著者
大野 かおる
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究の目的は、第一原理計算において、全ての物質現象を支配する電子励起状態を扱える根本的な理論方程式と新しい計算手法を確立し、その第一原理計算ソフトTOMBOを完成させて普及することである。第一原理計算ソフトは欧米で開発されたものが主流の中、研究代表者は世界唯一の全電子混合基底法プログラムTOMBOを開発し、多体摂動論のGreen関数法では1次のバーテックス補正を入れた世界初のGWΓ自己無撞着計算を行い、光吸収スペクトル世界最高精度0.1 eVを達成した。任意の電子励起固有状態を扱える拡張準粒子理論も発表し、世界初の電子励起状態を出発点とするGW近似や時間依存GW動力学シミュレーションを行う。
著者
永岡 麻貴 大島 郁葉 平野 好幸 中川 彰子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

強迫症の治療には,暴露反応妨害法を含む認知行動療法が有効である。しかし,認知機能の低下や自閉スペクトラム症の併存や、それに伴う実行機能の低下が、認知行動療法の治療効果に影響を与えている可能性がある。強迫症の治療効果に影響を与える要因を調査した結果、実行機能の機能の一部である作業記憶と、自閉スペクトラム症の特性を示すコミュニケーション能力の低下が、強迫症の認知行動療法に対する効果を低下させる可能性が示され、自閉スペクトラム症を併存する強迫症の実行機能に着目した心理プログラムを開発の助けとなる知見を得た。
著者
松下 敏夫 青山 公治
出版者
鹿児島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

農作物栽培起因性の皮膚障害をオクラ栽培作物を例に、1.その発症の様態を現地疫学的に解明する。2.原因物質の究明を農薬の関与を含めて実験的に検討する。3.予防対策の樹立を目的として本研究を行なった。その結果:1.鹿児島県南薩地方のオクラ栽培者について、2年度にわたり行った現地調査によると、オクラ栽培に伴う皮膚障害の発生はかなり高率であり、適切な予防措置を講じない場合にはほぼ全員に発症する。症状は掻痒・発赤を主とし発症部位は、袋詰作業ではほぼ指先に限局されるのに対し、収穫作業や管理作業では手指のほか手腕、顔面など皮膚の露出部位に生じやすい。この皮膚障害の発生は気象条件とも密接な関係があり、雨天、朝露がある時、あるいは発汗の多い時におこりやすい。同時に実施したアレルギー学的検査では、約1割り程度の者にオクラ成分に対する皮膚過敏症の存することが明らかになった。またオクラによる即時型アレルギー発症の可能性も否定できないことがわかった。2.オクラ成分および使用農薬の向皮膚作用を、モルモットを用いて実験的に検討した結果、オクラ成分には一次刺激性が認められたものの、感作性、光毒性を認めるには至らなかった。また、DDVP、Chlorothalonilに、中程度の光感作性が認められた。これらの結果は、疫学調査結果や文献との不一致の部分もあり、実験方法も含めさらに検討が必要である。3.以上より、オクラによる皮膚障害は発症機序からみると主として(1)オクラとの大量接触による機械的刺激作用、(2)オクラ成分などによる一次刺激作用、(3)オクラ成分によるアレルギー性に大別できる。その予防対策として、オクラとの接触を防ぎかつ作業性を考慮した保護具の検討、および作業中の樹葉との接触を最少限に保つ適正な畔幅の検討などについて考慮した。
著者
井上 博允 國吉 康夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究で得られた研究成果は次の通りである。1.大変形するゲルロボットの形状設計手法変形の特異性を実現するために、表面に微細な凹凸を持つ平板状の型を作り、型にゲル材料を流し込んで表面にひだをもつゲル成型する手法を確立した。表面にひだをつけたゲルは、伸張する面のひだの方向に沿って曲がりやすくなり、変形の方向性を形状により設計可能となることを明らかにした。2.電界制御による変形予測モデルの構築ゲルの持つ能動的および受動的な変形特性をモデリングする手法を提案し、この手法に基づいてシミュレータを実装し、アレイ状電極裟置により生成する2次元空間分布電場内におけるゲルの変形シミュレーションを行った。電場を適切なタイミングで平行移動することにより、ダイナミックな運動を生成することができることを明らかにした。3.ゲル連続体の形状を制御する電場制御システムの開発大変形を生じる駆動電場の条件を明らかにするために、電場の空間分布を制御可能な多電極駆動装置を開発し、空間分布を少しずつ変化させた場合の変形応答性を詳細に計測し、シミュレーション結果と比較し、モデルの正当性を検証した。4.軟体動物状ゲルロボットの変形と運動制御の実現総合実験として、触手状ゲルの巻きつき運動生成実験、およびヒトデ型ゲルロボットの表裏反転運動制御実験を行い成功した。長さ24[mm]の触手状ゲルが直径4[mm]のスペーサを一周巻きつけるのに180[s]、直径15[mm]のヒトデ型ゲルロボットが反転するのに50-60[s]を要した。
著者
横小路 泰義
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,人の手と同様に多様な把持と操作が可能な多指ハンドの実現を将来目標に据え,安易な人の手の外観の模倣ではなく,人の把持動作の詳細な観察や内在筋と外在筋を有する人の手の筋骨格構造の本質的理解に基づき,様々な形状の物体のピッキングが可能な二指ハンド機構を開発した.人のピッキング動作の観察から,重量物等の「つかみ」と小物の「つまみ」加え,薄物の「すくい」が必要であることを見出した.開発したハンドは,この3つの把持様式を可能とする5節・4節複合リンク機構を有する2自由度示指と5節1自由度劣駆動の拇指から構成される二指ハンドである.
著者
長田 和実 柏柳 誠
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本申請者らは、野生動物の制御と、共存のための有効な手段としてオオカミ尿中のピラジン化合物 (P-mix) に着目し、マウス、ラット、エゾシカなど動物種を超えて恐怖を誘起するカイロモン(天敵由来の恐怖誘起物質)であることを見出した。またピラジン化合物の構造活性相関の解明に取り組み、強い恐怖反応を誘起するピラジンの官能基の特徴を明らかにした。さらに恐怖行動を誘起する神経機構の解明に取り組み、P-mix は、通常のにおい成分とは異なり、主嗅覚系、鋤鼻系の両方を刺激し、恐怖誘発の情報を受容し、扁桃体内側部,同中心核、視床下部などを活性化し、先天的な恐怖行動や皮膚温低下などを引き起こす事を明らかにした。
著者
大江 秋津 三橋 平
出版者
東京理科大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

江戸時代の藩校の200年以上の長期データを用いて、知識普及のメカニズムを実証する。国学や算学など、様々な学問を教える藩校では、教員の出身学派の非公式な信頼関係から新たな知識がもたらされる。藩校は知識の集積所といえ、学派ごとに形成された複数の非公式な外部知識ネットワークを持つ。さらに、ネットワーク内の新たな知識の普及には、地理的に近い他の藩校からの影響もあると考える。以上から本研究は、(1) 実践共同体で形成される複数のネットワークで多次元的に知識が普及するネットワーク構造特性の実証と、(2) 組織間信頼による知識の組み替えが起こるメカニズム、(3)組織間の地理的近接性が与える影響を実証する。
著者
山本 美穂子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

1918~45年における帝国大学大学院への女性の進学実態を調べて、東北帝国大学(理学、法文学分野)、東京帝国大学(法学、農学分野)、大阪帝国大学(理学分野)、北海道帝国大学(農学分野)における女性の大学院進学者を明らかにした。そして、化学・法学分野を専攻した女性進学者について、進学動機・背景・進学後のキャリアパス等を明らかにし、戦前戦後期の女性の大学院進学の歴史的展開を考察した。さらに、1950~60年代に新設された新制女子大学大学院の文系研究科(修士課程)12校を対象に、大学院の専任教員予定者から女性研究者の経歴を分析し、女性のキャリアパスにおける旧制大学院進学の位置づけを考察した。
著者
佐藤 悠介
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ナノ粒子によるがん組織への核酸送達においては、ナノ粒子ががん組織に到達後に組織深部まで浸透できずに標的のがん細胞へ到達できないというがん組織内動態の制約が大きな問題となっている。本研究では上記問題を解決するため、脂質ナノ粒子の粒子径を小さく高精度に制御するための新規脂質様材料の開発および粒子化手法の検討を行った。加えて、脂質ナノ粒子の小型化に伴って核酸導入効率が低下するという問題を解決するため、その原因の解明を行った。
著者
竹野 一 斎藤 俊之
出版者
鳥取大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

(1)ワラビ地下茎よりの有毒成分の単離。前報において、家畜のワラビ中毒の原因物質としてワラビ地下茎メタノ-ル抽出物より二種類の活性配糖体を単離し、それらをBraxinA1、A2と命名した。本研究では、さらにワラビ地下茎抽出物の液滴向流クロマトグラフィ-、Toyopearl、HW-40Sのカラムクロマトグラフィ-、Wakosil 10C18 HPLCを順次行い、モルモットに対する催血尿性を指標として,前述のBraxinA1、A2の他に、より活性の強い二つの画分が得られ、これらをBraxinB、Cと命名した。原ワラビ地下茎粉末よりの各画分の収量は、BraxinA1、A2では共におおよそ0.15%であるが、BとCではそれぞれ0.008%,0.007%と僅少であった。しかし、催血尿性においては、A1とA2は共に300-700mg/Kg(ip,一回投与)であるのに、BとCではそれぞれ36mg/Kg、28mg/Kgの少量で毒性を発現した。これらの成績より、ワラビ地下茎には少なくとも四種類の毒性分の存在が示唆された。なお本研究のBraxinCは、広野らのptoqiulosideと同一物質であることが示唆された。(2)ワラビの短期毒性、ワラビ地下茎粗毒性画分をモルモット腹腔内へ約60日間、連続投与した。一般病状としては、著しい体重の減少と脱毛がみられたが、赤血球、血小板数には著減がなく、白血球はむしろ増加の傾向を示した。剖検所見としては、腹腔臓器の癒着と出血、膀胱壁の浮腫と肥厚が顕著であった。しかし骨髄には異常はみられなかった。これらの成績からワラビ地下茎粗毒画分の短期毒性はその適用部位および膀胱への障害作用が主なものと考えられる。(3)ワラビ毒・BraxinCはラット腹腔肥満細胞に対してヒスタミン遊離作用を持たない。BraxinA1は肥満細胞に対して細胞膨化作用とヒスタミン遊離作用を示すが、BraxinCはいずれの作用も示さなかった。これらの成績は、BraxinA1とCとは作用発現機序のうえでも両者が異なることを示唆している。