著者
向井 寛人 朝永 顕成 蔡 兆申
出版者
公益社団法人 低温工学・超電導学会 (旧 社団法人 低温工学協会)
雑誌
低温工学 (ISSN:03892441)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.278-286, 2018-09-20 (Released:2018-10-27)
参考文献数
60

Research towards the realization of superconducting quantum computers is progressing rapidly. Recently, the number of integrated quantum bits (qubits) has begun to exceed 50 bits, and such quantum system has the potential capability to surpass that of any classical computer (quantum supremacy). To improve gate fidelity, research on qubits and surrounding environments are actively being studied. Which superconducting circuit will become the platform for quantum computers? What kind of technologies and theory will be used for quantum computers? In this paper, we cover many issues leading towards the realization of quantum computing systems.
著者
佐藤 達夫
出版者
医学書院
雑誌
臨床泌尿器科 (ISSN:03852393)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.837-846, 1991-10-20

睾丸(精巣)のラテン語名testisの第1語義は「証人」witnessであり,「睾丸」は男性を証明するものという意味で派生した第2語義と想像される.使用頻度の高いtestify,testament,testという英単語もtestisと用じ語源をもつものらしい.睾丸のもつ重要性は"testis"に表わされていると見ていいだろうし,英語testisやフランス語tes-ticule,イタリア語testicolo,スペイン語testeに継承されているのも理解できるところである.それにくらべると,睾丸炎orchitisなどに使われるギリシャ語のorchisは蘭(一般にオーキッドorchidと呼ばれている)のことで,その球根の形に似ていることに由来し,またドイツ語のHoden(単数はHode,ふつう複数で用いられる)は古高地ドイツ語の包むumhüllenから由来したとされ(いわば「おくるみ」),testisよりインパクトがかなり弱い. ついでながら副睾丸(精巣上体)のepididymisのepi—はもちろん「の上に」であるが,didymisはギリシャ語で「対をなした」に由来する.つまり有対の睾丸の上にのっかったものという程の意味で,ギリシャ出身の大医学者Galenus(129〜199)が使っているという1).
著者
箭内 匡
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.180-199, 2008-09-30 (Released:2017-08-21)
被引用文献数
1

本稿は、人類学的実践を言葉のみならずイメージの実践として再考しつつ、そうした「イメージの人類学」の中で、民族誌映像(写真、映画、ビデオ)の役割を考えることを提案するものである。ここでイメージとは、我々の意識に現前するすべてを指し、例えば人類学者のフィールド経験のすべては、一つのイメージの総体と見ることができる。民族誌映像は、こうしたフィールド経験のイメージ(より正確には、それに近いもの)の一部を定着させ、言葉による人類学的実践が見えにくくしてしまうような経験の直接的部分を我々に垣間見せてくれる。そうした視角から本稿でまず考察するのは、マリノフスキー、ベイトソン、レヴィ=ストロースの民族誌写真であり、そのショットの検討を通じ、各々の理論的実践がその下部で独自の「イメージの人類学」によって支えられていることを示す。そのあと、フラハティ、ルーシュ、ガードナー、現代ブラジルの先住民ビデオ制作運動の作品を取り上げ、映像による表現が、言葉による人類学が見逃してきたような民族誌的現実の微妙な動きや質感、また調査者と被調査者の間の関係を直接的に示しうることを示す。このように「イメージの人類学」を構想し、その中で民族誌映像の役割を拡大することは、「科学」と「芸術」が未分化な場所に人類学を引き戻し、それによって言葉による人類学的実践をも豊かにするであろう。
著者
Mariko Kumamoto Michiko Otsuka Takeshi Sakai Takashi Hamagami Hiroshi Kawamura Tadayoshi Aoshima Fumiaki Fujibe
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.56-59, 2013 (Released:2013-05-04)
参考文献数
9
被引用文献数
6 9

A field experiment to clarify the characteristics of temperature distribution near an asphalt car road was carried out at the Meteorological Instruments Center in Tsukuba, Japan. Fifteen thermometers equipped with artificially ventilated radiation shields were installed on a wide grass field within a distance of 10 m from edges of the road. At a height of 0.5 m above the ground, the temperature on the leeward side of the road was found to show substantial bias from that on the windward side of the road. The biases were positive values of 0.2-0.4°C on the average and larger when the thermometers was nearer to the road or in cases of lower wind speed. The temporal variation of the biases showed a diurnal change and had a maximum peak in the evening and negative values during some hours of the day. Smaller positive biases around 0.1°C were also found at a height of 1.5 m during some time of the day whereas small negative biases were seen at a height of 2.5 m in summer. These results indicate complicated distribution of roadside temperature, although they can partly be interpreted by advection of air heated over the road.
著者
道場 親信 丸山 尚
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.175-242, 2013-03-19

本インタビューは、25年にわたって「住民図書館」の館長をつとめられた丸山尚氏のジャーナリストとしての半生を記録したものである。住民図書館とは1976年4月に設立され、日本各地の市民運動・住民運動や個人の発行するミニコミを収集・保存・公開してきた、市民の手弁当による自立的なアーカイヴであった。丸山氏のジャーナリストとしての人生は、1961年に『現代の眼』編集者となることから始まる。丸山氏は1971年に「日本ミニコミセンター」を設立するが、そこに至る10年の編集者時代の経験は、60年代出版ジャーナリズムの世界と深く関わり、広い人脈に連なっていた。同センターは3年の活動の後閉鎖されるが、76年に住民図書館館長となった丸山氏は、25年間この民間アーカイヴを守り続けた。本稿では、日本ミニコミセンター設立以前、ミニコミセンターの活動、それに住民図書館の活動を前期・後期に分け、丸山氏の活動に即して軌跡をたどっている。50年にわたる丸山氏のジャーナリストとしての軌跡を追うとき、市民・住民運動史とジャーナリズム史の交差する場所として氏と住民図書館の姿が見えてくる。
著者
佐久間 亜紀 島﨑 直人
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.558-572, 2021 (Released:2022-06-17)
参考文献数
22

教員不足とはいったいどのような状態のことか。不足の規模はどれくらいで、なぜ不足するようになったのか。本稿では、公立学校における教員の配置・未配置の実態およびその要因を、事例研究を通して実証的に明らかにする。また配置される教員や学校側の視座から、未配置が教員の職務や力量形成に及ぼす影響にも迫る。X県では、2021年5月1日時点で1971人の正規教員が配置されず、非正規雇用教員を1856人配置してもなお、115人が未配置となっていた。

7 0 0 0 OA 鉄鉱石の起源

著者
武内 寿久禰
出版者
The Iron and Steel Institute of Japan
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.724-729, 1980-05-01 (Released:2009-06-19)
被引用文献数
2 5
著者
新城 竜一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_3-I_11, 2014 (Released:2015-02-20)
参考文献数
22
被引用文献数
3

琉球列島の地質学的特徴について概観し,特に中琉球に位置する沖縄島をとりあげ,その地質と成り立ちについて解説した.琉球弧はプレートの沈み込み帯に位置し,その西側には若い背弧海盆(沖縄トラフ)が発達している.そこではマグマ活動と海底熱水活動が活発である.島弧は2つの構造線で分断され,北・中・南琉球の3つのセグメントに分けられる.沖縄島北部の地質は,ペルム紀から始新世にかけての古い地層群からなり,主に付加体堆積物で構成されている.これらは西から東へ帯状に配列しており,最も東側の名護帯と嘉陽帯は西南日本の四万十帯に対比される.沖縄島の南部には後期中新世から第四紀の若い地層(島尻層群と琉球石灰岩)が分布している.島尻層群を構成する泥が堆積した海から,琉球石灰岩のもととなったサンゴ礁の海へ,海洋環境が大きく変化したことが推定され,沖縄トラフの形成と密接に関連した海域と島弧の地殻変動(島尻変動)が生じたらしい.その後,琉球石灰岩を切るブロック状の断層運動(うるま変動)によって島嶼化がすすんだ.
著者
江原 遥 田中 久美子
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.151-167, 2008-10-10 (Released:2011-03-01)
参考文献数
14

近年, 国際化に伴い, 多くの言語を頻繁に切り替えて入力する機会が増えている.既存のテキスト入力システムにおいては, 言語が切り替わるたびに, ユーザーが手動で, テキスト入力ソフトウェア (IME) を切り替えなければならない点が, ユーザーにとって負担になっていた.この問題を解決するために, 本論文では, 多言語を入力する際にユーザーの負担を軽減するシステム, TypeAnyを提案する.TypeAnyは, ユーザーが行うキー入力からユーザーが入力しようとしている言語を判別して, IMEの切り替えを自動で行う.これによって, ユーザーがIMEを切り替える操作量が減るため, 複数の言語をスムーズに切り替えながら入力することが可能になる.本研究では, 隠れマルコフモデルを用いて言語の判別をモデル化し, モデルにおける確率をPPM法を用いて推定することでTypeAnyを実装し, その有用性を評価した.その結果, 人工的なコーパスにおける3言語間の判別において, 96.7%の判別精度を得た.また, 実際に多言語を含む文書を用いて実験したところ, 切り替えに必要な操作の数が, 既存の手法に比べて93%減少した.
著者
有馬 貴之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.93-111, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
207

本稿は,東京2020後のオリンピック・パラリンピックと観光に関する研究視点を導出するために,日本国内において行われてきた研究の整理を行ったものである.その結果,日本においては主に「観光政策」「観光施策・計画」「都市アメニティ・インフラ整備」「ビジネス・制度・開発主義」「国民意識」「観光の多様化」「経済効果」「観光教育」の八つのトピックにおいて研究がなされてきたといえる.英語圏の研究と比較すると,日本の研究では「観光教育」に関するおもてなしなどの日本独特のホスピタリティ教育に関する言及が特徴的である一方で,オリンピック・パラリンピックと観光の視点を踏まえた観光マーケティングに関する議論は少なく,これらの点において国際的な議論への貢献が必要である.
著者
岩本 陽児
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Studies (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.109-128, 2023-03-17

本稿では、主に文献研究の手法により、奈良・平安朝エリートの邸宅という独特の空間に発生し、形を変えながら現在に続く「前栽」(せんざい)、中国に発生した花壇概念と室町期の「花壇」、江戸期の園芸書に見られた「花壇」の実態をまず確認した。次に明治以降を取り上げた。街路樹導入や都市公園建設と並行して、学校の校庭や民家にも花壇が普及した。しかし、街路の緑化は、戦後復興期の都市整備と、戦後創設された社会教育制度が中核的な役割を担った「新生活運動」の一領域である国土を美しくする運動、いわゆる「国土美運動」を待たなくてはならなかった。かくて都市のパブリックスペースに普及した花と緑の景観は、地方行政が新自由主義に転じる中で、新たなマネジメントの段階に入っていった。
著者
鬼柳 善明 塩田 佳徳
出版者
日本中性子科学会
雑誌
波紋 (ISSN:1349046X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.3-7, 2015 (Released:2018-11-14)
参考文献数
10

Crystallographic analysis of metal cultural heritages is one of important neutron applications, since nondestructive analysis is desired. We have been studying Japanese swords using the pulsed neutron imaging, and obtained position dependent information of crystallite size, anisotropy and lattice spacing. The results coincide with destructive studies, which indicated that the method was useful for the metal artifacts.
著者
米勢 治子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.93-106, 2006-01-10

1990年の出入国管理及び難民認定法の改正に伴い、ブラジルを中心に多くの日系人が来日するようになった。愛知県は日系労働者が集住している地域であるが、出稼ぎとして来日した彼らが、地域住民とコミュニケーション手段を持たないまま、滞在が長期化するなかで、いくつかの問題が顕在化してきた。多文化共生社会到来との掛け声のなか、彼らへの言語保障をどのような形で行うのか、具体的な施策が必要とされている。戦後、国内の日本語教育は留学生教育として発展し、日本の経済成長と国際情勢の変化ともにさまざまなタイプの外国人を受け入れてきた。彼らへの日本語教育の進展に伴い、その専門性も確立されたが、地域日本語教育と呼ばれるボランティアを主体とした新たな局面を迎えるにあたって、今日的な課題が生まれた。すなわち、日本語教育を求める学習者への対応は可能であっても、日本語教育が必要と思われるすべての人々への対応にはいたらないことである。外国人住民の日本語能力に関する調査はないが、その潜在的な学習ニーズを推測することによって、日本語教育実施状況とのギャップが大きいことが分かる。受け入れた人々への言語保障の視点を持つならば、ボランティアによる地域日本語教育では限界がある。移民先進国の第二言語教育施策には、参考にすべきことも多い。そして、日本語学習機会が保障されてもなお、ボランティアによる活動は、多文化共生社会構築のために必要不可欠なものである。
著者
Jumpei Yamamoto Masao Moroi Hiromasa Hayama Masaya Yamamoto Hisao Hara Yukio Hiroi
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-23-0238, (Released:2023-07-11)
参考文献数
40

Background: Patients with atrial fibrillation (AF) and heart failure (HF) have elevated left ventricular end-diastolic pressure in addition to decreased left atrial (LA) function, but there are few reports of useful prognostic indices that can be seen on echocardiography. In this study, we investigated the association between LA reservoir strain (LARS) and prognosis in this group of patients.Methods and Results: We retrospectively enrolled patients with acute HF complicated by AF who were consecutively admitted to hospital between January 2014 and December 2018. A total of 320 patients (mean age 79±12 years, 163 women) were included in the analysis. During a median follow-up of 473 days, 92 cardiovascular deaths and 113 all-cause deaths occurred. In the multivariate analysis, LARS was an independent predictor of all-cause death (hazard ratio [HR] 0.94, 95% confidence interval [CI] 0.90–0.99, P=0.016). Multivariate analysis also showed that the patients in the lowest LARS tertile (<7.16%) had a significantly increased risk of cardiovascular death (HR 1.76, 95% CI 1.05–2.96; P=0.033) and all-cause death (HR 1.90, 95% CI 1.17–3.08; P=0.009) in comparison with patients in the highest LARS tertile (>10.52%).Conclusions: We found a significant association between LARS and death in patients with AF and HF. Patients with reduced LARS had poor prognosis, suggesting the need for aggressive therapy to improve their LA dysfunction.