著者
伊藤 友貴
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

今年度は前年度に引き続き、文書のポジネガ分類予測のタスクにおいて予測までの過程を単語センチメント・その極性反転・文書全体のうちどこが重要かをそれぞれ出力することで説明可能な、解釈可能なニューラルネットワークモデルの構築について取り組んだ。今年度は前年度に比べ、より理論的・そして俯瞰的な側面から本理論について解析し、上記を満たすためには「何が必要十分なのか」を理論的に解析することに成功した。その結果、求められる説明のシチュエーションに応じて柔軟に形式を変えて解釈可能なニューラルネットワークモデルを構築できるような汎用的な枠組みを構築することに成功した。金融業界に限らず、実ビジネスにおいては状況によって求められる説明の仕方が変わりうることを考えると、この「柔軟性」への対応は学術的な側面のみならず産業的な側面からも大きな前進であると言える。また、本プロジェクトの研究成果について、今年度は 査読あり国際会議 6本に採択させることに成功した。特に、今年度は、AI分野のトップカンファレンスである AAAI (採択率 21 %)、データマイニング分野のトップ・難関国際会議である ICDM (採択率 19 %) や SDM (採択率 24 %) といった一流会議に複数採択され、研究実績としても申し分のない結果を出巣ことに成功したと考えられる。らに、共同研究先であるヤフー株式会社と共に本研究成果を用いた金融文書やショップレビューの可視化技術の開発についても取り組み(その一部を言語処理学会年次大会にて発表)、本研究の社会実装に向けても大きな前進を遂げることができた。以上のように、本年度は本研究プロジェクト達成のために核となる技術の創出を行うと共に、研究成果の社会実装に向けて大きく前進することに成功した。
著者
細田 喜六郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1869-1872, 1961-10-01 (Released:2011-09-02)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本報告はPVC混和物成形品の亀裂現象に関する基礎的知見を得るために,極限伸長率と伸長温度の関係ならびに残留歪と亀裂発生温度の関係におよぼす,PVCの平均分子量,可塑剤含有量,加工条件などの影響を検討したものである。極限伸長率はおよそ75~90℃で最大となり,亀裂はこの温度を超えてから発生する。PVCの平均分子量が大きくなれば,極限伸長率は増大し,亀裂発生温度は上昇する。可塑剤含有量が増加するにつれて,亀裂発生温度は低下し,極限伸長率は低温においては著しく増大し,高温においては僅かに減少する。また熱ロールによる混練においては,最大の極限伸長率と最高の亀裂発生温度を与える最適の混練条件がある。
著者
山下 透 檀原 徹 岩野 英樹 星 博幸 川上 裕 角井 朝昭 新正 裕尚 和田 穣隆
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.340-352, 2007-07-15
参考文献数
49
被引用文献数
10 8

紀伊半島北部に分布する室生火砕流堆積物とその周辺の凝灰岩(石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩)および外帯中新世珪長質岩類について,屈折率を用いた軽鉱物組合せモード分析を行った.その結果,紀伊半島北部の中期中新世珪長質火砕流堆積物の斜長石系列は,すべてオリゴクレース~ラブラドライトで特徴付けられることから,これら4者は対比された.加えて室生火砕流堆積物は外帯に分布する熊野酸性岩類の流紋岩質凝灰岩の一部と対比できた.これらのことから,室生火砕流堆積物と石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩は15 Maの熊野地域のカルデラを給源とする同一の大規模火砕流堆積物であると推定される.また熊野酸性岩類の中のアルバイトで特徴付けられる流紋岩質凝灰岩は,同じ軽鉱物組合せをもつ中奥弧状岩脈を給源とする可能性がある.<br>
著者
庄司 信行 新家 真 奴田原 紀久雄 東原 英二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.647-651, 1990-05-15

炭酸脱水酵素阻害剤(CAI)を1年以上投与されている緑内障患者32例に著明な代謝性アシドーシスとそれに対する呼吸性代償,骨塩の融解および尿での骨塩の漏出とカルシウム溶解性の低下が認められた。 このうち22例にクエン酸製剤ウラリット-U®を投与したところ,眼圧の変化はなく,骨塩漏出の低下と代謝性アシドーシスが改善した。 以上の結果からCAI長期使用例,とくに骨系統の疾患や慢性肺疾患の合併頻度の高い老人では,定期的な血中重炭酸とカルシウムイオンのチェックが必要である。ウラリット-U®はCAIの併用薬として有望である。
著者
Hiroshi NISHIYAMA Alexander MARTIN Keiichi HATANO Sumiaki KISHIMOTO Nobuhiro SASAKI Kyle G. WEBBER Ken-ichi KAKIMOTO
出版者
The Ceramic Society of Japan
雑誌
Journal of the Ceramic Society of Japan (ISSN:18820743)
巻号頁・発行日
vol.129, no.3, pp.127-134, 2021-03-01 (Released:2021-03-01)
参考文献数
38
被引用文献数
6

While lead-free (Li,Na,K)NbO3 piezoceramics have a high Curie temperature (TC > 400 °C) and an excellent piezoelectric constant (d33 > 200 pC/N), the process window regarding the sintering temperature and dwelling time is narrow. Inappropriate sintering conditions can induce the volatilization of A-site alkali ions, leading to a deterioration in dielectric and piezoelectric properties. However, the effect of alkali volatilization on the ferroelastic properties is still uncertain. In this study, (Li,Na,K)NbO3 piezoceramics were deliberately exposed to the sintering temperature for varying times to compare the susceptibility of the effect of alkali volatilization on the ferroelastic properties and compared to changes in the ferroelectric and ferroelastic and dielectric properties.
著者
北岡 教英 新宮 将久 中川 聖一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.94, pp.43-48, 2003-05-30
参考文献数
9
被引用文献数
1

人間の音響的知覚能力と,局所的なコンテキストを教示して音声を聞かせることで音響モデルとN-gram言語モデルによる音声認識をシミュレーションし,実際の音声認識システムと比較して各モデルの能力について検討を行った.人間の知覚実験ではコンテキストが与えられない場合に短い単語の知覚が難しいが,前2単語程度のコンテキストで短い単語の聴取は改善される.これは,助詞などが多い短い単語のパープレキシティが,言語モデルを用いることで小さくなることに対応する.また,コンテキスト情報のみからの単語予測能力もパープレキシティと強い相関がある.一方,前後2単語のコンテキストを与えると予測能力はさらに向上するが,必ずしも聴取能力の向上につながらない.同様の認識を音声認識システムでも行った.ユニグラム言語モデルと音響モデルによる認識は,人間のコンテキストなしの聴取に遠く及ばないが,トライグラム言語モデルの予測能力は人間と同等以上である.一方で人間でさらに予測能力が向上するコンテキストを与えても知覚能力は向上しないことから単語予測能力の高い言語モデルが認識の向上につながることは考えにくい.すなわち,講演音声などの自由発話認識に対しては,トライグラムによる言語のモデル化は十分でありかつこれ以上の改善による認識率向上は難しい一方で,音響モデルはまだ大きく改善すべきであると考えられる.
著者
野瀬 勝弘 岡部 徹
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.618-624, 2012-10-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3
著者
道宗 照夫
出版者
大阪市立大学文学部
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.p427-440, 1986

アルベール・プリウーがその著書『「人間喜劇」前のバルザック』(1936年刊)で取上げたバルザック作品『仮面の愛または軽はずみと幸福(L'Amour masqué ou Imprudence et Bonheur)』については, その後ブルス・トリーが彼の論文「バルザックの諸作品(1829?)」という一項で論議をすすめ, その後さらにプリウーも論文「仮面をつけた愛, オペラ座の舞踏会で」においてふたたび取上げた。……
著者
伊藤 明良 青山 朋樹 長井 桃子 太治野 純一 山口 将希 飯島 弘貴 張 項凱 秋山 治彦 黒木 裕士
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0577, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】外傷などを起因とする関節軟骨欠損は,疼痛や運動機能の低下を引き起こすことで生活の質を下げる要因となるが,現在欠損された関節軟骨を完全に再生することは困難である。これまで関節軟骨の再生を実現するために,再生医療分野において学際的に研究がなされてきた。しかしながら,細胞移植治療術前・後に関わる研究,特にリハビリテーション介入の有効性・安全性に関する研究はほとんどなされていないのが現状である。すでに関節軟骨欠損に対する再生治療は,平成25年4月1日から本邦で初の自家培養軟骨製品が保険適用となり臨床で実践されている。そのため,早急に関節軟骨再生治療におけるリハビリテーションを確立させることが求められ,その基礎となるエビデンスが必要である。そこで本研究では,関節軟骨再生治療における温熱療法の基礎となるエビデンスを得るため,軟骨細胞による関節軟骨基質(extracellular matrix:以下,ECM)生成のための至適な温度環境を明らかにすることを目的として実験を行った。【方法】大腿骨頭置換術時に摘出されたヒト大腿骨頭関節軟骨(62歳,女性)より初代培養軟骨細胞を単離し,ペレット培養法を用いた三次元培養下において軟骨ECMの生成能を評価した。培養温度条件は,通常関節内温度付近の32℃,深部体温付近の37℃,哺乳動物細胞生存の上限付近とされる41℃の3条件とした。軟骨ECM生成能を評価するため,生成されたペレットの湿重量を培養後3,7,14日目に測定し,軟骨基質関連遺伝子(II型コラーゲン,I型コラーゲン,アグリカン,COMP(cartilage oligomeric matrix protein))の発現を培養後3,7日目にリアルタイムPCRを用いて解析した。また,コラーゲンおよび硫酸化グリコサミノグリカン(sulfated glycosaminoglycan:以下,GAG)産生を培養後7,14日目に組織学的に,そして培養後14日目に1, 9-dimethylmethylen blue法にて生化学的に解析した。さらに,走査型電子顕微鏡(以下,SEM)を用いて生成されたECMの超微細構造を培養後14日目に観察した。最後に,生成されたECMの機能特性を評価するため,培養後3,7,14日目に圧縮試験を行い,その最大応力を測定した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。対象者にはヘルシンキ宣言に基づき,本研究の主旨を書面及び口頭で説明し,同意を書面で得た。【結果】生成されたペレットの湿重量は,培養後3・7・14日目のいずれの時点においても,温度が低いほど有意に増加した。軟骨基質関連遺伝子のmRNA発現を解析した結果,41℃では解析した全ての遺伝子発現が有意に抑制された。II型コラーゲンの発現は,32℃と37℃の間に有意な差は認められず,I型コラーゲンの発現は,培養後7日目において32℃が37℃と比較して有意に亢進された。アグリカンの発現は,培養後3日目においては32℃が37℃と比較して有意に亢進されていたが,培養後7日目においてはその有意差は認められなくなった。COMPの発現は,37℃が32℃と比較して発現が有意に亢進された。組織学的評価においても,コラーゲンおよびGAGの産生が41℃では顕著に低下した。32℃と37℃の間に顕著な違いは観察されなかった。生化学的解析においても,GAG産生量は41℃で有意に少なかった。SEM観察により,32℃と37℃では生成されたペレットの周縁部に層状の密なコラーゲン線維の形成が観察されたが,41℃においては観察されなかった。最後に生成されたペレットに対して圧縮試験を行った結果,培養後3日目においては37℃で最も最大応力が高かったが,培養後7・14日目においては32℃が最も高かった。【考察】ヒト軟骨細胞において,ペレット培養時のECM生成能は41℃において著しく低下した。これは41℃ではコラーゲンの高次構造の形成が阻害されるという報告(Peltonen et al. 1980)を支持している。間欠的な40℃程度の温熱刺激はコラーゲン産生を促進する可能性があるが(Tonomura et al. 2008),本研究のような長時間の曝露においては逆に抑制される危険性が示唆された。これは,炎症などによる関節内温度上昇の長期化が関節軟骨再生を阻害することを意味している。興味深いことに,本研究は32℃という比較的低温環境においても,37℃と同等のECM生成能を有することを示唆した。以上のことから,関節軟骨基質再生のための至適温度は通常関節内温度である32℃から深部体温である37℃付近ににあることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究は,関節軟骨再生治療における温熱療法の基礎となるエビデンスを示した。さらに,再生治療における術後リハビリテーション(再生リハビリテーション)の重要性を喚起する研究としても大変意義があり,さらなる研究を求めるものである。
著者
松本 和樹 遠藤 正之
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集
巻号頁・発行日
vol.201910, pp.100-103, 2019

<p>最近、「PayPay」や「LINEPay」をはじめとするQR決済サービスが注目されている。これらのQR決済サービスは店舗導入のコストが低いというメリットの一方、セキュリティ面での課題がある。本報告ではQR決済サービスを会員数、利用可能店舗数、店舗の手数料率、決済方法、利用形態、ユーザーインタフェース等で比較、評価する。更に従来のクレジットカード、デビットカード、電子マネーとの相違点を踏まえ今後の動向について考察する。</p>
著者
吉岡 恒生
出版者
愛知教育大学
雑誌
治療教育学研究 (ISSN:09104690)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.13-21, 2010-02-26

本論では,子どもを援助する者の「心の傷」が援助プロセスへ与える影響について論じた。子どもを援助する者の「心の傷」が子どもの「心の傷」に触れる際に,どのようなプロセスが起こりうるか,またその癒しの効果と危険性はどのようなものかについて,「傷ついた癒し手」「メサイア・コンプレックス」等の概念を用いて論じた。また,特別支援学校教員への記述式アンケートにより,自身の子ども時代の「心の傷」をめぐるエピソードが,特別支援学校教員としての職業選択・教育実践に影響しているかもしれない,と半数近い者が感じていることがわかった。またアンケートの記述をもとに,「心の傷」が職業選択・教育実践にどのように影響するかについて,7事例を紹介しつつ考察した。以上を踏まえて最後に,特別支援学校における「子どもたちの心の傷とその対応」について論じた。
出版者
日経BP
雑誌
日経ビジネス = Nikkei business (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.2017, pp.42-47, 2019-11-18

スマホ決済の構造はクレジットカードに比べるとシンプルだ。VISAなど国際ブランドは介在せず、商店や飲食店など加盟店を開拓するアクワイアラと、消費者に利用額を請求するイシュアーの役割分担は基本的にない。「PayPay(ペイペイ)」や「LINE Pay」は加盟店開…