著者
永松 大
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.15-24, 2014-08-31 (Released:2015-08-31)
参考文献数
23
被引用文献数
2 3

北鳥取砂丘は現在,国の天然記念物や国立公園に指定されており,多くの観光客を受け入れている.しかし,戦後の一時期には砂丘に全面的に植林する計画があり,今日の状態に至るには紆余曲折があった.本研究では,旧版地形図と空中写真読図,鳥取砂丘で過去に行われてきた研究報告と新たな調査をもとに,第二次大戦後の鳥取砂丘の植生変化について論じた.現在残る鳥取砂丘の面積は,100年前の面積の約12%であった.鳥取砂丘の植生は第二次大戦後から現在まで,コウボウムギとケカモノハシが最優占し,その基本構造は維持されていた.鳥取砂丘の植生配置は,A.海浜型砂丘植生地帯,B.無植生地帯,C.凹地植生帯,D.内陸型砂丘植生地帯として認識された.しかし砂丘内には非海浜生の植物が増え,毎年の除草が欠かせなくなるなどの変化が生じた.これらは社会構造の変化と関係していることを論じた.鳥取砂丘の植生と地域社会の動き,両者は強く結びついていることを認識し,これからの鳥取砂丘のあり方を考えていく必要がある.
著者
梅村 晃広
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [プログラミング-言語基礎実践-]
巻号頁・発行日
vol.93, no.97, pp.1-8, 1993-10-29

本稿では,代数仕様についてのモナド解釈という新しい意味論を定義し,これに基づく仕様書換え方法を示す.Moggiは,値から値への関数と値から計算への関数との関係がモナドによって与えられることを示した.本稿では,これを代数仕様に応用し,通常解釈の拡張としてのモナド解釈を定義する.そして,この意味論に基づいた,仕様書き換えのためのモディファイアの定義方法を提案する.本稿の方法はエラー処理の追加に限らず,さまざまな書換えに対応し得るものである.
著者
Masamitsu Tsukamoto Hiroshi Kikugawa Souichiro Nagayama Taketo Suganuma Tatsuya Okita Hidenori Miyamoto
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.152-159, 2021-05-20 (Released:2021-05-25)
参考文献数
21
被引用文献数
7

Tolpyralate, a new selective postemergence herbicide developed for the weed control in corn, possesses a unique chemical structure with a 1-alkoxyethyl methyl carbonate group on the N-ethyl pyrazole moiety. This compound shows high herbicidal activity against many weed species, including glyphosate-resistant Amaranthus tuberculatus. Tolpyralate targets 4-hydroxyphenylpyruvate dioxygenase (4-HPPD), which is involved in the tyrosine degradation pathway. Inhibition of the enzyme destroys the chlorophyll, thereby killing the susceptible weeds. Details of tolpyralate discovery, structure optimization, and biological activities are described.
著者
佐藤 淳 Wolsan Mieczyslaw
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.23-40, 2012 (Released:2012-07-18)
参考文献数
98
被引用文献数
1

レッサーパンダAilurus fulgensはジャイアントパンダと共に食肉目Carnivoraの中で高度な草食適応を果たした種である.1825年の分類学的記載以来,約190年もの間,他の食肉類との進化的類縁関係は謎であった.本総説ではレッサーパンダの進化的由来に関するこれまでの分子系統学的研究を振り返り最新の知見を提供する.近年の主に核遺伝子を利用した分子系統学的研究においては,レッサーパンダはイタチ上科Musteloideaの主要な系統であり,イタチ科Mustelidaeとアライグマ科Procyonidaeから構成される系統に近縁であることが強く支持されている.また,分岐年代推定によりレッサーパンダの系統の起源は約3,000万年前にあると推定された.さらに生物地理学的解析により,その起源はアジアにあることが示唆された.レッサーパンダの系統分化は始新世から漸新世にかけての大規模な地球環境変動の影響を受けたと考えられる.
著者
森 豊彦
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.28, no.9, pp.642-645, 1999-09-20 (Released:2010-03-18)
参考文献数
13
巻号頁・発行日
vol.第58號 (昭和21年8月29日), 1946
著者
渡辺 滋
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学学術情報 (ISSN:21894825)
巻号頁・発行日
no.14, pp.21-39, 2021-03-31

陸軍大臣・朝鮮総督・首相などを歴任した寺内正毅は、「寺内文庫」と呼ばれる蔵書コレクションを残している。後世、このコレクションをめぐって、不正に入手された財宝や美術品が大量に含まれているというデマが広まり、最終的には国家間の交渉や学術書における関連叙述にまで大きな影響を及ぼす事態となった。本稿では、こうしたデマの拡大過程を具体的に検討したうえで、その発生経緯や背景を解明していく。
著者
高橋 誠一
出版者
関西大学文化交渉学教育研究拠点(ICIS)
雑誌
東アジア文化交渉研究 = Journal of East Asian Cultural Interaction Studies (ISSN:18827748)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.121-144, 2009-03-31

Mazu is known as the Voyage Goddess among the common people in East Asia and Southeast Asia today. Though the Mazu belief was initially confined to the coastal areas in Southern China, especially in Fujian Province or Guangdong Province due to the strong association with voyages, the sphere of the belief expanded since it was gradually thought to be beneficial to other things but voyage. Mazu was embraced by Tenpi in the Qing Era and Tengo in the Yuan Era, and “Tenpi Temples” and “Tengo Temples” honoring Mazu were widespread and diffused not only to the coastal areas in southern China but also to East Asia and Southeast Asia. When the Mazu belief was introduced to modern Japan, it was connected with the belief of Funatama (the guardian deity of ships) and spread. In this report, the Mazu (Tenpi) belief, which gradually changed with the development, diffusion and spread of the belief, is considered from the viewpoint of historical geography.
著者
對馬 由美
出版者
文教大学
雑誌
教育研究所紀要 (ISSN:09189122)
巻号頁・発行日
no.15, pp.75-84, 2006

本研究では、既存の博物館・美術館、文化財の基本的な概念定義を整理し、その定義を実際に検証するためにイタリアにおいて博物館等の見聞を行った。その結果をふまえ、イタリアの博物館・美術館の現状の検討を行った。
著者
山本 博樹 深谷 達史 高垣 マユミ 比留間 太白 小野瀬 雅人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.209-230, 2020-03-30 (Released:2020-11-03)
参考文献数
70

2020年度より順次実施の学習指導要領からは「主体的・対話的で深い学び」が目指されることになる。これに対して,教師や生徒同士の説明実践に期待が寄せられるが,説明とは説き手の「説く」と受け手の「明らかになる」から成る言語活動だったはずである。ところが,一方的に「説く」だけで決して受け手自身が「明らかに」ならない言語活動が授業に紛れ込むことがある。説明という言語活動の特徴や構造を取り違えたり,短絡的に「深い学び」に直結すると誤解する場面に出会ったりもする。実は,説明活動は受け手の「明」に関わる認識論上の難題を含むのであり,これに対する教育心理学サイドの貢献を時に振り返る機会があってもよい。ここから児童生徒の「深い学び」を実現する説明実践が耕されていくからである。そこで,本論文では,説明の原義に由来する難題に研究者がいかに立ち向かってきたかを振り返り,説明実践に対する教育心理学の貢献を議論したい。想定した論点は以下の3点である。(1)説き手である教師や児童生徒は受け手の理解不振を把握できているか(論点1),(2)同じく受け手の理解不振を本当に改善できているか(論点2),また受け手の理解不振の把握・改善を基点とした説明力の育成は進んでいるか(論点3),である。
著者
渡辺 俊哉
出版者
国立音楽大学
雑誌
研究紀要 = Kunitachi College of Music journal (ISSN:02885492)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.245-251, 2021-03-31

初の作品集のCD作成にあたり、まずコンサートのライヴ録音とCD録音との違いを考察して、それぞれの特長を述べる。そしてそこから導き出された考察の結果、全曲新しく録音するという結論に至った経緯と、今回の収録にあたって作曲した新曲について、更に他の収録曲について述べる。日本語の詩を用いた新曲に関しては、その中で試みたことや、詩の選択に関して考えたこと、その狙い、また器楽曲の作曲との違いなどを述べる。最後にCD発売後の反響や、石川星太郎(指揮)、星谷丈生(作曲)、筆者によって結成された「庭園想楽」の第1回オンライン・レクチャー、「渡辺俊哉自作を語る」の講演において新曲について触れた際に、石川星太郎より指摘された箇所の考察を通して、作曲家側と演奏家側の視点の違いを紹介する。
著者
半田 裕一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.105-112, 2017-01-20 (Released:2018-01-20)
参考文献数
20

コムギは,全世界の耕地の16%に相当する2億1,800万ヘクタールで栽培され,その生産量は年間約7億トンにも及び,イネやトウモロコシとともに世界の三大穀物として,私たちの食料基盤を支えている.また,トウモロコシやイネよりも多くのタンパク質を含むことから,多くの国で最も重要な植物タンパク質源となっている.一方,コムギは遺伝学の材料として古くから利用されてきており,今日,一般的に使われるようになった「ゲノム」という言葉は,コムギと深い関係にある.しかし,コムギゲノム自体は,ヒトゲノムの5.7倍の17 Gbもあり,異質6倍体ということと相まって,その解読は進んでいなかった.本稿では,コムギとゲノム研究のかかわりを解説しながら,現在進められているコムギのゲノム解読の現状を紹介する.

6 0 0 0 OA 5.漢方薬

著者
本間 行彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.1137-1142, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
1

漢方薬による肺障害として最も知られている小柴胡湯による間質性肺炎を中心に概説した.この本体は小柴胡湯によるアレルギー性急性間質性肺炎であり,慢性で予後の悪い特発性間質性肺炎とは本質的に異なる疾患である.早期診断,早期治療により原則として完治する疾患と考えられるが,過去に死亡者を10名出し,注目された.ここでは,その具体的対策方法を中心に述べたが,何よりも,漢方薬にも副作用の可能性のあることを認識することが重要である.
著者
豊田 秀樹 福中 公輔 尾崎 幸謙 川端 一光
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.416-423, 2007-10-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
15
被引用文献数
2

This research develops a new method for analyzing relation for factors which combines graphical modeling (GM) and factor analysis. In this method, estimation of the inverse of the variance-covariance matrix is done in the framework of factor analysis, and then the data-model fit is investigated using GM. The partial correlation coefficients of the estimated model are calculated, and the estimation of parameters is repeated until discovery of the worst fit index. In order to confirm the effectiveness of this method, three correlation matrices were analyzed as a real data study. In first and second case, intelligence models of Harman and Turstone were restructured using this method. In third case, EQ model was structured using it. The results show that this method can be apply GM for latent variables and a good assistant to set up path models for factors.
著者
麻柄 啓一
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.455-461, 1990-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
5 4

This paper deals with students' misconc eption and the process that a new concept displaces it. Many students think that plants growing from bulk (e. g. tulip) have no seed in the flowers. To correct such misconception, the control group was given reading material describing the fact that tulip has seed in the flower and could be raised. The experimental group was given reading material describing the reason why a tulip was raised from a bulk while it had seed in the flower. The main results were as follows.(1) More Ss in the experimental group abandoned their misconception and acquired new concept than Ss in the control group.(2) The experimental group was more deeply interested in the given article than the control group. The obtained results were discussed from the viewpoint of the mechanism that a new concept displaces an old one. And a general description was made concerning the teaching strategy used in this experiment.