- 著者
-
岡山 寧子
- 出版者
- 日本生気象学会
- 雑誌
- 日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.1, pp.53-60, 1998-04-01 (Released:2010-10-13)
- 参考文献数
- 31
- 被引用文献数
-
3
高齢者の脱水予防の基礎的な資料にしたいと考え, 夏期と冬期の日常生活における水分出納を, 在宅の健康な女性高齢者14名 (平均年齢74.4歳) を対象として検討し, 以下の結果を得た.1) 1日の総水分摂取量は夏期2.8リットル, 冬期2.2リットルであり, 夏期では, 飲用水摂取量と食物に含まれる水分の摂取量が冬期より多かった.2) 主な飲用水は, 冬期は日本茶, 夏期では日本茶と麦茶であった.3) 排尿量は夏期1.3リットル, 冬期1.6リットルで季節差は認められなかったが, 蒸泄量では夏期1.5リットルの方が冬期0.6リットルより多かった.4) 総水分摂取量は, 年齢とは負の相関 (夏期r=-0.57, 冬期r=-0.61) , 食物に含まれる水分の摂取量 (夏期r=0.62, 冬期r=0.61) , 飲用水摂取量 (夏期r=0.97, 冬期r=0.89) とは正の相関が認められ, 総水分摂取量を目的変数とした重回帰式に取り込まれた有意な説明変数は体表面積, 水分摂取回数, 年齢であった.以上より, 高齢者の水分出納には明らかな季節差が認められ, 脱水予防には, より積極的な飲水や水分を含む食事の工夫が有効であることが示唆された.