著者
山田 茂 大場充
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.821-828, 1986-08-15
被引用文献数
11

本論文では ソフトウェアの信頼性評価のために開発された二つの代表的なS字形ソフトウェア信頼度成長モデルについて議論する.これらのモデルは ソフトウェア開発の最終段階である試験において 発見された総ソフトウェアエラー数がS字形成長曲線を示す現象を記述するものである.このようなエラー発見事象は 確率事象として取り扱うことにより 非同次ポアソン過程という確率過程を導入してモデル化することが可能となる.ここで考察の対象となるのは 遅延S字形ソフトウェア信頼度成長モデルおよび習熟S字形ソフトウェア信頼度成長モデルである.各モデルの特性について ソフトウェアの信頼度成長を把握する1指標であるエラー発見率により考察する.このエラー発見率としては 瞬間エラー発見率と1個当りのエラー発見率を考え 実際のソフトウェアエラーデータに対する適用例により各モデルの特性を明らかにする.
著者
仲野 純章
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.299-307, 2020-11-30 (Released:2020-11-26)
参考文献数
31

磁界が存在する状態の下,電解質溶液中の電極で電気化学反応を起こすと溶液流が生起する。当該現象は電気化学反応に関与するイオンにローレンツ力が作用して起こるものであり,その特性から,ローレンツ力可視化教材への転用を狙った種々の教材化研究がなされてきた。しかしながら,汎用性や簡便性の面で課題も多く,教材として確立・普及するに至っていない。今回,汎用性と簡便性を重視した新教材を検討し,予備実験と検証授業を通じて教材としての可能性を検証した。その結果,電極にアルミニウム,電解質溶液に塩化ナトリウム水溶液を採用することで汎用性と簡便性に優れた新教材が成立し,これを用いることで,ローレンツ力に関する理解を深めさせる授業を効果的に展開できることが確認された。
著者
宮﨑 至恵
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.421-427, 2015 (Released:2015-07-07)
参考文献数
12

〔目的〕ある終末期がん患者(Aとする)のリハビリテーションを担当した理学療法士(Sとする)が経験した葛藤を質的研究によって構造化し,その本質を明らかにすることとする.〔対象〕3年目の理学療法士1名である.〔方法〕半構造化したインタビューを行い,語られた内容を質的データ分析にて解釈し,概念モデルを生成した.〔結果〕Sが経験したAの治療過程において,最終的に命を救えない苦しみ,治療介入に対する満足と後悔,医療チーム内で意識が統一されていないことによるジレンマという3つの葛藤が生じていた.〔結語〕がんのリハビリテーションに従事する理学療法士が対面する葛藤を明らかにした.
著者
千賀 靖子 青山 佐喜子 川島 明子 川原崎 淑子 橘 ゆかり 三浦 加代子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会特別研究である「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」において,1960年~1970年頃までに定着していた家庭料理について聞き書き調査を行った。本研究では,この調査結果を基に地域別の主菜の特徴について探ることを目的とした。<br>【方法】平成25年12月~27年3月に,県内の12地域(橋本,那賀,和海,上富田,大塔,田辺(湊浦),那智勝浦,太地,熊野川,有田川,由良,日高(御坊))を訪れ,聞き書き調査を行った。調査対象者は,合計38名の女性,平均年齢は72.3±6.3歳であった。今回は,調査結果から「魚・肉・大豆」を使用した主になるおかずを地域ごとに抽出し,検討を行った。<br>【結果】主菜の材料は,調査地域の地勢により異なった。魚のおかずでは,和海(除く紀美野),日高・由良,田辺,那智勝浦・太地などの海寄りの地域で旬の魚をさしみや焼き魚,煮魚,生節,干物などにして食べていた。一方,内陸地域では,塩物や干物,川魚であった。塩物は,県北,中部の地域では塩鯖,南部は塩さんまが多かった。肉類のおかずでは,鶏を食べている地域が多く,すき焼きにして食べていた地域もあった。牛肉の利用は少ないものの確認できたが,豚肉は全地域で調査者から具体的な料理名が出なかった。山間部では,猪や鹿などの野生の獣肉が食べられていた。鯨肉の利用は,ほとんどの地域で確認でき,調理方法も竜田揚げ,カツレツ,テキ,はりはり鍋,煮物,つけ焼き,カレーと多彩であった。さらに太地では,鯨肉のさしみ,また,いでもの(内臓)やコロ,骨はぎ(軟骨),オバキイ(さらし鯨)やイルカの肉なども利用されていた。大豆のおかずでは,内陸地域で郷土料理の豆腐焼きや豆腐の粉料理が確認できた。
著者
芳賀 英明
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.106-118, 2015-09-30 (Released:2020-05-12)
参考文献数
41

本稿では,準拠集団が消費者行動に及ぼす影響について,従来取り組まれてきた「製品・ブランドの購買行動への影響」と,その後関心を持たれている「自己とブランドの結びつきへの影響」「消費者のその他の行動への影響」に分けて整理を行った。従来の研究では,消費者が準拠集団の影響を受ける度合いは,購入する商品の特性や製品の使用される場面によって異なることが明らかにされてきた。その後,準拠集団は注目の高まりを見せているブランド・リレーションシップ研究の中で,自己とブランドの結びつきに影響を与える要因の1つとして再び脚光を浴びるようになった。この潮流の研究では,所属集団/内集団や熱望集団が自己とブランドの結びつきを強める一方,外集団や分離集団が自己とブランドの結びつきを弱めることが明らかにされている。こうした研究成果を受け,近年では準拠集団が製品選択,製品評価,あるいは消費量などに影響を与えることが示されている。「自己とブランドの結びつきへの影響」を中心とした研究は比較的新しいものであり,今後は準拠集団のうち特定の集団に焦点を当てることや,ブランドの持つ特徴の違いに着目することによって更なる展開が期待される。
著者
日下部 伸 森尾 敏
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.517, pp.149-158, 1995-06-21
参考文献数
8
被引用文献数
1

粒子表面のぎざの有無が異なる典型的な2種類の砂を使用し, オンライン実験手法により地震応答液状化抵抗について検討した. ぎざの有る砂はぎざの無い砂に比べ, 地震応答液状化抵抗が強い. ぎざの無い砂は有効応力が半減するのが早く, ぎざの有る砂は有効応力が半減後もねばりを発揮する. ぎざの有無によるミクロ・ダイレタンシー特性は, 液状化抵抗を支配する重要な要因の一つであることを示した.
著者
高橋 春樹 中川 隆雄 仁科 雅良 須賀 弘泰 西浦 輝浩 出ロ 善純 小林 尊志 澁谷 美穂子 佐藤 隆幸 西久保 俊士
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.50-55, 2008 (Released:2013-03-14)
参考文献数
17

Content We investigated 76 cases during the 6-year period from 1999 to 2005 in which a patient who developed a consciousness disorder while bathing was brought to the Emergency and Critical Care Center of Tokyo Women's Medical University Medical Center East. In. 86% of the cases the patient was in cardiopulmonary arrest, and they had a group of diseases with a poor prognosis in which the outcome was death, even the 6% of the patients who were resuscitated.The most common age group was the 70-to 79-year group, which contained 46% of the patients, and those 70 years of age and older accounted for 70% of the total.  Examination was possible in 16 cases, and the most common category, in 10 of them, was “drowning/suspicion of transient ischemic attack”. Adequate examinations were not performed on the patients who died in the outpatient department. Moreover, because the autopsy rate was low, it was impossible to make a definitive etiological diagnosis. However, the fact that “many were elderly persons whose autonomic nervous system's regulatory function is reduced” and that “the incidence was highest during the winter (53% during the 3 months from December to February)” suggests involvement of cardiovascular and cerebrovascular diseases secondary to changes in blood pressure. Many preventive measures have been described in the literature, and improvement in the resuscitation rate is expected as a result of becoming familiar with. and thoroughly implementing them. All 10 cases that occurred in public baths, where the time before discovery should have been short, were cases of cardiopulmonary arrest, and it is impossible to clearly explain why resuseitation attempts failed in all 10 of them. In order to identify the causative diseases we think it would be worthwhile to consider 1) performing a whole-body CT examination after confirming death, and 2) perforrning open-chest cardiac massage (only in patients brought to the hospital within a short time).
著者
川野 雄基 大槻 圭一 阿部 真人 永谷 直久 志垣 俊介 藤澤 隆介
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会論文誌 (ISSN:13425668)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.67-76, 2020-03-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
18

In this study, we evaluated a phototaxis of pillbugs(Armadillidium vulgare) by using a behavior measurement system consisting of an omnidirectional motion compensation mechanism and a cylin-drical LED display. At the first, to validate the phototaxis of pillbugs against unidirectional light stimulation, we conducted an experiment under continuous light stimulation from one direction for 30 minutes. Subsequently, to evaluate phototaxis performance under the condition that the direction of light stimulus changes alternately, we experimented under three iteration cycles conditions (160 s, 40 s, 10 s). Our results revealed that the pillbugs moved significantly in the direction of weak light intensity, and it suggested that the pillbugs has negative phototaxis. Moreover, we showed that the negative phototaxis became the strongest when the iteration cycle is 160 s, and the negative phototaxis tended to weaken as the iteration cycle became shorter. Also, when the iteration cycle is 10 s, an increase in residence time is found, suggesting that does not necessarily take the routine response behavior according to the situation.

1 0 0 0 OA 花盗人

著者
石橋思案 著
出版者
駸々堂
巻号頁・発行日
1895

1 0 0 0 OA 筆と紙

著者
石橋思案 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1900
著者
光村 実香
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】近年,医療技術の発展やQOLの観点から小児領域において医療ケアを受けながら在宅生活を送る患児・者が増加している。そのため訪問リハビリテーション(以下,訪問リハビリ)でもその必要性が重視されているが,多くの訪問リハビリに携わる療法士は小児未経験ゆえ,受け入れが困難な現状が問題視されている。そこで本研究は,訪問リハビリで療法士が患児とどのようにコミュニケーションをとりながらリハビリテーション(以下,リハビリ)を展開しているかを明らかにすることを目的として行った。【方法】対象者はスノーボールサンプリング法により抽出された小児訪問リハビリ経験年数半年~15年のPT3名(女性1名,男性2名),OT3名(女性1名,男性2名)である。調査期間は2013年10月~11月であった。小児の訪問リハビリを行うことになった経緯や小児訪問リハビリで大切にしていること,それまでの経験と異なり困ったことや工夫していることなどを質問項目としたインタビューガイドを作成し,半構造化面接を行った。面接時間は約60分,インタビュー内容はICレコーダーに録音し,インタビュー終了後,逐語録におこした。分析は,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて,概念やカテゴリーを生成し結果図を作成した。【倫理的配慮,説明と同意】研究説明書を用いて研究目的・方法,研究協力棄権での不利益を受けないこと,個人情報の保護,費用負担の有無等について説明を行い,同意書の署名をもって研究参加の承諾とした。本研究は金沢大学医学倫理審査委員会の承諾を得て実施した。【結果】【カテゴリー】7,「概念」13を抽出した。小児訪問リハビリに携わる前に病院・施設等で小児経験者か否かで小児訪問リハビリ介入初期時の気持ちが異なり,小児経験者はそれまでの病院・施設等での経験から「外来・施設でのリハビリの先」として児の生活に直結する関わりを意識して訪問リハビリに携わるが,小児未経験者は「小児未経験からの不安」な気持ちを持ちつつ訪問リハビリに携わる。しかし,在宅での生活を主体としたリハビリを展開するうちに,リハビリの中で獲得する機能が「家族にとって役立つこと」が重要で【訪問リハビリも生活の一部】と認識する。また学校を卒業した後の人生も視野に入れ「生活から将来像を想い」,他者とつながるためのコミュニケーションがちゃんととれるように意思・気持ちを伝える表出方法を確立することが必要であると強く感じる。そのためにまずは【つながる力を信じる】ことで,抱っこや姿勢の評価から児の「動ける身体部位に目星をつける」と同時に身近な話題をもとに「絶妙な間」と「問いかけを繰り返す」中から目星を付けた部位の反応が正確であるか,表出手段として的確かなどを見極める。この関わりを通し【つながる瞬間】を感じたら【つながる力を育む】ために「つながるチャンスの創設」として,生活の中で家族とテレビを見ながら,兄弟と一緒に遊びながら表出できる場面をリハビリの中で作り出す。また表出をより明確な反応として捉えるために道具やモノを利用して「つながる力を具現化」する。さらに「つながる方法を母になげかける」ことで児の一番身近な存在に表出方法やその特徴を伝え,効率的に他者へ伝達されるように仕向ける。この時に「母の体調やメンタル面を気にかける」ことで,母親から伝わる児への影響に配慮する。しかし,療法士を中心とした関わりでは訪問頻度や時間的制約により【訪問リハビリでできることの限界】を感じ,「誰でもできるやり方」を確立し,社会の一歩である「学校の先生との関わり」を通し【関わりの輪を広げる】。これにより,児自身が自発的に動く機会が増え【身体レベル,自己表現力アップ】が達成されていく。つまり,小児訪問リハビリで療法士が患児の表出を意味づけるプロセスとは,療法士が患児とその家族に寄り添いながら,社会とのつながりを紡ぎだすことであった。【考察】小児経験の有無により療法士の訪問リハビリ介入初期時に気持ちの差異があるも,訪問リハビリそのものが生活の一部であると認識すると同じプロセスを辿ることが分かった。また児の表出能力を療法士の経験や感覚だけではなく,身体機能から評価し,機能として獲得・向上させていくことが示された。小児訪問リハビリでは,生活はもとより将来像を見据えながら児の人生や社会とのつながりを意識しながら関わることが重要であると考える。【理学療法学研究としての意義】今後の在宅小児分野の発展と啓蒙,新人教育に役立て,生活支援系理学療法学の一助になる。