids such as DNA and microRNA, the sandwich hybridization format was adopted, and the LFDA was also effective to reduce the LOD. With the LFDA, typical LOD values for proteins and nucleic acids were both around 1 pM.
著者
衣川 賢次
出版者
禅文化研究所
雑誌
禅文化 (ISSN:05143012)
巻号頁・発行日
no.259, pp.119-129, 2021
著者
黄木 千尋 赤間 由美 森鍵 祐子 小林 淳子
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 医学 : 山形医学 = Bulletin of the Yamagata University. Medical science : Yamagata medical journal (ISSN:0288030X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.25-35, 2021-02-15

背景】日本人の2人に1人ががんに罹患するといわれている。喫煙は、がんに最も大きく寄与する因子であり、がん患者のたばこ対策は大変重要であるが、がん患者の喫煙の実態や関連要因・社会的ニコチン依存度に関する報告は少ないのが現状である。外来化学療法を受けている患者の喫煙の実態と認識を明らかにすることを目的として、がん患者に対する効果的な禁煙指導、喫煙防止対策を検討した。【方法】対象はA病院において外来化学療法を行う患者のうち認知症や質問紙調査票への記入が困難な患者を除外した257名。調査内容は、基本属性、対象者と家族の喫煙状況(「非喫煙」「過去喫煙」「現在喫煙」とブリンクマン指数(一日喫煙本数×喫煙年数))、喫煙に対する認識(加濃式社会的ニコチン依存度(KTSND)と加熱式タバコに対する認識)、禁煙理由である。本研究は山形大学医学部倫理審査委員会の承認(2019-22)を得て行った。【結果】分析対象は257名、有効回答率100%であった。対象者の喫煙状況は、「非喫煙」106名(41.2%)、「過去喫煙」144名(56.0%)、「現在喫煙」7名(2.7%)であった。同居家族に喫煙者がいる割合は、「非喫煙」19.8%、「過去喫煙」25.0%、「現在喫煙」57.1%であった。「現在喫煙」のブリンクマン指数は「過去喫煙」よりも高く、喫煙による健康への影響を強く受けていることが推察された。KTSND得点は、「非喫煙」よりも「現在喫煙」「過去喫煙」が有意に高く、喫煙経験者は非喫煙経験者よりも社会的ニコチン依存度が高く喫煙を容認していた。「加熱式タバコは禁煙の場で使用してもよいと思う」割合は「現在喫煙」が「非喫煙」「過去喫煙」よりも有意に高い結果であった。また、「加熱式タバコを使う事は健康に対し害が少ないと思う」「加熱式タバコを使うことは禁煙に役立つと思う」者がそれぞれ約30%となり、加熱式タバコに関する正しい知識の普及啓発の必要性が示唆された。【結論】外来化学療法を受けているがん患者について、現在喫煙している患者への禁煙支援は重要な課題であり、家族を含め、過去喫煙者・非喫煙者に対しても喫煙による健康被害の知識の普及・啓発と継続した喫煙状況の把握に基づく禁煙支援の必要性がある。
著者
田島 貴男
出版者
日経BP社 ; 1985-
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.416, pp.96-99, 2017-02

──『ポップスの作り方』(リットーミュージック)という本を出版されましたね。第一線のミュージシャンが曲作りのノウハウを語るという、これまであまり見たことがない本で、とても興味をひかれました。田島さんの考える、いいポップスとはどういうものです…
著者
鎰谷 賢治 菊地 太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_30-I_39, 2021 (Released:2021-03-15)
参考文献数
7

トンネル点検業務の効率化や省力化を目的とした写真画像による点検支援技術が注目されている.この技術で変状の検出や測定などを高精度に行うためには,その撮影画像は変状の検出や測定などの後工程が要求する画像品質を満たす必要がある.この画像品質は,撮影条件や撮影システムの工学的性能だけでなく,撮影対象であるトンネル壁面や変状の状態からも大きな影響を受けるが,撮影されたトンネル壁面や変状の状態を定量的に取り扱うことはこれまで困難であった.本研究では,トンネル壁面や変状の状態を3種類のパラメータのみで定量的に取り扱う方法と,この方法を用いてシステムの性能を低コスト,短時間で合目的的かつ定量的にベンチマークすることができるトンネル点検用撮影画像のシミュレーション方法を開発し,その実用性について検討を行った.
著者
吉田 泰幸
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.13, no.22, pp.109-126, 2006

中国古代の玉器であるけつに似ていることからけつ状耳飾と呼ばれている装身具の主な装着方法には,異なる二説が存在する。ひとつは,従来どおりの,形態と民族誌を根拠にした,耳朶に穿孔した孔にはめ込み,切れ目を下にして垂下させる装着方法である。もうひとつは,切れ目の部分で耳朶を挟み込む方法である。後者に関しては,土肥孝氏が説く,縄文時代の装身は「死者の装身」から「生者の装身」へ移り変わるという体系的理解においても重要な役割を果たしている。<BR>本稿はこの二説のうち,どちらをとるべきか,という問題を検討した。その際の検討方法は,けつ状耳飾の土壙出土状態の検討と形態学的検討である。土壙出土状態の検討においては,人骨頭部,または想定される頭部に対する切れ目の方向に着目した。形態学的検討においては,土製けつ状耳飾を重要視した。その結果,従来想定されていたとおり,切れ目を下にして垂下させる装着方法が妥当であるとの結論に達した。<BR>その結果,土肥氏のモデルに替わる,装身の性格の変化についての考察が求められることとなった。石製けつ状耳飾の地理的分布は東アジア全般におよび,装着者の性別は男女ともみられることが一般的なようである。後続する土製けつ状耳飾は,東日本領域に地理的分布が狭まる。土製けつ状耳飾を媒介して,石製けつ状耳飾から変化したと考えられる土製栓状耳飾は,引き続き東日本領域に地理的分布が制約され,装着者の性別は,共伴人骨および人面装飾付深鉢形土器にみられる耳飾表現との一致から,女性と考えられる。これらのことから,けつ状耳飾は一貫して「生者の装身」具であり,その性格は男女とも用いるものから,人面装飾付深鉢形土器が顕著に示す,シャーマン的存在である女性の装身具として,土製けつ状耳飾を介して変化していくと想定した。
著者
竹本 住太夫 安原 ゆかり
出版者
日経BP社
雑誌
日経マネー (ISSN:09119361)
巻号頁・発行日
no.354, pp.116-118, 2012-05

大阪生まれの大阪育ちの伝統芸能で、世界文化遺産にも認定された文楽が今、経済的に大きな危機に立たされている。橋下徹大阪市長が平成24年度予算案で財団法人文楽協会への補助金年5200万円を「凍結」したからだ。今後、補助金がゼロになる可能性もある。 「文楽300年の火を消さないで」と先頭に立って訴えるのが人間国宝の竹本住大夫師匠。
著者
森田 亜紀 早川 文代 香西 みどり
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.13-23, 2020-01-15 (Released:2020-01-27)
参考文献数
27
被引用文献数
1

パルミジャーノ・レッジャーノを添加したチーズブレッドの風味に寄与する成分について,アミノ酸,脂肪酸,有機酸からなる32成分モデルチーズを用いた評価を実施した.チーズブレッドの風味に対して,オミッションテストにより,アミノ酸,脂肪酸の寄与が大きいこと,さらに,アディッションテストにより,グルタミン酸ナトリウム,バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,フェニルアラニン,プロリン,酪酸が風味に影響していることが確認できた.これら8成分を添加することによりパルミジャーノ・レッジャーノを添加したパンの風味に関する官能特性を再現できた.アディッションテストの結果を主成分分析で解析したところ,第1主成分は「チーズの濃厚感」,第2主成分は「パンらしい香ばしさ」,第3主成分は「発酵香」と解釈でき,これらの風味特性のバランスでチーズブレッドの風味が形成されていることが確認できた.グルタミン酸ナトリウムはうま味だけでなく,チーズブレッドの風味形成に大きな役割を果たしていた.揮発性成分の分析結果より,バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,フェニルアラニンを添加することにより,イーストの発酵により生成するアルデヒド類やアルコール類,メイラード反応で生成するアルデヒド類が増加しており,これら成分がチーズブレッドの風味を形成していると考えられた.本研究により,チーズブレッドの風味に寄与する8成分をパン生地に添加することで,チーズブレッドの風味を再現でき,その製パン性はチーズブレッドよりも良好であったことから,良好な品質のチーズ風味ブレッドを作成する手段を提案できた.