著者
坂本 雄司 白井 良成 高田 敏弘 片桐 滋 大崎 美穂
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.1-4, 2012
参考文献数
3

探索目標に関する映像中の位置情報を用いて録画データからインタラクティブに目標を探索する手法を提案する.手法の考え方は発掘作業になぞらえることができる.地層を掘り下げるように,利用者はスコップのような道具と目標位置に関する補助情報を用いて過去映像を掘り下げ,目標映像を探す.手法を実装したシステムの詳細とその評価実験の結果を紹介する.
著者
笠田 和宏 鳴海 拓志 谷川 智洋 廣瀬 通孝
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.117-122, 2010
参考文献数
10
被引用文献数
2

本研究では,過去の痕跡の残る場所において,過去の様子を体験することを目的としたシステムの構築を行う.このシステムでは,過去の映像の撮影位置推定を行い,その撮影位置において現在の風景と過去の映像を自然に接続することで,過去の体験を可能にする.撮影位置推定手法として現地での推定を可能とするために,3点の特徴点対応から撮影位置を推定する方法を提案した.シミュレーションと実験を通じて提案した手法で精度よく撮影位置推定を行えることを示した.また,撮影位置推定された場所においてウェブカメラで取り込んだ映像と過去の映像とを自然に接続できることを確認した.さらに,被験者を対象とした評価実験により,本システムが過去の状況を知るために有効であることが示された.
著者
海軍々令部 編
出版者
海軍々令部
巻号頁・発行日
vol.昭和2年, 1928
著者
海軍軍令部 [編]
出版者
特別大演習統監部
巻号頁・発行日
vol.大正8年, 1920
著者
上松陽介 疋田輝雄
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.585-586, 2013-03-06

近年,Linked Dataのデータ量が増加し,そのデータの利用法が注目を集めている.Linked Dataには,BBC放送の番組情報ページの作成やDBpedia Mobileでの地図へのアノテーションに代表される様々な利用法があるが,我々は,Linked Dataにユーザから取得した興味に関する値と提案する計算手法を用いることで,従来の推薦手法よりもユーザの興味に即した情報の推薦が可能になると考える.本論文では,我々の提案手法と,評価のために作成したプロトタイプの映画推薦システムについて報告する.
著者
布施 陽子 江川 千秋 杉本 由美子 大和田 沙和 矢﨑 高明 大野 智子 福井 勉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1795, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】我々は妊婦を対象とした理学療法を検討し,幾つかの研究を行ってきた。女性は妊娠によって様々な身体的変化を生じ,身体的愁訴として腰痛,尿失禁などのマイナートラブルが問題視されている。妊婦は腹部が前方へ突出するに従いsway-back姿勢となり易く,それに伴い,骨盤帯における運動機能が破綻し腰痛を生じてしまう可能性がある。骨盤帯における運動機能を再構築するための方法の中に腹横筋エクササイズ(以下,EX)があり,従来検討を繰り返してきた(2008~2014布施)。今回,腰痛を呈する妊婦に対し,腹横筋EXを実施し,疼痛,筋機能,頸管長にどのような影響を与えるかについて検討したので報告する。【方法】対象は腰痛を呈した妊婦50名(妊娠周期28.1±5.5週,平均年齢33.3±4.4歳,身長1.6±0.1m,体重57.7±8.2kg,BMI22.5±2.4 kg/m2)とし,事前に医師による診察を実施し早産の危険性がないと判断された妊婦とした。対象者に対し,1.超音波診断装置による視覚的フィードバックを用いた腹横筋収縮学習(第49回日本理学療法学術大会により腰痛を呈する妊婦への腹横筋EXとして有効性を研究),2.ストレッチポール上背臥位(第44回日本理学療法学術大会により腹横筋EXとして有効であるとしたものであり,ストレッチポールの種類については個々に評価した上で実施),3.ストレッチポール上背臥位でのu・oの発声(第46回日本理学療法学術大会により腹横筋EXとして有効であると立証),4.ストレッチポール上背臥位での上肢課題運動(第45回日本理学療法学術大会により上肢外転側と反対側の腹横筋EXとして有効であるとしたものであり,左右の回数については個々に評価した上で比率を検討し実施),5.立位での上肢課題運動(第47回日本理学療法学術大会により上肢外転側と反対側の腹横筋EXとして有効性を検討したものであり,左右の回数については個々に評価した上で比率を検討し実施),6.呼吸指導(第47回日本理学療法学術大会により腹横筋EXとして有効であると立証)の6種類の腹横筋EXの中から個別性を検討・評価した上で1つ以上の腹横筋EXを選択し,各対象者において約30分個別に実施した。計測項目は,1)疼痛スケール(VAS),2)脂肪および側腹筋群(外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋)の筋厚,3)頚管長の3項目とし,それぞれ目盛りのない10cm線,超音波診断装置(HITACHI Mylab Five),経膣超音波を用いて計測した。1)は対象者による自己評価,2)は理学療法士による計測,そして3)は医師により実施された。頚管長測定は,介入による切迫早産の兆候を確認するテストバッテリーとして実施した。また,計測肢位は2)ベッド上安静背臥位,3)産婦人科内診台上安静座位とした。2)はわれわれの先行研究で高い信頼性が得られた位置である,上前腸骨棘と上後腸骨棘間の上前腸骨棘側1/3点を通る床と垂直な直線上で,肋骨下縁と腸骨稜間の中点にプローブを当てて,腹筋層筋膜が最も明瞭で平行線となるまで押した際の画像を静止画として記録した(第43回日本理学療法学術大会により計測方法の信頼性を研究)。以上3項目を,介入前後に計測した。統計的解析は,対応のあるt検定を実施し有意水準1%未満で検討した(SPSSver18)。【結果】1.1)疼痛スケール,2)腹横筋厚に差を認め,1)は有意に減少し,2)は有意に増加した(p<0.01)。2.3)頸管長については差を認めなかった(p=0.89)。3.2)脂肪厚,外腹斜筋厚,内腹斜筋厚については差を認めなかった。【考察】本研究では,腰痛を呈する妊婦に対し,我々が先行研究にて立証してきた腹横筋EXを実施した結果,腰痛の緩和,腹横筋厚の増加を認めた。腹横筋は体幹深層筋群の1つであり,姿勢保持作用・腹腔内圧調整作用を持つと言われている。腹横筋EXを実施した事で妊娠により増大した腹部を効率的に支えられるようになり疼痛の緩和に繋がったと考えられる。妊娠24週未満で頚管長が25mm以下では標準的な頚管長に比べ6倍以上早産になりやすいとされているが,介入前後で頸管長差がなかったことから,本研究での実施内容は早産リスクを高めるほど過度な腹圧をかけたEXではないと考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究結果から骨盤帯における運動機能を再構築する方法として本研究での腹横筋EXが腰痛を呈した妊婦に対して安全かつ有効であることが示された。今後,妊娠経過に伴う姿勢制御機能破綻から引き起こされる疼痛に対する予防的位置付けとして本研究での腹横筋EXが貢献できると考えられる。
著者
清水 竜瑩
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.p135-185, 1993-06

バブル崩壊後,新聞,その他のジャーナリズムは,この金融自由化による複合不況はかつてないものであり,いままでの大量生産,大量販売の製造方式や,地に足のつかない高級品消費は全面的に変わるだろう,さらにこの不況は世界の不況と連動しているため,その回復は容易ではないだろう,と喧伝している。しかしこの鍋底のような先のみえない複合不況の下でも,日本・台湾の経営者は守りばかりでなく,次の飛躍の手がかりに確実に着手し,実行しはじめている。巷間問題となっているような,中間管理者の退職勧奨などという企業は,今回のインタビューに関する限り1社もなく,本社ビルの一部を売却してもその雇用を守りつづけようとしている。全体的にみて日本の経営者は,財務的,物的資源を縮小させても,人的資源は減少させることなく,その能力開発・意識改革によってこの未曽有の不況に対応しようとしている。製造業は本業重視,組織改革,コスト削減にまず力を入れている。事業領域を産業構造の変化に合わせてPA→FA→LA→HAと変えていく場合,人々の意識を変えるため新しい組織を導入してショック療法を行う(横河電機)。新しい技術情報・市場情報を積極的に利用すれば,売上が伸びなくても利益は無限に出しつづける(カヤバ工業)。電炉メーカーの参入や不況の長期化に対して本業重視の戦略をたて,高級品シームレスパイプのための900億の新設備投資をする(住友金属)。不況は波だから底が長くても必ず上がってくる。好況のとき忙しくてできなかった管理者の意識改革を不況のときじっくりやる(マブチモーター)。同じように不況下にある不動産業でも,その不況度によって対処策は異なる。不動産不況撃破推進本部をつくって,損を覚悟の見切り販売や,コスト削減のためのNAシステムを開発した。そして思い切ったぜい肉落しをした(日榮不動産)。マンションの含み損を早く表に出したほうがすっきりする。年俸制と組合わせた独得のリーズナブルな人事評価システムをつくった(長谷工コーポレーション)。バブル崩壊後も膨大な含み資産があり,従業員数も少なく,20数億という高純益をあげている(平和不動産)。一方サービス業のうちでも比較的楽なところと苦しいところがある。事業部別のホテルの個性化,QCサークルの積極的活用,人事評価制度の改善によって人々に一層の創造性の発揮を求める(藤田観光)。売上至上主義から利益重視への転換をするためには年功序列主義の廃止,人事評価制度の抜本改革による意識革令が必要である(東武百貨店)。野球では,悪いときは必ずよくなるから大丈夫だという自信を監督自身が持ちつづける必要がある。わがままな現代の若者については70点平均をとる人間より,120点と0点をとる人間がいい。120点をのばして技術が向上すると人格も向上する(読売巨人軍)。台湾のマクロ的な問題点としては,日台の人事交流の稀薄化,貿易の赤字化があり,その対処策としては台湾における日本語教育の充実,学生同士の交流の促進が考えられる(駐日代表)。経済の問題点として,空洞化,ハングリー精神の喪失,賃金・土地価格の上昇があり,現在その対処策として,外国人労働者の導入,工業団地の建設,ハイテク産業の誘致を考える(経済部部長)。大学問題としては,助教,専任講師は必ず外へ出す。副教授から教授への昇進は3段階の教授会で審査する。教授は副教授を審査する以上,副教授よりいい論文を書かなければ恥ずかしい。また全教員の毎年の研究業績をオープンにして教員全員にくばるから研究不足は恥ずかしい思いをする(國立中山大學)。台湾の金融界もバブル崩壊後の不況に悩んでいる。金融の自由化で一挙に15行の民営銀行ができ競争が激しくなった。またLC,先物取引などの自由化がはじまりその波及効果がわからない。その勉強のためにできるだけ多くの社員を海外研修に出している(中國信託銀行)。大資本の民営銀行が一挙に15行でき,しかも給料が公営銀行より高いので,こちらのエリートが引きぬかれる。しかも公営銀行は関係官庁のがんじがらめの規制で動けない。しかし国際化のための能力開発には力を入れている(臺灣銀行)。
著者
山田 恭正 大見 のり子 山根 美保 中谷 延二
出版者
Japanese Society of Food Chemistry
雑誌
日本食品化学学会誌 (ISSN:13412094)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.59-63, 2012-04-23 (Released:2017-01-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1

沖縄県で栽培されている主な有色甘藷は「備瀬」(ビセ)であるが、育種により「沖夢紫」(オキユメムラサキ)が作出され2007年に品種登録された。備瀬と沖夢紫に含まれるアントシアニンをHPLCで比較し、沖夢紫に特徴的な2種のアントシアニンを単離精製した。LCMS、NMR等で化学構造を解析した結果、非アシル化アントシアニンのcyanidin 3-sophoroside-5-glucoside、モノアシル化アントシアニンのpeonidin 3-(6-caffeoyl-sophoroside)-5-glucosideを同定した。非アシル化、モノアシル化アントシアニンは有色甘藷を摂取後、小腸で直接吸収されるので、これらのアントシアニンが沖夢紫から単離、同定されたことは生理学的な活性を評価する上で興味深い。
著者
山下 研介
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.268-272, 1987 (Released:2007-07-05)
参考文献数
13
被引用文献数
3 3

ハッサクの自家不和合性について二, 三の基礎的実験を行い, 次のような知見を得た.1. 自家ならびに他家受粉を行って15分後の成蕾雌ずい中に含まれる糖タンパクを等電点電気泳動で分析したところ, 枯頭, 花柱, 子房のいずれの部位についても, 両受粉区間に差が認められた. しかしながら, その差は受粉後30分におけるほど顕著ではなかった.2. 花柱や子房を切り落した成蕾雌ずいに自家受粉を行っても, 自家花粉管の伸長は促進されず, ほとんどすべての花粉管は柱頭内で伸長を停止した.3. 幼蕾柱頭に, 晩白柚成蕾の柱頭粘液を塗布した後自家受粉を行ったところ, 多数の自殖種子が得られた.以上の結果, ハッサクの不和合反応において柱頭の果す役割が, きわめて重要であることが示唆された.
著者
鈴木 高二朗 永井 紀彦 柳嶋 慎一 久高 将信 小川 路加
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.129-133, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
8

Ocean wind is larger and more suitable for wind farm than inland wind. Recently, ocean wind farm has been constructed in Europe using 5MW wind power facility. Japan is surrounded by ocean and seems to be suitable for construction of ocean wind farm. However, the amount of the shallow and low wave energy area for ocean wind farm is limited except semi-enclosed bay like Tokyo bay.When we see Tokyo bay, shallow area (shallow more than 15m) is located north of Futtsu Point in Chiba prefecture. Such a shallow area is near to urban area, so the construction cost seems to be lower. In this paper, feasibility study on the ocean wind farm north of futtsu point in Tokyo bay is done compared with the other coasts of Japan.
著者
華 雪梅
出版者
神奈川大学日本常民文化研究所非文字資料研究センター
雑誌
非文字資料研究 = The study of nonwritten cultural materials (ISSN:24325481)
巻号頁・発行日
no.18, pp.149-175, 2019-09

秦の始皇帝の命を受け、不老不死の仙薬を探すために、徐福(ジョフク)が日本に渡来したという伝説は、日本最北の地 北海道から最南端の鹿児島県に至るまで、全国に伝承されている。本論文では、筆者がさまざまなロマンにあふれる佐賀県佐賀市の徐福ゆかりの地を訪れ、人々に語り継がれてきた徐福伝説の歴史と現状を考察する。地元に語り継がれている口碑と文字記録として残された史料などを併せて分析すると、徐福伝説が地元で盛んに流布されていた時代は、江戸時代であろうと推測される。 佐賀市には徐福に関わるさまざまな地名や事物、伝説がある。浮盃(ブバイ)・寺井・千布(チフ)という地名は、徐福伝説に由来するといわれ、古くから地元の人々に語り継がれてきた。事物としては、「徐福が持ってきた」といわれている樹齢2200 年のビャクシンの古木がある。また、筑後川に生息する「エツ」という川魚は、葦の片葉が川面に落ちて生まれたという伝承や、徐福が見出した「フロフキ」という仙薬もある。伝説としては、徐福と地元の娘のお辰との悲恋伝説がある。地元の住民たちは、この伝説を熟知し、情熱を傾けて語り継いでいる。さらに、佐賀市に伝わる口碑によると、徐福は不老不死の仙薬を探すため、金立山に登り、地元の金立神社の祭神となったといわれる。往古から住民たちの信仰を集め、「金立大権現」と呼ばれて祭られている。このように徐福伝説は、佐賀市でさまざまな形で伝えられ、地元に融合し、生き生きと伝承されている。 民間伝承として伝わる徐福伝説は、関連する事物によって、地元の人々に記憶として刻み付けられている。特に、雨乞い行事と金立神社例大祭が行われる時期になると、徐福伝説にちなんだ事物は、その伝説に対する記憶を思い出す糸口となり、古くからの徐福信仰の記憶を呼び戻しながら、また新たな信仰の記憶を構築する。本論文は佐賀県佐賀市の徐福伝説にまつわる事物の調査や、地元の人々に対する聞き取り調査を基に、徐福伝説が佐賀市で定着し、語り継がれている背景や要因と、その伝承形式を明らかにするものである。論文
著者
吉本 道雅
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.531-559, 2000-07

個人情報保護のため削除部分あり商君変法には膨大な研究の蓄積があるが、その史実性の問題は等閑視されてきた。本稿は、『史記』の商君関係の記述の包括的分析に基づき、この問題を検討する。第一章では、秦本紀・商君列伝・六国年表を比較検討して、これらの商君関係の記述の先後、『史記』が利用した商君関係資料の概要、『史記』の創作のありかたを確認する。第二章では、秦本紀・商君列伝の矛盾を手掛かりに、通説と異なり、『史記』が変法開始を孝公元年に置くことを確認する。『史記』以前の商君説話は、変法期間を十年程度とするが、年代記的資料の実在の商君は孝公二十四年のほぼ全期間にわたって活動する。『史記』がこの矛盾を解消するため、一つの説話の起点を孝公元年に、今一つの説話の終点を二十四年に置くことを確認する。第三章では、変法関係の記述を分析し、年代記的資料との矛盾を内包する第一次変法の記述は、法家が商君を理想の変法者として記号化したのちに創作されたものであること、第二次変法の記述は、年代記的部分をも含むが、阡陌制は、漢代以降、商君に附会されたものであることを論ずる。『史記』の商君関係の記事には、年代記的記述、法家すなわち昭襄王朝以降に成立した秦の商君学派の説話、秦・商君が否定的に記号化された漢代以降の儒家の説話が混在する。年代記などの確実な資料による限り、商君変法の史実性は認めがたい。近年増加しつつある戦国秦漢出土文字資料を扱うに際して、商君変法なる「史実」を自明の前提とするのではなく、一個の「歴史認識」として相国化することが要請されよう。Many scholars have studied Shangjun 商君 (Lord Shang)'s Reforms, but the historical reality of the Reforms has never been examined. In this article, the author attempts to examine this problem on the basis of a comprehensive analysis of Shiji 史記's description of Lord Shang. In the first part, he comparatively examines Qinbenji 秦本紀, Liuguonianbiao 六国年表 and Shangjunliezhuang 商君列伝, and confirms the order of these descriptions of Lord Shang, the general condition of materials concerning Lord Shang quoted by Shiji, and the characteristics of Shiji's creation. In the second part, on the basis of analysis of the contradiction between Qinbenji and Shangjunliezhuang, he confirms that Shiji, opposed to the popular theory, dated the start of the Reforms to the 1st year of the reign of Xiaogong 孝公 of the Qin State. Legends about Lord Shang before Shiji told that the Reforms continued for ten years or so, but the real Lord Shang recorded in the chronicle materials acted during almost the whole of Xiaogong's 24 year reign. The author argues that to solve this contradiction, Shiji dated the start of one legend to the 1st year, and the end of another to the 24th year of Xiaogong's reign. In the third part, he analyzes descriptions about the Reforms and concludes that descriptions about the first Reforms contradictory to chronicle materials were created after symbolization of Lord Shang as an ideal reformer by legalists, and some of the descriptions about the second Reforms certainly contained chronicle materials, but the Qianbo 阡陌 system was secondarily added to Lord Shang after the Former Han period. Shiji's descriptions about Lord Shang are a mixture of chronicle materials, legends created by legalists of Lord Shang's school established in the Qin state after Zhaoxiangwang 昭嚢王's reign, and legends created by Confucians of the Former Han period after negative symbolization of the Qin state or Lord Shang. As far as reliable materials such as chronicles are concerned, the historical reality of the Reforms can not be confirmed. While analysis excavated literary materials of the Warring States, Qin and the Former Han periods have recently increased, the Reforms must not be premised as an absolute historical reality, but be regarded as merely part of historical tradition.