著者
川村 光
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

地震現象の代表的な統計物理モデルとして知られるバネ-ブロックモデルを、標準的な摩擦構成則である「速度状態依存摩擦則」と組み合わせたモデルを用いて、通常の高速破壊地震のみならずスロースリップ現象を含めた地震現象の物理を、主として数値シミュレーションによって調べた。単純なバネ‐ブロックモデルの範囲で少数個のモデル・パラメータを変化させることにより、通常の高速破壊地震のみならず、地震核形成過程、余効すべりやサイレント地震等のスロースリップ現象までが、統一的な枠組みの中で再現出来ることを明らかにした。このようなモデルと枠組みの同定は、今後の地震研究に対しても重要なレフェレンスを提供することであろう。
著者
辻 明日夏 倉重 賢治 亀山 嘉正
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.337-346, 2008-06-15 (Released:2008-11-04)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

本研究では,いくつかの料理を組み合わせることでメニューの作成を行う.この組み合わせにより,栄養のバランスや料理同士の相性,各カテゴリーでの品数などを考慮する.バランスの取れた料理を作成するためには,エネルギーと脂肪,炭水化物,たんぱく質,食物繊維,塩分などの摂取量を考慮する必要がある.各栄養素に対する必要摂取量は,個人によって異なっており,料理を組み合わせることによって,その値を完全に一致させることは困難である.通常,これらの量は,完全に一致させる必要はなく,ある程度の範囲内で収めれば良いと考えられている.そこで,各栄養素に対する必要摂取量をファジィ数で表現し,それぞれの栄養素に適したメンバシップ関数を作成する.バランスの取れたメニューを作成するためには,最も低いメンバシップ関数値の最大化を目指す.その他,料理の相性や料理数は,通常の制約条件として取り扱うこととした.この問題は,ファジィ数理計画問題として定式化され,180皿の料理による数値計算例によって,その有効性を明らかにした.
著者
前田 恭幸 湯淺 墾道
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:21888655)
巻号頁・発行日
vol.2015-CSEC-71, no.12, pp.1-7, 2015-11-27

近年,スマートフォンを始め,パーソナルコンピュータ,タブレット端末,多機能周辺機器などに使用される不揮発性記録媒体のひとつであるフラッシュメモリの普及が急激に広がっている.不揮発性記録媒体のフラッシュメモリを搭載している SSD(Solid State Drive) を調査してみると,SSD 市場の 2017 年までの平均成長率は 39.2%と IT 調査会社 IDC は予測している.SSD には書換え寿命などの対策のため,Spare Capacity 及び Over Provisioned Capacity という予備のデータ保存領域がある.通常の方法ではデータにアクセスすることができないこの領域からデータ復元できたとする報告もある.また,SSD は HDD に比べ,データの記録構造などが異なるためデータの完全復元がしにくいと言われている.デジタル・フォレンジックの観点から,HDD と SSD のデータ復元の違いについて述べる.そして,SSD の Over Provisioned Capacity からの新たなデータ抽出手法を提案する.
著者
目時 壮浩
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
pp.1-274, 2019

早大学位記番号:新8327
著者
桑原 克義 福島 成彦 田中 凉一 宮田 秀明 樫本 隆
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.354-361_1, 1986
被引用文献数
2

ムラサキイガイに残留する低極性有機蛍光物質濃度の数値化の試みとして, 蛍光分析と蛍光検出器付きHPLC分析を行った. 蛍光分析では, 大阪港, 京都舞鶴, 北海道各海域でよく類似したスペクトル (Ex λmax=ca.310; Em λmax=ca.350nm) を与えた. HPLC分析では, 共通する残留性のピークとその他のピークに別れた. 試料間で, 蛍光分析で約10倍, HPLC分析で約100倍以上の差が得られ, 本方法が上記化合物による海産食品汚染監視の一指標になるものと考えられた.
著者
臼杵 知史
出版者
北海道大学法学部
雑誌
北大法学論集 (ISSN:03855953)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.39-106, 1980-08-08
著者
小西 貴 目島 直人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1254, 2007 (Released:2007-05-09)

【はじめに】 日々の臨床で治療を展開していく際に局所に問題点をしぼらず,全身的に評価し治療していくことが重要であることはいうまでもない.筆者は慢性閉塞性肺疾患の対象者に仙腸関節の関節モビライゼーションを施行すると,酸素飽和度や胸郭の動きが改善し,呼吸苦が減少する場面に多々遭遇する.そこで今回,仙腸関節が呼吸機能の目安となる胸郭拡張差に及ぼす影響について検討し,若干の知見を得たので考察を踏まえて報告する.【対象と方法】 本研究の趣旨を十分に説明し,賛同を得た健常男性11名(平均年齢28±2.6歳)を対象とした. 方法としては次の通りである.まず,仙腸関節の関節モビライゼーション施行前後で最大吸気を行ってもらい胸郭拡張差を測定した.胸郭の周径は1.腋窩レベル,2.剣状突起レベル,3.第10肋骨レベルで計測した.仙腸関節モビライゼーションは左右の仙腸関節にうなずき運動,起き上がり運動を3回ずつ行った.以上の方法で得た胸郭拡張差を端坐位にてメジャーで計測して仙腸関節モビライゼーション前後の差を検出し,そのデータをt検定にて比較した.【結果】 被験者全員に腋窩レベル,剣状突起レベル,第10肋骨レベルで胸郭の拡張が認められた. 仙腸関節のモビライゼーション前後で上記1.~3.のレベルのそれぞれで胸郭拡張差の有意差が認められた(p<0.05).【考察】 仙骨のうなずき運動が生じると第5腰椎は伸展する.腰椎が伸展運動を起こすと横隔膜の腰椎部である右脚と左脚が下方へ伸張され,横隔膜全体は下方へ牽引される.よって,横隔膜の下降とそれに伴うドームの平坦化によって,胸郭の垂直径を増やす.また,横隔膜の下降によって,腹腔内容の圧縮,腹横筋のような伸張された腹筋群の他動的張力による腹腔内圧の上昇によって抵抗される.腹腔内圧の上昇は,下部肋骨を側方へ拡大させる.腹腔内圧の上昇によって一旦固定されると引き続いて生じる横隔膜の肋骨線維の収縮により下位と中位の肋骨が挙上される. また,仙骨の起き上がり運動により寛骨は外旋‐内転する.それに伴って,大腰筋は緩んだ状態となり,大腰筋と筋連結をもっている横隔膜も弛緩する. よって,仙骨のうなずき運動により横隔膜全体は下方へ牽引され,仙骨の起き上がり運動により弛緩が促されることになる.これは仙骨のうなずき‐起き上がり運動により横隔膜の収縮‐弛緩がスムーズに行われるようになっているのではないかと思われる.
著者
二宮 泰造 島田 武彦 遠藤 朋子 野中 圭介 大村 三男 藤井 浩
出版者
園芸学会
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.127-133, 2015 (Released:2015-09-10)

生産者や育成者権の保護に向けてカンキツの品種識別技術の確立が求められている。信頼度の高い科学的手法であるDNAマーカーによる品種識別技術の開発は,正確なカンキツの品種識別のために必須である。そこで,簡易な方法での品種識別が可能なCAPSマーカーによるカンキツの品種識別技術の確立をめざした。その結果,9種類のCAPSマーカーを33品種・系統に適用した遺伝子型を整理したCAPS遺伝子型データが得られた。このデータは,国内のカンキツの品種識別のための基盤的な情報となる。また,CAPS遺伝子型データから,最少マーカーセットを検出した結果,8種類のCAPSマーカーで33品種・系統のすべてを識別できることが判明した。さらに,遺伝子型データを利用して7種類の育成品種について,親子鑑定を行った。その結果,‘甘平’の花粉親は‘不知火’ではないことが明らかとなった。さらに解析を進めたところ,‘甘平’の花粉親はポンカンであることが強く推察された。
著者
藏中 しのぶ
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.31-39, 2011-05-10 (Released:2017-05-19)

唐代口語語彙は、律令・仏教・文学という学問の講説の場で、最新の唐代の学問を継承し、中国語話者をふくむ講師によって口頭で講じられ、講義録として私記類に記録され、さらにそれらが類聚編纂されて古辞書・古注釈類をはじめとする後世の文献に定着した。講説の場として、律令学の大安寺における「僧尼令」講説、仏教学の唐僧思託による漢語を用いた戒律経典の講説、文学の『遊仙窟』講説という三分野の学問の場をとりあげ、その担い手が律令官人・在俗仏教徒・文人という性格を兼ね備え、彼らが学問としての講説の場で唐代口語という異言語を共有していた状況をあきらかにした。講説の場では、養老年間以前に成立した会話辞書・口語辞書『楊氏漢語抄』『弁色立成』等が工具書として共通して使用されていた可能性を指摘し、律令学・仏教学・文学の諸分野が交錯する多言語・多言語状況を論じた。
著者
石井 実
出版者
The Kansai Plant Protection Society
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.61-62, 1993

Last-instar larvae of the bamboo zygaenid, <I>Balataea huneralis</I> were collected in Kyoto city in early December, 1984 and reared under 16- and 12-hour photoperiodic conditions of 20&deg;C. Results of the experiments strongly suggested that this zygaenid passes the winer in diapausing prepupae in Kyoto city.
著者
山口 杲
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.173-180, 1960

1958, 1959両年度にわたり, 京都市北区において, タケノホソクロバArtona funeralis(Butler)の生活史を, 野外観察と飼育実験の両法によつて追究した.結果を以下に要約する.1.本種は1年間に3世代を営み, 第3世代の蛹態で越冬する.2.越冬蛹は5月中旬〜6月中旬に羽化, 産卵し, 第1世代は5月下旬〜7月中旬, 第2世代は7月下旬〜9月上旬に営まれ, 第3世代は10月下旬に蛹化して越冬にはいる.3.卵期間は各世代間にあまり差がなく, それらを平均すれば7.3日であつた.各世代の平均孵化率は, それぞれ85%, 80%, 80%であつた.4.幼虫期は5令で, 各令の平均所要日数は, 第1世代の第1令5.8日, 同第2令5.3日, 同第3令5.2日, 同第4令6.1日, 同第5令7.4日, 第2世代ではそれぞれ, 4.7日, 4.0日, 4.9日, 6.0日, 8.4日, 第3世代ではそれぞれ, 5.5日, 6.6日, 8.9日, 7.9日, 11.5日であった.全幼虫期間の平均所要日数は, 第1世代29.8日, 第2世代28日, 第3世代40.4日であり, 蛹化率は夫々55%, 65%, 57.5%であつた.5.前蛹期は第1世代1.1日, 第2世代1.1日, 第3世代2.2日, 蛹期はそれぞれ11日, 11日, 187日(越冬)であつた.羽化率はそれぞれ, 47.5%, 56%, 11.5%であつた.6.雌成虫は原則として羽化後1日経つてから交尾し, さらに1日経過してから産卵する.成虫期の寿命は雌1〜6日, 雄1〜9日, 平均寿命はそれぞれ3.5日, 4.0日であつた.雄は雌より1〜2日早く羽化する.7.卵はタケ或いはササの葉裏に整然と並べて産みつけられ, 卵数は第1世代20〜182(平均90), 第2世代20〜268(平均140), 第3世代26〜145(平均81)であつた.8.幼虫は第1〜2令は完全な集団をなして行動し, 第3令に達すると分散し始め, 第4, 第5令では概ね単独に生活する.9.蛹化は腐竹, 腐木の内側, 板塀, 軒先等で行われ, まゆは濃褐色, 扁平楕円形の薄い蝋質の板で, 皿を伏せたような形に蛹を被う.10.本種幼虫が野外でイネを食害する例を観察したし, また飼育室内でも本種成虫はイネの葉に産卵し, それから孵化した幼虫はイネを食べて終令に達し得ることが確認された.11.以上の他, 成虫の交尾習性, 幼虫の移動性, 眠性, 卵内発生に及ぼす湿度の影響等を観察記載した.
出版者
講談社
巻号頁・発行日
vol.7(31), no.348, 1969-07