著者
田中 宗孝
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.45-56,224, 2005-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17

わが国の選挙における投票は、原則として自書式投票によることとされてきた。2001年に成立した電子投票特例法は、地方公共団体が条例で定めるところにより当該地方公共団体の議会の議員又は長の選挙を電子投票によって行うことを認めるものであり、わが国選挙の投票に関する制度に新たな局面を開くものである。2002年6月から2004年2月までの間に9市町村の11選挙が電子投票によって行われた。これらの選挙では、開票所要時間が大幅に短縮された。音声による候補者情報の提供が視覚障害者に好評であるなど、電子投票に対する有権者の反応は全般的に良好である。しかし、いくつかのトラブルが発生しており、選挙争訟が提起されたケースもある。国政選挙への電子投票の導入など、電子投票の一層幅広い展開を図るためには、地方選挙において着実に実績を積み重ねて国民の信頼を確立することが最も肝要である。
著者
植田 康孝

本研究の目的は, 2012 年6 月6 日に開票された「(第4 回) AKB 48 27th シングル選抜総選挙」について,ユニット化のメリットとロングテール構造を確認して, 且つインターネットの影響を実証するものである。本研究の実証結果より, 「総選挙得票数」に与える, 「ユーチューブ(政見放送) 再生回数」の弾性値は0.47,「Google+登録ユーザー数」の弾性値は0.97 であることが明らかとなった。劇場からスタートしたため, 元来, AKB 48のファンは自ら「参加したい」「発信したい」という欲求が高い。最大公約数を狙うマスメディアが提示する世界ではなく「自分の興味関心が高いメンバーに近い世界を構築したい」と考えるファンで構成されている。ところがテレビは時間的制約があるため, ファンのニーズを満たし得ない。一方, 制約がないインターネット上では,興味関心メンバー毎のコミュニティが形成され, ファンはマスメディアより満足度を高めることができる。 こうしたコミュニティが増殖するに従い, ファンが活用する情報メディアとしてマスメディアからインターネットへのシフトが進んだ。AKB 48 の場合, 従来のアイドルと異なり, テレビ番組や歌番組などマスメディアでの露出よりも, 「ユーチューブ(政見放送)」や「Google+」などのインターネットや, 秋葉原「ドン・キホーテ」8 階にある「AKB 48 劇場」やCD 購入者を対象とした「全国握手会」など「ライブ・イベント活動」の影響の方が大きいとかねてより指摘されていたが, 本稿での実証結果もこれを裏付けており, 今後のアイドル・プロモーションにおけるメディア選択の方向性の一つを示したと言える。
著者
豊田 哲也
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100051, 2011 (Released:2011-11-22)

地域格差を論じるにあたっては、地域間格差と地域内格差の概念を区別することが重要である。前者は平均的水準で比べた「富裕な地域」と「貧困な地域」の差という空間的な関係であり、後者は散布度で測った「富裕な層」と「貧困な層」の差という階層的な関係である。近年の社会疫学では、「豊かな地域ほど健康である」という絶対所得効果だけでなく、「経済格差が大きな地域ほど不健康である」という相対所得仮説が提起され、大きな論争を呼び起こしている。日本社会は経済格差が小さいと考えられてきたが、1990年代以降はジニ係数が継続して上昇傾向を示すことから、所得の地域間格差や地域内格差が健康水準に影響を与えている可能性がある。本研究では都道府県別に世帯所得の分布を推定し、平均寿命との相関を見ることで上記2つの仮説を検証することを目的とする。 使用するデータは「住宅・土地統計調査」の匿名データである。「世帯の年間収入階級」別の世帯数から、線形補完法により収入額のメディアン(中位値)、第1四分位値(下位値)、第3四分位値(上位値)を推定し、四分位分散係数を求める。今回の分析では以下の点で方法の改良と精緻化を図っている。(1)世帯所得には規模の経済が作用するため、平均世帯人員の平方根を用いて等価所得を求める。(2)高齢化にともなう年金生活世帯の増加など人口構成の変化要因を除くため、「世帯を主に支える者」の年齢階級で標準化をおこなう。(3)物価水準の地域差や時系列変化を考慮し、「地域物価差指数」と「消費者物価指数」をデフレーターとして所得を実質化する。こうして求めた1993年、1998年、2003年の所得分布と、「都道府県生命表」から得られる1995年、2000年、2005年の平均寿命について相関を調べる。 推定された所得と平均寿命の相関を見ると、女性では有意な相関を見出せないが、男性では地域の所得水準(中位値)が高いほど、また地域内の所得格差(四分位分散係数)が小さいほど平均寿命が長いという関係がある。また、2000年から2005年にかけて所得格差と男性寿命の相関が強まった。ただし、所得水準と所得格差の両変数間には強い逆相関が存在するが、偏相関係数により前者の影響を取り除いた場合でも、後者と平均寿命の間に有意な関係が認められた。この結果から、男性に限り日本においても前記2つの仮説は支持されると考えられる。
著者
金 明華
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
no.77, pp.187-204, 2010-07-31

In recent years, audition programs such as "Super Girl" has become popular in China. Many idols of mainland China, playing an active part in the world entertainment, are created by these programs. Idols' fans are emerging as groups and are acting enthusiastically as an organization. This paper focuses on these new changes which have occurred in the phenomenon of idols/fans in China, and clarifies the generation and features of idols/fans, taking Li Yuchun (a popular idol, the winner of audition program "Super Girl") and her fans "Yumi" as one case. This paper also adopts qualitative research. Semi-structured interviews with 30 Yumi living in Beijing were made in 2007 and 2009. Referring to fans researches of Japan and the west, this paper analyzes interviews with Yumi and draws the following conclusions. For Yumi, Li Yuchun is not a symbol that can be replaced by other idols, and she embodies Yumi's values. Yumi do not consume Li's image as "play", keeping the identity of Yumi more seriously. From what lay behind the images such as "frankness" and "cleanliness" deciphered by Yumi, the anxieties about Chinese society, which has dropped into moral crisis and trust crisis despite high economic growth, can be seen. Yumi feel an idol's kindness from Li Yuchun, while maintaining a distance from her. They have created a sense of solidarity among a wide range of generations, mediated by the image of Li Yuchun. And they also have made a multilayered space of communication through the Internet. Especially, those Yumi who know each other in real life carry out more direct and close exchanges, though it is necessary to consider further whether these exchanges have created a gap among Yumi.
著者
伊藤 邦彦
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.653-658, 2013 (Released:2016-09-16)
参考文献数
6

〔目的〕潜在性結核感染症(LTBI)治療終了後に現在行われている2年間の定期的経過観察の必要性を評価するため,LTBI治療終了後の結核発病率と発病時期を推定する。〔対象と方法〕結核サーベイランスデータを用いて2008-09年新登録LTBI治療対象者の2011年末までの発病状況を調査する。〔結果〕2008-09年新登録LTBI治療対象者(合計8951例)中,その後2011年末までに活動性結核を発病したと推定されるものが56例特定された。治療中断者まで含めたデータであっても,登録年次次年末までの発病率は全結核で0.57%(51/8951),塗抹陽性肺結核で0.10%(9/8951),全菌陽性肺結核で0.22%(20/8951)であった。治療終了時期の情報のある37例での検討では,治療終了後1年以内に12例,2年目に22例が発病していた。〔考察と結論〕LTBI治療終了後の発病率は低いが,LTBI治療終了後1年目から2年目にかけて発病率が低下する傾向はみとめられなかった。問題とするべきは,LTBI治療終了後管理健診の妥当な期間よりも,LTBI治療終了後の管理健診の必要性そのものである。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1926年12月09日, 1926-12-09
著者
松澤 俊二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.73-86, 2016

<p>一九〇〇年前後の「和歌革新」以降を「近代短歌」=「新派」和歌の時代とする見方は、近年の研究により補正されつつある。すなわち「革新」以降も「旧派」は勢力を温存して、二派が〈両立〉していたというのである。本論は、以上の観点を引き継いで「新」・「旧」〈両立〉の具体的な姿を大正期に即して考察した。特に当時の入門書を資料とすることで先鋭的な歌人の言説ばかりでなく、同時代の初学者のニーズまでを視野に入れて多面的な把握を試みている。</p>
著者
御前 明洋
出版者
北九州市立自然史・歴史博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

白亜紀の軟体動物殻表面には付着生物化石が普通に見られることがわかった.ノストセラス科アンモノイドPravitocerasやDidymocerasの殻表面に高い頻度でナミマガシワ科二枚貝が付着していたことを明らかにし,その産状の解析から,これらのノストセラス科異常巻アンモノイドの古生態の推定を行った.大型アンモノイドに付着するベッコウガキ科二枚貝の産状より詳細な埋没過程を復元した.
著者
野崎 慎 前島 一博
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.177-182, 2013-03-01 (Released:2014-03-01)
参考文献数
20

1細胞あたり全長2 mにも及ぶヒトゲノムDNAは「人体の設計図」であり,直径約10~20 µmの「細胞核」や直径0.7 µmの「染色体」の中に収納されている.本稿ではゲノムDNAの収納原理とその柔軟性について,最近の筆者らの知見を紹介したい.
著者
野原 卓 宋 俊煥 泉山 塁威 木原 一郎
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.201-216, 2021-04-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
12
被引用文献数
2

都心部のストリートにおいて整備・管理運営・利活用等を総合的に行うストリートマネジメントを継続的に実現するには、ストリートマネジメント主体の形成もしくは醸成が重要になる。本論では、ストリートマネジメントプロセスを①初動期、②主体形成(醸成)期、③主体発展期という段階で整理し、また、マネジメントに関わる主体の役割を、①意思決定、②運営、③管理、④活用、⑤支援の5つで仮説的に整理した結果、ストリートマネジメントの主体形成(醸成)を円滑に行うためには、(1)マネジメント実働主体(特に運営主体)が形成・醸成される環境づくりの工夫、(2)合意形成を円滑にするためのワークショップ・シミュレーション・実験等の丁寧なプロセスと支援、(3)意思決定を円滑に行うための多主体を巻き込んだ包括的なプラットフォームの形成と行政の受け皿、(4)方向性共有のためのビジョン構築と共有プロセス、(5)発展期における活用・支援を通じた多主体への拡張、 (6)運営と実行を柔軟かつ機動力を持って行う体制、などが重要となることが明らかになった。
著者
カングスワン アタヤ 野口 玉雄 荒川 修 清水 潮 塚本 久美子 志田 保夫 橋本 周久
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.1799-1802, 1988-10-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
11
被引用文献数
10 11

Attempts were made to detect tetrodotoxin (TTX)-producing bacteria in the Thai horseshoe crab Carcinoscorpius rotundicauda, one of TTX-containing marine invertebrates. Thirteen dom-inant bacteria were isolated from the intestinal contents of live horseshoe crab specimens, and were cultured in a 2 × ORI medium at 20°C for 24h. Bacterial cells of each strain were harvested, ultrasonicated and ultrafiltered, and TTX and anh-TTX fractions were separated from the filtrate by Bio-Gel P-2 column chromatography. HPLC, UV and GC-MS analyses showed that all out of the 13 strains isolated produced anh-TTX, and one strain produced TTX and anh-TTX. The strain which produced both toxins was identified as Vibrio alginolyticus on the basis of biochemical and other characters.