著者
坂口 幸弘
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.137-145, 2016 (Released:2016-04-21)
参考文献数
8
被引用文献数
4

【目的】ホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアサービスの現状と課題を把握するとともに,2002年調査との比較によって,この10年間での変化を検討することが本研究の目的である.【方法】2011年12月末日時点での緩和ケア病棟入院料届出受理施設を対象とし,看護師長宛てに2002年調査と同じ質問紙を送付した.その結果,156施設から回答が得られた(回収率:68.7%).【結果】最も多く行われていた遺族ケアサービスは手紙送付で78%,次いで追悼会が73%であった.10年前に比べ実施施設の割合はやや減少した.今後の課題に関して,「組織としての体制の整備」との回答が最も多く,10年前と同じ71%であった.「教育の充実」や「遺族のニーズ調査」との回答には減少がみられた.【結語】ホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアサービスの実施状況が示されたとともに,解決に向かいつつある問題や手つかずの課題が示唆された.
著者
田村 美穂子 田尾 龍太郎 米森 敬三 宇都宮 直樹 杉浦 明
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.306-312, 1998-05-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
24 41

カキ属(Diospyros)のカルスを用いてゲノムサイズおよび倍数性を決定した.カキ(D. kaki Thunb.)9品種およびカキ以外の12種のカキ属(Diospyros)植物の葉原基由来カルスの核DNA含量をフローサイトメーターを用いて測定した.核DNA含量が既知のニワトリ赤血球およびタバコと比較することで6倍体のカキ品種のゲノムサイズは5.00-5.24 pg/2Cであり, 9倍体品種は7.51-8.12 pg/2Cであることが明らかとなった.また6倍体のD. virginianaのゲノムサイズは5.12 pg/2Cであり, 4倍体のD. rhombifoliaは3.76 pg/2Cであった.他の2倍体の種のゲノムサイズはD. montanaを除いて1.57-2.31pg/2Cであった.D. montanaは2倍体であるが, そのゲノムサイズは4倍体と同程度の3.48 pg/2Cであった.D. montanaを除くカキ属植物の倍数性とゲノムサイズの間には強い一次相関が認められ, ゲノムサイズより倍数性の推定が可能であるものと考えられた.本研究ではカルス細胞を用いた染色体観察法も検討し, カキ'宮崎無核'の染色体数は2n=9x=135, '次郎'とD. virginianaの染色体数は2n=6x=90, D. rhombifoliaは2n=4x=60, その他のカキ属植物の染色体数は, 倍数性が未知の4種を含めて2n=2x=30の2倍体であることを示した.この倍数性は, D. montanaを除いてフローサイトメトリーから推定した倍数性と一致した.
著者
安田 知久 相馬 啓子 國弘 幸伸 安田 宏一
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.39-42, 2019-02-28 (Released:2019-04-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

Ten healthy volunteers were spun passively on a revolving chair (0.5 Hz left-winded 7 rotation), asked to stand up immediately thereafter and take 30 steps with their eyes closed. The observations revealed that subjects having an anteverted posture turned to the right, whereas those with a retroverted posture turned to the left. To ascertain the reason for this directional switch, volunteers carried a 10-kg weight on their front or back while keeping their axis vertical. The front-weighted subjects turned to the right like the subjects with the anteverted posture, while the back-weighted subjects turned to the left like those with the retroverted posture. The results indicated that shifting of the center of gravity, and not the posture, was the reason for the difference. When the subjects kept their arms up forward horizontally and the legs high up as in Fukuda's stepping test, they turned to the right, because their horizontal arms and highly up legs set the weight forward. The neutral pose, with the arms hanging down along the side of the body and stepping low, was scarcely associated with any turning.
著者
熊谷 晋一郎
出版者
日本オーラル・ヒストリー学会
雑誌
日本オーラル・ヒストリー研究 (ISSN:18823033)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.93-100, 2012-09-08 (Released:2018-12-10)

本稿では、6年にわたる綾屋紗月(フォーラム第3回セッションのもう一人の話題提供者)との当事者研究の内容を踏まえながら、当事者研究とはなんであるか、そして、本人や学知に対してどのような意義を持っているのかについて述べる。
著者
木村 進
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.766-769, 1970-09-15 (Released:2011-11-04)

乾燥味噌を造ってみたいという願いは「味噌の技術」の夢であったといえる。これに関する特許も明治, 大正, 昭和にかけて60件にもおよぶという。その間, 生味噌との品質差は著しく縮まり, 近年ようやく市販にこたえる品質にまで達したのは乾燥技術の進歩のおかげである。食品の乾燥技術開発に貢献されてきた著者によって, 味噌の粉末化の技術をわかり易く解説願ったので, 現在の水準について理解していただければ幸いである。
著者
村井 俊哉
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.56-60, 2006 (Released:2011-07-05)
参考文献数
18

【要旨】人が社会的状況でうまく行動してゆくためには、他人の表情などの情動的刺激の意味を解読し、その情報をもとに適切な意思決定・社会行動へつなげてゆくことが重要である。このような情動認知とそれに基づく社会的意思決定には、特定の神経構造およびそれらのネットワークが重要な役割を演じている。情動的刺激の認知に中心的役割を果たす構造は扁桃体である。両側扁桃体損傷患者では、恐怖表情などの陰性情動刺激の認知に障害が生じ、脅威を意味する刺激に対して鈍感になる場合がある。一方、情動的刺激およびその他の情報を統合し、社会的状況での適切な意思決定・行動へと導く上で重要な役割を果たす構造は、眼窩前頭皮質および内側前頭前皮質である。これらの領域の損傷による意思決定の障害によって、金銭・資産の管理ができない、責任ある行動がとれず仕事が長続きしないなど、社会生活で多大な困難が生じてくる。これらの患者では通常の神経心理学的検査では成績低下がみられなくてもギャンブル課題のような報酬によって動機づけられる意思決定課題では成績低下が認められる場合がある。ギャンブル課題の遂行に内側前頭前皮質が重要な役割を演じることは機能的脳画像研究によっても示されている。情動認知・社会的意思決定の障害は、局在脳損傷例に限らず、統合失調症、反社会性人格障害、行為障害など、さまざまな精神神経疾患において認められ、その病態解明が進みつつある。
著者
松本 武一郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.321-325, 1973-05-15 (Released:2011-11-04)

本誌1月号の「日本民族と醸造食品」に関する座談会にのぼった話題に関連して和歌山県酒造史編纂委会より遠く大和時代にさかのぼることができる紀州と朝鮮との酒造技術の交流のあかしとして百済渡来の酒神・鳴武大明神, 朝鮮からの帰化人である村主にまつわる考証がよせられた。景行天皇の第5王子といわれる酒神神櫛ノ王も紀の国の酒部をひらいており, そこに日韓の酒造技術の隔合があったにちがいない。
著者
テシュネ ローラン
雑誌
昭和音楽大学 研究紀要
巻号頁・発行日
vol.18, pp.75-96, 1998
被引用文献数
1
著者
西村 幸治 橋本 祐一 岩崎 成夫
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.1157-1159, 1994-05-15 (Released:2008-03-31)
参考文献数
8
被引用文献数
57 73

The rate of racemization of N(α)-phthalimidoglutarimide (thalidomide) was determined as its half life to be 566 min at pH 7.4/37°C. This fast racemization of thalidomide resulted in no apparent difference between (S)- and (R)-forms of the compound on enhancing activity of phorbol ester-induced tumor necrosis factor (TNF)-α production by human leukemia HL-60 cells. Optically pure forms of structurally related analog of thalidomide, (S)- and (R)-α -methyl-N(α)-phthalimidoglutarimides (methylthalidomides), which do not racemize under the physiological condition, were prepared. Only (S)-form of methylthalidomide, but not its (R)-form, elicited TNF-α production-enhancing effect, suggesting that the (S)-isomer of thalidomide would be the active form in terms of thalidomidal biological response modifying effects.
著者
大石 泰彦
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.17-27, 2007-01-30 (Released:2017-10-06)
参考文献数
1
被引用文献数
1

The purpose of this article is to review select important studies (both books and articles) on ethics of mass media (or of journalists) published in the last decade in Japan. The themes of these studies can be categorized into three, which pertain to independent regulatory commission (e.g.press council), professional education for journalists (or for future journalists), and rules on routine newsgathering and editing. The most recent studies have focused more on social system of media ethics than on norms and behaviors of journalists.