著者
長 大介
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-10, 2018

<p>テスト効果とは学習項目をテストすることが学習項目を繰り返し学習することよりも長期的な保持をもたらす現象である.この現象は学習時の処理文脈を再現しながら初期テストに取り組むことによって生じると考えられている.本研究では学習項目と妨害項目の音韻的,形態的類似性を操作することによって,初期テストにおいて学習時の処理文脈を再現することがテスト効果に及ぼす影響を検討した.はじめに実験参加者は学習項目を学習し,続いて学習項目の再学習もしくは初期テストに取り組んだ.最後に直後,もしくは1週間後に最終テストを行った.その結果,妨害項目と類似した学習項目にテスト効果が生じた.さらに処理文脈の再現の指標として測定した妨害項目の記憶成績にも学習項目と同様に類似性の影響が認められた.これらの結果はエピソード文脈説を支持するものであり,初期テストにおいて学習時の処理文脈を再現することがテスト効果の生起にとって重要な役割を果たしていることを示唆している.</p>
著者
大熊 保彦
出版者
日本家族心理学会
雑誌
家族心理学研究 (ISSN:09150625)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.57-59, 2018-07
著者
東 昇
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.299-322, 2004-01

ここでは近世後期の天草における人と物の移動について分析した。対象とした場所は、天草の西海岸に位置する高浜村である。対象とした資料は、高浜村庄屋上田家文書中の村への人の出入りを改める旅人改帳・往来請負帳である。分析の結果、次の四点が判明した。 1 旅人改制度は、文化一〇年、江戸幕府の直轄支配となり強化された。旅人を改める理由は次の三点である。人口が多く経済状態が悪い、外国の窓口である長崎に近く外国船に接触する機会が多い、村の治安維持のため、である。 2 高浜村への旅人は、年間平均四五件と多数到来する。特に天草周辺の四ヵ国(肥前・筑後・肥後・薩摩)を中心に、全国に分布していた。高浜村は、天草西海岸で有数の港であり、問屋・宿も三軒ある。穀物や生活必需品は、主に柳川と大川の船で搬入された。高浜村は、山海産物や焼物を搬出していた。 3 高浜村から旅に出た者は、商売や漁を目的とする場合が中心で、病気の養生や巡礼のためにも頻繁に村を出ている。目的地は天草の北に位置する肥前、天草の南・西に位置する薩摩や五島へと時代を経るに従い変化していく。その理由は、漁稼ぎの増加など産業構造の変化である。上田家など商人的性格を持つ家では、廻船の定期運行を行い、焼物を瀬戸内や大阪で販売した。 4 庄屋上田家の政治的地位の上昇、流行病への科学的な対処、港などの社会資本の整備により、高浜村の活発な人の移動、経済活動が可能となった。天草は船という主段で他地域と交流し、農産物を他地域からの買い入れに依存し、山海産物を他地域に売る経済構造であった。
著者
鈴木 正紀
出版者
文教大学

日本図書館協会図書館情報学教育部会2018年度研究集会における発表資料日時:2018/06/3 会場:日本図書館協会会館研修室
著者
藤田 治彦 井口 壽乃 近藤 存志 川島 洋一 池上 英洋 加須屋 明子 井田 靖子 橋本 啓子 天貝 義教 高木 陽子 高安 啓介 加嶋 章博 朝倉 三枝 三木 順子 永田 靖 塚田 耕一
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

美術、建築も含めた広い意味でのデザイン教育の歴史をおもなテーマにした国際会議、第1回ACDHT(Asian Conference of Design History and Theory)を本研究開始の平成27年10月に大阪大学で開催、平成29年9月には第2回ACDHTを東京の津田塾大学で開催した。その研究内容は同国際会議での発表論文を査読して掲載する ACDHT Journal の”Design Education beyond Boundaries”に掲載され、同国際会議ウェブサイトでも閲覧可能にしている。研究代表者と13名の研究分担者は、全員、積極的に調査研究を進めている。平成29年度は、特にインド、スペイン、ドイツ、中欧、イギリス(スコットランド)の研究成果が注目された。第2回ACDHTでは、第1回ACDHT以上に、本科研プロジェクト以外の研究発表者も国内外から参加し、このデザイン教育史研究を通じての国際交流を高めている。本研究は、各国のデザイン史、美術史、建築史等を専門とする日本の代表的研究者が研究分担者となり関連国、関連地域の独自の調査研究を進め、国際会議での発表でも高く評価されているているが、全世界を視野に入れれば専門の研究分担者のいない国や地域も多く、それが「デザイン教育史の国際的比較研究」の目的を達成するには唯一の欠点でもあった。研究代表者は、その欠点を十分に補って研究を総括する立場にあり、第1、第2年度には、担当する研究分担者のいない中国、東南アジア、インド等の調査を行い、平成29年度にはオランダと北米(アメリカ東部とカナダ)および南米(アルゼンチンとチリ)等で調査研究を行った。調査のために訪問した各国の主要教育機関からは多くの場合、重要な関連資料を提供され、旅費は必要だが、図書購入費は節約可能で、順調に調査研究を進めている。
著者
福田 智子 フクダ トモコ Fukuda Tomoko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.1-26, 2018-08-31

研究ノート(Note)『古今和歌六帖』は、約四千五百首の歌を、二十五項目、五百十七題に分類した類題和歌集である。収載歌には、『万葉集』『古今集』『後撰集』など、出典の明らかな歌もある一方、現在では出典未詳と言わざるを得ない歌もある。本稿では、「椎」から「山萵苣」までの題に配されている出典未詳歌、十首について注釈を施す。
著者
澤村 美幸
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.17-32, 2007-01-01 (Released:2017-07-28)

本稿では,いわゆる〈弟〉を表す伝統的方言の「シャテー(舎弟)」を事例とし,地方の文化,とりわけ社会構造が語の伝播にどのように関わってくるのかを考察した。「シャテー」は京畿地方を中心とした中央語史上では武士階級の位相語として定着するが,近世後期以降,東日本では庶民語化して広範囲に伝播するのに対し,西日本では武士階級の位相語としてとどまり続けるという東西差が生まれてくる。この背景には,社会構造の東西差があり,長子単独相続的傾向の強い東日本の社会構造が,「『イエ』にとっての序列関係」を反映した語を必要としたため,「シャテー」の庶民語化や伝播が起こったと考えられる。この事例から,語の伝播は,中央の文化的威光の高さのみが原動力となって起こるのではなく,地方側の文化にも中央語を受容する必然性が生じた際に起こる場合があることが明らかとなった。