著者
渡邉 浩司
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.99, pp.399-432, 2021-09-30

13世紀後半に成立したと推測される,古フランス語韻文による作者不詳の『フロリヤンとフロレット』は,シチリア王子として生まれたフロリヤンが数々の冒険を経て王位を奪還する物語であり,「伝記物語」の系譜に属する。この物語には複数のジャンルにまたがる先行作品群からの影響が認められるが,本稿では「アーサー王物語」のうちクレティアン・ド・トロワの作品群および,「聖杯物語群」の中核を占める『ランスロ本伝』の冒頭との比較を通じて,『フロリヤンとフロレット』の作者が行った筋書き・テーマ・モチーフの借用と独自の改変について検討する。
著者
木村 雄一
出版者
埼玉大学教育学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教育学部 = Journal of Saitama University. Faculty of Education
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.203-214, 2013

This paper deals with N. Kaldor on Monetarism from the viewpoint of Kaldor's theory, his policy and his thought. According to some previous studies, Kaldor criticized Friedman's monetarism, the revival of beliefs in the quantity theory of money, because a theory of the value of money based on a commodity-money economy is not applicable to a credit-money economy from the point of Kaldor's theory and policy. However, what seems to be lacking is that they don't deal with their battles which depends on their own social visions or their economic thoughts. Therefore, the purpose of this paper shows that Kaldor's critique of Friedman was the battle between Kaldor's vision of a social democracy and Friedman's Laissez-faire.
著者
藤丸 麻紀 Maki FUJIMARU
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.51-64, 2015-03-31

児童館の対象や機能はどんどん拡充してきたが、最近では、建物の老朽化と地方財政の悪化で閉館したり指定管理者制度を導入するところが増えている。さらに新設の子ども子育て支援新制度では、児童館の機能を子育て支援の拠点と放課後児童クラブのみを助成対象とし、放課後児童クラブについては文部科学省の全児童対策事業である放課後子供教室との一体化の方向をめざしている。 しかし、児童館の機能・役割は子育て支援と放課後児童クラブのみではない。一般来館で自由に遊びに行く乳幼児から、小学生、中高生までが放課後や学業休業期の居場所・遊び場として、活用している。そこには学校では得られない縦のつながりや、地域とのつながりやコミュニティの形成といった横のつながりがある。そしてイベントの企画・運営に携わることで、ボランティアを育成し、地域と一体となった児童の健全育成の拠点ともなっている。 つまり、児童館は正の外部性をもつといえる。そのため、子ども子育て支援新制度で児童館に十分な予算措置がない中で児童館を存続させるためには、指定管理者制度の導入によるコスト削減で供給量を確保することも必要な措置と考えられる。指定管理者制度のデメリットや懸念される要因については、運営委員会などで地域が一体となって協力していくことでカバーできるだろう。
著者
中村修也
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.(1)192-(13)180, 2005-03-01
著者
後藤 敏行
巻号頁・発行日
2022-10-27

会議名:令和4年度学校司書研修開催場所(もしくは開催方法):Zoomによるオンライン研修(所属校にて受講)主催:宮城県教育委員会開催日:2022年10月27日

5 0 0 0 OA 趣旨説明

著者
是川 夕
出版者
国立社会保障・人口問題研究所
雑誌
人口問題研究 = Journal of Population Problems (ISSN:03872793)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.339-347, 2022-09

特集Ⅰ
著者
酒見 真 シュエジュ ウシュエン 池田 心
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2022論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.227-234, 2022-11-04

格闘ゲームは参入障壁の高いゲームジャンルの一つであり,本稿では「読み合い」と呼ばれる駆け引きに関して,習得するまでの過程が困難であることが大きな原因の一つであると推察した.初心者の読み合い習得が困難な原因に,リアルタイム性による思考時間の短さや,キャラクタの操作に不慣れな点があると考えた. そこで,格闘ゲーム初心者が読み合いを理解・習得する過程を支援するシステムを提案する.提案システムは,自作したゲームとそれを通じてプレイされるカリキュラムから構成される.自作ゲームはじゃんけんをベースとし,手の価値に差がある点や状況毎に手の価値が変化する点など,格闘ゲームの読み合いに必要な要素を取り込んだ.カリキュラムは読み合いの習得を目的とし,読み合いに必要な考え方を実践する複数の相手との対戦を通じそれらを学ぶ.カリキュラム評価のための被験者実験の結果,想定の実験時間が終了してもカリキュラムは完遂されず,修了条件やヒントの出し方に課題が残る結果となった.
著者
張 小栄
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 = NIHON KENKYŪ (ISSN:24343110)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.243-280, 2022-10-31

「王道主義」は「満洲国」建国過程で唱えられた統治理念である。満洲事変(九・一八事変)後に、関東軍のイニシアチブのもとで進められた建国工作では、主として現地文治派指導者、関東軍に随伴する植民地統治のイデオローグである橘樸や野田蘭蔵等「理念派」および満鉄実務官僚出身の上村哲弥等「実務派」が相互に絡み合いながら統治理念の形成に関わった。 橘樸や野田蘭蔵等「理念派」は、現地文治派指導者の政治的主張を取り込みつつ、中国の伝統的儒学思想を淵源とする「大同の世」の理想的社会像を「農民自治」に見出しつつ「王道方法論」を構築した。しかしそれは、関東軍の「満洲国」統治を正当化する論理にとどまり、実質的な内容を持たない理念となった。 これに対して、上村哲弥らによって代表され、金子雪斎の満蒙経営論からの思想系譜をもつ実務派は、大正期から「王道主義」を唱え、中国の東北地域における長年の「満蒙経営」、なかんずく教育実務者としての経験から、その教育政策立案を通じて政治的具体化を目指した。しかしその重要性にも拘わらず、従来上村等は「王道主義」の文脈では重視されてこなかった。 そこで本稿では、「満洲国」の統治理念として唱えた「王道主義」をいかに認識し、いかに教育政策に反映させようとしたのかを検討する。
著者
神野 由紀
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.197, pp.9-48, 2016-02-29

明治末,日本に誕生した近代的な百貨店では,都市の新中間層を顧客に取り込むために様々な販売戦略を駆使した。呉服柄など流行の人為的操作を行い,呉服以外にも子ども用品や家具雑貨など新たな市場を開拓し,雛祭りや七五三,婚礼といった消費イベントを積極的に活用していく。新たな消費者である中間層は,自らの社会的な地位を顕示するための良い趣味を,商品を購入するという手軽な手段で獲得しようとし,初期百貨店は彼らに対して「良い趣味」を提供する役割を担った。この時期の三越呉服店の活動において特に注目されるのが,江戸的な趣味の影響力の大きさである。地方から都市に流入した中間層は,自らの趣味の欠如を埋めるため,百貨店の周辺に集まっていた好事家たちの趣味を模倣するという行動をとった。好事家たちの江戸的で風流な趣味が,中間層にとっての憧れとなり,彼らの消費傾向を規定していったのである。こうした事実は,明治末から昭和初期にかけて三越呉服店で販売され,人気を博していた人形玩具と風流道具に,最もよく表れている。本論では三越呉服店のPR誌に掲載されていたこの2種の商品に焦点を当て,一部の好事家の趣味が百貨店という場を介して大衆化されていく過程で,商品デザインがどのように変化していくのかについて,考察を試みた。商品を詳細に見ていくと,好事家の人形玩具収集趣味は,百貨店の雛人形販売の中で大衆向けの商品に置き換えられ,また実業エリート達による茶の湯の風流な趣味は,「風流道具」と称される茶道具やその周辺の家具雑貨類を通して,頒布会などで大衆に広められていったことがわかる。どちらにも共通して見られるのは,江戸的な趣味を継承していた一部の私的なコミュニティの美意識は,大衆化とともに,判り易い定型化された表象に置き換えられ,手軽に購入しやすい「商品」として生産されていくという特徴であった。これらは近代以降の大衆消費デザインを考える上で,重要な一側面であるといえる。